串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!) 【完結】 作:カリーシュ
――漸く慣れてきた随意飛行から意識を切り替え、羽を大きく広げてスピードを落としながら石畳の通路に着地する。
緊張からか飛行中の空気抵抗からか、無意識に詰めていた息を吐いて顔を上げれば、道中装備を整える為に立ち寄った、何処か色彩の偏りがあった中立域とは違い、星屑を撒いたように七色、いや、
そして、中央に屹立する異様な巨大樹。
――アルヴヘイムの中心。 央都アルン。
「ここが、アルン……」
「ほえー。 結構賑わってるわねー」
あの須郷伸之がゲームマスターを務めているのだから、何処も彼処も山脈外周部の様に世紀末一歩手前な光景が広がっているのかと思えば、想像以上に和気藹々とした雰囲気が漂っていた。
「――さてと。 二人はこの後世界樹のグランドクエストに挑むんだよね?」
「ええ。 彼があの上にいるのは、間違いがないから」
「私も色んな意味でブン殴りたい奴らがいるからねー。 うん、嘘は言ってない」
「あ、あはは……
………ねえ、本当に直ぐに挑むの?」
道中あれだけ元気だったユウキが、何処か気まずそうにそう口にする。 多分、私たちの身を案じてくれているのだろう。
ガーディアンを退け世界樹のゲートを潜るというグランドクエスト。 ALOが始まってから一年経って、未だクリアされることのないクエスト。 おそらく難易度はSAOのクォーターボスすら軽く越えるだろう。
幾つもの伝説を打ち立てた、二度と実現される事のない
――だとしても。
「失敗しても死ぬ訳じゃないわ。 だったらぶつかってみるまでよ」
ハッキリと覚悟を決めて、そう伝える。 性格的に茶化しそうなピトフーイはと言えば、覚悟完了を通り越して瞳孔が開き始めていた。 正直怖いが、殺る気満々のピトフーイが味方というのは心強い。
「……そっか。 分かった、気を付けてね!」
「貴女もね、ユウキ」
道中に聞いた話ではユウキは蝶の谷に用事があるらしく、彼女の助力を請えるのはここまでだった。
何度も此方に振り返りながらも空高く遠く離れていく少女を見送り――遠近エフェクトの果てに消えていった。
――世界樹頂上へと続くドームは、それから殆ど間を空けずに見つかった。
アルンの中央。 クエスト入り口のあるテラスは、街が樹を軸に作られたのか、樹が街を侵食しているのか分からなくなるほど根が這い回っていた。 街を一望出来るほど良い景観なのに誰一人としてプレイヤーは居ないが、こんな
――入口を塞ぐ石造りの大扉。 妖精の色合いを示しているのか九色に輝き、そしてその両側には見上げる程巨大な、白い妖精の像。 おそらく白色が、グランドクエスト達成報酬とされている『高位種族アルフ』を指し示す色なのだろう。 これだけで見れば、確かに華麗だ。
……けれど、どうしてもGMの性格から暗い意味を邪推してしまう。 あの男は昔から他人をこき下ろしてばかりだった。 猫被りも上手かったけれど、そういう性格だと分かって側から見ていれば、その言動の端々に性根が漏れていた。
そう、例えばこの扉なら――
まるで、高位種族が妖精を見下しているように。
まるで、届きそうで届かない空へと手を伸ばしている様を嗤っているように。
――確かめようのない想像を頭を振って払い、大扉の前に立つ。
アインクラッドのボス部屋同様、押せば開くのかと手を伸ばしかけると、右側の像が重低音の声を発した。
『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』
それと同時に目の前に現れる、グランドクエストへ挑戦するかを問うウィンドウが出現する。
勿論、迷う事なくイエスのボタンを叩く。
『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』
無駄に延々と響くエコーが消えるよりも先に、大扉が鈍い摩擦音を立てながら開いた。
ドームの内側は、完全な暗闇。
その奥からは、無機質で――何処までも重苦しい気配が漂っていた。
「……一応聞くわ。 覚悟はいい?」
