オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお

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厨二病は良い人

 ビーストマンは全員逃げ出した。

 これで依頼は完了とばかりに、女王陛下と宰相に結果だけ伝えたモモンガ一行は帰っていく。

 

 ビーストマンは、全員私に驚いて帰っちゃったんだよ。

 ネムとエンリにはそう説明したが、嘘は特に言っていないので問題は無いだろう。

 流石、モモンガ様!! そう言って笑ってくれるネムに対して、エンリは絶対に何かやらかしただろうと、疑惑の目を向ける。

 

 

(やれやれ、人間、大人になると疑り深くなるのかな…… ネムには真っ直ぐ育って欲しいものだ)

 

 

 当初の予定では一泊して観光するつもりだったが、竜王国は観光出来る状態では無いことが判明したので、帰りは王都に寄ってみようと提案する。

 

 エンリもネムも辺境の村出身の一般人だ。中々行く機会も無かったはずだし、悪くはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 〈転移門(ゲート)〉で、リ・エスティーゼ王国の近くまで行き、その後は徒歩で王都まで行った。

 王都を散策するモモンガ達は肩車状態のネム、隣に歩くエンリという組み合わせによって、若い子連れの夫婦にも見えただろう。

 

 もっとも、子供を肩車しているのが骸骨という所に目を瞑ればだが。

 

 

「こんな所でアンデッドが何をしている?」

 

 

 声をかけられた方を振り向くと、仮面に赤いローブという個性的な格好の子供が立っていた。

 

 

「あー、私はこの子に使役されているアンデッドでして、普通に街を散策している所です」

 

「お前からは不自然なほど力を感じない…… 何を隠している? お前の種族はなんだ?」

 

「……骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)です」

 

「お前の様な骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)がいるか!! 真面目に喋る気が無いのなら、力ずくでいかせてもらう!!」

 

 二つ名と同じように、死の騎士(デス・ナイト)って言った方が良かっただろうか?

 目の前の子供はどうやら魔法詠唱者(マジックキャスター)だったようで、両手に魔力を籠め魔法を放つ準備に入っている。

 

 

「ダメッ!! モモンガ様は良い人だから攻撃しないで!!」

 

 

 今にも魔法を放とうとしていたが、こちらを見下ろすネムの真っ直ぐな瞳に一瞬気圧され止まってしまう。

 そこにちょうど通りがかった冒険者が止めに入ってくれた。

 

 

「イビルアイ!! こんな街中で何してるの?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 案内された冒険者組合の一室で先程仲裁に入ってくれた女性、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラはモモンガ達に謝罪していた。

 

 

「先程は仲間が失礼しました。蒼の薔薇のリーダーとして謝罪いたします」

 

 

 なんと、驚くことにあの子供とこの女性はアダマンタイト級冒険者だった様だ。よく見たら首元にプレートが光っている。

 

 頭を下げる女性に、モモンガ達も特に怪我もしていないから気にしないで欲しいと告げる。

 

 

「まったく、どうして急に攻撃しようとしたのよ? プレートが付いてるんだから、冒険者に決まってるでしょう?」

 

「いや、だってあんな堂々としたアンデッドが街にいるなんて、怪しいじゃないか。それに、嘘ついてそうだったし……」

 

 

 弱々しく反論するイビルアイに、お前が言うのかと言わんばかりの視線を向けるラキュース。

 

 

「いえ、おっしゃる通りですので本当に気にしないでください。ある意味正しい対応をされたのは、久しぶりだったので驚きましたが」

 

「本当にすみませんでした。ところで、王都へはどうやって来られたんですか? 失礼ですが、冒険者プレートを付けていても止められたんじゃ……」

 

「ああ、ガゼフ・ストロノーフに話は通っている、って言ったら通してくれましたよ」

 

 

 王国戦士長? ラキュースとイビルアイは少し気になった様だが、特には掘り下げなかった。

 

 その後は5人で軽く雑談していた。内2人は子供とはいえ、女性の中に男が1人という空間は以前のモモンガならば慌てていただろう。

 この世界で人と触れ合い、成長していたモモンガは楽しそうに話していた。

 

 

(人々に疎まれながらも、人を助けるアンデッドの戦士。いいわね!! 黒い鎧に白い骸骨の頭部、最高だわ!! ああ、どんな技を使うのかしら? 死の剣技・暗黒骸骨斬(ダークネス・ボーン・ブレード)とか!!  くっ、闇の戦士に呼応して、私の中の闇の人格が…… 神官でありながら、死霊魔法を使うっていうのもアリじゃない?! 生と死を司る戦士ラキュース、カッコいいわ!! 死霊魔法の勉強してみようかしら。帰ったら禁断の書物(ラキュースノート)に、今日の事は絶対に書かなくちゃ!!)

 

 

 アンデッドのモモンガをあっさり受け入れてくれた原因が厨二病だったなんて、モモンガが知る由もない……

 

 

 

 


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