串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!) 【完結】   作:カリーシュ

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クリスマスSP 誰かに頼る、ということ

 

 

 

 

 

――2025年 12月24日

 

 

「――ほうほう。やっぱ伝説の城は凄いネ〜。もうクリスマスだっていうのに領資金がガッポガポじゃんジョン」

 

 ケットシー領フリーリアの最奥。良く言えば放牧的、悪く言えば泥とレンガと草しかない首都に唯一見栄えの良い尖塔と旗がセットで生えている領主館の最上階。

 そこが、(アリシャ・ルー)の、この世界での主な住処だった。

 ――三ヶ月ほど前の大型アップデートで追加された、彼のデスゲームの舞台『アインクラッド』。その知名度と集客性は抜群と言う他なく、古参は勿論、新規のケットシープレイヤーからの上納金も中々の額になっている。

 この調子なら前々から計画していた飛竜以外の大型種部隊も作れるかしらんと皮算用すべく、ウィンドウから電卓を呼び出そうと左手を振って――

 

「……うにゅ?」

 

 振るよりも先に、メッセージ着信という形で現れた通知に指が触れる。

 目の前に現れたその内容は、『領内で他種族が戦闘態勢に入った』という領主特権でシステムから送られてくる警告メッセージ。

 

「勘弁してくれニャー。今ジャックちゃんはルーマニアだし、竜騎兵組も大半アインクラッドにinしてるっていうのにー」

 

 文句を言いつつ、領内ならケットシーにダメージは入らないし、模擬戦かもだし、別に放っといていいかなー……と不貞寝しようにも、そうは問屋が卸さなかった。

 案外近い所でやっているのか、ケモ耳も含めて四つある耳が外から聞こえる戦闘音を聞きつける。ついでにどう解釈しても模擬戦とは思えない悲鳴と罵声もオマケだ。切実に要らない。

 こうなったら久し振りに戦うかと、重い腰を上げて空に飛び立つべく窓を開ける。

 

「――ぐぼぁっ!?」

 

 空からゴツいフルアーマーのノームが降ってきた。腹からは、白銀に輝く剣が生えている(・・・・・)

 

「……あー、察し」

 

 無情にも爆散するプレイヤーを無視して窓を閉じる。誰がどんな訳で戦っているのかと、その勝敗を察した私は、クールにソファーで寝っ転がって待つことにした。

 

 果たして数分後。

 降り注ぐ轟音に建物が破壊不能オブジェクトで良かったとこっそり胸を撫で下ろしていると、一際大きな爆音を最後に静かになる。思ったより時間がかかった事に心配して、もう一度窓から外を見ると、そんなものは所詮杞憂であると言わんばかりの黄金の女性レプラコーンがベランダに降り立った所だった。

 

 

「――少し手こずっていたようだけど、メタられたのかい?

それにいつもの事だけど、領主が積極的に外に出るってどうなのさ」

 

 光を反射する金髪に目を細めながら、本来の私(シャルル)として友達に話しかける。

 

「まあそんな処よ。

――全く。彼らだって態々ヨツンヘイムの隠し出入り口を探し出して張り込むなんてマネをする暇があったなら、素直に鍛えた方が建設的でしょうに」

 

 そんな私に合わせてか、彼女も、誰もが羨み、輝きに手を伸ばす『女帝(ALO最強)』からただの少女(ラン)へと切り替わる。

 

「久し振りね、シャルル」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それでさ。エリスったら例の世界樹攻略に参加出来なかったのがよっぽど悔しかったのか、『燃やしてやるわ!』ってあちこち襲撃してたらしくてさ。まあユージーンが随分と手を回していたようで、あまり被害は出てないけど」

 

 読みかけのメッセージやら資産表を片付け、彼女がリアルで好んで飲んでいる紅茶に近い味の物を淹れる。

 ――コップ片手に私の駄弁りを静かに聞くランとの関係は、概ねこんな具合だ。アリシャ()と女帝様としてならまだしも、シャルル()とランとしてなら尚更に。

 私が喋り、彼女はそれを薄く微笑みながら聴き続ける。ここに彼女の妹のユウキも加われば完璧だ。

 

 

「……そういえば、ユウキとは最近どうなのかしら?」

 

 そんな流れでアリシャとしてのサラマンダーの友人の話をしていると、珍しくランの方から話題を振ってくる。あのカップルの話に触発されたのだろうか?

