カラビーナは撃ち抜けない。   作:杜甫kuresu

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チョロチョロしてるKarさんはたぬま氏のKar98kのイメージ…………知らない? ググって。戦闘はデフォに戻る。

「ウケない」と割り切って書いたのに、反応がいいと気になる自分が嫌いです。
では本編。センチメンタルなので、センチメンタルな登場人物なのを許して。


3.淑女達は槓桿を起こす

「さて。『武器』を握った感想は如何ですか?」

 

 もう良いから、もう一体の人形に会いに行ってください。カリーナのタブレット越しの声通り、俺達は白い廊下をまた歩く。

 今回は窓から日差しの差し込む暖かな廊下。綺麗な基地の姿が光り輝き、彼女の白髪が光を吸うと星屑のように煌めいている。

 

 初めから思っていたが、彼女は光を浴びてこそ美しく映える。赤い瞳は尚生命力を放ち、その細く白い四肢は魅惑の温かみを帯びていく。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、なんてあまりにも長ったらしい美辞麗句はこういう姿にこそよく似合うだろう。

 

「馬鹿なことを。武器を握ったのは君だ」

 

 振り向く彼女に銀髪がはらりと群れた。瞳が疑問を溜めては一心に俺に訴えかけてきたが、今しがた出したばかりの結論に何の説明をしてみせようという話だ。

――多分、彼女は少しだけ悲しいに違いない。俺があまりにも馬鹿だから。

 

 言葉の真意は何処と無く掴める。彼女は頭が良いのだろう、俺がどういう存在として見ているかが分かっている。だからわざわざそう思えるように、突き放したのだろうし。

 

「そんな顔で見られても結論は一緒だ。俺がなるのは武器を上手く振るう兵士じゃない、人形に指揮を執る指揮官だよ――――――――Kar98k、君は思い上がらない方が良い。自分で思うより、ずっと人間らしいんだよ」

 

 そんな事は本人が一番知っていることも分かる、一週間続くかをあの人が心配した理由も分かった、俺はきっとこれからこの言葉に苦しめられるのを知っている。

 だが、だからと逃げるのは馬鹿者どころではなく大罪人。俺は他ならぬ彼女に怪我をさせる為の仕事に身を置いたことを、叩き込まなくてはならない。

 その言葉が疑似人格だろうと、その身体が紛い物であろうと。

 

 彼女は痛ましいものでも見るように俺から目を逸らすと、申し訳無さそうな顔をした。寂しさを込めたような消え入る声。

 

「…………あなたも、逃げてくれないのですね」

「悪いけどこれで正義感は有ってね。逃げないし、粗末にしたくない」

 

 さて、此処で指揮官が何故長く続かないと思われているかの説明がつく。

 道具でも、自分でもない彼女達に傷をつける在り方に耐えられなくなった。それだけ。

 

 確かに彼女は美しいし、傷つけがたく映るのは確かだ。どんな人間であれ傷ついていい理由はないが、人はよく出来たものを壊すのは殊更に躊躇ってしまうものだから。

 

 だが彼女の今しがたの狙撃、アレは恐らく「普通」ではない。戦場でこそ映える、戦場に立つための才気だ。人形という普遍性の塊に与えられた数少ない才能を、此処で野放しにするのも同様に馬鹿なのだ。

 

「例え俺が逃げた所で最後に君は戦場に立つことを望む。そういう子だ、それは何となく分かってる」

「君の告白には応えかねるが、その純粋な善意には報いる。素人の指揮で実戦に出るのは不満だろうけど、まあこれから頼むよ」

 

 まあ何時かこの台詞が肝心な所で俺を臆病にさせる。我ながらカッコつけには重すぎる台詞だ。

 

――――――――だから何だ。俺はそういう生き方を選んだのだから逃げる気はない。

 あまり大層な御託を並べたからか、Karは目を見開いて固まってしまう。やっぱり、あんまりカッコつけると女の子的には気持ち悪いものか。一応これで一生懸命なのだが。

 

「…………気持ち悪いと思ったらはっきり言ってくれ、俺は変に言葉を選ばれるストロークで死ねるんだ――――――」

 

 俺の言葉が息と共に途切れたのは、決して演出上の問題なんかじゃない。

 こちらに駆け寄った彼女がそのまま俺の顔を胸に埋めてしまったからだ。

 

――正直、頭が真っ白になりそうだった。

 何が人形だ、この温かさは人肌と変わらない。穏やかで優しい匂いも、僅かに漏れる息遣いだって人間だ。

 言い直そう。これが人形だったとして、人間と区別する意味なんて無い。

 

