骸骨の魔王と赫灼の焔王   作:エターナルフォースブリザード

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幕間 ヴェルフェニア・セレンルーナのとある一日

「……ん」

 

 カーテンの隙間から差し込む陽の光で、私――ヴェルフェニア・セレンルーナは目を覚ます。

 気怠さが残る体をゆっくりと起こすと、それに合わせて私の体を包んでいた毛布がするりと滑り落ちた。

 私は惜し気も無く肌を晒す。恥ずかしがることはない。ここには私以外の誰も居ないし、私はそうあれと創り出されたのだから。

 それに、偉大にして至高なる創造主にして我が夫、フォーマルハウトに与えられたこの肉体に恥じる場所など微塵も無い。こんなに素晴らしい体を与えてくれたのだと喧伝したいくらいだ。

 もちろん実際にそんなことはしない。最近分かったことだが、あれは実は独占欲が強いらしい。私の裸体が他の男に見られるのが嫌だと言ってくれた旦那様はそれを望まないだろう。

 そういえば、何故ナザリックの男はいいのに外の男は駄目なのだろうか。後で聞いてみることにしよう。

 

「ふぁ……」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら欠伸をして、ぐっと体を仰け反らせるように背伸びをする。

 それから再びベッドに身を投げ出して、未だに消え去らない眠気を追い出すように、枕を抱えてごろごろと転がりながらゆっくりと意識を覚醒させてゆく。

 どれくらい転がっただろうか、ようやく眠気が消え去る。未だ体は気怠さを残していたが、惰眠を貪り続けるのは健康的ではない。人でない私がそういう生活をして体調を崩すのかは分からないが。

 私は人間のような姿をしているが、人間ではない。かといって亜人種でも異形種でも無く、このナザリックには珍しい人間種だ。アウラやマーレの種族である闇妖精(ダークエルフ)のような、人間の近親種と言えば分かり易いだろう。

 魔に傾倒し、魔法を極めんとしたがために人間を止め、魔道に堕ちた者、魔人だ。

 ゆえにその身体構造は人間に極めて近いものの、寿命は無く、所持している種族由来のスキルによって食事や睡眠も必要としない。人間種にしては珍しいスキルを持っていると言えるだろう。

 フォーマルハウトは私の種族について課金種族とか言っていたが、課金という言葉の意味はよく分からない。課金アイテムや課金職業という言葉も聞いた事があるし、何か特別なことを意味する単語なのだろう。

 睡眠の必要が無いにも関わらず、何故寝ていたのかと問われれば、必要が無くても眠ることが出来るからと答える他ない。

 食事の必要が無くとも定期的に何かを食べたいという食欲はあるし、睡眠の必要が無くとも夜になれば眠りたいという睡眠欲はある。同じく食事不要や睡眠不要のスキルを持つ他の種族のことは知らないが、少なくとも私――魔人はそうだ。

 元々が人間であったから、そういう慣習が残っている種族だとフォーマルハウトは言っていた。

 

「ふぅ……さて、起きるか……」

 

 態々声に出して、はっきりとした意思決定を行ってから体を起こす。

 起きて私が最初にすることは、枕元に大切に畳んであるマントを身に着けることだ。

 私が生まれた日に与えられた、大きな黒いマント。生まれて初めて与えられた、創造主からの最初のプレゼント。

 これは何の効果も持っていないし、裾はボロボロに解れている。見た目よりは丈夫で、丈が膝下まであって全身をすっぽりと覆えることくらいしか優れた部分が無く、プレゼントと言うには笑ってしまうくらいに酷い物だ。

 だが、それでもこれは私の宝物だ。あれが最初に私のために用意してくれた、大切な宝物。

 残念ながらこれも、数日後にはここへ置いて行くことになるが。

 首元の紐を縛ってマントを纏った私はベッドから降りて、閉めたままだったカーテンを開け放つ。窓から射し込む陽光が部屋を照らし、私はその眩しさに目を細める。しばらくして光に慣れると、目に飛び込んでくるのは色彩豊かな花畑と、陽光を反射して煌めく湖だ。

 ここは第八階層にして、私の守護領域たる虚無の湖岸。

 第八階層は荒野だ。

 罅割れた大地の上を常に冷たい風が吹き続け、土埃が舞う死の世界。樹々や草は枯れ果てたものが疎らに生えているだけで、あとは所々に岩があるだけの階層。

 そんな場所にあって、虚無の湖岸だけはまさしく別世界だ。

 常に薄暗い荒野の一角にあって、この場所だけは昼夜が存在している。と言っても、第六階層のような星空は見えないが。

 そして、ある場所を境に色彩豊かな花畑が広がり、その下の土も植物の生育に適した豊富な栄養を保有している。領域の真ん中には直径百メートルほどの湖があり、その湖には生き物こそいないが驚くほどに透き通っている。

 そんな美しい湖の湖岸にあるのが、私が普段寝泊まりしている家だ。

 木造二階建ての小屋。

 栄えあるナザリックの領域守護者が寝泊まりする場所としてはみすぼらしさすら感じるかもしれないが、ここがフォーマルハウトから私に暮らす場所として与えられた家だ。ゆえに不満は全く無い。