 

「ここ数ヶ月はあんまり、かな。元々私たちが領主なんて立ち位置に就いてからは、一緒に冒険する機会も減ってたし。

……それに、新しい友達も増えたようだし」

 

「そう」

 

 ALOを初めてすぐの頃。三人で一緒に空を飛び回っていた頃の思い出に想いを馳せていると、だいぶ間を開けてからふと、「もう五年も経ってるのよね」という呟きが執務室に広がる。

 

「……そうだね。私と、キミたち姉妹が出会ってから、もうそんなに経つのか」

 

 ――忘れもしない、2020年の4月。

 私たちの運命が激変した、あの日の事は、――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はーい、それじゃあ自己紹介いってみよー」

 

 若干ふっくら感のある眼鏡をかけた女性教員の指示に沿って口を開こうとした。

 

「あっ……、あ、あああのっ、私、」

 

 けれど、長い期間他人と話す事などなかった――ましてや、三十人前後とはいえ大人数の前で喋る経験などなかった私は、緊張のあまり、盛大に吃りながらもなんとか自身のフルネームを告げられた。

 

「シャルル…… シャルル・ボーマン、です。

どうか……よ、よろしくお願いします……」

 

 貧血と緊張でクラクラしながらも、最低限自分の名前を口にする。そんな私に気をつかってくれたのか、はたまた色白金髪外国人の転入生の登場に色めき立つ生徒を落ち着かせようとしていたのか(直前に目玉焼きが云々と泣きながら語っていたのも、もしかして狙ってやったのだろうか?)、新学期が始まって直ぐにやってきた転入生の背景について、軽く補足した。

 

「ボーマンさんは心臓の病気でずっと日本の病院に入院していたの。みんな、仲良くしてあげてね」

 

 

 

 ……それから先に起きた事は、今の私には想像に難くない。髪が綺麗だとか、前は何処にいたのだとか、そんな定番の質問が波の様に押し寄せてくる。

 当時の私ではそんな彼らを受け流すことなど出来ず、子供特有の容赦の無さもあって圧倒され、パニックに陥っていた。

 生まれつき心臓の弱い私は、それだけの事で意識が遠のきそうになって――

 

 

「――はいごめんねー、ちょっと通してー!」

 

 ――そんな私に、手を差し伸べてくれた子がいた。

 集まったクラスメイトをどうにかして散らし、目の前が暗くなりかけていた私の手を引いて、廊下まで連れ出してくれた。

 

 

 

「あ、ありがとう、ございます……」

 

 全面ガラス張りの校舎だからか、目蓋を透かす光量は変わらず。けれど暖かい温もりが、四月のまだ寒い空気で冷えた私の手を包む。

 落ち着いた事で、漸くまともに見える様になった私が握る手の先を見上げると、そこには黒髪の二人の少女がいた。

 

「そんなに緊張しなくてもいいよ。ボクたち、クラスメイトなんだから」

 

 ――にっこりと、太陽の様に微笑む少女。

 その笑顔に照らされた時。私は、ボーマン家の中で、一番無能だと影で言われていた私は。陳腐な表現を使うなら、そう。

 

「――ボクは紺野木綿季!ユウキって呼んで!で、こっちは姉ちゃんの藍子(あいこ)!よろしくね、シャルル!」

 

 

 ――救われたのだろう。

 私を、ただのシャルル・ボーマン(一人の少女)として見てくれている彼女の笑顔に。私は、救われた。

 

 

 ――それからの日々は、大変だけど、素晴らしいものだった。

 長い入院生活の所為で勉強も大変だったし、体育なんて持っての他。準備体操だけで貧血で倒れてしまった。外見の物珍しさで多少男子生徒からは人気があったけれど、それだけ。寧ろそれが原因で一部の女子からは毛嫌いされる程だった。