「な、ななっな!――――――何の真似かな、お嬢さん」

 

 破茶滅茶に噛んだ。緊張感がないのではなくて、ショートしたんだよ。

 心細そうな嘆願混じりの声が響く。

 

「嫌、でしたか?」

「嫌ではない、むしろ世界大半の男は望むとい――――」

 

 口を塞ぐように、回された手の力が強くなる。静かにしろとのことだ。

 何故かこの心地よさに覚えが有った、そう遠い昔の話じゃない。思い出せない、すぐにどうでも良くなってしまう。

 

 その手付きが何処と無く割れ物を触るようなのがおかしかった。俺にとっては割れ物は君の方なんだが、そんな事を言うといよいよ気障ったらしいので口は閉じる。

 

「私はあなたが大事です。愛しています、理由は分かりません。でもそう思うのだから、私はあなたに好意が有るものとして振る舞います」

「だからあなたが大事にする私を大事にします。あなたはきっと強いふりをしてくれる人ですけれど、本当は強くありません」

 

 それが事実かどうかはよく分からなかった。敵を騙すには味方から、他人を騙すには自分から。俺はもうその結論がどうであれ、自分が本当は強いのか弱いのかを知るすべがない。

 

 だが、彼女がそういう俺を大事にしようと一生懸命なことだけは伝わった。言葉が嘘ではなく、本当に好意を寄せてくれているというのはとりわけはっきりと。

 

「出来るだけ怪我をしないようにします、出来るだけ冷たくしないようにします、出来るだけあなたが望む私で居ます。さっき、『武器』だと言った時に見せた悲しそうな顔が――――――正直、ちょっと耐えられなくて」

「悲しまなくて良いように、一生懸命頑張ってみます」

 

 その言葉は虚しいくらいに健気で、勿体無いくらい真摯で、事切れそうな程に切実だ。きっと俺が中途半端な宣言をするから、必死で抑えていた何かを零してしまったのだろう。

 

――俺はその好意に答えられない。聡明だから彼女はそれも全部分かっている。俺が堰き止めていたものを吐き出させた、これはかなり重罪だろう。

 馬鹿だった。理由過程の仔細を置いておいて、ともかく確かに俺を想ったその遠慮を振り解いてしまった。無責任とはこの事だろう。

 

 仕方なく背中に手を回した。無責任も徹底すれば意味が有るだろう、こうやって俺はまた馬鹿になる。

 温かく、それでいてあんまりに細くて普通の女の子。やっぱりそれの真贋を図る意味がない。

 

「…………言葉は見つかんなかったよ。ごめん、出来るだけ頑張ってみるな」

 

 馬鹿者め、やはり無責任ではないか。

 でも妙な飾り気のある言葉より、俺にとってはよっぽどマシだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というか、何で俺が好きなの? これは真面目に聞いてるんだが」

 

 さて。先程の一件だが、これは暗黙の了解でなかったことになった。俺はもう納得が行ったのだが、彼女にも羞恥心というものが有るみたいなので適当に合わせている。

 

 という訳で今更後悔したのかやや頬を朱に染めたKar。彼女の返答は、落花生みたいにへにゃへにゃになった口からアワアワと零れ落ちていった。

 

「きゅ、急に何を言い出すのかしら!?」

「いやだって分かんねえから。ダメ?」

「勿論構いませんわよっ!」

 

 捨て鉢な様子で快諾する辺り、彼女は妙に人が良い。いや、人形が良い?

 俺は彼女との会話の上で、主導権を剥奪されて久しい没落平民であるわけだが、今のKarは突けば揺れるし触れば慄く普通の少女のようだ。いわゆる俺に巡ってきたチャンス、吉良吉影だってこれを逃せば俺をどやしてくるのではあるまいか。

 

――とはいえ連打するとゲーム機は壊れてしまう。まずは顔を覆ってオタオタと顔を振っている彼女から楽しもう、これには変態紳士もニッコリである。

 

「で。照れてないで理由」

「え、えっと…………その――――――本当に言わなくてはなりませんか?」

「何を今更? 男に二言がないなら女にだって、人形にだって二言はないだろ?」

 

 えげつない屁理屈を俺は最高に嗜虐心で満ちた顔で言ってのけた、それは確認するまでもなく明白だ。

 唸っては恨めしげな視線を送る紅玉紛いのきらびやかな瞳、羞恥に小さく食まれた薄紅色の唇、不健康など心配しようもなく桃色に染まった透き通る肌の頬。

 

