オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお

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ヒーローのやり方

 竜王国の築いた砦のはるか後方、集まったビーストマン達は突撃する時を今か今かと待っていた。

 その数はなんと約10万である。

 

 切っ掛けは以前、竜王国に侵攻していた時のことである。

 突如現れたアンデッドに、その時侵攻していた一つの部隊が皆殺しにされたのだ。

 それを見ていた他のビーストマン達は本能的に察したのか、即座に撤退した。

 

 そして、その情報から過去にビーストマン達を恐怖のどん底に陥れた、最恐最悪のアンデッド魂喰らい(ソウルイーター)を思い出した。

 そのアンデッドは魂喰らい(ソウルイーター)ではなかった様だが、念には念を入れることにしたのだ。

 一時的に侵攻を止め、時間をかけて確実に勝てる戦力を集めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビーストマンの事情なんて全く知らないモモンガは、〈飛行(フライ)〉の魔法を使いながら、敵地のど真ん中に向けて進んでいた。

 

 

(一人で出掛けるのもなんだか、久しぶりな気がするな…… この世界に来た最初の頃以来か……)

 

 

 そんな前の事では無いが俺もあの頃は無茶をしたもんだと思いながら、どうするかを考える。

 出来ればあまり殺したくは無い。

 いくら敵とはいえ皆殺しにしてきましたなんて、ネムやエンリには言いたくなかった。

 

 ビーストマンの軍勢の上空に着いた時、あの頃より随分と数が多いことに気づいた。

 

 

(そうだ!! これだけの数がいるんだから、一部をビビらせて撤退させれば周りも便乗して帰るかも!!)

 

 

 最初に来た時も周りのやつらは撤退していったことを思い出したモモンガは、これは名案だと、自画自讃する。

 適当に恐怖を煽る特殊技術(スキル)か魔法を使えば、殺さずとも十分だろう。

 

 敵を殺さず勝利する。

 

 まさに子供が思い描くヒーローのようじゃないかと、敵地に降り立ち特殊技術(スキル)を発動する。

 

 

「〈絶望のオーラⅠ〉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガはすっかり忘れていた。

 

『嫉妬する者たちの顔面』

 

 効果はソロで戦う時に全ステータスが50%アップし、敵が増えれば増えるほど強くなる。

 モモンガにとっては、外す事のできない呪いの装備。

 

 今、モモンガは一人。

 そして敵の数は10万。

 ユグドラシルではゲームであった為、敵の数には当然制限があった。

 しかし、この世界に制限などあるはずも無く、効果も多少変質し魔法や特殊技術(スキル)にまで影響を及ぼしている。

 

 モモンガが軽くビビらすつもりで放った、〈絶望のオーラⅠ〉がビーストマン全軍を包み込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 ビーストマン達はなりふり構わず、走り出していた。

 逃げなくては!! アレは挑んではいけないモノだ!! 戦うという次元の相手では無い。可視化された死、そのものである。

 逃げ出すビーストマンを止める者など、一匹もいない。

 

 結果、10万のビーストマンは一斉に撤退していった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 


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