骸骨の魔王と赫灼の焔王   作:エターナルフォースブリザード

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第十話 ヴェンデ村

 峻厳な山脈の麓に広がる森を抜けると、いくつかの村がある。

 その一つであるヴェンデ村での暮らしは意外と忙しい。そもそも農村での暮らし自体が牧歌的で穏やかと思われがちだが、案外忙しいものだ。それも田舎であればあるほどに。

 朝は早く起きて、井戸から水を汲まなければならない。

 まず起き抜けのこの労働からしてかなりの重労働だ。井戸から汲み上げた水の入った木桶を抱え、家にある水瓶が一杯になるまで何往復かしなければならない。

 水汲みが終わって朝食を済ませれば、畑仕事や家畜の世話だ。

 家畜と言っても畑を耕すためのもので、食肉用ではない村の共有財産として牛が二頭いるだけだ。

 その牛に餌と水を与え、広い畑を耕し、種や苗を植えて、雑草や害虫の駆除を行う。屈んでの仕事が多いので多くの者はよく腰や膝を痛めるが、それで音を上げるわけにはいかない。何の特産品もない村ではそれだけが貴重な収入源となり得るのだから。

 畑仕事の無い者や女子供は森に入って狩りや採取だ。

 農作業にも使う貴重な家畜を潰して肉にするわけにもいかないため、狩りが出来る者は森の奥に入って兎や鹿、猪などを狩る。狩りの技術を持つ者自体がそれほど多くないため肉は貴重だ。複数頭仕留めた時など軽いお祭りのような騒ぎになる。

 狩りの技術を持たない者や女子供は、村に近い安全な森の入り口辺りで様々な物を採取する。食べられる木の実や野草であったり、水薬(ポーション)の材料となる薬草などだ。特に薬草は街に行けば高値で売れるため、これも疎かにしてはいけない。

 夜になればしっかりと食事を摂り、さっさと寝る。起きていると火を灯さなければならないが、そのためには油を使う。次の日も早く起きなければならないし、そんな無駄遣いをしている余裕もない。

 ヴェンデ村の住民の一人であるミリア・トーレムもまた、そんな日常を送る農民の一人だ。

 くすんだ色の金髪を邪魔にならないように、かつ女性らしさを失くしてしまわないようにセミロングにカットし、左右の髪を一部残して後ろで一つに纏めて縛っている。

 年の頃は十五、六歳ほどだろうか。まだ僅かに幼さを残す顔立ちは綺麗というよりは可愛らしく愛嬌があり、もう少し成長すれば美人になるだろうという将来性を感じさせるものだ。

 動きやすさと丈夫さだけが優先された飾り気のない服は所々に土や埃が付着し、少しだけみすぼらしさ助長していた。そんな衣服に包まれた体は控えめなスタイルであり発展途上であることを思い起こさせるが、成長するかどうかはこれからの彼女の努力次第だろう。

 そんなミリアはごく普通の人間の夫婦の間に生まれたごく普通の村娘だ。

 早朝に起き出して母に代わって井戸に水を汲みに行き、朝食が終われば父と共に畑に出て仕事を手伝う。最近ではもういい年頃なのだからと嫁入りのために母から家事を教わることも増えたし、森へ採取に向かうことも多くなった。

 いつもの光景。いつもの日常。

 だが、その日だけはいつもと違った。

 今日のミリアの仕事は父と共に畑仕事だ。

 風に揺れる麦を踏み荒らしてしまわないように注意して畑に入り、屈んで雑草や害虫を駆除する。長く続けていると腰が痛くなってくるが、休憩は挟んでも放り出すわけにはいかない。

 

「ふぅ、この辺りも終わり……と」

 

 どのくらいそうしていただろうか。額に滲んだ汗を拭って立ち上がり、ぐっと背伸びをしながら呟く。

 既に日は高く上り、真上から照り付ける太陽の日差しが眩しい。夏も終わって本格的な暑さは去ったが、汗ばむ陽気は去ってはくれない。

 ミリアは気分転換をするように辺りを見渡す。風に揺れる小麦畑と村の住人が住まう家々が建ち並ぶ代わり映えのない景色だが、座り込んで土ばかり見ていて疲れた目には丁度良い。

 目に入る麦は黄金色で、穂にはたくさんの実が生っている。もうすぐ収穫の季節、今年は気候にも恵まれたので収穫量には期待出来そうだ。

 収穫量が上がれば収入も増える。収入が増えれば小遣いが貰えるかもしれない。せっかく土と埃と汗に塗れて頑張っているのだから、少しくらい報われてもいいはずだ。

 最後に小遣いを貰ったのはいつ頃だろうかと記憶を探りながら、ミリアは麦を踏み潰さないように畑の中を歩く。まだまだ手入れをしなければならない場所はあるのだ。

 

「……何の音?」

 