 

「んっ……はぁ……」

 

 太陽の光を体中に浴びながらもう一度背伸びをして、私は大きな姿見の前へと移動する。

 次にするのは髪の手入れだ。

 私の髪は腰どころか床につきそうなほど長いため、手入れが中々に大変だ。毎朝起きた時と入浴後の一日二回、こうして姿見の前で髪を梳く。

 フォーマルハウトが与えてくれた魔法が込められた大き目の櫛を使って、丁寧に髪を梳かしてゆく。

 鏡を見ながら細部まで確認し、最後に全体の形を整えてもう一度確認する。寝癖やいつもと違う部分が残っていなければそれでようやく完了だ。特別酷い日でもない限りは三十分ほどで整え終わる。

 

「次は食事だな……何を食べようか」

 

 私は朝食に食べる物を考えながら寝室を出て、一階へと向かう。

 階段を降りてすぐに右へ曲がればリビングだ。奥にはキッチンスペースがあり、そこで料理が出来るようになっている。まぁ、私は料理が出来ないし、紅茶を淹れる時くらいしか使わないので余り縁は無い。

 ここでの食事は出来合いの物が殆どだ。

 私は魔法の竈のすぐ横に置いてある、石とも木とも金属とも異なる滑らかな手触りの素材で作られた箱を開く。箱の中には無数の料理が保管されていた。

 この箱は、至高の御方々が食糧庫と呼んでいるアイテムだ。正式名称は教えられていない。

 当たり前だが、大半の食材や料理は長く放置すれば食べられなくなってしまう。

 それを防ぐには<保存(プリザベイション)>の魔法を施さなければならないのだが、この食糧庫は中に入っている食材や料理に<保存(プリザベイション)>の効果を与えてくれる優れ物だ。

 私は食糧庫の中から一品の料理を取り出し、料理を包んでいるラップを素早く剥がす。食糧庫から取り出した瞬間から<保存(プリザベイション)>の効果が切れるため、手早く食べなければならない。すぐに腐るとは思わないが、気分の問題だ。

 引き出しからナイフとフォークを取り出して、料理と共にテーブルへと持っていく。

 少し歪な形をした四人掛けのテーブルで淡々と料理を口へ運ぶ。

 私は最近、こうして一人で食事をする時間が少し嫌いになった。

 以前はそんなことはなかった。領域守護者である以上この地を離れることは出来ないし、与えられた数少ないシモベたちも食事を必要としない者だったので、フォーマルハウトがそのタイミングで現れない限り、一人で食事をするのは当たり前のことだった。

 しかし、なぜだろうか。今は少し嫌だ。

 知ってしまったからだと、私は思う。

 ナザリックがユグドラシルからこの世界へと転移して、フォーマルハウトは私と共に居てくれるようになった。第八階層から出入りする許可も出たので、こちらから会いにだって行ける。

 フォーマルハウトと行動を共にしていれば、必然的に食事も一人ではなくなる。半ばフォーマルハウトの専属メイドと化しているシズや一般メイドたちと食卓を囲むことも多く、ここ数日でいつの間にかそれが当たり前となっていた。

 だから、そう。きっと寂しいんだ。一人で食事するのを味気無く感じてしまうほどに。

 今度は朝から第九階層の食堂に行ってみるのも良いかもしれない。

 

「……ふぅ」

 

 朝食を食べ終えて、短く息を吐く。

 僅かな間食事の余韻に浸ってから立ち上がり、手早く食器を片付けてからリビングを後にする。向かうのは外だ。

 私はこの虚無の湖岸の領域守護者たるヴェルフェニア・セレンルーナ。ならば自らの守護領域が正常かどうか、定期的に確認しなければならない。

 今日は偶々、その確認日だった。

 裸足のまま家の外に出る。三段ほどの小さな階段を降りると足が多少土で汚れるが、特に気にはしない。流石に他の階層などに入る場合は気にするが、それでも<清潔(クリーン)>の魔法を使えばいいだけの話だ。

 花畑を突っ切って、湖の畔へと腰かける。湖の中へと入れた足先から伝わる水の冷たさが心地良い。

 私はその冷たさにぶるりと体を一度震わせてから、指を打ち鳴らした。ぱちんっと小気味良い音が鳴り響くと、音に呼応するかのように湖がうねり始める。凪いでいたはずの湖面は波立ち、湖の中央には小さな渦のようなものが出来ていた。

 渦は五秒ほどの時間をかけて徐々に大きくなる。やがて湖の水全てを巻き込むほど巨大な渦となると、それらは巻き上がるように空中へと踊り出して激しく流動する球体へと形を変えてゆく。

 幾度も見ているはずのその光景はやはり見惚れてしまう程に美しく、空中で舞う大量の水が撒き散らす飛沫が陽光を反射して煌めき、まるで宝石のように輝いている。

 しばしの後、巨大な水球がいくつかの二つの小さな水球へと分かたれた。

 私は激流がそのまま球体となったかのように激しく脈動する水球へと呼び掛ける。

 