 俺は今、ジャパニーズカルチャーのKAWAII文化の尽くを食いつぶした満漢全席ディナーにありついているに違いあるまい。あまりの豪華さに今は遠き秋葉原は再び経済崩壊を起こし、世界に広まったHENTAIオタクウイルスは信じられない活性化をするのでは無いのか。これはまずい、今すぐ何とかしなくてはな。

 

――お巫山戯は止めようじゃないか、悪かった。ナイフをディスプレイに突き立てていてはまるで不審者だから辞めるのをお勧めする。誰って、貴方のことさ。

 しばらく庇護欲噴出オーラ全開だった彼女であるが、ようやく言葉にする決心がついたらしい。俺もせせら笑うような思考ばかりだが、実際意中の相手に「好きな理由は?」と問われると今のより相当トチ狂った躊躇いを見せるとは前置いておく。

 

「……………本当に、一目惚れです」

 

 ボソリと、言いにくそうに顔を逸らされてしまう。

 

「やめよう、此処から先は俺の心臓が危ない」

 

 要らないことを言ったので、途端に一転攻勢である。やはり俺は没落平民、会話ですら主導権など握りようがなかったか。

 何時も通りに微笑んでいるはずの口端は、やはり小悪魔チックな嗜虐心が漏れている。

 

「ですが後付ならば幾らでも」

「待って!」

「私、良いところを見つける才覚は世界有数と自負しておりますのよ?」

「止まれ!」

 

 フォレスタルもドン引きの暴走特急Kar98kは止まらない。これは不味いぞ、非常に不味い。

 逃げ場を探して視線を右往左往させる俺はみっともないこと100点中100点ながら、救世主が居るには居た。

 

――例に漏れず美人だ。明るいブラウンの髪をハーフアップで纏めていて、エメラルドグリーンの瞳は優しげに下がった目尻のおかげで尚穏やかな色合いに魅せる。

 士官学校にシンパシーの有る青い制服に清楚さを暴力的なぐらいに振りまく白いロングスカート。革のブーツときちんと整った服装ではあるのだが、その表情はとても柔らかくて温かい印象が強い。

 

 これは美女の祭りだなと見惚れていると、その女性は廊下の向かいからこちらに歩いてくる。俺を見るなり控えめに笑ってみせたのが仕草としてあまりに完璧過ぎた、俺は完璧にのぼせ上がる。

 

「あら、春田さん。御機嫌よう」

「――――――え、待って!? この人ジャパニーズ!? リアリー!?」

 

 思わず大声が出てしまう。何処からどう見ても外人じゃないか、一体何を根拠に「ハルタ」等とベリージャパニーズに呼ぶことになる。

 Karの呼称に面食らう俺にハルタさんなる女性は口元を抑える、笑いを堪えているようだ。

 

 一頻り笑って収まったのか、指で涙を掬い取ると俺に綺麗な礼をしてみせた。

 

「すみません。言われてみればそうですね、今のは私の渾名なんです」

「ああ、そうなんですか…………柄にもなく大声出しちゃいましたよ」

 

 Karとは全く別ベクトルの落ち着いた声音に、俺も声のトーンがすぐに落ち着いた。

――何と言えば良いのだろう。彼女は俺の知っている女性の中で、おそらく一番淑やかなのではなかろうか。Karはまあ例外だ、彼女は何だかんだと子供っぽいから。

 

 Karが話に置いていかれたと思ったのか、俺の服の裾を引っ張って不満げに此方を見る。ハルタはその様子を見るなり自己紹介に入ってくれた。

 

「遅ればせながら。スプリングフィールドと言います、名前はご自由にお呼び下さい」

「え、ああ貴方がもう一体の人形でしたか、合う暇が省けましたね。俺は今日から入った指揮官です、宜しくお願いします」

 

 スプリングフィールドは最初こそ握手をしようとしたが、すぐさま嵌めていた白い手袋を外して手を差し出し直す。

 もう一々言葉にするまでもないのだが、一体こんな女性規格で兵器を造って上は何を考えているのだ。本気で正気を疑いつつもその手をしっかりと握る。

 

 もちろん一般女性――――――というかそれよりも理想に近い人肌の感触。冴えない男が触れて良いような手ではない。

 手を離す辺り、ようやく俺がその手触りから意識を反らせた所でスプリングフィールドの表情が困ったようなものであることに気づく。

 

「あ、えと。ちょっと触り方がいやらしかったですかね?」

「指揮官さん!? まさか春田さんに浮気しようだなんて――――――」

「妙な危機意識を持たないでくれ。万が一で聞いただけだし、ましてや君を妻に迎えた覚えもないぞ俺は」

 