 

 でも、木綿季たち姉妹は違った。いつだって私の味方でいてくれた。

 特に、活発で、誰とでも仲の良い木綿季が、なんであんなに私を気遣ってくれるのか。その時の私には、気付けなかった。

 ……気付く事が、出来なかった。

 

 

 

 

 

 ――そうこうしている内に季節は巡り、春の息吹は夏の猛暑に蹴落とされ、そんな暑ささえ薄まる秋頃。

 新学期が始まってから暫く経ったある日の事。唐突に、崩壊の兆しは現れた。

 

「……?なに、これ?」

 

 始まりは、小さな物だった。

 その頃の私は、フランスの実家が用意した部屋に住んでいた。幸い家事は、同じように実家の方で雇ったハウスキーパーがやってくれていたけれど、そんな所を友達に見られたくなかった私は、毎朝木綿季の家に寄ってから学校へ通っていた。

 

 ……だからこそ、気付いてしまった。いつもとは違う妙な気配が、木綿季の家を包んでいた事に。

 

「――ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃって。シャルル、おはよう!」

 

「え?あ、うん。おはよう……」

 

 でも、木綿季の笑顔からは曇りを感じとれなくて。藍子も眠そうに微笑むだけで。

 そこだけは、それから先も私が好きな日常のままだった。

 

 

 ……でも、運命というのは、時に何処までも残酷で。

 その違和感の原因は、直ぐに分かった。

 

 

 

 ――ねえねえ知ってた?あの紺野って子、エイズなんだって。

 

 ――あの姉妹には近付かない方がいいわよ。感染されちゃうから。

 

 ――エイズってあれっしょ?Hな事すると感染るんだろ?うっわ、あの姉妹サイテーだな。

 

 

 

 ……無知、或いは中途半端な知識からくる言われなき風評、偏見、差別が、あの姉妹を襲った。クラスの人気者は何処へやら、一転して彼女への評価は、クラスの嫌われ者となってしまった。影口や不謹慎な渾名、物を隠されるなどまだマシな方で、酷い時には――

 ……いや、これは思い出したくもない。

 

 有形無形問わず、小学校高学年の無邪気で無慈悲な頭から生み出される限りのあらゆる嫌がらせ。担任は必死に庇っていたけれど、それでも学校中が敵に回ってしまえば、そこまでだった。

 

 

 ――それでも私は、木綿季たちの味方で居続けた。

 木綿季たち姉妹の身長だと届かない場所に隠された物を探したり、話の通じるクラスメイトにエイズについて正しい知識を伝えたり。それと――

 

 

 ――エイズの治療について。どうにかならないかと調べまわった。

 優秀な妹ばかり見る実家の両親にも白い目で見られながら、何かないかと頼み込んだ。

 

 ……しかし、なんの進展もないまま。無情にも時は過ぎ去り、気が付けば12月になっていた。

 その頃には最早木綿季たちに近付く生徒はいなくなっていて、彼女たちの存在は徹底して無視されるようになっていた。

 私の努力の方も結果は虚しく、薬剤耐性型のエイズを完治させるだけの治療薬は無いに等しい。実家からも音沙汰無し。私に出来た事は、唯々、彼女たちを精神的に支える事だけだった。

 だというのに、木綿季の笑顔は絶えない。

 寂しいはずなのに。辛いはずなのに。彼女は何時だって、精一杯に生きていた。

 

 ……それでも。彼女がどんなに強く在っても。運命というものは、残酷で、どうしようもないものだった。

 

 

 ――冬休みに入り次第、転校する事になった。

 学校でこっそりとその事実を伝えてくれたのは、藍子だった。

 

「て、転校って、」

 

「木綿季が頑張ってるからって、母さんたちも耐えてたんだけどね。昨日、家でちょっとボヤ騒ぎが起きちゃって……いい加減、もう限界かなって」

 