 まだ手入れされていないらしい場所を見つけて屈もうとした時、ミリアは余り聞くことのない音を耳にした。

 木が折れるような乾いた音だ。それがいくつも遠く――村の西に広がる森の方で鳴っている。続いて地を踏み締めるような足音がいくつも鳴り響き、ようやく他の村人たちも異変を感じ取って立ち上がる。

 それからすぐに何人もの村人たちが音の鳴るほうから息も絶え絶えに走り出してくる。青い顔をして転びそうになりながら、何かから逃げるように必死に走っている。

 

「ビ、ビーストマンだ!」

 

 逃げて来た村人の一人が叫ぶ。

 それは亜人の名だ。恐怖の名だ。

 人間の十倍もの身体能力を持ち、人を食らう化け物たちの名だ。森に棲む猪や熊、モンスターであるゴブリンすらも歯が立たない捕食者だ。

 茶色の影が叫んだ村人へと襲い掛かった。

 毛むくじゃらの毛皮に覆われた茶色の影は村人よりも一回り大きく、虎のような頭をしていた。深々とその牙を村人の肩へ突き立て、太い腕と足でしがみつくように捕まえる。

 ミリアはビーストマンを見たことがなかった。しかし、その姿と恐ろしさを両親や村の大人たちから語られて知っている。だから目の前の毛むくじゃらの存在がビーストマンだと確信するのにそう時間はかからなかった。

 

「走れ、ミリア!」

 

 離れた場所にいた父の叫びを聞いて、弾かれるようにミリアは走り出す。

 麦を踏まないようにしている余裕などない。育って収穫を待つばかりだった麦を踏み荒らしながら、ビーストマンが出て来た方とは反対の方へと走る。途中であの恐ろしい影が迫っていないか気になって、肩越しに後ろへと視線を向ける。

 

「ひっ!」

 

 短く息を呑んだミリアが目にしたのは地獄だ。既に村人が何人か、あの忌まわしくも恐ろしい影に捕まっている。

 村人たちは牙で食い千切られ、爪で引き裂かれ、その常識外の膂力で地面や壁に叩きつけられている。生きたまま臓物を引きずり出されていたのはミリアも良く知る隣人だ。気さくで人当たりの良い男だったが、その顔はいつも浮かべていた笑顔ではなく恐怖と絶望に染め上げられたまま絶命していた。

 目尻から零れる涙を拭って、必死になって走る。

 父と母は無事だろうか。あんな酷い目に遭っていないだろうか。大丈夫なはずだと根拠のない希望を捨てずに足を動かす。

 

「止まれ、ミリア」

 

 突然目の前を手で制されて急停止する。聞こえた声は父の声だ。

 生きていた、良かったと安堵する間もなく、真剣な表情を浮かべた父がミリアの耳元へと口を寄せる。

 

「ミリア、南へ走りなさい。東側もダメだ、さっきビーストマンの影が見えた」

「お、お父さんは?」

 

 震える声で問い掛けるミリアに答えた父は、笑顔を浮かべていた。

 引き攣ったような、諦めたような酷い笑顔だ。

 

「大丈夫だ。これでも子供の頃は村で一番足が速かったんだぞ? 私は母さんを連れて後から行くから、な?」

 

 ミリアはすぐにそれが嘘だと確信する。

 肩に置かれた父の手は小刻みに震えていたし、笑顔の目尻には涙が浮かんでいた。それでもミリアは無理をして笑顔を浮かべ、頷いてから南へ走り出す。

 家と家の間を抜けて、なるべくビーストマンに見つかってしまわないように。

 生き延びて、生き延びて、近くの街まで行かなければならない。そうして助けを呼んで、父を、母を、同じ村に住む村人たちを助けなければ。

 縦えそれが無理な願いだと分かっていても、それだけを想って足を動かす。

 獣のような鳴き声が背後から聞こえたのは、ちょうど村の出口へ辿り着いた頃だった。

 

「そんな!」

 

 思わず背後へ目を向けたミリアが目にしたのは、三体のビーストマンだった。

 見つかってしまったという絶望がミリアの頭を埋め尽くす。

 絶望に押し潰されそうになりながらどれだけ必死に足を動かしても、ビーストマンたちの足音は消えて無くならない。肩越しに後ろを見ても間に有った空間は狭まりも広がりもせず、一定の距離を保ったまま追いかけてきている。

 絶望と恐怖に混じり、ミリアの心に憤怒が沸き上がる。

 ビーストマンたちは遊んでいた。どれだけ必死に足を動かしても簡単に追いつけるミリアを野兎か何かに見立てて、ゆっくりと追い詰めて心が折れるのを待っているのだ。

 ミリアは心の中で叫ぶ。

 自分が何をした。父と母が何をしたと。

 田舎に生まれた村娘なりに、真っ当に暮らしてきたつもりだ。父と母の言うことをよく聞き、文句も言わずに畑仕事や家事の手伝いだってした。敬虔な信徒というわけではなかったが、毎日食事の前には神に祈りだって捧げてきた。

 罪を犯さず、懸命に慎ましく生きてきたはずだ。

 

(何で! どうして! 神様! 私の何がいけなかったんですか! お父さんとお母さんの何がダメだったんですか!?)

