骸骨の魔王と赫灼の焔王   作:エターナルフォースブリザード

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この二次創作にはオリジナル魔法やオリジナル設定が多数登場します。
あとクトゥルフ神話ネタが極稀に登場します。
苦手な方はブラウザバック推奨。


プロローグ 終わりと始まり

 左右を女神と悪魔の彫刻が支える両開きの扉の先には、神域という言葉が似合う空間が広がっていた。

 見上げれば吸い込まれてしまうような高い天井を持つその広大な空間は、白を基調とした壁には誰も気に留めないような細部にまで異様なほどに拘り抜かれた意匠が施されており、訪れる者は息を呑み、呼吸を忘れて見入ってしまうだろう。

 数百人入っても余裕がある広大な空間の入口からは美しい真紅の絨毯が伸びており、左右の壁には四十一の紋章が刻まれた赤い旗が飾られている。

 最奥にある階段の上にはこの空間を支配する者が座すための荘厳な玉座が置かれ、その周囲にはいくつかの影があった。

 

「もうすぐ終わりですね、フォーマルハウトさん」

 

 影の一つ――玉座に座しながら悲し気に言葉を零した者は闇を切り抜いたかのような漆黒のローブを身に纏い、その手には七匹の蛇が絡み合うような形状をした金色の杖が握られていた。

 蛇たちはそれぞれが違う色の宝玉を咥えており、杖全体からは赤黒く悍ましいオーラが漂っている。

 杖を掴む手に皮膚はなく、肉もなく純白の骨が露出している。それだけでなく大きく開かれたローブから覗く胸元も肋骨や背骨が露出していて腹部には大きな真紅の宝玉が浮いていた。

 フードに包まれた頭部も同じ様子であり、本来そこに収まっているはずの物が存在しない眼窩の奥には吸い込まれるような闇が広がっており、中には瞳らしき赤い光が揺らめいている。

 

「そうですねー。最後に二人きりってちょっと運命感じちゃいますよね、モモンガさん」

 

 悍ましい骸骨の姿をした男に朗らかに笑いながら返事を返す者もまた異形の者――ではなかった。

 フォーマルハウトと呼ばれた玉座の横に立つ男は、少なくとも人間の見た目をしている。

 その背格好は中肉中背の青年だ。黒い軍服のような衣服は裾が膝下辺りにまで達しているコート型であり、ゆったりとした形状ながらも機能性と実用性が追及された造りで頑強さも折り紙付きだ。所々には銀色の糸で刺繍が施されており、特に左腕に安全ピンで固定された腕章に施された燃え上がる焔のような紋章は見事と言う他ない。

 邪魔にならないようにと適当に短く切られた髪は赤く、血のような真紅の瞳の奥では小さな無数の光の粒子が縦横無尽に動き回っていて上等な宝石よりも輝いて見える。

 

「ちょっと、変なこと言わないで下さいよ。もしかしてフォーマルハウトさんってそっちの趣味だったんですか?」

「冗談ですよ、冗談」

「……本当ですか?」

 

 骸骨――モモンガは疑うような視線を向けながら、フォーマルハウトから距離を取るように身じろぎした。

 

「本当ですよ。本当ですから、そんな距離取らないで下さいって」

「だったらいきなり爆弾差し出すような発言はしないで下さいよ……」

 

 呆れた様子のモモンガではあったが、そのやり取り自体は嫌いではなかった。

 こういった馬鹿なやりとりは二人の間では長く続けられており、もはや定番と言えるものだ。だからモモンガもそれが冗談だと分かっていたし、フォーマルハウトもモモンガがそういう反応をしてくれると期待してのやり取りだった。

 

「で、モモンガさん。ユグドラシルが終わったら次はどんなゲームやるか決めてたりしますか?」

「いやー、全然決めてないですね」

 

 DMMO-RPGユグドラシル。

 二一二六年に満を持してサービスが開始された体感型MMORPGだ。

 ユグドラシルの売りは他を圧倒するほどの異様な自由度であり、プレイヤーは人間種や亜人種どころかスライムやゴーレムなどの異形種すらアバターとして選ぶことが出来る。その数は七百種類にも上り、さらに別売りのクリエイトツールを使用すれば外見を自由に変更することも出来る。