「姿を現せ、シモベたち」

 

 私の言葉に従って、二つの水球が弾ける。

 一際大量の水飛沫を辺りへと撒き散らしながら、水球はゆっくりと人型を模る。フォーマルハウトが召喚していた炎精霊(フレイム・エレメンタル)のように下半身が無く、上半身しか存在しない。

 その体は水で出来ていて、筋骨隆々の偉丈夫といった姿をしていた炎精霊(フレイム・エレメンタル)とは真逆の、頼りないほどに細身の体だ。しかし、その体は驚くほど大きく、私の十倍を優に超える巨体を誇る。内包している力の大きさもまた体の巨大さに見合ったものであり、中位精霊(エレメンタル)程度とは比較にもならない。

 深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)。これこそがフォーマルハウトから与えられた、私の数少ないシモベだ。

 そのレベルは九十と極めて高く、階層守護者に次ぐほどの高レベルを誇る。水と冷気の扱いに長けた後衛型モンスターであり、その戦闘能力は極めて高い。この領域の警備戦力だ。

 とはいえ、この者たちが実戦で使われたことはただ一度しかない。

 この階層にまで愚か者共が足を踏み入れた、あの忌まわしき大戦。千五百もの人間種がナザリックへと押し寄せ、その全てが至高の御方々によって駆逐され尽した喜劇。

 あぁ、あの時のフォーマルハウトは本当に格好良かった。貴重なマジックアイテムを湯水のように使い、敵の攻撃に晒された私を何度も救ってくれた。私を狙う敵に怒りを露わにしながら立ち向かってゆくフォーマルハウトの雄姿は今なお鮮明に思い出せる。

 

「……ごほん!」

 

 トリップしかけていた頭を振って正気を取り戻し、目の前に佇む深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)の奥へと視線を向ける。

 透き通るような水で満ちていた湖は見る影も無く、そこにはぽっかりとしたどこまでも続いていそうな暗闇が満ちていた。この暗闇の底には汚水が停滞して淀みきったような悍ましい色をした空間が広がっており、そこに入った者は無数のデバフに加えて<飛行(フライ)>や転移魔法を封じられ、さらに大量の継続ダメージを受けて緩やかな死を迎えるとフォーマルハウトが言っていた。

 実際に、あの戦いの時もここに落とされて戻って来た者は皆無だった。ゆえにこの湖は帰る者の無き虚無へ至る湖と呼ばれ、この領域は虚無の湖岸という名が付けられている。

 ただ、この虚無の湖の底に広がる空間はナザリックの者に対しても無差別にその効果を及ぼすため、深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)たちは平時にはナザリックの者たちが誤って落ちてしまわないよう、湖にその体で蓋をする役割を与えられていた。

 

「何か問題は?」

 

 私が深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)へ問い掛けると、肯定を示すように巨大な体を折り曲げるようにして恭しく頭を下げた。

 これらは言葉こそ話せないが、言語を理解することは出来る。そして、その意思を酷く朧気な思念によってある程度伝えることも出来る。初めはその思念を理解するのに少し苦労したが、今では慣れたものだ。

 問題は起きていないという思念が届いたため、私が頷き返してから元の場所へ戻るように指示を出すと、精霊(エレメンタル)たちが了解の意を告げる。それまでの人型から激しく流動する球体へと姿を変えて、先ほど出現した際の動きを逆再生しているかのような動きを見せて湖へと戻ってゆく。

 数秒経つ頃には大穴が開いていた湖はすっかりと水で満たされ、今朝方そうであったような美しい姿へと変貌している。

 花畑の中央に開いた底の見えない大穴もそれはそれで魅力的だが、やはり綺麗な湖の方が良く似合う。

 私は満足気に頷いてから立ち上がり、次の場所へと向かう。一度に全てを確認出来ないのは少々面倒だが、私のシモベは少ないし、領域自体も広くは無いので大した手間ではない。

 聞けば私と同じ領域守護者のグラントなどは複数階層に領域を持っているため、管理も中々に手間がかかるようだ。

 私は水で濡れた花畑の外周を歩き、景色を楽しみながら次の場所へと向かう。

 辿り着いたのは何の変哲もない、少し開けた場所。私とフォーマルハウトの家とは湖を挟んで反対側に位置する場所。

 トントンと踵で地面をノックをすると、少し経ってから大地が揺れ、私の目の前の地面が花を巻き込みながら盛り上がってゆく。土塊は深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)と同じ程度の大きさまで膨らむと、ゆっくりとその形を変える。

 目の前の土塊は人を象った姿となり、やはりと言うべきか下半身はない。ただ、その下半身は他の精霊(エレメンタル)のように宙に浮いているわけではなく、大地と同化している。

 その姿は寸胴型の体に太い丸太のような腕が生えた無骨なもので、炎精霊(フレイム・エレメンタル)のような炎の輝きも深淵の水精霊(デプス・ウォーター・エレメンタル)のような水の煌きも無く、飾り気がまるでない。唯一それらしい物と言えば、姿を現す時に巻き込んだ色取り取りの花くらいだが、それはこいつの体の一部では無いのでノーカウントだ。