 

 少女の呼び掛けに答える声は無い。

 涙と疲労で顔を歪めながらひた走る。もうすでに足の感覚は無く、呼吸をする度に胸が痛む。全てを諦めて投げ出してしまえたらどんなに楽だろうか。

 そんな思いが頭を過ぎるのと、ミリアが足を縺れさせたのは同時だった。

 

「あっ……ぐぅっ! げほっ、げほっ!」

 

 空中に投げ出された体が強かに打ち据えられる。頭から地面へ突っ込んで、胸を地面にぶつける。肺から押し出された空気が短い悲鳴となって響き、衝撃に咳き込んだ。盛大に地面に擦り付けた顔や腕の皮が剥がれて酷い有様になっていたが、そんな痛みすらも気にしている余裕がない。

 体を起こしたミリアの目に飛び込んで来たのは三つの大きな影だ。

 初めて間近で見るビーストマンの凶悪な姿に息を呑む。心臓の鼓動が早鐘のように鳴り響き、恐怖に体の自由が奪われる。村で見た凄惨な光景が頭の中に浮かび、吐き気が込み上げる。

 

「いや……」

 

 ガチガチとうるさい程小刻みに震える歯の間から漏れたのは拒絶の言葉だ。同時に終わりを感じ取って、堰を切ったように涙が溢れ出す。恐怖と疲労で力の入らなくなった足を動かすが、立ち上がることも後退ることも出来ずに土を蹴る。

 ミリアは願う。

 もしもいるのならば、これからの自らの全てと引き換えに助けて欲しいと。父と母を救ってほしいと。

 これ以上ないほどに見開かれた目が映すのは、毛むくじゃらの腕だ。それは決して神の救いの腕などではない。

 少女の願いは悪意に満ちた笑みを浮かべる獣たちに踏みにじられる。

 この日、少女の神は死んだ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 最初に異変に気付いたのは、中央に立って少女に手を伸ばしていたビーストマンだ。その異変を目にしたビーストマンは動きを止めて、呆けたような表情を浮かべる。両脇に立っていたビーストマンたちも、それに続くように動きを止める。

 ビーストマンたちの視線の先にあったのは闇だ。暗く、深く、どこまでも続いているかのような闇。得体の知れない現象に恐怖し、凍り付いたように動けなくなる。

 闇が地面から噴き上がり、少女の背後で楕円形を形作った。

 

「……え?」

 

 突然動きが止まったビーストマンたちを見て、未だ異変に気付かぬ少女は呆けたような声を漏らす。

 

「うらぁあああああっ!!」

 

 それとほぼ同時に獣のような咆哮が響き渡り、闇の中から何かが飛び出した。

 目が追いつかないほどの速度で飛び出した赤と黒のそれは、勢いそのままに少女へと手を伸ばしていたビーストマンの一体へと接触する。

 その瞬間、たったそれだけのことでビーストマンの上半身が消滅する。消し飛ばされた上半身は辺りに肉片を撒き散らし、下半身だけがそこに立っていた。やがてそれは思い出したかのようにぐらりと動き、地面へと倒れ伏す。

 その光景を見ていた生き残りのビーストマン二人と少女は言葉を失い、それまで抱いていた全ての感情が思考と共に抜け落ちた。

 

「えぇ……」

 

 呆ける三者を前に、その現象を引き起こした張本人である赤と黒の塊――フォーマルハウトは唖然とした表情を浮かべる。

 開かれた<転移門(ゲート)>から見えたのは、酷い怪我をした少女へ手を伸ばすビーストマンと、今まさに襲われようとしていた少女だった。

 モモンガやヴェルフェニアの制止を無視してナザリックから飛び出し、出会い頭に威圧を込めて叫びながら掌底を放った。ガードされても衝撃で押し飛ばし、相手が警戒して距離を取ってくれればいいな程度の気持ちで撃った攻撃だ。

 だが結果、相手はガードどころか何の反応も示さず胸に掌底を受け、上半身が爆散。夥しい量の血とペースト状になった肉や骨だった何かを撒き散らしながら絶命してしまった。その場に形を保って残ったのは下半身だけだ。

 フォーマルハウトは思わず自分の手に視線を向けてしまうが、そこにはいつも通り自分の手の平があるだけだ。コキュートスと戦った時のように炎を纏ってすらいない。

 

(スキルも魔法も使わずにぶん殴っただけなんだけどな……)

 

 フォーマルハウトが放った掌底は、言ってしまえば通常攻撃だ。縦えステータスが戦士職と比べても遜色が無いとはいえ、スキルも魔法も併用していない打撃では大した威力は無い。

 

「フォーマルハウト!」

 