 凄まじいのは種族だけでなく、職業に至っては基本職と上級職を合わせれば二千種類を超え、魔法は六千種類にも及ぶ。

 意図的に同じ組み合わせにしない限り同じキャラクターを作ることは不可能なほどだ。

 もちろんその自由さはキャラクターメイキングのみに留まらず、クリエイトツールを用いればアイテムの外装や内包データなどでさえも弄ることが出来る。

 こういった高すぎる自由度によってユグドラシルは瞬く間に大ヒットゲームとしての地位を確立した。

 しかし、どんな物にも終わりは来るものだ。

 隆盛を誇ったユグドラシルもサービス開始から十二年が経過し、人口減少やそれに伴う収益の悪化、他タイトルの台頭など様々な要因が重なった結果、サービス終了という憂き目を見ることになる。

 

「俺も決めてないんですよねぇ。まぁ、何か面白そうなゲーム見つけたら連絡下さいよ。また一緒に遊びましょう」

「……えぇ、そうですね。フォーマルハウトさんも何かやるなら連絡下さいよ?」

「そりゃ当然ですよ。嫌だって言ってもスパムメール並みに連絡しますから覚悟して下さいよ」

 

 そう答え、フォーマルハウトは自らの記憶に刻み付けるように目の前の空間を眺める。

 ユグドラシル全土を見渡しても、これだけ造り込まれたギルド拠点は他に存在しないだろう。

 ユグドラシルでも悪名高きギルド、アインズ・ウール・ゴウン。

 異形種のアバターを持つ社会人プレイヤーのみで構成されたこのギルドはDQNギルドとしてユグドラシル全土に名を馳せ、最盛期では所属メンバーがたった四十一人しかいないにも関わらずギルドランキング九位にまで上り詰めたほどだった。

 そのアインズ・ウール・ゴウンの輝かしき偉業の一つが、今フォーマルハウトたちが居るナザリック地下大墳墓だ。

 アインズ・ウール・ゴウンは元々ユグドラシルにある一つのダンジョンとして存在していたナザリックを初見で攻略し、ギルドメンバーの面々が己の持てる技術と想像力、そして課金力によって魔改造を施した。

 その結果、全部で六階層しかなかったものが今では全十階層へと拡張され、数多のモンスターとNPC、性根の捻じ曲がったトラップの数々が設置された難攻不落の要塞へと変貌した。

 かつてアインズ・ウール・ゴウンの悪行に憤慨した他プレイヤーたちが結成した千五百人からなる討伐隊を、たった四十一人で文字通り全滅させた伝説からもその魔改造度合いが知れることだろう。

 そんな誇らしい思い出の場所も、あと数分で消え去ってしまうのだ。

 

「懐かしいな、色んな馬鹿やったなぁ……」

 

 浮かんでは消えてゆく思い出に浸りながら、フォーマルハウトは感慨深く呟く。

 かつて四十一人居たギルドメンバーも、時の流れと共に次々とユグドラシルから去っていった。

 エロゲーイズマイライフを豪語したバードマン。悪という言葉に拘った大悪魔。正義を体現するギルド内最強の聖騎士。動き回るピンクの肉棒。

 どれも愉快で、気の置けない仲間たちだった。

 しかしユグドラシル最後の日である今日、最後まで残っていたのはギルドマスターたる死の支配者モモンガとPK中毒プレイヤーフォーマルハウトの二人だけ。

 二人で毎日のように金策に勤しみ、ギルドの運営資金を稼いで衰退してゆくアインズ・ウール・ゴウンの維持に奔走してきたのだ。いつか仲間たちが戻ってくることを期待して。

 結局その願いは最後まで叶わず仕舞いだったが後悔はない。

 あるのは最後の時までナザリック地下大墳墓を残すことが出来たという達成感と、この場に二人しかいないことの寂しさだけだ。

 

「そうだ、楽しかったんだ……」

 

 モモンガの小さな呟きが虚空へと消えてゆく。

 その言葉はフォーマルハウトの心の内をも表してた。

 辛いこともあった。怒ることもあった。しかし、楽しかったのだ。

 二人は目を瞑り、思い出の中で終わりを迎える。

 そして、その瞬間が訪れた――




小説書くのって思ってたよりずっと難しい。
書ける方本当に尊敬します。
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