 彼女もまた私のシモベであり、母なる大地の精霊(マザー・アース・エレメンタル)という。

 レベルは九十二レベルで、攻撃能力は同レベル帯のモンスターと比べると低めだが、精霊(エレメンタル)にしては珍しく防御能力が高めでHPも豊富だ。また、高位の森祭司(ドルイド)の力を有しているため、治癒魔法や補助魔法、自然に関する魔法を扱える。

 平時ではその森祭司(ドルイド)の力を活かして花畑が枯れてしまわないように環境を管理し、戦闘時にはその防御力と多彩な魔法を活かした壁兼治癒、補助役となる優秀な存在だ。

 ちなみに精神は一応女のようで、男扱いすると怒って抗議してくる。

 

「問題は無いな?」

 

 私の問いかけにその寸胴の体の上に乗っている、体の割には小さな頭をこくりと縦に振りつつ、思念で問題が無いことを伝えてくる。

 

「では持ち場に戻れ。あぁ、お前が壊した場所はきちんと直しておけよ」

 

 再び頭と思念で了解の意を示した母なる大地の精霊(マザー・アース・エレメンタル)が地面に体を埋めるのを見送って、私は<飛行(フライ)>の魔法を発動する。

 これで私の領域内の確認は終わりだ。

 これが階層守護者や、グラントのように広大な領域の守護者であったり部下が多かったりすれば、中々に大変な仕事になるだろう。しかし、幸いと言うべきか、私の領域は小さい。

 私に与えられたシモベは先ほどの三体のみ。それらにこの小さな領域の危険地帯と環境を管理させているので、そいつらに問題が無いかどうかを聞くだけで済む。

 

「さて、今日はどうするか」

 

 家に着いた私は階段に腰を下ろして一人呟く。

 いつもならばフォーマルハウトのところへと向かうが、今日はそうしない。

 どうやら竜王国への潜入を行う時の装備で悩んでいるようなので、邪魔をしては悪い。

 後から判明したことだが、人間たちの装備は私たちの装備と比較して脆弱なようだった。その等級がどの程度なのかまでは不明だが、私たちが普段使っている伝説級(レジェンド)神器級(ゴッズ)の装備を持ち込むと、良い意味でも悪い意味でも目立ちすぎる可能性がある。

 目立つのにはメリットとデメリットがあるが、正体を隠して潜入しての情報収集という観点から見てデメリットの方が大きいと判断し、倉庫をひっくり返して聖遺物級(レリック)辺りの装備でちょうどいい物を探すとフォーマルハウトは言っていた。

 私はフォーマルハウトほど所持品が多くないので、既に装備の選出は終わっている。見た目も可愛らしく、鏡とにらめっこをして自分に似合う物を選んだつもりだ。きっとあれも気に入ってくれる。

 だから手伝いに行くのも悪くないが、四六時中一緒にいるよりは適度なタイミングで別行動する方が良い。

 ここ最近は毎日決まった時間にフォーマルハウトの下を訪ねていた。だが、今日は行かない。それによって、フォーマルハウトは今日は何故私が来ないんだと違和感を覚えるだろう。

 普段あるはずのものがない。それがその者にとって悪いものであれば、感じるのは安堵だろうが、良いものであれば、感じるのはそれがないことに対する様々な余り長くは感じていたくない感情だ。

 私はフォーマルハウトにとって良いもののはず。ならば、その時フォーマルハウトが次に感じるのはきっと寂寥や不安――私が居なくて寂しい、切ないという感情。

 その感情はあれを揺さぶるだろう。その心の揺れが大きければ大きいほど、次に会った時に私がいることへの安堵も大きくなる。同時にフォーマルハウトにとっての私という存在も大きくなる。

 そして、私にとってのフォーマルハウトという存在も。

 夫婦円満の秘訣は適度に距離感を調節することにあると、私は信じている。

 

「……ん? ふふ、やはり来たか」

 

 <伝言(メッセージ)>を受けた時特有の電子音が頭の中に鳴り響く。

 相手は声を聞かずともわかる。きっと私は今、だらしない笑みを浮かべているのだろうな。

 

「どうした、フォーマルハウト?」

《あ、あぁ、いや、お前が来ないからどうかしたのかと思ってな。いつもこのくらいの時間には来てるだろ?》

 

 私は上機嫌に笑みを浮かべる。もはや予想では無く、私が浮かべているのは間違いなくだらしない笑みだ。フォーマルハウトには決して見せられない。

 

「どうした、寂しいのか?」

《……いや、そんなことは……無い》

 

 嘘だ。若干の間と声音からそれが分かる。

 分かり易い男だ。

 

「ふふ、そうか、残念だ。今日は装備を選ぶんだろう? 私がいては邪魔をしてしまうかもしれない」

《邪魔にはならないと思うんだが……》

「素直に寂しいと言ってはどうだ?」

《だ、だからそんなんじゃ……ごほん! 分かった、今日は来ないんだな?》

「くっくっく……あぁ、今日はやめておこう。せっかくだ、他の階層でも見てみようと思っている」

 