 未だ広がっていた<転移門(ゲート)>の中からヴェルフェニアが姿を現す。

 

「お、フェニ――」

「何をしているこの馬鹿! 勝手に先行して、何かあったらどうするつもりだ!」

「あ、はい……」

「まったく……私を未亡人にするような真似はよしてくれ、本当に」

 

 震える声で訴えるヴェルフェニアの言葉に、フォーマルハウトは罪悪感に圧し潰されそうになった。

 ついユグドラシルの癖で何も考えず真っ先に突撃したが、相手の実力が全く分からない状態では間違いなく悪手だ。一歩間違えば返り討ちにあって、上半身が消し飛んでいたのは自分だったかもしれない。

 慎重に動かなければならないと分かっていたのにこの体たらく。ユグドラシル気分が未だに抜けていないことを自覚したフォーマルハウトは、心の中で溜息を吐きながらヴェルフェニアへと頭を下げる。

 

「その……すまん」

「あぁ、もう気にするな。だが同じことはしないでくれ」

「あぁ、分かってるよ」

 

 ヴェルフェニアの頭に手を乗せ、ぽふぽふと撫でる。

 驚いたような顔の後に抗議の視線が向けられるが、やめるつもりはない。小さなヴェルフェニアの頭はとても撫でやすい位置にあるのだ。

 

「ヴェルフェニアよ、余り期待はしない方が良いぞ。私やたっちさんが言っても治らなかった悪癖だからな」

 

 聞き慣れた声が闇の中から響き渡ると、順番に三つの影が姿を現した。

 初めに姿を現したのはいつも通りの黒い執事服に身を包んだ白髪に立派な白い髭を蓄えたセバスだ。フォーマルハウトに一礼してから速やかに<転移門(ゲート)>の脇へと移動し、跪く。

 次に闇の中から現れたのは戦士だ。その服装はセバスとは対照的に全身鎧(フルプレート)に包まれている。

 棘の生えた漆黒の鎧に全身を隙間無く覆われた戦士は肌の露出が一切無い。腕には鎧と同じ漆黒のカイトシールドが装備され、鉤爪のようなスパイクが付いたガントレットを嵌めた手は、空間を切り抜いたような空虚さを醸し出す、無が形を成したかのような黒々とした巨大な斧を軽々と所持している。たなびくマントは鮮血に染まったような赤で、身に纏うサーコートもまた血の色だ。

 まるで処刑人のような出で立ちであったが、その黒い鎧はフォーマルハウトには見覚えのある懐かしいものだ。そして、角の生えた面頬付き兜(クローズド・ヘルム)の隙間から向けられた金色の視線が戦士の正体を確信させる。

 

(あの斧は真なる無(ギンヌンガガプ)の武器形態か。それにヘルメス・トリスメギストス……ということはアルベドか)

 

 アルベドが持つ斧――真なる無(ギンヌンガガプ)世界級(ワールド)アイテムの一つだ。

 その能力は物体に対する極めて強力かつ広範囲への破壊能力。その破壊は広範囲に渡り、堅固な城砦ですらも一瞬で粉微塵に打ち砕く。

 普段は杖の形状をしているが、武器形態として斧の形状で扱うことも出来る。この場合、対物体への破壊に特化している都合上それほど高い攻撃力は持たず、対生物に特化した神器級(ゴッズ)に劣る。しかしながら、それでも強力な武器となることに変わりはない。

 そしてヘルメス・トリスメギストス。

 それはアルベドに与えられた専用の神器級(ゴッズ)アイテムだ。

 アルベドは暗黒騎士(ダークナイト)を代表とした防御能力に長けた職業ばかりを取得しており、その防御力はナザリック内の全百レベルNPC中トップを誇る。

 その防御力を十全に活かすために与えられたヘルメス・トリスメギストスは三重装甲の全身鎧(フルプレート)で、物理的な強固さを優先されている。その他の力は皆無ではあるが、アルベドが持つスキルに加え鎧の強固さが相まって、その防御力はまさしく鉄壁と呼ぶに相応しいものだ。

 ゆえに彼女はナザリックに数いる百レベルNPCの中でも最硬――ナザリック最強の盾の異名を持つ。

 アルベドはゆっくりとフォーマルハウトへ向けて一礼してから、先に現れたセバスと同じように<転移門(ゲート)>へ向かって跪いた。

 

「ひぃ――」

 

 それが姿を現した時、かすれたような悲鳴を漏らしたのは誰だろうか。最もそれの近くにいた少女かもしれないし、その悍ましい視線を向けられたビーストマンかもしれない。

 闇の中から姿を現したのは闇を切り抜いたような漆黒のローブを纏い、宝玉を咥えた七匹の蛇が絡み付いたて出来たような黄金の杖を手に持った骸骨だった。

 その空虚な眼窩に浮かぶ瞳は血のような真紅であり、炎のように揺らめいて、まるで生者に対する憎しみを滲みださせているかのように淡く光っていた。身に纏う漆黒のローブは胸元が大きく開かれており、そこからは白い肋骨が露出している。腹部には肋骨に守られるように浮かび、吸い込まれるような赤の大きな宝玉が存在を主張していた。

