串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!) 【完結】   作:カリーシュ

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第1章 鋼鉄製浮遊城アインクラッド
1 串刺し公、始動す


 

 

――転生、という言葉を聞いてどう思うだろうか。

 

一般的には仏教の言葉で、超絶ざっくり言えば死んだ生物の魂を次の生物に入れるという、おそらく人類史上初のリサイクル活動だろう。

 

だが、一部の人種にとっては違う。

トラックやら病気やら通り魔やら、原因は違えど御臨終した人間を、ミス、暇潰し、果ては道楽と理由を付けてチート込みで異世界に放り込み、世界最強になったり原作フラグをへし折ったりハーレムを作ったりする。 それが一部の人種――

所謂オタクの言う『転生』だろう。 異論反論は認める。

 

 

さて、こんな話をしている以上、察しの良い人は『あ、コイツも転生したんだろうな』と思うだろう。 ビンゴだ。 ただちょっとパターンが珍しかった。

まず第一に、俺はそもそも(記憶のある限りでは)死んだ覚えは無い。

二つ目に、俺は神と自称するハゲジジィにもロリにも会ってない。 声も手紙も無い。

三つ目に、俺が明確に異世界転生したと気付けたのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何故、今なのだ………ッ!」

 

 

――ソコソコ歳喰った後だった。

 

 

いやね? 最初こそ昨日まで高校生やってたのにいきなりガキンチョ(当時1歳)になったときは混乱もしたけど嬉しかったさ! 俺自身オタクに腰まで浸かってたし、周りは知らない言葉で喋ってるし、『うわーやったー異世界転生だー』ってマヌケ顔晒したさ!

だが、ンなふざけた幻想は、3、4歳になって周りの状況が分かるようになってくれば、飴細工よりも簡単にブッ壊れた。

 

前世と何ら変わらない世界地図。

まったく聞こえてこない異能や異形の噂。

年代すら殆ど変わらない。 ちょっと過去に逆行こそしていたが、約30年だけ過去に戻って何が違う。

 

そして、肝心のチートは、自分自身の名前を理解してすぐに察した。

 

 

 

 

 

 

 

―――『ヴラド十五世』。

 

それが、第二の人生で与えられた、()の名だった。

 

 

……地位チートとか踏台あるあるじゃないですかヤダー。

ルーマニアは共和制と君主制がごっちゃになった政治形態してるもんだから、所謂『貴族』がいて、税金から生活費+αが丸々出ている家すらある。

しかもウチの家はだいぶ廃れてこそいるが、かの救国の英雄『ヴラド三世』の家系ときた。 ぶっちゃけ元庶民の感覚で贅沢しても普通に生きていけるだけの金は入ってきてる。

 

つまり、死亡フラグが立ちまくってる。 あの金と地位に胡座かこうもんなら主人公(誰だかは知らんけど)に一瞬で蹴散らされるザコ敵Aにされる。 即堕ち2コマにしゃりぇる! しょんなのりゃめぇぇぇぇぇ!

 

……ゴホン。 失礼しました。

とまあ、そんなこんなでフラグを折るために色々やったもんだ。 貴族の仕事なんて何それ美味しいの状態なのを試行錯誤したり、何をトチ狂ったか唐突に槍術を習い出したり、旅行が趣味の両親についてビック・ベン(時計塔)まで行ったり、吸血鬼の家系と後指指した馬鹿を物理で黙らせたり、槍の特訓を始めたり、世界中のニュースをかき集めたり、刺繍を始めてみたり、槍投げにも手を出したり。

 

……気がついたら槍振るってばっかだな、おい。

 

閑話休題(それは兎も角)

 

そうこうしている内に時は過ぎ。

2021年11月10日。

主人公らしき人物に会うこともなく、地球外生命体や核の申し子が侵攻してくることもなく、大地を足で闊歩する戦車が産まれる事もなく。

今日で34歳(未婚)の誕生日を迎えた朝。 髭を整え、何時もの黒い正装を着、朝の一杯を味わいながら惰性で続けている世界規模でのニュースの確認をする。

まぁ、どうせ今年も変わらんさ。 それよりも下町のクリスマスイベントの企画案に目を通すか。

そう思ってバァーっと目を通す。

 

………

 

 

 

 

 

………………

 

もう一度、バァーっと流し読みする。

深呼吸して、コーヒーを飲み干して、3度目を、嘗ての故郷、日本の新聞に通す。

そこには確かに、こう書かれていた。

 

 

 

 

 

――『期待の最新VRゲーム機! 『ナーヴギア(・・・・・)』 本日発売!』

 

 

 

 

 

………あの、いや、ここ、

 

「『ソードアート・オンライン』の世界だというのか……!?」

 

転生して34年、今更分かった世界線に眩暈がして、頭がくらくらする。

取り敢えず顔を洗おうと洗面まで歩き、鏡を覗き込む。

 

 

ウェーブのかかった銀髪。

青白い肌。

薄青の瞳。

薄く生えた髭。

30歳代にしては老けていると言われる顔。

 

 

 

 

――『Fate』という作品において、『黒のランサー』と呼ばれた男と同じ顔をした人間が、俺を覗き返していた。

 

 

………苦節30年。 あれだけした苦労は、無駄だったのだろうか?

 

己の顔が記憶にあるサーヴァントと同じものだと気付いた時点で、(結果こそ違ったが)ここはFateの世界線だと思った。

だからこそあれだけ不自然な爆発事件には警戒したし、先祖代々の類の品の管理を徹底した。

 

だが、ここがSAOの世界だとすると、話は全く変わってくる。

SAOは基本的に日本国内で話が纏まっている作品だ。 精々アリシゼーション編でアメリカが出しゃばってくる程度か?

どちらにせよ、今俺がいるのはルーマニア。 作中には全く出てこないし、そもそもルーマニアと日本では国交も少ない。

俺に出来ることは、何もない。

そう、何もだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………本当に、そうなのか?

 

 

部屋に戻り、武人でもあったヴラド三世が振るったと伝わる槍を手に取る。

ポーズを取り、姿見を見れば、其処に佇むはまさしく画面で見た串刺し公。

 

 

―――こんな贋作未満の偽物にも、出来ることはあるんじゃないか?

 

 

「――シッ!」

 

槍を突き出し、素早く戻す。

二段目の突きを引き戻すと、その勢いを使って一回転、穂先を叩きつける。

地面スレスレまで下がった槍を逆袈裟に振り上げ、バツの字に目の前を切り裂く。

 

 

―――そう、例えば、――

 

 

手に馴染んだ槍を手首のスナップだけで一回転させ、右手に下げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――鋼鉄の浮遊城に、モンスター共の串刺しの林を再現するとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フッ………

………ククク…………

ふはははははははは!! よかろう!」

 

そうと決まれば、やる事は多い。

先ずはナーブギアの入手だ。 VR酔いでダウンなど、醜態を晒す訳にはゆかぬ。 目を慣れさせなきゃならない。

あれこれと浮かぶ予定を胸に、部屋を飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――これは、魔術師の物語ではない。

 

――これは、サーヴァントの物語ではない。

 

――これは、聖人の物語でもない。

 

 

これは、仮想世界にて復活した、

 

 

 

 

串刺し公(カズィクル・ベイ)の、物語だ。

 

 

 

 

 

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