オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお

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竜王国での初挑戦

 やってしまった……

 エンリはモモンガの開いた〈転移門(ゲート)〉を通りながら、先日のやり取りを後悔する。

 

 竜王国がピンチだから、泊まりがけで助けに行く。そんな事を言うモモンガとネムに、最初は危ないから駄目だと言った。

 

 

「困っている人がいるのに、見捨てるわけにはいかない」

 

 

 過去に命を救われた私は、それを言われたら黙るしか無かった。

 それでも心配だったので、それなら私もついて行くと、つい言ってしまったのだ……

 

 それを聞いたモモンガとネムは、家族旅行と言わんばかりに、色々と準備をしだした。

 今思うと、やけにキメ顔で言われた気がしないでもない。もしかして騙されたかもしれない。

 

 最近、骨の表情が分かるようになってしまった私は、大きな溜息を吐いた……

 

 

(ふぅ、エンリが思ったより早く納得してくれて良かった。あの国には罪悪感が半端なかったから、見捨てたくなかったんだよなぁ。罪滅ぼしにチャチャっと国を救って、三人で観光しよう!!)

 

 もう既に仕事が終わった後の、観光に希望を膨らませているモモンガ。

 竜王国に観光出来る場所など、今はほとんど無い事に気付いていないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「女王陛下、リ・エスティーゼ王国のエ・ランテルより、予てから依頼していた冒険者が来たようです」

 

「おおぉっ!! 遂に救援に来てくれたのか!! ランクはなんじゃ? オリハルコンか? もしやアダマンタイト級の冒険者か!!」

 

「期待に添えず、申し訳ありませんがミスリルです」

 

「お、おう…… ミスリルか…… 腕は良いのだろうが大丈夫か? それで、何人来てくれたんじゃ?」

 

「三人です。『黒い疾風』という冒険者チーム一組だけです。ちなみに正確に言うと、冒険者は一人でもう一人は使役魔獣。あとの一人は一般人です」

 

「一般人は何しに来たんじゃ?! というか少なすぎるわ!!」

 

「陛下、落ち着いてください。彼らはなんと、骨と幼女と村娘ですよ? この国はもう大丈夫ですよ……」

 

「安心できる要素が一つも無いわぁ!! 宰相、お前現実逃避しとるだけじゃろ?!」

 

 

 竜王国の女王ドラウディロンと宰相は、ひとしきり騒いだ後どうするべきか考える。

 どうせ一人の冒険者にできる事など、高が知れている。おそらくビーストマン達を撹乱し、数を減らすくらいはできるだろう。

 救ってくれるならやり方は任せるとぶん投げることにした。

 

 

 

 

 

 

 戦士ロールは飽きたからと、黒色の地味なローブを纏ったままのモモンガ。

 一応、冒険者チームの代表であるネムが依頼を受け、救援に来たことをそこら辺に立っていた衛兵に伝える。三人は衛兵達が戻って来るのを、竜王国の門の前で話しながら待っていた。

 

 

「ローブ姿での冒険は久しぶりですね!!」

 

「モモンガ様、鎧姿に戻らなくていいんですか?」

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)だとバレたら、問題になるかと思って今まで偽装してたけど、意味無かったからな」

 

 

 エ・ランテルにいる時はまた鎧姿に戻るつもりではいるが、アンデッドの時点で相当目立ってしまうのでこの国では気にしない事にした。

 鎧よりもこっちの姿の方が楽でいいんだと言うモモンガに、エンリはそういうものかと流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方達の判断にお任せします』

 

 

 勝ったな。

 女王陛下に謁見したモモンガ達は、直々にこのお言葉を頂いた。

 現場の判断に一任させてくれるとは、中々思い切った判断をする女王だとモモンガは思っていた。

 

 

「さっそくビーストマンを追い払って来るよ。今回は流石に危ないから、ネムはエンリと待っててくれ」

 

 

 モモンガとしては、ぶっちゃけ危険は無いと思っている。

 しかし、戦場に子供を連れて行くのは教育的に良くないと、待っててもらうことにした。

 

 本当は一人で竜王国まで来るのがベストだったのだろうが、モモンガ一人で行くと確実に大騒ぎになる。

 助けに来た冒険者だと言っても信じてもらえなかっただろう。

 

 

「えー、モモンガ様、一人で行っちゃうんですか?」

 

「えっと、私達はどうすれば……」

 

 

 頰を膨らませた不満げなネムと、困ったような顔をするエンリ。

 ネムが微塵も不安を感じさせない辺り、対称的な二人である。

 

 

「まぁ、二人だけにしとくのも心配だから、護衛を置いていくさ」

 

 

 エンリの不安に気づいたのか、モモンガは二人を安心させるように言う。

 

 

「何気にこの世界で使うのは初めてか……」

 

 

 ボソリと呟いたモモンガを中心に、10メートルはあろうかという、巨大な立体魔法陣が浮かび上がる。

 ドーム型に展開された魔法陣の模様は常に変わり続け、見たことも無い文字が出たり消えたりを繰り返していく。

 

 他国のど真ん中で起こった神秘的な光景にネムは大興奮し、エンリは絶句した。

 

 

「超位魔法!! 〈天軍降臨(パンテオン)〉!!」

 

 

 獅子の顔、4枚の羽根、光り輝く鎧。光とともに現れたその天使は炎を宿した槍と盾を持ち、モモンガに跪いた。

 この天使がいればどんな厄災からも護ってくれるだろう。そう感じさせる程の存在が、なんと6体もいるのだ。

 

 

「よし、特に変化は起きていないな。門番の智天使(ケルビム・ゲートキーパー)よ、この二人を護衛せよ」

 

 

 短く命令を下すモモンガに、それをビーストマンに突撃させればいいんじゃないのかと、エンリは思わずにはいられなかった……

 

 

 


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