 死を体現した何か――死の支配者(オーバーロード)がそこには立っていた。

 闇から現れた死の化身を前に、少女とビーストマンたちは恐怖に囚われる。逃げなければと頭の中でうるさいくらいに警鐘が鳴り響くが、彼女たちは指一本すら動かすことが敵わなかった。

 平静を保っていられたのは、彼に与する者たちだけだ。

 

(モモンガさんやっべぇ、怖すぎるわ……)

(ふむ、中々格好の良い登場の仕方だ。流石は我らが最高支配者。まぁフォーマルハウトの方が格好良いが)

(流石はモモンガ様。凛々しい御姿に御座います!)

(くふぅ――――――――っ!!!!!)

 

 一人冷静では無かった。

 

「<心臓掌握(グラスプ・ハート)>」

 

 差し伸ばされた皮も肉も無いモモンガの手が、呟きと共に何かを握り潰す。

 たったそれだけのことで、呆然としていたビーストマンの一体が地に倒れ伏した。

 目の前の未知の脅威に対してモモンガが選んだのは、モモンガが得意とする死霊系魔法

の中でも第九位階という高位に属する即死魔法だ。

 初手にこの魔法を選んだのは死霊系統を得意としているということ以外にも、即死効果に抵抗(レジスト)されたとしても相手を朦朧状態とする追加効果があるためだ。

 もしも抵抗(レジスト)されたら、モモンガはこの場の全員を連れて<転移門(ゲート)>へ飛び込んで逃げるつもりだった。

 フォーマルハウトの攻撃でビーストマンが爆散していた様子を見ていたために杞憂だとは分かっていたが、それでも未知の相手への警戒は怠らない。

 

「ふむ……」

 

 倒れ伏したビーストマンを冷たい視線で見下ろしながら、モモンガは自分が完全に人間を止め、肉体だけでなく精神までもアンデッドへと変貌してしまったことを悟る。

 人間ではないとはいえ、人型の生物を殺しても何も感じない。これが人間であった頃ならば、多少なりとも心が動いていたはずだ。

 

「さて、フォーマルハウトさん。そこのビーストマンは軽い実験に付き合ってもらいたいので私が貰ってもいいですか?」

「あぁ、分かりました。好きにして下さい。ちょっと失礼するぞ……よっと」

「えっ、きゃぁ!」

 

 フォーマルハウトはモモンガの提案を受け入れて、固まっていた少女を横抱きに抱え上げる。俗に言うお姫様抱っこの形だ。

 驚いたような視線を向けて来るヴェルフェニアの視線を無視して、モモンガの邪魔にならないようにビーストマンから離れた位置へ悠々と移動する。

 

「な、何なんだお前らは! おい、赤髪の男! お前がこのアンデッドを使役しているのか!」

 

 最後のビーストマンの獅子を思わせる口から捲し立てられた声は聞き取り辛い、低く擦れたような声だった。取り乱したように唾を吐き散らしながら喚き立てている。

 

「この下等生物が! 至高の御方に向かってその口の利き方! 万死に値する!」

 

 激昂したアルベドがバルディッシュを振り上げるが、モモンガはそれを手で制しつつ一歩前に出て口を開く。

 

「良い、アルベド。所詮は獣人だ、構うな。さて、ビーストマン、君には少し実験に付き合ってもらうぞ。なに、軽い実験だとも、すぐに終わるかどうかは君次第だが……まぁ一瞬で終わるだろうな」

「な、何――」

「<雷撃(ライトニング)>」

 

 翳された骨の指先から一条の閃光が宙を走る。

 放たれた青白い稲妻は弾けるような音を立ててビーストマンを撃ち貫いて、悲鳴を上げさせる間も無くその体を物言わぬ消し炭へと変えた。

 モモンガが使った<雷撃(ライトニング)>は第三位階という非常に低レベルの魔法だ。ユグドラシルでは初心者や初級プレイヤーが使う魔法で、正面に稲妻を放ち直線状の敵を攻撃する。

 低位の魔法としては使いやすい部類ではあるが、百レベルであるモモンガたちからすればゴミのような魔法だ。フォーマルハウトほどに属性特化していれば牽制として使えなくもないが、普通であれば使う意味すらない。むしろ僅かとはいえ魔力を消耗するので、使うだけ無駄だ。

 ならばそんな魔法の一撃で消し炭になったビーストマンは、一体どれほど弱いのか。

 警戒は怠らないつもりであったが、流石に拍子抜けとばかりにモモンガは肩を竦める。

 

「まさか第三位階の魔法で即死とは……弱すぎる。ではこれに殺されていた村人たちはこれよりも弱いというのか……」

 