「ハッハッハ。 私以上にキマッてる目ぇしてる娘の言う台詞じゃないわよ?」
「…………きっとアレよ。 暗い所だと瞳孔が開く暗順応よ」
「えぇー?ほんとにござるかぁ?」
「殴るわよ」
そんなやり取りをしていると、目潰しでも狙っていたのかとツッコミたくなるほど唐突にドーム内に光が満ちた。 内側には、無機質さから滲む気味の悪さすら一周回ってどうでもよくなるほど真っ白なドームが広がり、その頂点には、輪っか状の装飾がなされたゲート。
そして、ゲート周辺の天井の一部分が盛り上がり、水滴の様に垂れる。 垂れた雫は落ちる事なく四肢と羽を備え、奇怪な咆哮と共に全身純白の鎧で堅めた騎士に似た何かに成る。 あれがガーディアンなのだろう。 数は十体ほど。
……それなりに距離があった筈だけれど、照明が点いた直後でここまで見えているとなると、暗順応の可能性はないなぁ。 いつの間にそこまで堕ちていたんだろう。
冷静な、感性が少女のままな『明日奈』がそんな事を考える。 尤も、最早どうでもいい事だけれど。
涼やかな金属摩擦音が二つ。 引き抜かれた大剣と細剣の切先は、一切の躊躇なく、寧ろ嬉々として振るわれる。
「さぁ――蹂躙するとしましょうか!?」
どちらが言ったか分からないその言葉を切っ掛けに。
一瞬で地面を置き去りにして、一番手前に居たガーディアンに向けて変則的な『リニアー』を捻込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇
「――ブッ飛びなぁ!」
重たい金属音と共に、両手剣を上段に振り上げたマヌケの腹を力一杯蹴り抜き後方で矢を番えていた一団にブチ当てる。 オマケに脚に体重を乗せるべく背後に振り抜いた大剣の柄が、忍び寄っていたガーディアンの顔面にクリーンヒット。
白いエンドフレイムで視線が遮られるが、衝動そのままに振り回し接近していた連中を数体吹き飛ばす。 手応え的に殺しきれなかったが、それは無視。
こっちの状態なぞ知ったことかと仕掛けてくるガーディアンの大群は、一々隙など伺わない。 その圧倒的物量でもって常に前後左右上下の六方向から攻撃してくるのを如何にか身体を捻って躱す。 しかし避けきれずに掠った刃がじわじわとHPを削る。
さっきまで緑だったバーの色が変わったことに舌打ちし、ほぼ密着状態のガーディアンの眼部に肘を叩き込んで強引に大剣を振るスペースを抉じ開ける。
如何にか真っ二つにしてやれば――眼前には、数えるのも馬鹿らしくなる程のガーディアンが。
――数が多過ぎる!
それが、戦い始めて五分で私の脳裏に浮かんだ弱音だった。
膨大な数の敵との戦闘そのものはアインクラッドで経験済みだ。 DKメンバーが揃っている時なんかは、吟唱スキルで呼び寄せた数多のMobを一度に相手取るという超効率即席狩場を楽しんだものだ。
……けど、あの時とは全く状況が違う。 アインクラッドの時は場所を選べる分、ただ目の前だけを気にしていればよかった。 吟唱のバフもあったし、最悪ヤバくなったらスイッチで他の面子と交代することも出来た。
なのに、今は、――
「……らしくないわねぇ」
胸に蟠る寂しさを、ガーディアン諸共剣で振り払う。
未だ遠い天井と、その周囲から蟻のように延々湧き出す白いのを睨み、その隙間を探る。
ガーディアンの大半は大剣を手に私たちを迎撃するべく降りてきている。 その分天井付近は連中の数は少ないけれど、その代わりなのか弓を持ってる奴や魔法を使ってくる無手の奴の割合が高い。
ガーディアン個々のステは低く、素手でも急所に叩き込めばワンパン出来る程度。 ただ気になるのは、そんな低HPの癖して振りが甘いと大剣の一撃では殺しきれない事がよくある事。 斬撃系の攻撃に対して高い耐性でも持ってるのかね? 幸い刺突耐性は並なのか、少し離れた所では連中が爆発四散する音が連続で響いてる。
それともう一つ、厄介な点が。
こいつら、数が取り柄の雑魚の癖して妙に良いAIを積んでる。 戦闘が始まった直後には私とアスナの間に割り込む様に突撃してきたし、こうやって分断された後も、私が無理矢理合流しようとすれば、正面の奴が防御を固めて後ろの奴が切り掛かるなんて連携までし始める始末。 まあ大分拙いし、ガーディアン同士の同士討ちも時々起きてるレベルだから高が知れている。 あ、斬撃耐性は同士討ち対策か。