 そんな予定は無かったが、ふと思いついたことを口に出す。

 すまんな、フォーマルハウト。これも円満な夫婦生活のためなんだ。

 だが、実際他の階層のことには興味がある。私が第八階層から出たのはつい最近だし、フォーマルハウトと共にいることが多いから第九階層にいることが多く、それ以外では第十階層の玉座の間と第六階層の闘技場くらいしか行ったことが無い。

 

《分かった。それじゃ、また明日な》

「……ふふ、あぁ、また明日。……愛しているよ、フォーマルハウト」

《っ! お前――》

 

 私は返事も聞かずに<伝言(メッセージ)>を終了する。

 あぁ、愉快だ。きっと今頃は顔を真っ赤にして固まっているのだろう。最近では私が色々としているからか慣れてきているが、存外初心な男のようだしな。

 

「さて、では……そうだな、上から順に、今日はシャルティアのところにでも行くか」

 

 突然押し掛ける形になってしまうが、シャルティアは特別な命令を受けていなかったし問題は無いだろう。都合が悪いようなら出直せばいい。

 私は再び<飛行(フライ)>を発動して、第七階層への転移門へと向かった。目指すはシャルティアの玄室がある第二階層だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 第二階層にあるシャルティアの住居、屍蝋玄室の前に到着した私は緊張から解放されてほっと安堵の息を吐く。

 第一から第三階層は墳墓であり、そこかしこを様々な種類のアンデッド系モンスターが徘徊している。それだけならば全く問題はないのだが、この階層は驚くほどに罠が多い。

 例えば落とし穴や、負のエネルギーによるダメージを与え続ける効果を持つエリア。果てはナザリック内のどこかへ転移させられてしまう転移の罠まで。

 普段この階層で暮らしているシャルティアやナザリックの罠を全て把握しているシズならば問題は無いのだろうが、初めてここへ訪れた私にとっては危険地帯だ。

 罠の位置を把握していないため、闇雲に進むと凶悪な罠に引っ掛かってしまう可能性がある。特にあの領域へと転移させられる罠にだけは引っ掛かりたくない。あれは数ある罠のなかでも凶悪に過ぎる。

 私はある領域守護者を思い出すと同時に、背筋にぞわぞわとした嫌な怖気を覚えて身震いする。

 

「いかん、駄目だ。止めよう」

 

 私は頭を振って、思い浮かべた領域守護者の姿を思考の中から追い出す。

 同じナザリックに住まう仲間なので嫌うのは悪いが、あの姿と奴の眷属たちはどうしても受け入れ難い。直接会ったことは無いが、伝え聞く姿を想像しただけでも本能的に嫌悪感を覚えるほどに。

 流石は至高の御方。私にすら恐怖を与えるような存在を創り出すとは。

 咳払いをして気持ちを新たにしつつ、私は目の前にある墳墓には不似合いなほど豪奢な扉をノックする。

 ノックの後、少しして中から顔を覗かせたのは、シャルティア直属の配下である吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)だ。

 その姿は妙齢の美女。すらりとした長身で、バランス良く発達したスタイルの良い体をしている。肌は白蝋のように血の気が失せた白で、瞳は鮮血の真紅。赤い唇からは吸血鬼(ヴァンパイア)であることを示す、鋭い犬歯が僅かにその姿を見せていた。

 服装は胸元が大きく開いた薄絹の扇情的な白いドレスに、黄金に輝く装身具を身に着けて、靴はハイヒールを履いている。

 基本的に同種であれば同じか極めて似た姿をしているモンスターが多いが、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)は違う。その違いは髪型だ。ロングストレートやポニーテール、ボブカットなど、モンスターの癖に意外と個性が豊かだ。

 私の応対に出てきたのはロングストレートの個体だ。

 

「これは、ヴェルフェニア様、ようこそいらっしゃいました」

 

 私の姿を認めた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)は扉の陰から姿を現し、丁寧な礼を見せる。どうやらシャルティアによく躾けられているようだ。

 

「私を知っているのだな?」

「はい。既にアルベド様より階層守護者様を通して全シモベへと通達がなされております。第八階層虚無の湖岸の領域守護者であり、フォーマルハウト様の奥方様にあらせられる、と」

「式はまだ挙げていないがな」

 

 私は上機嫌に答えながら、もう一度深く腰を折った吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を見やる。

 胸元が大きく開いたドレスから覗くのは、白蝋の如き白い肌とアルベドほどではないが豊かな双丘だ。頭を上げた後に髪をかきあげる仕草もどこか男の劣情を誘う妖艶さを醸し出すもので、私が男か同性でもいける口だったなら手を出していたかもしれない。

 フォーマルハウトはこういうのも好むだろうか。

 見た目は問題無く美しいし、私とは違うタイプの体つきをしている。命令には従順で、万が一フォーマルハウトに危害を加えようとしても、これ程度のレベルでは閨事の最中でだって傷一つ付けることは出来ない。