 いや、と首を振って緩みかけた気を引き締める。

 ここにいた三体のビーストマンが特別弱いだけという可能性もある。もしくは攻撃に特化していて、防御力はそれこそフォーマルハウト以下という可能性も捨て切れない。

 それでも失った緊張感を取り戻すことは難しく、モモンガは代わりに警戒心を強めた。油断したせいで死んでしまうのは余りにも愚かすぎる。

 

「中位アンデッド作成、死の騎士(デス・ナイト)

 

 ゆえにモモンガは壁となる使い捨てのモンスターを召喚することに決める。

 それはモモンガが持つスキルの一つであり、アンデッドを召喚するというものだ。

 このスキルは、ユグドラシルでは使用と同時に空中から滲み出るようにアンデッドが召喚されるというものだった。しかし、この世界ではモモンガが予想していなかった挙動を示す。

 宙に生み出された黒い靄が死んだビーストマンに覆い被さる。

 死体に纏わりついた靄は沸き立つように膨張し、ビーストマンの体内へと溶け込んでゆく。やがて靄に完全に包まれたビーストマンは、糸で吊るされた人形のようなギクシャクとした動きで立ち上がった。

 ゴポリという音と共に、今度はビーストマンの口から黒い粘液が溢れ出す。

 溢れ出した粘液はビーストマンの体を覆い尽くし、膨張と収縮を繰り返しながら巨大な影を形作った。

 数秒ほどでビーストマンを覆っていた粘液が崩れ落ちる。中から姿を現したのは死の支配者(オーバーロード)が使役するに相応しい死霊の騎士を思わせるものだ。

 それは元となったビーストマンの姿からはかけ離れており、身長も体の厚みも爆発的に増している。左手には体を覆い隠す巨大なタワーシールドと、右手には本来両手で持つはずの一・三メートルを超える大剣、フランベルジュ。波打つ刀身には悍ましい赤黒いオーラが纏わりついて、心臓の鼓動のように蠢いている。

 見上げるほどに大きな巨体を隠すのは黒い金属で出来て、鋭い棘が無数に生えた全身鎧(フルプレート)だ。血管を思わせる赤い紋様が全身に走っており、禍々しさを醸し出している。兜は悪魔を思わせる巨大な一対の角が生え、顔の部分が開いている。

 そこから覗く顔は薄い皮膚の張り付いた、腐りかけの人のそれ。あるはずのものが無い眼窩の中では、生者への憎しみと殺戮への期待が込められた瞳が煌々と赤く灯っていた。

 

「この村を襲っているビーストマンを殺せ」

「オアァアアアアア――――――ッ!」

 

 主からの命令を受け、死の騎士(デス・ナイト)は嬉々として村の方角へと走り去っていった。

 そこに残されたのは走り去った死の騎士(デス・ナイト)へと手を伸ばし、呆然としている死の支配者(オーバーロード)の滑稽な姿だった。

 

「勝手に走って行っちゃいましたね」

「えぇ、やっぱりユグドラシルとは違いますね……」

 

 ユグドラシルでは特殊な召喚以外は基本的に召喚主に追従して行動する。これは死の騎士(デス・ナイト)もそうであったのだが、この世界ではその限りではないようだ。

 

「俺も何か召喚してみます。中位火精霊召喚、炎精霊(フレイム・エレメンタル)

 

 スキルの発動に従って、空中に小さな火が灯る。火はやがて炎へと成長し、風に逆巻くように炎の渦を作り出した。

 モモンガのスキルと同様に数秒かけて、渦は辺りに火の粉を撒き散らしながらさらに巨大なものへと成長し、やがて一つの形を持つに至る。

 それは煌々と燃ゆる焔の化身。死の騎士(デス・ナイト)にも匹敵する巨体は何もその身に纏ってはいないが、その体は激しく燃え盛る炎で出来ている。その姿は筋骨隆々の大男を思い起こさせる逆三角。その中からは下半身は存在せず、先細りするように細くなった体がゆらゆらと陽炎のように揺れていた。

 半球型と言える頭部には目と思われるつぶらな窪みが二つあり、その中からは真っ白な光りが漏れ出している。口は頬まで裂けているようなほど大きく、人間の子供くらいならば丸呑みしてしまえそうだ。

 

「綺麗……」

 

 賛辞の言葉は少女の小さな口から漏れた。

 少女は体中に付いた傷の痛みも、目の前に佇む骸骨の恐怖も忘れていた。煌々と燃え上がる赫灼の炎の化身だけが彼女の心を動かす。肌に感じる熱波すらも神々しく感じるほどに、炎の虜となっていた。

 こんな人知を超えた美しい存在を生み出し、恐怖を振り撒く恐ろしいアンデッドとも親し気に語り合う、異国の黒い服に身を包んだ赤髪の青年は何者なのか、少女はすぐに思い至る。

 

(神様……炎の神様と死の神様だ……)

