串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!) 【完結】   作:カリーシュ

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今朝

賽銭箱「さて、そろそろ投稿するか。 メインの奴はっと。
UA1723、お気に入り11、と。 いつも通りだな。
で、SAOは、
UA6844、お気に入り479。

…………………な ん で さ ???」

ヤバイ、期待が怖い。
取り敢えず、投稿します。

あ、誤字報告と評価してくださった皆さん、本当にありがとうございます。

では、どうぞ。







2 串刺し公、大地に立つ

 

 

 

 

 

――触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚の順に五感へとリンクし、五つのOKマークがでる。

 

Language(言語)は日本語で設定。

 

Log in(ログイン)画面でアカウントとパスワードを打ち込み、キャラクター登録を始める。

性別は当然Male(男性)。 後はアバターとネームをちゃちゃと決めて、と。

 

確認画面で《yes》をポチッと押すと、奥から光の奔流が溢れ――

 

 

 

《Welcome to SwordArt Online!!》の文字が浮かび上がる。

 

 

 

 

 

直後暗転した世界で、感じる筈の無い頬を撫でる風を感じとってから、ゆっくりと、目を開ける。

視界に飛び込んでくるのは、中世ヨーロッパを意識したと思われる街並み。

視界の左端には緑色のHPバーと、『Vlad』という本名まんまのプレイヤーネーム。

装備こそ代わり映えの無い初期装備だが、鏡になっている近くの建物のガラスの前に立てば、現実と同じ顔――黒のランサーと同じ顔が映る。

 

……遂に、この時が来たか。

文字か画面の向こう側でしか見れなかった奇跡に、全身の鳥肌が立つ。

が、あまりゆっくりしている時間はない。

 

感動するのもそこそこに、少なくない数のプレイヤーのが走っていく裏路地に入る。

1分も歩かない内に剣のマークが書かれた看板が吊り下げられた店に辿り着き、最安値の両手槍『ロングスピア』を複数本購入し、装備するついでにその場で『索敵』と『槍』スキルをセットする。

これで準備は整った。 後は実戦あるのみだな。

 

 

 

 

 

串刺し公移動中(なぅろーでぃんぐ)

 

 

 

 

 

――始まりの町を出ると、視界一面に草原が広がる。

所々に青い猪が現れ(ポップし)、それとちらほら見える人影が戦闘を始める。

 

 

……成る程。 これは確かに息を呑む程美しい景色だな。

 

「惜しむべくは、じっくり眺めるには些か騒がしいことか」

 

近くに(フレイジーボア)がポップし、向こうが戦闘態勢に入ったのか、相手のHPゲージが映り込む。

 

では、実験に取り掛かるとしようか。

 

 

――原作SAOにおいて、アスナがあれだけのスピードと正確さでレイピアを振るえたのは、現実でもフェンシングの経験があったから、という描写があったと思う

……ツッコんでくれるな。 何せ数十年前に読んだっきりなのだ。

話を戻そう。 つまりは現実での経験を活かせば、スキルのブーストが可能だということだ。

というわけで、さっそく試すとしよう。

使用スキルは『ツイン・スラスト』。 文字通り二段突きだ。 先ずはスキル単体で使う。

愚直な猪の突進を躱し、背後から青い煌めきを纏った穂先が二度、奴の腰辺りと後足を捉える。

 

「プギィィィ!?」

 

ふむ。 槍そのものが火力の低い武器だからか、あまり削れないな。 いいとこ二割弱か。

では次だ。 スキルは同じ『ツイン・スラスト』。 今度はスキルの動きに合わせて身体を捻り、槍を突き出す。 偶々だが奴の突進にカウンターのように脳天に突き刺さっ――

 

「ブギィッ?!」

パリンッ!

 

……………ぇぇ??

い、一撃て……予想ブースト+クリティカルとはいえこのダメージて……

ま、まあいい。 やはり何らかのブーストは入るようだな。

さてと、他にも色々試してみるとしよう。 何せβテスト逃したからな! 流石にデスゲーム化後にチンタラやってる暇ぁ無いからなチクショー!