 さらにはあの変態(ペロロンチーノ)様が創り出した変態(シャルティア)直属のシモベだ。夜の行為についての知識も豊富と見て良いはずだ。

 ハーレム候補としては良さそうだし、一体貰えないかシャルティアに聞いてみよう。

 

「それで、ヴェルフェニア様。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「暇が出来たのでな。シャルティアと茶でも飲みながら雑談しようと思って来た。そちらの都合が良ければだが……」

「畏まりました。それでは、シャルティア様にお伝えしますので、中でお待ち下さい」

「そうさせてもらおう」

 

 吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の案内に従って扉を潜る。

 中に入ってまず感じたのは外とはまるで違った淫靡な空気だ。部屋中に漂う甘ったるい香りは生者に対してバッドステータスを与えるものだと聞いている。たとえそうでなくとも、思わず鼻を覆いたくなるほどにその香りは濃密だ。

 部屋の造りは第九階層に匹敵するほど煌びやかな装飾が施されており、配置されている家具もまたその部屋に相応しい物が並んでいる。

 私はその内の椅子の一つに腰掛ける。

 

「ただいまお飲み物をお持ち致します」

 

 案内してくれた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が部屋の奥へと続く扉から姿を消すと、すぐにその向こう側からぱたぱたと忙しなく走り回る音が聞こえた。シャルティア様をお呼びしてだとか、湯浴みの最中だとか、お飲み物の準備をだとか言う声も一緒に。

 急に押し掛けたせいで随分と慌てさせてしまっているようだ。私は罪悪感から、心の中で少しだけ頭を下げる。

 程なくして私の前に紅茶と茶菓子が準備され、その味を楽しんでいるうちにシャルティアが姿を現した。

 

「待たせてしまったでありんすね」

 

 吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)に扉を開かせて現れたシャルティアはいつもの漆黒のボールガウンでは無く、ゆったりとした薄桃色のネグリジェを身に纏っている。生地はとても薄く、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)同様の血の気が失せた白蝋の如き肌がうっすらと見えていた。

 普段は纏めている長い銀色の髪も下ろされており、完全には乾ききっていないのか、しっとりと湿っている。

 

「いや、それほど待ってはいない。それよりもすまないな、急に押し掛けてしまって」

「構いんせん。個人的に聞いてみたいこともあったことでありんすし」

「聞いてみたいこと?」

 

 シャルティアは私の前に用意されていた椅子に座り、紅茶を一口飲んでから真摯な表情で口を開いた。

 

「フォーマルハウト様から色々なコスプレ用の装備を授かったと言っていたでありんすが、どんな物を持っているでありんすか?」

 

 浮かべている表情と会話の内容が合っていない。

 もっと面倒なことを聞かれると思っていたが、拍子抜けだ。

 

「そんなことか……」

「そんなこととは失礼でありんすね。わた……わらわもペロロンチーノ様より様々な服を与えられているでありんす。チビスケもぶくぶく茶釜さまより与えられているのに、全然そういう方面の話をしたがらないからお洒落に関して話す相手がいないのでありんすよ」

「ふむ……」

 

 要するに同好の士が欲しいようだ。

 とはいえ、私だって衣装を持っていても着回したことはない。フォーマルハウトを悦ばせるという意味で興味は無くもないが、話せることなどアウラやマーレと同レベルだろう。

 

「そういう話をするのは吝かではないが、余り得意ではないぞ? 生まれてこの方、フォーマルハウトに命じられない限りはこの格好しかしたことがない。私よりも統括殿はどうなんだ?」

「アルベドは駄目でありんす。あれはあのドレス以外の服は二、三着しか持っていないようでありんすから。興味も知識もあるようでありんすが、想像の域を超えんせん。タブラ・スマラグディナ様がそれほど服を下さらなかったようでありんすね」

「そうか。それで私か……しかし、今言った通り余り得意ではない。フォーマルハウトが他の御方々と話していた着こなし方くらいしか知らんぞ」

「他の至高の御方々と? 是非教えてくんなまし! モモンガ様のお好みが分かるかも知りんせん!」

 

 急に身を乗り出して食いついて来たシャルティアの勢いに、私は体を仰け反らせる。

 しかし、モモンガ様の好みか。

 前にデミウルゴスたちに言った通り、私はあの頃に至高の御方々がしていた会話の内容で覚えていることはそう多くない。

 記憶力は悪い方ではなく、むしろ良い方だと思うのだが、私は特に必要の無い記憶はすぐに忘れていく質らしい。その証拠に、その時の会話でもフォーマルハウトに関係した部分は今でも覚えている。

 それに関連付けて思い出せば、何と言っていたか朧気には思い出せるかもしれない。

 

「あー……そうだな。確かモモンガ様はそういった話は余りされなかったはずだが……確か、好みは清楚系がどうのという話をしていたような気がするな」

「清楚でありんすか……ならば問題ありんせんね!」

 

 どこが?

