オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお
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遠隔視の鏡は必需品

 ガゼフ・ストロノーフは部下と共に馬を走らせ、辺境の村を救うべく行動していた。

 村々が襲われていると聞き、王は決断を迫られた。出来るなら万全の状態で向かいたかったが、貴族の横槍が入り、国宝の装備は持ち出せず、出撃が許可されたのも自身と部下を合わせて50名程である。

 

 どう考えても罠であり、このままでは死にに行くようなものだが、忠義に厚いガゼフは王の命でもあるため、無辜の民を救うべく必死になっていた。途中の村に僅かに残った生き残りがいた。

 それらを保護するため、人員を割き、部隊の人数は少しずつ減っていった。今では20人程しかいない。

 

 最後の村であるカルネ村に辿り着いた時、人が襲われている様な喧騒は聞こえない。どうにか間に合ったようだと安堵しながらも声を張り上げる。

 

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長のガゼフ・ストロノーフ!! 王の御命令により、近隣を荒らす帝国の騎士から、村々を救うために参った」

 

 

 

 

 

 

 村長の家に案内され、話を聞いた時、間に合ったと安堵した自分を殴りたくなった。この村は既に襲撃された後だったのだ。

 その割にこの村の被害が少なかったのは、旅の戦士が偶々現れて、騎士達を全て倒してしまったそうだ。

 自分はただの通りすがりだからと、そのまま去っていったという。

 

 

「なんと素晴らしい御仁なのだ、お一人で帝国の騎士達を倒す腕といい、是非とも会ってお礼がしたいものだ……」

 

 

 感嘆の声を上げるガゼフとは裏腹に、村長はその時の光景を思い出していたのか、なんとも言えない顔をしていた。殺された死体の様子を見る限り、どれも鎧ごと真っ二つにされている。

 そんな光景を見た村人からすれば、救われたといえ恐怖する姿でもあったのだろう。

 

 

「――あの、戦士長様。今、この村には働き手となる若い人手が足りません…… 税の免除など、国からの補助は頂けるのでしょうか?」

 

 

 弱々しく、縋るように喋る村長に、何も出来ない自分を責めながら、徴兵は無くなるだろうが、税は例年通りだろうと伝える。

 

 

「そんなっ!! このままでは、村は冬を越すことすら――」

 

「っ隊長!! 周囲に人影が見えます!! こちらを包囲するような動きです!!」

 

 

 息を切らせた部下が、部屋に入ると同時に伝えた言葉に、即座に意識を切り替える。

 

 

「奴らの狙いは我々だ!! 包囲網が完成する前に、一点突破で敵の陣形を破る!! すぐに出撃の準備!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 馬に乗った集団がこちらに来ると知らされてから、モモンガはすぐに村長に口裏合わせをお願いし、適当な家の中に隠れていた。

 

 

「ユグドラシルじゃ殆ど機会も無くて使えなかったけど、こっちでは便利だなぁ」

 

 

 もはや便利グッズ扱いの遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使い、馬に乗ってきた騎士達の様子を伺う。声は聞こえないが、村長の対応からして敵では無いのだろう。

 助けも来たようだし、広場にいる集団に見つかる前にさっさと退散しようとしたモモンガだったが、扉の前でネムに捕まってしまう。

 

 

「モモンガ様…… どこかに行っちゃうんですか?」

 

「助けも来たようだし、もう大丈夫だろう。それに私が見つかったらこの村に迷惑をかけてしまうしな」

 

 

 モモンガの言う事は至極当然の事だったが、行かないで欲しいと、ネムの視線が訴えていた。このまま無視して帰るのもなぁと考えていると、姉のエンリが駆け込んで来た。

 

 

「ネムっ!! 村にまた別の集団がやって来てる!! 戦士長様達が、自分達が引き付ける間に逃げなさいって!!」

 

 

 どうやらまた、厄介ごとのようである。

 とりあえず敵戦力の情報を集めようと、再び遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使う。村から少し離れた草原に、天使を引き連れた、魔法詠唱者(マジックキャスター)と思しき集団が見える。

 そんな敵地に真っ直ぐ突っ込んでいく、戦士長達の姿が見えた。

 

 

(……あれは、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)か? 確か第3位階の魔法で召喚出来るモンスターだが……)

 

 

 弱過ぎる。モモンガからすれば第3位階で召喚出来るモンスター、特殊な能力も無いやつなど、壁にすらならないという評価である。

 

 そんなモンスターを主力にしているのだとしたら、せいぜいレベル20程度かと、強敵では無さそうなことに安堵する。

 モモンガからすれば、どんぐりの背比べだが、この世界では魔法よりも戦士の方が技術として進んでいるのでは無いかと考えた。村にマジックアイテムが無いのも、その推測を後押しした。

 

 モモンガは盛大に勘違いをしているが、この世界でレベル20とは強者に分類出来る。

 最初に会ったセラブレイトや、東の巨人などはこの世界の最高峰と言えるクラスなのだ。それを一般的だと思ったため、ガゼフ達が負ける可能性は低いと見ていた。

 

 

「ふむ、とりあえず大丈夫だとは思うが、念のため、避難はしといた方がいいだろう」

 

 

 武技や、この世界特有の切り札など、万が一が起きた時のため、ネム達に避難を促す。

 

 

「……モモンガ様は?」

 

「私はもう少しここで様子をみるよ。いざとなったら魔法で逃げるさ。――そうそう、言い忘れていたけど、私が魔法詠唱者(マジックキャスター)だと言うのは、秘密にしといてくれないか?」

 

 

 絶対喋りませんと、了承した姉妹を見送り、再び戦場の様子を観察に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場ではガゼフが咆哮をあげながら、武技を連続発動し、天使達を倒していた。

 しかし、部下達は天使を倒し切ることが出来ずに苦戦しているようだ。

 

 

(あれ? 戦士長達が思ったより弱い? これ、負けそうじゃないか?)

 

 

 自らの予想は外れ、戦士の技術が魔法より進んでいたわけでは無いと知る。

 このままでは、戦士長達は敗走し、あの集団は村にまで来る可能性がある。

 

 モモンガはこの戦いに介入する事を決意し、戦場に向かって走り出した。

 

 

 








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