オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお
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骨にコミュニケーションは難しい

 竜王国の女王ドラウディロン・オーリウクルスと宰相は頭を抱えていた。

 

 

「セラブレイトのやつが死んでしまったそうじゃな……」

 

「はい、兵達も死体を確認しており、死亡は確定です」

 

 

 宰相は努めて冷静に答えるが、内心ではこの国にもう戦える兵が残っていない事に焦っていた。

 セラブレイトはアダマンタイト級冒険者であり、この国では一番の戦力といってよかった。

 また、セラブレイトは女王の子供体型に惹かれるロリコンで、財政の苦しいこの国にとっては女王に謁見させるだけで安く使えるという最高の人材でもあった。

 

 

「今まで陛下には子供形態になって子供用ドレスを着ていただきましたが、今となってはもう使い道も無いですね」

 

「なんじゃと?! ワシがどんな思いでこんなヒラヒラの服着て、アイツの相手をしてきたと思っとるんじゃ!! あのねちっこい視線は鳥肌もんじゃぞ!!」

 

「いいじゃないですか。ヒラヒラを着てねちっこい視線を我慢するだけで、命かけて戦ってくれるんですから。国民は物理的に食べられてるんですよ、それに比べればマシです」

 

 

 宰相は辛辣に言葉を返すが、ここで諦めるわけにもいかないので話を続ける。

 

 

「現状なぜかビーストマンの侵攻は止まっています。回ってきた情報によると、突如現れたアンデッドがビーストマンを見たこともない魔法で吹き飛ばし、それに恐怖したビーストマンが撤退していった様です」

 

「アンデッドに救われる事になるとはの……」

 

「おそらくそのアンデッドがセラブレイトを殺したんでしょうね、セラブレイトは一切の外傷なく死んでいたそうですから。ビーストマンにそんなことできる奴は居ないでしょう」

 

「そやつが原因か!! しかも外傷無しでセラブレイトを殺すって、どんな魔法使えばそうなるんじゃ……」

 

「今はいない化け物の事なんか考える暇はないですよ。ビーストマン侵攻の猶予が出来たと思って、時間を有効活用するしかないですね」

 

 

 余裕の無い竜王国はビーストマンからの侵攻が止まっている間に他国への救援要請や、砦の修復などを急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜王国から出たモモンガは自身の持つ魔法や特殊技術(スキル)を試しながら、当てもなくさまよっていた。

 途中に人間の住む街などを見かける事もあったが、ユグドラシルの感覚が完全に抜けていなかったモモンガは盛大にやらかしてしまった。

 

 最初にあった人間のセラブレイトと戦闘になってしまったのは、魔法を使ったことが原因だと思い込んでいたのだ。アンデッドそのものは珍しく無いと思い、どうせ顔も隠せないからそのままでいいやと完全に魔王としか言えないローブ姿のままだった。

 

 魔法を使おうが使うまいが、アンデッドはこの世界の人間にとって恐怖の象徴である。案の定、街に入ろうとした結果大騒ぎになり、慌てて逃げ出したのだった。

 

 

「この世界でも異形種は敵なのか…… いや、アンデッドだけ? それなのに顔を隠せないって、詰んでないかこれ?」

 

 

 何をするにしてもまずは情報収集だ!! と、意気込んだ矢先の事だったのでそれなりに落ち込んでいた。

 顔を隠してやり直そうにも顔を隠す装備を付けられない。間違いなく運営からのプレゼントのせいなのだが、あの装備を付けたのは自分である。

 それでも運営への恨み言は消えないが。

 

 

「おのれ運営…… ボッチになんの恨みがあってこんなモノを!! こんな事になるなら、付けるんじゃ無かったな……」

 

 

 新しい世界では積極的に人と関わろうと思っていたモモンガにとっては、痛すぎるペナルティである。

 アンデッドが世間一般では、危険視されているという事だけを知ったモモンガは、今度は同じアンデッドに会いに行こうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カッツェ平野。

 年中霧の立ち込める平野であり、リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国が戦争を行う数日間のみなぜか霧が晴れるという土地である。

 またアンデッドが多発する危険な場所であり、霧からアンデッド反応がする。

 ユグドラシルにもそんな場所はなく、モモンガにとっても興味深い場所だった。

 

 同じアンデッドなら話せるかもと思ったモモンガが、町から適当に進んでいた時に自身のアンデッドを探知する常時発動型特殊技術(パッシブスキル)・不死の祝福でたまたま反応した場所だったが、結果は最悪だった。

 

 

「他のアンデッドって喋れないのか……」

 

 

 同族のアンデッドではあるが、全く意思疎通が取れなかったのである。

 出会ったアンデッドに話しかけてみても、同じアンデッドであるおかげで襲われはしないが、せいぜい呻き声をあげる程度でコミュニケーションをとるのは無理だった。

 実際のところ全てのアンデッドが喋れないわけではなく、エルダーリッチなどの高い知性を持つアンデッドもいる。もし会えたところでモモンガの望むような和気藹々とした会話ができるはずもないので、運が悪かったとも言い切れないが。

 

 

「せっかくの異世界なのにこのままでは誰とも会話ができない!!」

 

 

 自由に冒険しようと思ったのにアンデッドに人権はなく、現地の人と会話も儘ならないとは……… 元営業職として、多少なりとも初対面の人との会話に自信を持っていたモモンガは少し落ち込む。

 

 新しい世界でもボッチ。そんな事は認められないと少々ズレた思考に囚われたモモンガは、亜人種やモンスターなら会話が出来るやつもいるのではと、次なる目標を決める。

 今度はちゃんと当たりを付けて動いてみようと、周辺を探るアイテムを取り出すのだった。

 

 

 





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