 そう思っても口には出さない。

 

「そ、そうか……そうだな。まぁ後はペロロンチーノ様はフォーマルハウトと同じく多趣味だな。ナース服とかスク水セーラー服とか色々フォーマルハウトと意見を交わしていた。その過程で私に与えられた服も何着かある」

「ふむふむ」

「武人建御雷様は和服美人が好きだと言っていたな」

「和服でありんすか? わたしは持っていないでありんすね……ヴェルフェニアは持っているでありんすか?」

「一着だけな」

 

 私が持っているのは紺色の生地に椿という花が刺繍された物だ。

 着付けなどが中々手間らしく、着たことは無い。

 

「それはそれは、是非着てみたいでありんすね」

「私もまだ着ていないから、貸すならばその後だな。他の御方々の好みは……ウルベルト・アレイン・オードル様は悪の女幹部風、たっち・みー様は魔法少女だったか? ヘロヘロ様はメイド服だな。弐式炎雷様はくノ一で、死獣天朱雀様はセーラー服にルーズソックスと言っていたような……」

「好みが色々と分かれているでありんすね……でも和服以外は全て持っているでありんすから、仮にモモンガ様がお求めになられても問題はありんせんね。あぁ、モモンガ様、ダメでありんす……そんなところはぁ……」

「……妄想もいいが、まずモモンガ様を落とすところからだろう」

 

 私の言葉にシャルティアは妄想の世界から戻ってくる。

 ぐわっと擬音が聞こえてきそうなほどの勢いで身を乗り出したシャルティアの勢いに押し負け、私は再び体を仰け反らせる。

 急に大きな反応を見せるから中々心臓に悪い。

 

「そうでありんす! ヴェルフェニア、至高の御方であられるフォーマルハウト様の妻であるあなたのアドバイスが欲しいでありんす。どうやったらモモンガ様を落とせるでありんしょうか。アルベドには負けられんせん」

「アドバイスか……」

 

 そう言われても、正直困る。

 私は別に私自身の魅力や手練手管でフォーマルハウトを落とした訳ではなく、フォーマルハウトが理想として生み出したのが私なのだ。ゆえに、私がフォーマルハウトに愛されることは必然であり、他者にアドバイス出来るようなことはない。

 強いて言うならばフォーマルハウトに失望されず、愛され続けるようにしていることくらいだろうか。髪をよく手入れしたり、フォーマルハウトが喜びそうな仕草を見せてみたり。

 膝枕はとても喜んでくれたし、モモンガ様も喜ぶだろうか。

 

「外にでも誘って膝枕をしてみたらどうだ? フォーマルハウトはかなり喜んでいたぞ」

「外? ナザリック内の方がいいのではなくて?」

「尤もな疑問だ。確かにナザリックを超える物などこの世には存在しない。しかし、物珍しさというものがある」

「物珍しさ……?」

 

 きょとんと首を傾げたシャルティアに、私は自信をもって告げる。

 

「そうだ。フォーマルハウトもモモンガ様も、星空を見てまるで子供の様にはしゃぎ回っていた。どうもフォーマルハウトに言わせると、第六階層のものとは趣が違うらしい。それに至高の御方々はユグドラシルの様々な場所を旅していたから、物珍しい物を見るとはしゃいでしまうようだぞ」

「……なるほど、至高の御方々にしか分かりんせん何かがあるわけでありんすね。良い事を聞きんした。それに、星空を見ながら膝枕だなんてロマンチックでありんすし憧れるでありんすねぇ」

 

 感心したように言って、シャルティアは再び妄想の翼を広げてゆく。浮かべている表情からして、恐らくアウラやマーレには言えないような内容なのだろうな。

 それから数分ほど妄想の世界に浸ったシャルティアは、急に思い出したかのように我に返る。

 

「そういえば、フォーマルハウト様がハーレムをお作りになられるとか?」

「あぁ、作ることになっている。とはいえ、あれは余り深く考えずに好みの女を囲うくらいにしか思っていないだろうが」

「あら、それでいいのではなくて? 至高の御方がそうと望まれるのなら、それが正しいのでありんすから」

「それはそうだが、それでは外部の女が不満を溜めるだろう。形式的にでもいいから平等にせねばな」

「外部……えっ!? ナザリックの外からも女を迎え入れるのでありんすか!?」

「そのつもりだが?」

 

 それほど驚くことだろうか。

 どこの女であろうと、重要なことはただ一つ。フォーマルハウトが気に入るかどうかだ。あとはナザリックや至高の御方々に対して無礼を働かなければそれで良い。

 もちろんナザリック内の者の方が立場的に上であるようにはするが、そもそも内部の者と外部の者とは会うこと自体が少ないだろう。

 モモンガ様に付けられた、些か面倒な条件。当然と言えば当然だが、ナザリック外の者をフォーマルハウトの感性のみでナザリックへと迎え入れることは許されなかった。

 つまり、外のどこかに屋敷でも建てるかして、そこで生活させなければならない。そうなるならば、ナザリックで暮らす者たちと会う機会など無いはずだ。

 

「ちょっと驚きんした。てっきりナザリックの外の女など近づかせるかとか言うかと思いんしたが」

「私はそこまで狭量ではないさ」

「ふぅん……それで、フォーマルハウト様があなたよりも外の女に惚れ込んでしまっても?」

 