謎は一つ解けたけど、事実合流に支障が出ているレベルで追い込まれかけているのは否定出来ない。
……アスナちゃんはまだ大丈夫だとして、私はどうするか。 いっそのこと連中を無視して、ゲートまで一直線で行ってみるのもありか。 とはいえ最短ルートはガーディアンが犇めいてるし、迂回しようものなら遠距離組のいい的でしかない。
大剣特有の刀身の幅を生かしてガードしたまま突撃すれば行けるかしら? いや、それよりも――
頭を回す。 確実にゲートに手を届かせる方法を模索する。
テンプレや分かりやすい手で突破できるなら、おそらく一年もクリア出来ていないなんて自体にはならないだろう。 なら飛びっきりの奇策がいる。
誰も予想しない、あのふざけた物量を突破する方法が。
「っと、危ない危ない」
しかしゆっくり考える間もなく、視界を埋め尽くす程のガーディアンが一斉に襲い掛かってくる。
流石に片手間で処理するには厳しいから、思考を目の前の敵に集中。 複数体纏めて殺すほどの勢いで大剣を振れば致命的な隙を晒す事になるから、武器は受け流しだけに使い、攻撃は格闘に限定する。
そうやってチマチマ一体ずつ処理していくけれど、相手の数は全く減らず。 ただ疲れと焦りだけが積もっていく。 突破する為の策も幾つか浮かんだけれど、どれもこれもあと一歩足りない。
……これはマジでゴリ押ししかないかな? HPもスタミナも足りないし、羽の方もそろそろ時間が無い。
下手に撤退しようにも、周りにはガーディアンがギッシリ鮨詰め。 生き残るだけなら最多で六体を同時に捌き続ければいいだけだからまあまだ保つけど、いい加減気力がキツい。 六体同時に戦う事よりも、斃しても斃してもそれ以上の数が湧き続けている事の方がキツい。
何はともあれ、一先ず無理にでもアスナと合流しよう。 背中を気にする必要がなくなる分、多少なりとも楽になる筈。
HPバーを見て、一、二発程度ならモロに喰らっても耐え切れる事を確認してからアスナの居る方向に向けて、全力で大剣を突き出す。
瞬時にそっちのガーディアンはその手に持つ両手剣に身を隠すが所詮雑魚。 刀身ごとガーディアンを一体串刺しにし、更にその後ろに控えていたのもエンドフレイムの爆風込みで数体吹っ飛ばす。
勿論そのままだと背後の奴に切られるから、寧ろそれを利用する。 背中に走る衝撃をわざと喰らって少しでも推進力を得る。 当然のようにそれだけだと包囲を抜けるには足りず、ノコノコ正面を埋めようとやって来たガーディアンの鎧兜の繋ぎ目に貫手をブチ込み、ダンスのターンの要領でさっきまで私がいた空間に投げ込む事で強引に突破する。
ワンテンポ遅れて投げたガーディアンから発生した爆風で申し訳程度の後押しも受け、漸く視界に連中以外のものが映るようになった。 とはいえ消耗と供給の釣り合いが完全に破綻しているこの場所に於いては何処に移動しようにも対して変わらず、寧ろ下手に空いた空間がある分もう見飽きた奴が勢いよくその隙間にスッ飛んで来る。
「いい加減、アンタらの相手は飽きた!」
また足止めを食らって囲まれるのは勘弁。 アスナを囲っている連中、その一番外側に貼っていた奴を掴んで突進してきた奴に投げつける。 途端にアスナを囲っている連中の一部が私に切先を向け、後方にはガーディアンの追加が山盛り。 考えないようにしていたけれど、気分はミツバチに包まれて熱死寸前のスズメバチである。
――まぁ、スズメバチはスズメバチでも、
単騎での戦闘能力はユニーク持ち三人を除けば文句無しにアインクラッド最強クラス、しかも連中をワンパン出来る手段がステゴロのみの私とは違って、彼女の武器はガーディアンの防御に文字通り刺さるレイピア。 しかもダンジョン攻略に口を出さなかったヒースクリフに代わってKoBを率いていた分、大局を見極めるという点では間違いなく私を上回る。
つまり、何を言いたいかと言えば――
ガーディアン一色に埋まる世界。 その一方向から裂帛の気合と共に、鋭利な剣尖が私の顔面スレスレを掠める。 爆煙すらも引き裂いて現れたのは、青い『閃光』。 その一閃は、確かに純白のキャンパスにその爪痕を刻み込む。