 

 少女は自然と祈りを捧げるような姿勢を取っていた。

 今日、少女の神は死んだ。敬虔とは言わないまでも、日々の糧の感謝を捧げていた神は死んだのだ。ならば少女が祈りを捧げるのは何に対してか。

 彼らだ。

 彼らこそが、少女が信仰を捧げる新たな神に他ならない。少女の神は変わったのだ。目の前で佇む青年と骸骨へと。

 そんなことなど露ほども知らないフォーマルハウトは、少女の呟きを耳にして満足そうに頷いて召喚した炎精霊(フレイム・エレメンタル)に指示を出す。

 

炎精霊(フレイム・エレメンタル)死の騎士(デス・ナイト)と共に村にいるビーストマン共を殺せ。ただし村に被害は出すな」

 

 指示を受けた炎精霊(フレイム・エレメンタル)死の騎士(デスナイト)とは対照的に、咆哮などは上げず空中を滑るように村の方へと飛び去って行く。何も言わずに去っていったのは、精霊であるがゆえに声を出す器官が無いためだ。

 その身を作る炎で辺りを無意味に焼き尽くしていない所を見ても、死の騎士(デス・ナイト)より幾分か落ち着きがあるらしい。

 

「おー、本当に行っちゃいましたね」

「まぁ指示したのは私たちなんで……さて、と?」

 

 ようやく少女へと視線を向けたモモンガとフォーマルハウトは目を丸くした。

 そこに居たのは血と土に塗れた怯える少女ではない。膝立ちで胸の前で手を組み、頭を垂れて二人へ向かって祈りを捧げている様は、その酷い状態にさえ目を瞑れば聖職者のようにも見える。

 

「……フェニア、何した?」

「なぜ私を疑う……お前が炎精霊(フレイム・エレメンタル)を召喚した辺りで自分からこうしていたぞ」

「えぇ……」

 

 開いた口が塞がらないとはこのことだった。

 危ないところを助けたのだ、礼を言われるくらいならば分かる。しかし、なぜ祈りを捧げられているのか。泣きながら命乞いをされる方がまだ理解が及ぶというものだ。

 

「あー……とりあえずこれを飲め、治癒の水薬(ポーション)だ」

 

 フォーマルハウトは懐から下級治癒薬(マイナーヒーリングポーション)を一つ取り出して、少女に手渡す。

 少女は妙に恭しくそれを受け取り、やたらと仰々しい礼の言葉を述べてから水薬(ポーション)を一息に飲み込んだ。

 すると、先ほどまでの怪我が夢であったかのように少女の怪我が消え失せた。痛みも無く、痕すらも残っていない。

 

(凄い……やっぱり神様だ……)

 

 意図せず少女の信仰心を稼いでいたフォーマルハウトは、驚きと納得の二つの感情を抱きながら少女を観察していた。

 与えたのは下級治癒薬(マイナーヒーリングポーション)だ。それはユグドラシルにおいて最下級の治癒水薬(ポーション)であり、HPを五十ポイント回復するというものだ。精々第二位階の治癒魔法相当で、フォーマルハウトから見れば大した回復量ではない。

 しかし、少女のそれなりに大きな怪我は完治した。

 これは恐らく、少女の最大HPが少ないからだろう。

 つまりは想定通り、村人たちのレベルは低いと言う事だ。この少女だけ低レベルという可能性も無くは無いが、ただ殴っただけで消し飛んだビーストマン共に虐殺されていた村人が高レベルというのは考えにくい。

 

「よし、治ったな。……ふむ、近くで見ると結構可愛いな」

 

 小さく呟いた瞬間、自分は何を言ったのだと口を押える。

 今までの自分ではあり得ない発言だ。面と向かって異性にこんなことを言えるほど、女性慣れはしていなかった。

 しかし、好意を全開にして伝えて来るヴェルフェニアと接し始めて、急速に女性慣れしていっているようだった。

 

「え?」

 

 幸いにもその言葉は少女の耳へと届いてはいないようだった。

 百レベルであるモモンガやヴェルフェニアたちは、その驚異的な身体能力によってしっかりと耳にしていたが。

 

「あ、いや、何でもない。名前は?」

「ミリア、です。ミリア・トーレムと言います」

「そうか。ミリア、何でお前は俺たちに向かって祈ってたんだ?」

「はい。それは、お二人が神様だからです」

『……は?』

 

 モモンガとフォーマルハウトの声が綺麗に重なった。

 

「貴方、下等生物にしては見る目があるようね」

 

((アルベドさ――――――ん!?))

 

 モモンガとフォーマルハウトは心の声までもが綺麗に重なった。

 フォーマルハウトは助けを求めるようにヴェルフェニアへと視線を向ける。

 

「……ふむ、まぁ当然の反応だな」

 

(フェニアもダメだ! セバスは!?)