 横で何やら騒がしい我が細君であるが、一体彼女は何を思って浮気だなんて言ってのけたのやら。

 目を潤ませながら俺の手を掴むとブンブンと振り始める。こっちを見ろということだろうか。スプリングフィールドの方もKarに構ってやって欲しい、と此方を見てくるから若干いたたまれない。

 

――――――分かった。付き合えば良いんですね、分かりましたよ。

 

「………………何」

「指揮官さん。私は他の人形と話すことを禁止するほど束縛するつもりはありません! ですが、最後は私を選んでいただくようお願い致しますわ!」

 

 えー。

 それは世界各国で男が一番口に出しにくい台詞にランクインしているであろう、「本当に大事なのは君だけだよ」的なアレをご所望なのか? えー。

 

 ロマンチストとか乙女チックとかを貶すような旧時代の趣味は持ち合わせないが、現実の男に求めるのはナンセンスじゃないのかね。それが例え傾国の美女であれ、世界三大美女のアナザータイプであれ。

 スプリングフィールドもこの様子には手慣れたもので、ニコニコと此方を見守っているだけ。地味に逃げてますね貴方。

 

「約束してくださりますか?」

「いや、俺は所詮ただの男だかr――――――」

「やくそくしてくださりますか!?」

 

 とうとうポロポロ泣き出す寸前である。何事だ、俺は一体どんな罪を重ねているんだ。

 思わずメシアことスプリングフィールドにアイコンタクトを送ってみたが、返事は恐らく「合わせてあげてください」の一点張り。おのれ、我が天命もここまでか。

 

 うぅ、と何処と無く呻くような声に振り返るとうるうると瞳を揺らすばかりのKar。一体唯の男に彼女が何を求めているのかは良く分からないし、正直個人的にはこの表情をずっと眺めていたくも有る。

 何だろうな、ところで俺は悪者なのかね? 片や落涙寸前で俺の手をしっかりホールドするアルビノライクなお嬢様、片やその様子を何を考えているのかわからない朗らかな笑顔で見守っている淑やかな若奥様。

 

 俺が一体何をした、俺が悪いのこれ? 悪いのは天運だよなこれ。

 

――――――ええい、ままよ。

 ヤケになった俺は後で後悔に自室で枕を投げまくる哀れな冴えない男の姿を頭に過ぎらせつつ、Karの両肩を持って顔を突き合わせる。

 

「分かった分かった! 俺の一番は君だけだ! 浮気すれども心はいつも君の手の中に在りぃ!」

 

 この俺の悲痛な宣言、S09担当基地のほぼ全域に聞き及んだらしい。

 この後、俺は「モーゼル卿」なんて笑えない渾名で呼ばれることになるのだがそれはまた別のお話ということで。

 

 

 

 

 

 

 

「しきかんさんは、すぐ、うわきしようとするみたいですわね」

 

 スプリングフィールドが出してくれたクッキーをぱくぱくと食べながら不満たらたらなカラビーナ嬢。もう一度聞くが、俺が一体何をした?

 クッキーはかなり美味い、食べながら喋ろうとするKarを責める気が起きないぐらいだ。スプリングフィールドがやんわり窘める姿は何処と無く姉妹に近い。

 

 一緒に淹れてもらった珈琲を飲む。はしたないのは分かっているがごくりと結構飲んでしまった。

 

「もうそれで良いんだが、ところで春田さんはもしかしなくてもライフル持ちかな」

「そうですね。数週間前に此処に着任した所です」

 

 えらく最近だ。というかS09地区は一体どういう方針で回っているのかも俺はよく知らない、これはそのうちちゃんと理解するべき事項だろう。

 

――――――それにしても美味しい。プレーンクッキーしか食べない偏食だが、これには腕が出る。彼女がちゃんと料理の出来る人形だというのがはっきり分かる。

 

「話が逸れますけど、いやこれ逸れるくらい美味しいです」

「有難うございます。お口に合うか少し不安だったんです」

 

 ちょっと小さく笑うスプリングフィールド。俺の口元をチラチラと見ていたから、そんなことだろうとは思っていたのだ。

 しかし安心した。人形というのが誰も彼もがKarのようだったら、俺は1週間で胃を痛めて入院してしまう可能性が高かった。スプリングフィールドは至って普通の大人の女性という感じだし、まあ程々にKarの相手もしてくれている。

 

――まあ相手、とは言ってみたがまあ二人は普通に仲が良いらしい。受付さんを懐柔したクッキーはスプリングフィールドの仕込みのようだし。

 

「…………ん? となるとKarちゃんは何時から此処に居るんだ」

「え? 大体…………そうですね、S()0()9()()()()()半年ぐらいでしょうか」

 