「やっほいアスナン調子はどうだい!?」
「煩い! しつこい!」
「うん、まだまだ元気な様で何より!」
うーん、アインクラッドの時に弄り過ぎたかな? ガーディアン相手に大立回りをやってたとき以上の殺気を向けられたっていうかガーディアンごと刺し殺されそうだったんだけど。 このバーサクっ
まあいいや。 一先ず合流には成功した。
アスナを囲うガーディアンが私にリソースを割いたなら、拮抗が崩れるのは当然。 それにあっちもあっちで似たようなことを考えていたのか、想像よりも簡単に合流出来た。 このペースなら――狙える。
幾許かの精神的余裕を取り戻した私は、未だ遠い天井と、その間を埋め尽くす連中を睨む。
ゴリ押しすると決めた以上は押し通る気しかないけれど、だからといってこの壁を突破するのは容易ではない。 ならどうするか。
実はその解答は、アスナの無双っぷりを見て一つ思い付いていた。
いや、正確に言えば、レイピアの切先が私を貫き掛けたのを視認した時、というべきだろうか。 白い鎧を連続で貫く細い金属片を見て私の脳裏に浮かんだ物。
それは――ライフル弾。
力強く、壁を貫く、一発の弾丸。
そして、私たちの勝利条件は、その一発の弾丸をあの頂きに撃ち込む事。
アスナの武器なら、充分な勢いさえあればいけるだろう。 レイピアの特性のままに、あの壁をブチ抜ける。 勢いも、私がSTR全開で振り抜けば初速は確保出来るだろう。
ただ、唯一の問題は、私の作戦をアスナに伝えられるかどうか。 DKの面子なら有無を言わさずブッ飛ばしても即座に対応してくれる確信があるけれど、アスナは分からない。 最悪無様にフレンドリーファイアをするだけで終わるかもしれない。
かといって、長々と説明する時間と余裕まではない。 一言でアスナに作戦を理解させる方法なんて……
そこでふと違和感を感じて、思考を逸らす。
そういえば、刀身に人を乗せて打ち出すやり方を
「……なによ、簡単じゃない」
鼻で笑って、大剣を肩に担ぐ。
最早認識することすら飽きた剣筋が私を襲うが、この体勢からなら防御は無理だろう。 尤も防ぐ気も避けるつもりもないのだけれど。
両手剣の分厚い切先が腹を切り裂くのも放って、アスナに向けて掬い上げるような軌道で全力で剣をふりぬく。 流石の反応速度でそれを認識したアスナが避けようとするのを、叫んで止める。
「アスナっ! 第一層、フロアボス!」
「―――ッ!!」
予想通り。
それだけで回避行動を止めたアスナは、寧ろ膝を曲げて屈む動作をする。
その足の裏に向けて、刀身を思いっきり叩きつけ――
「いっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして、そのまま打ち抜く。
何処ぞの吸血鬼ほどではないにしろSTR偏重型が打ち出したのは、そのステータスを飛行という形で発揮出来るAGI型の閃光。
撃ち抜けない道理などない。
貫けない理由などない。
あの鋼鉄の城で磨かれたその輝きは、どれだけ歪もうと事実として明確な風穴を開けた。
漸くハッキリと見えた天蓋、ゲート。 それは近付くアスナを歓迎する様にゆっくりと開く。
『フヒヒ。 アァ……
――ウマソウダ!』
――ゲートから突如出現した、人の背丈ほどもある巨大な手に握り潰された。
痛覚が大幅に緩和されているVRゲーム内だというのに、聞いているだけで痛々しいボキボキという音が身体を握られたアスナの身体から聞こえる。
「アスナ!!」
思わず飛び出す。 反射的に行動を始めた後で気付いたけれど、不自然に攻撃を止めていたガーディアン供は、表情こそ兜で見えないけれど、確かに、嗤っていた。
まるで、全て無駄なのだと告げる様に。
「――その手ェ、離せ!!」
勝ち目の有無も気にせず突撃する。
邪魔が入らないなら私でも数瞬で詰められる距離を飛び、その手首ごと切り落とすべく刃を振り降ろす。
研がれた刃は、正確に大質量に私の筋力と体重を加算して手に食い込み、
出現した二本目の腕に、敢え無く撲殺された。
――一体、何が起きてる?!