 

 最後の望みを懸けてセバスへと視線を向けるも、老執事は無言のまま感慨深く頷いていた。

 

「ごほん! あー、ミリアよ。私は神ではないのだ」

「そう……なのですか?」

「うむ。この我が友フォーマルハウトさんもそうだ。人間ではないが、神でもない。分かったな?」

「は、はい」

 

 モモンガの有無を言わせぬ圧力を受けたミリアは頷いたが、心の中ではモモンガの言葉を素直に受け入れるようなことはしていなかった。

 炎に魅せられた彼女にとって、彼らは紛れもなく目の前に降臨した神であった。ゆえに彼女はフォーマルハウトたちを神ではないとするのではなく、何らかの理由で神である身分を偽っているのだと考える。

 そうに違いない。お付きの黒い鎧を着た女性(アルベド)も、黒いマントに身を包んだの少女(ヴェルフェニア)も二人が神であることを肯定するようなことを言っていたのだから。

 そんなミリアの考えを知らないモモンガは、彼女が納得して勘違いを正せたものだとだと思い込んで話を進めてしまった。

 その小さな瞳に宿る場違いなほどに巨大な信仰心は、未だ消えていなかったというのに。

 

「よろしい。<生命拒否の繭(アンティライフ・コクーン)><矢守り(ウォール・)(オブ・プロテクション)障壁(フロムアローズ)>」

 

 鷹揚に頷くと、二つの魔法を発動する。

 どちらも防御魔法であり、前者は生物の侵入を防ぐ領域を作り出し、後者は弓などによる遠隔攻撃を弱める魔法だ。

 

「そこにいれば大抵は安全だ。それと、これをくれてやろう」

 

 モモンガは懐から取り出したみすぼらしい二つの角笛をミリアの元へ放り投げる。

 

「それは小鬼(ゴブリン)将軍の角笛というアイテムで、吹けば小鬼(ゴブリン)たちがお前に従うべく姿を現すだろう。身を守るためにでも使え」

 

 それだけ言うと、モモンガは身を翻して少女から一歩離れる。

 それと入れ替わるようにして前に出たフォーマルハウトが口を開いた。

 

「んじゃ俺も何か渡しとくか。あー……あったあった、これでいいか」

 

 そう言って取り出したものを、モモンガのように少女へと投げ渡す。

 慌てて少女が受け止めたの物はメダルのような物だ。

 手の平大のそれは漆黒の何かで出来ていた。石で出来ているようであり、金属で出来ているようでもある。ざらざらともつるつるとも言えない手触りをしている。

 表面には真ん中に一本、横向きの線が引かれ、その上に光り輝く球体が描かれている。まるで日の出を表現しているかのようだ。

 裏面には一目で森と分かるような精巧な彫刻が施されていて、その森は燃え盛る炎に晒されていた。

 

「何かあった時は『いあ! いあ! くとぅぐぁ!』と叫んでそれを叩き割るんだ。ただし、そっちの角笛と違って呼び出したものは敵を攻撃してお前を守ることしかしない。だから何でもない時に呼び出してはダメだぞ」

「は、はい! あの、助けて下さって、ありがとうございます!」

「あぁ、気にするな」

「あ、あの、それと、図々しいかもしれませんがお願いします! どうかお父さんとお母さんを助けて下さい!」

「分かった、生きていれば助けよう」

 

 フォーマルハウトが軽い調子で即答すると、少女は涙を溢れさせた。

 

 

「あ、ありがとう、ございます! そ、それと、お、お名、お名前を教えて頂けませんでしょうか!」

 

 フォーマルハウトはモモンガの方を向いた。名乗ってもいいのだろうかと判断を仰ぐように。

 モモンガは別に構わないかと判断し、先に口を開いた。

 

「私の名はモモンガ。我こそが――アインズ・ウール・ゴウンの長、モモンガである」

 

 モモンガの名を聞いたミリアの顔がフォーマルハウトへと向けられる。

 

(名前、名前か……アルベドたちもいるし、暴虐の王を改めさせるチャンスじゃないのか? 俺が自分で名乗っていたと聞けば改めざるを得ないだろ。何か格好いい感じの……赫灼は使いたい……炎、いや、焔……よし)

 

 モモンガに倣い、フォーマルハウトも名乗るべく口を開く。

 ばさりとコート状の軍服を翻し、高らかに。

 

「我が名はフォーマルハウト! 栄光あるアインズ・ウール・ゴウンが誇りし赫灼の焔王、フォーマルハウトだ!」

 

 フォーマルハウトのどこかの役者(アクター)染みた振る舞いに、モモンガは頭を抱えて膝から崩れ落ちた。




 ヴェンデ村とかオリキャラのミリアとか何もかんもが独自設定です。
 農村の暮らしとか完璧に想像だけど、この世界での暮らしはそんなもんだと思っていただけると嬉しいです。
 良く考えたらこれからオリキャラが複数出てくるので、後ほどタグにオリキャラを追加したいと思います。

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