 半年か。多くの指揮官を葬った魔性と見て相違なし。

 彼女とよく似た人物をどこかで見た気がするのだが、少なくとも半年よりは前に会った。一体彼女は誰なのだろうか…………話が逸れたな。

 

「そう言えば、春田さんはさっき何を気にしていたんですか? ほら、握手した時」

「あ、ああそれは…………敬語が少しくすぐったい気がして」

 

 頬をかいて少し視線を下に逸らすスプリングフィールドに少しだけドキリとさせられる。意識的にやっているのではないだろうが、どうにも危険な人だ。

 ジロリとKarが此方を見たので無実を訴えて両手を上げた。ワタシナニモシテマセーン。

 

「しかし、そうか。敬語が嫌なら辞めるよ」

「そうしてもらえると助かります。指揮官は上官ですから、何だか少し変に思って」

 

 まあ上官のつもりで接してないんだけど。

 特にこの人は凄く「年上の人」という印象が頭に強く残る雰囲気で、敬語を抜きに喋るのは少しだけ緊張する。

 

 昼も中頃の良い陽気につられて話が逸れ始める。

 

「それにしても、上品な女の子二人と放課後ティータイムとは俺も随分華やかになったもんだ」

 

 どこかの高位な辺境伯の令嬢じみた銀髪の少女に、育ちと気立てに自信有りと見えるたおやかな仕草の特徴的な麗しい美女。この二人だけでも我が世の春と言えなくはないし、その優雅な休息の姿は名のある画家に遺させればきちんとした芸術的価値を生み出せるだろう。

 一方俺が冴えない男なのがキズでは有る。多分品評家にはこう語られるのでないだろうか。

 

――この只ならぬ優雅な淑女達の休息を淡々とした筆致で描いたこの作品は、一見非現実じみた世界観を醸し出すように思われるかもしれません。ですが横にありふれた男を同時に描くことで確かに「日常」に落とし込み、また見るものが庶民であろうと「日常である」と思わせる説得力を生み出しているのです。

 

 自虐的? そりゃそうなる、この二人がとても美しいのは事実だ。まあこんな品評を書く失礼な輩がいるならば俺は遠慮なく末代までタンスの角に小指をぶつけやすくなる嫌がらせじみた呪いを遺すつもりだが。

 

「ふふん、そうでしょう。もっとそういう風に私の好意を恭しく受け取って欲しいものですわね」

「その発言に上品さはないが、見目だけなら今の所俺の知る世界で一番上品で美しいと思うな」

 

 特に彼女の特筆すべき点はその真っ直ぐで純粋な紅染めの瞳だろう。彼女はまっすぐと人を見て言葉を交わそうとするものだから、その吸い込まれるような蠱惑から並大抵のことでは逃れられない。

 

 本来まっすぐと生きることはそれだけで褒められる(それが無責任という問題は置いておいて)ものであるはずだが、彼女に限ってはその合わせ技が魅了の類の魔術に該当してしまうので褒められない。もっと違うものに向けるべきものだろう。

 

 俺はあまり口が良くない方では有るが、褒める点は褒めるつもりだ。それは意識的にしている。

 Karはあんまり直球で言ってしまったからか、スプリングフィールドの方に顔を逸らしてしまう。さらりと白髪の間から見えた耳は林檎のように真っ赤っ赤。

 

「そ、そうですか。当然ですね!」

「君はもう少し落ち着けば、俺よりももっと良い男を引っ掛けられる。良い子なんだからしっかりしてくれよ?」

 

 この後、Karが俺に話題を振らないどころか顔も向けてくれなかった。何故だ。




ボクは好意を言葉にすることが苦手で、本当の意味で人を好きになったことがありません。ですから今回が薄っぺらく見えたか、空想に見えたなら豊かな経験をしたのだと思います。誇ってください。
好ましく見えた人は不器用なので、不器用なりに好意の塊をぶつけてください。

後、自分では面白く見えないので感想とかくれると有り難いです。ボクは貴方の言葉が知りたい。
質問はないのでKarさんは収録終わり。お疲れ様。

匿名は旧い名前です。作品に似合っているし、ユーザーと繋げると温度差でお客さんが風邪引いちゃいますから。
活動は「とほくれす」で発信しちゃうので、動向が知りたい人はそちらへ。ボクはこんなキャラではないですが同一人物です。

ライフルばかりなのは趣味とストーリーの兼ね合い、ところでスプリングフィールドさんは書くのが凄く難しい。王道を通り越して深いキャラになっている好例といいますか。
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