混乱する思考。 無慈悲に輝く【You are dead】の赤い字の向こうで、漸く私たちの前に立ち塞がる敵の巨躯、その全貌が見えた。
――その身体はこのドームやガーディアンと同じ様にその端々まで白く、それでいて赧く。 節々に取り付けられた拘束具の残骸は、その身体を更に恐ろしい外見へと歪に彩る。
体高は確実に三メートルを超えているだろう。 五メートルはあるかもしれない。
何より目立つのは、頭部、こめかみの辺りから生える巨大な角。 それと、紅く輝く眼を持つ顔を半分隠す、鼻輪の付いた壊れた仮面。
その名前は――『
……ガーディアンの大群を退けたと思えば、今度はガチのバケモノが相手!?
声を出せない状況ながら絶叫する。 何よ、このふざけた難易度は!?
だが――絶望は、まだ続いていた。
ミノタウロスがアスナを投げ捨てる。 HPは限りなくゼロで、四肢も完全に折れているというのに、ほぼ気力だけで辛うじて高度を維持する事に手一杯なアスナの目の前で、ゲートが
もう驚く余裕すらない私たちの目の前で、ミノタウロスが、
――その『伝説』を再現する。
『ハテガナイゾ。 オワリモナイゾ。
『
ゲートが遠ざかるどころか、このドームそのものが再編される。
白い色はそのままに、壁は盛り上がり、凹み、新たなダンジョンを作っていく。
ガーディアンすら例外ではないのか、容赦なく飲み込まれていくが、斃れない。 寧ろ無傷のまま迷宮に放たれた猟犬として機能するのだろう。
入り口はあっても出口のないラビュリントス。 神話にすら紡がれた、脱出不可能の迷宮。
……こんなものを、どうやって攻略しろと??
挑んでみなければ分からないだろう。 案外迷路は簡単かもしれない。
けれどそれまでに、なんどこの絶望を味わえばいい?
あのガーディアンの大群を下し。 あの怪物を斃し。 果てはそこにあるの?
もしかしたら私たちは、永遠に終わらないダンジョンに迷い込んだんじゃ――
あまりの自体に呆然とするも、冷酷なアルゴリズムが刻まれた相手は待ってくれない。
最早一歩も動けない程ボロボロであろうと、生きているのなら殺すと言わんばかりに残ったガーディアンがアスナに襲い掛かり、
「――させない!」
その剣は何も裂くことなく、持ち主ごと四散した。
滑り込んで来た
右上から斜め左下に五連撃、続けざまに左上からバツの字を書くようにもう五連撃。 交叉点にトドメの一撃。
アインクラッドの細剣スキルで最も多い連撃を放つスター・スプラッシュを超える
『グゥゥアアァァァァッ!!』
胴体を派手にダメージエフェクトで染めたミノタウロス。 迷宮の構成を一時停止し、痛みを堪える様子の怪物を一瞥すると、彼女は追撃する事なくアスナを抱き、
ふと当たりを照らす光が機械的なものから柔らかいものに変わり――
そこは、ドームの入り口の外だった。
次回予告
うむ、彼此三週間ぶりだろうか。 先ずは待たせた事を詫びよう、ヴラドである。
言い訳も兼ねた近状報告をするならば、イベントが忙しかったという他あるまい。 性格故か、全同人力百万越えや今年の夏に向けて七クラスの種火を保管庫に溢れる程集めたりと、まあそれしかやる事がないのかと言われる程没頭していた故な。
さて。 それでは次回予告といこうか。
最早隠す気のない悪意に迎撃された閃光と毒鳥。
原作を遥かに凌ぐ勢い――具体的には、元は秒間十二体が三十程に増えているペースで発生する敵に、門そのものを物理的に遠ざけ塞ぐ怪物。 そんな強大な敵を打ち斃すすべを求め、彼らは南西へと向かう。
次回、『妖精の騎士、収束す』
……あぁそれともう一つ。
ここ最近、またしても少々忙しくなりそうでな。 次回がいつになるか分からぬ故、待たせる分の埋め合わせとして幕間を書く事を決定した。
何時ぞやと同じようにアンケート欄を作っておく故、答えるがよい。 期限は今月末までとする。
では、また会おう。
※アンケートは終了しました。多くの投票、ありがとうございました。