 初めて会った時の優しげな微笑みはもう無くなり。それは、子供のしていいものではない、疲れ切った笑みでしかなかった。

 

 

 ――その後、どうやって帰ったのかは思い出せない。

 気が付けば、自室で泣いていたのだから。

 

 

 

「……なんで」

 

 ――暗い部屋の中で、唯々無意識に問いかける。

 

「…………なんで、木綿季たちがあんな目に遭うの?」

 

 何処までも無意味で、何処までも傲慢な問い。

 探せばありふれた悲劇なのだろう。どうしようもない悲劇なのだろう。

 

 ――だとしても、止まることは出来ない。

 何も出来ないのだと分かっていても。何かをしなければという使命感が、涙と共に溢れ出る。

 

 

 ……でも、どうすればいいのだろう。

 

 己は無能だ。何をやっても妹以下だったが故に、実家から遠ざけられた。

 そんな自分が、何を……

 

 

 

 そんな自己嫌悪と自問自答がループを繰り返す中。ふと顔を上げれば、カレンダーが目に入る。

 クリスマスの日付にはカラフルな花丸が描かれているが、それすらも、今は自身を嘲笑っているように感じた。

 

 

「……お願いします。どうか、誰か――」

 

 

 故に。私は、祈った。祈ってしまった。

 人の終わりをエゴによって否定し。別れを否定する。そんな願いを。

 彼女を救うかもしれない、星の瞬きの様な誰かを、否定し尽くす願いを、口にした。

 

「――誰か、助けて」

 

 

 

 

 

 ――そんな願いだからこそ、だったのだろう。

 

「……? メー、ル?フランス(実家)、から?」

 

 永久に知る事の無い事実だとはいえ。己が願いを棄てた亡霊が、底から押し出したのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――翌日の放課後。

 初めて学校をサボった私は、印刷したメールを握りしめながら、指定された駅の待ち合わせ場所で震えていた。

 

「……大丈夫。絶対大丈夫だから」

 

 血の気が失せている顔をマフラーで隠しながら、時計を数秒毎に確認する。

 相手が一秒でも遅れたら、正気を保っていられる自信がない。希望と恐怖、緊張と不安で、何度も意識が飛びそうだった。

 

 そして、秒針と長針が真上の方向に重なって――

 

 

 

「――十三時ジャスト。フランス人にしては時間に正確ですね」

 

 

 

 ――コツリと、硬質な革靴のヒールが、暗くなりかけた視界の端で音を立てる。

 

「あなた、は……?」

 

「私の名前は、ジル・フェイ。

ビジュテリエ・ア・スフレトゥルイ社社長補佐を務めさせて頂いております」

 

 ――遠くない未来、友人となる銀髪の女性が、私を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、人生っていうのはどうなるか分からないものだね」

 

「? どうかしたのかしら、改めてそんな事言って」

 

 昔を思い返しての呟きは思ったよりも大きく響いたのか、ランが首を傾げながら訊いてくる。

 それに対して何でもないと返しながらも、今こうして彼らと居られる幸せを噛み締める。

 ――ジルから送られた薬は、彼女たちのエイズを未発症状態に抑えている。それどころか検査の度に検出されるウィルスの量も減っているから、完治も時間の問題だと倉橋医師に言われたらしい。

 

 ――だからこそ、だろうか。時折想像してしまう。

 もしも、あの年のクリスマスに、彼女たちを救う事が出来なかったとしたら。どうなっていたのだろうか。

 決して答えの出ない空想。けれど、後悔はしていない。彼女がいる世界に私が生きている。それで、充分だ。

 

 

 

「さてと。ラン、明日のパーティーはどうするんだい?」

 

「そうね。今まではリアルでやってたけど、今度はALOでやるのもいいかしら」

 

 ――気分を切り替えて、未来(明日)の話を藍子(ラン)に振る。相変わらず眠そうな目をしているけど、年相応に楽しそうな声色の返答に思わず頬を緩ませる。

 じゃあ肝心のユウキにどうするか聞こうかとメッセージ欄を開くべく左手を振って、

 

