英雄の卵たち   作:ペーダソス

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プロローグ

 

 

「フッ、せいっ!はっ!」

 

 拾って削って作った自前の木の棒を槍の様に自在に振り回して動きを確かめ最適化させていく。

 

 前世の記憶を持って生れた弊害と言える誤差を修正していく。前世のオレは190有ったが今世では160。未だ14歳だからまだ伸びるはずだ。

 

「おい、お前。神器を持っていやがるな?」

 

 鍛練中に背が高めの男がやって来た。セイクリッド・ギアか……確かにオレは神器を持っている。神ヘスティアが運営する孤児院育ちのオレが知らない訳がない。神器は8歳で発現しており、既に禁手に至っている。

 

「持っていたら何だ?」

 

「俺は、英雄ヘラクレスの魂を受け継ぐ者だ。強くなる為に色んな奴に戦いを挑んでてよぉ。お前の槍捌きを視てて挑みたくなったんだよ」

 

 ヘラクレスの魂を受け継ぐ者……ね。

 

「成る程。で?お前がヘラクレスの魂を受け継いでいるってどうやって証明すんだ?」

 

「あ?んなの闘えば判ることだろ?」

 

「いや、もっと簡単で判りやすいのがあるぞ」

 

 オレは持っていた木の棒を投げ捨てて拳を構える。

 

「オレと同じ師(・・・)の教えを受けたなら……何をすれば良いかもう判るだろ?英雄ヘラクレスの魂を受け継ぐ者」

 

「同じ師だと……?」

 

「そういやぁ、自己紹介をしていなかったな。オレはお前と同じ様に英雄アキレウスの魂を受け継ぐ者だ。さぁ、構えろ兄弟子(ヘラクレス)!本当に魂を受け継いでいるってんなら師ケイローンから教わったパンクラチオンで真偽を決めようぞ!!」

 

 そう、パンクラチオンだ。師ケイローンから色々教わったがアキレウスとヘラクレスの真偽を問うならコレだろう。魂を受け継いでいるって言うならヘラクレスがその生涯で昇華させた武の記憶があるはずだ。オレも魂が覚えている槍術を確かめていたのだからきっとあるだろう。

 

「ああ、そうだ。そうだ、パンクラチオンだ!確かに俺とお前がヘラクレスの魂とアキレウスの魂を受け継いでいるという証明をするなら(コレ)が良い。神器なんかない時代の魂を持つ俺らが、師ケイローンから文字通りに叩き込まれ魂に刻んだ技こそが相応しい!」

 

「応とも!さぁ、ヘラクレスの魂を受け継ぐ者よ、準備は良いかっ!まさか神器ばかり使って身体が鈍っているなんて言い訳なんかしないよなぁ?」

 

 口角をつり上げながら二、三度拳を振って相手の返答を待つ。

 

「へっ、確かに最近は神器ばかり使っているが心配すんな。師ケイローンから教わった技は魂に刻み込まれている。ではいくぞ、アキレウスの魂を持つ者!」

 

「来い、ヘラクレスの魂を持つ者!ギリシャ神話(オリンピア)の神々に、師ケイローンに今から始まる武闘(パンクラチオン)を捧げようぜ!」

 

 拳を再度構えて同時に相手に向かって駆け出す。

 

「はあああぁぁぁーーー!!」

 

「うおおおぉぉぉーーー!!」 

 

 単純な殴り合いから投げ、絞め、蹴り。パンクラチオンの名の通り『全力』で己の武を相手に叩きつける。純粋な殴り合いなぞ久しぶりだ。小さい子どもの時に同じ孤児院の奴と喧嘩した時以来だ。

 あっちもこっちも純粋な殴り合いは久しぶり。条件はほぼ同じ、だからこそ─────

 

「「勝つのは、オレ()だーー!!」」

 

 時間を忘れて目の前の相手との殴り合いが楽しい。魂が奮える様な感覚に酔う。これが、闘うという事、武勇を競うという事か。

 

 羨ましい、前世のオレ(アキレウス)はこんな闘いをしていたと言うのか。甘美な蜜を飲むが如く、この味をもっと味わいたいと思ってしまう。さっきのヘラクレスが言っていた様に渡り歩くのも良いかもしれない。

 

 だが、しかしオレはこの武を力を護るべき者たちの為に振るい、必ず帰るべき場所に帰る為に高めるのだと。

 

 ヘスティア義母さんへの恩返しもしていないこの身は、恩を返してからが本番だと…心に言い聞かせる。

 

 

 

 

 三十分、そうオレとヘラクレスは三十分間も全力で殴り合いに興じていた。

 

 そして、闘争の気配を感じてやって来たヘスティア義母さんに見つかり闘いは勝者、敗者を決めずに終わった。

 

 




口調が時々変わるのは、魂が高ぶった影響でハイになったからです。
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