 シャルティアは意地の悪い笑みを浮かべる。

 真祖(トゥルーヴァンパイア)だからか、そうあれと創られたからか……いや、その両方か。どうやら酷いサディストの様だ。

 私はその笑みに微笑みを返す。その程度では動じない。

 

「あり得ないな。内でも外でも、フォーマルハウトが私よりも惚れ込む女など存在しないさ」

 

 そう、あり得ない。

 私はフォーマルハウトの理想として――その寵愛を最も受ける存在として生み出されたのだから。

 寵愛。寵愛か。

 いつもナザリックでは二人きりになる機会は少ない。あれは第八階層には来てくれないし、フォーマルハウトの寝室だって、夜でも部屋のすぐ外にはシズが控えているのだ。初めてくらいは誰にも邪魔されないようにしたい。

 しかし、今度は二人きりで出掛けるのだ。ならば、竜王国の宿屋辺りでそういった段階へと進んでもいいのかもしれない。私たちは夫婦なのだから。

 あれは初心だから、誘うのはきっと私からだ。でも、一線を越えることを決意したフォーマルハウトは私をベッドに押し倒す。その後は互いの体を気遣って愛を確かめ合いながら、初めての時を迎えるんだ。

 二回目以降はきっともっと凄い。一度箍が外れたフォーマルハウトは事あるごとに私の体を要求し、既に抱かれる快楽に目覚めてしまった私は強引に唇を奪われて、口を塞がれて快楽に喘ぐことも出来ない状態のまま獣に蹂躙されるが如く、一日中許されることなく滅茶苦茶に――

 

「……ヴェルフェニア? どうしたでありんすか?」

「……はっ!? ごほんっ! いや、何でもない。何でもないぞ。本当に何でもない」

 

 危なかった。これではシャルティアのことを変態とは呼べないな。

 

「そ、そう? それにしても、大した自信でありんすねぇ……羨ましい。モモンガ様はハーレムなどをお作りにはなりんせんでありんしょうか」

「さて、どうだろうな。フォーマルハウトとそういう話をした時は否定的な印象を持っていたようだが……」

「ということは、側室は持たないと?」

「かもしれないな」

 

 少しだけ考え込んだシャルティアは、にやりと邪悪な笑みを浮かべる。嗜虐心と優越感に満ちた笑みだ。

 多分、自分が正妃になればアルベドを悔しがらせることが出来ると考えているのだろう。

 

「ふふ……ははは! わたしが正妃に収まればアルベドは……いい気味でありんすねぇ! 清楚さという観点で見ればわたしの方が圧倒的に上! この勝負はもらったでありんす!」

 

 ……一度、清楚という言葉の意味を教えた方がいいだろうか。




 毎度のことながら誤字報告有難う御座います。
 幕間というか一コマを書いてみました。どうだったでしょうか?
 一人称の文章は初めて書いたのですが、上手く書けていれば幸いです。

 ヴェルフェニアは寝る時は全裸派です。私は冬でもパンツ一枚派です。私は男です。
 皆さんは何派ですか?

 ヴェルフェニアは実は全部で四体のシモベを持っています。
 作中で三体出て来ていて、ヴェルフェニアはこれで全てだと思っていますが、隠し玉としてフォーマルハウトが配置したヴェルフェニアも知らない四体目のシモベがいます。
 これが物語に関与するかは分かりません。どこかで出したいと思ってますが。
 こういう使うか使わないか分からない設定を考えるのも大好きです。

 吸血鬼の花嫁はとても好きなのでハーレム入りさせることにしました。黒目に紅い瞳って良いですよね。見た目も素晴らしくエロい。
 アニメでシャルティアがセバスに怒った時に怯えてるシーンが一番可愛いと思います。

・種族 魔人
 人間種。そのため、種族レベルがありません。
 魔に傾倒し、魔法を極めんがために魔道に堕ちた元人間。
 身体構造は人間に近いが寿命が存在せず、飲食や睡眠も不要ながらも、人間であったころの習慣が残っているため、定期的に飲食や睡眠をしたくなります。
 種族的な特徴としては、MPや魔力にボーナスが掛かり、筋力や防御力にペナルティが掛かる、純粋な魔法詠唱者向けの課金種族です。

・深淵の水精霊
 水属性と冷気属性の扱いに特化した魔力系魔法詠唱者型の精霊。
 九十レベルで純粋な攻撃型。第十位階魔法も十種類ほど覚えています。
 反面、補助は不得意で治癒魔法も覚えておらず、耐久力も並み以下。精霊らしい精霊のステータスをしています。

・母なる大地の精霊
 他の精霊と比べてやや防御力が高めな信仰系魔法詠唱者型の精霊。
 やや防御力は高めですが、精霊にしては高めと言うだけで同レベル帯のモンスターと比べると低い。ただしHPは同レベル帯のモンスターと比べてかなり高め。
 豊富なHPである程度敵の攻撃を受けつつ、豊富なMPからの治癒魔法や補助魔法連打で疑似的な壁として機能する。
 九十二レベル。母なる大地というだけあって一応女の子。体は寸胴で、しかも土で出来ているのでエロスは欠片もありません。
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