 

「……うん?」

 

 振るよりも先に、メッセージ着信という形で現れた通知に指が触れる。なんかデジャビュ。

 今度もまた通常のメッセージとは違い、届いたのは闇魔法の月光鏡の一種だった。ただし届いたのは基本的に夜しか使えない月光鏡とは違って、いつでも使える代わりに音声のみを、それも繋げるには相手側からの操作も必要な物であった。

 ……まあ結果的には、相手側を確認する事なく即承諾したのがよかったのだけれど。

 

 

『――アリシャ、聞こえてる!?』

 

「ユウキ?どうしたんだい、そんな切羽詰まった声で」

 

 慌てている様子のユウキの声と、その背後から聞こえる大騒ぎに、コップ片手に我関せずを貫こうとしていたランが細めていた目を開く(『女帝』としてのスイッチを入れる)。今にもエンキのエクストラ効果を撃ちそうなランを片手で制しながら、ユウキから状況を聞く。

 

『な、なんでかよく分かんないんだけど、急にアスナが『私がお姉ちゃんです』ってリズたちを殴って。ちょ、助けて』

 

「来たれナピュシュテムの大波よ!これが世界を滅ぼすという事だ!」

 

「ごめんユウキ意味が分からないからもう一回言って?! あとランはお願いだからエンキしまって!!私が泳げないの知ってるでしょ!?もう溺れるのは嫌だよ!猫的にも!」

 

 双剣の柄尻を繋げるランを必死に食い止めながら音声のみのウィンドウに叫ぶと、数度の風切り音に遮られながらもユウキの言葉が聞こえて来る。

 

『アスナたちと話してたらっ!クリスマスの予定の話題になってっ!アリシャを交えて姉ちゃんと過ごすって言ったら、『私も姉になればいいのね!』って。

……ところで、弓を絞ってるような音が聞こえてるんだけど。ねぇまさか』

 

「やっちゃえアーチャー」

 

『ストップ!ストォォーーーップ!!もっと穏便な方法でお願いします!!』

 

 何処までも騒がしいツッコミに破顔しながらも、指笛で呼び出した飛竜に飛び乗る。半分巫山戯て弓を構えていたランも、私たちにとっては馴染み深い細目で後ろに乗ったのを確認すると、飛竜の鎌首を上げさせた。

 

「目指すは空中都市!飛ばしていくよ!」

 

 

 

 

 

 

 









一方その頃

 ――唐突に脳裏に浮かぶは、グルグルお目々の金髪レオタード少女。
 妹に彼を取られたと宣う彼女は、握り拳を構えながらこう囁いた。

『なるほど。好きな人が他の女性と良い仲になってしまった。自分に振り向いて欲しいけど、彼の幸せを邪魔したくないのも本心、と。なら逆に考えればいいのです。
 ―― 家族にしちゃえばいいのだと(貴女が、お姉ちゃんです)

 ――斯くしてこの時、明日奈に(本当にどうでもいい)啓示が降って湧き、辺りは阿鼻叫喚の惨状と化した。
 具体的には、

ファミリーパンチ(貴女が妹です)!」

「そげぶ!?」

ファミリーパンチ(貴女も妹です)!」

「ふんむぐるい?!」

「イヤァァァァア!??」

 シリカとリズを秒殺、満面の笑みを浮かべた『閃光』がガタガタ震えるリーファ(キリトの妹)に迫っていた。誰がどう見ても事案案件である。これはひどい。

「――待った!」

 しかしいつの時代にも英雄がいた様に、現状登場話が二話しかないヒロインにも救いの手が差し伸べられる!

「――アスナ。ボクが相手
私もお姉ちゃんです(ファミリーパンチ)!」
だぅあ!?」

 だがしかし。天啓(狂化)を受けたアスナも止まらず、洗脳(物理)がスレスレを擦る。



 ――今ここに、当の昔に鬱フラグがへし折れているマザーズロザリオが幕を開ける!!――




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