 

……そもそもの話として、SAOのデスゲーム化を止める事は早々に諦めた。

ルーマニアの一貴族でしかない俺と茅場含むアーガスじゃ、接点がなさ過ぎる。 財力にモノを言わせて株を買い占めればワンチャンと思ったが、それは世話係に止められた。 クソゥ。

ま、仮にやったとしても、ソードアート・オンラインは最新鋭フルダイブゲーム初のMMORPG。 期待も当然デカイし、開発者はナーヴギア同様茅場だ。 ハード発売一年後に出した点から見てもほぼ完成していただろうし、結局は阻止出来なかっただろうな。

 

あ、因みにこっちでの俺の両親は元気だ。 家は俺が継いで隠居状態とはいえ、充分な貯蓄があるらしくてな。 俺の所の世話係もあっちで仕事出来るように手を回しておいてある。 既に十二分に迷惑かけているだろうが、これで万が一やらかしてもかける迷惑は最低限で済むだろう。

つか寧ろこれ幸いと追放されるかも分からんな。 母方の方で従姉妹の2人目が生まれたって聞いたし。 ふっ、何時だって権力者は敵塗れよ。 ヴラド三世(ご先祖)も裏切りで死んだらしいしな。

……あれ? 俺、大丈夫だよな?

 

………………あっるぇ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――辛すぎる現実から目を背ける様に猪を血祭りにあげる。 人これを現実逃避と言う。

でもここがデスゲーム(ある意味現実)になるってんだから、これもう分かんねぇな。

時刻は17:25。 後5分もしたらリスポン不可になるな。 今まだ出来るのかは知らんけど。

取り敢えず、実験結果としては、

 

・スキルに合わせて正確に身体を動かすと、ダメージとスピードが上昇する。

・スキルのモーションはある程度身体の動きで調整可能。 但し上記のバフ、特にスピードとの両立は不可能。

・完全にスキルに逆らうように動くと、ダメージ量とスピードに正確性まで下がる。

・スキルそのものにダメージボーナスがあり、各ソードスキルにもボーナスが存在。

・武器の耐久値は、攻撃<カウンター・受け流し≦防御・パリィの順に減る。

 

……四つ目が想像以上にウゼェ。

普通のゲームの縛りプレイならまだしも、一回のミスが文字通り命取りになりかねないSAOでダメージ量低下は痛い。

好き勝手武器を振り回して味方を傷つけかねない素人は兎も角、既に癖がついている武器を振り慣れた人にとっては、時にソードスキルは邪魔になりえる。 事実、Fateのヴラド三世を真似た槍捌きを練習した俺にとっては、ツイン・スラストの上位スキル『トリプル・スラスト』は少々扱いにくい。 どうしても一番威力のある三撃目に腰が入らないのだ。

だからと言ってスキルを使わなければダメージを出せない。 本当によく出来ている。

まぁ、ゲームの対象は主に日本人のインドア派。 一体どれだけの人が武器を軽々とブン回せるかって話だがな。

 

 

 

 

 

――さて、そろそろか。

現実の顔そっくりにアバターを作ってある以上鏡イベントはどうとも思わないが、下手に逆らう必要もない。

大人しく従うとするか。

 

 

 

 

 

 

 

……………尤も、いずれ余自ら極刑に処すがな。

 

 

 

フィールド中に響き渡る鐘の音と、身体を包む青い光(転移時のエフェクト)に包まれながら、

 

改めて、今、自分が何処にいるのかを実感した。

 

 

 

 

 

 

 

――この後の事は、特筆する必要は無いだろう。

 

赤ローブ(茅場)による、『ソードアート・オンライン』正式サービス――という名のデスゲームの開始宣言。

 

鏡によって変えられる(戻される)アバター。

 

HP0=現実の死、という事実。

 

 

――『これはゲームであっても、遊びではない』

 

 

 

案の定と言うべきか、知ってたと言うべきか、始まりの広場は怒号と悲鳴と嗚咽に溢れかえった。

態々付き合う道理もないしキャラでもないから、さっさと武器屋のある裏路地に逃げ込み、ドロップアイテムの換金と槍の補充をする。

 

さて、原作キリトも言っていたが、始まりの町周辺は直ぐにリソースの奪い合いになる。 さっさと次の町に向かうとしよう。

次の町は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………何処だっけ?

あり? よくよく考えてみれば、俺の武器は槍。 剣装備のキリトの通りに胚珠クエを受けても旨味がない。

そして、只でさえ記憶があやふやなのに俺が前世でSAOに触れたのは小説とアニメだけ。 しかも小説はプログレッシブ読んでない。

 

 

 

 

 

…………………軽く詰んでね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足だが、その後スゴスゴと広場に戻る外見年齢50歳前後のオジサンの姿があったとかなかったとか。

 

 

 

 

 


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