骸骨の魔王と赫灼の焔王   作:エターナルフォースブリザード

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第三話 守護者

 頭を地面へと圧し付けるかのような重圧が消える。

 かの偉大なりし二人の支配者のうちの一人たるモモンガから放たれた絶望のオーラは本来ならば同格の百レベルである守護者たちには効果が発動しない。

 だが、その手に持つ黄金の杖――ギルドの総力を結集して作り上げたスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンはモモンガが使用することを前提として調整されており、その効果によってモモンガの力を増強させる。

 その結果、本来効果を発揮しないはずの絶望のオーラは、同格たる百レベルNPCに対してすら凄まじいプレッシャーを与えるほどの力を有していた。

 ゆえにその圧し潰すような重圧が掻き消え、崇拝すべき主たちが立ち去ったのだと知ってもすぐに立ち上がれる者はいなかった。

 暫しの時間が経ち、張り詰めていた空気が弛緩する。誰かが零した安堵の息の後、最初に立ったのはアルベドだ。

 アルベドに勢いづけられたように他の者たちも次々と立ち上がり、誰ともなく口を開いた。

 

「す、すごく怖かったね、お姉ちゃん」

「ほんと。あたし圧し潰されるかと思った」

「流石はモモンガ様ですね。私たち守護者にすらその御力が効果を発揮するとは……」

「我々ヨリモオ強イトハ思ッテイタガ、マサカコレホドトハ……」

 

 守護者たちは口々にモモンガを称賛する。

 

「あれが支配者としての器をお見せになられたモモンガ様なのね」

「ですね。私たちが地位を名乗るまではお持ちだった力を行使しておられませんでした。しかし、守護者としての姿を見せた瞬間から、その偉大な力の一部を解放されました」

「ツマリハ、我々ノ忠義ニ応エ、支配者トシテノオ顔ヲ見セテ下サッタトイウコトカ。シカシ……イヤ……」

「どうしました、コキュートス?」

 

 言い淀んだコキュートスに対し、デミウルゴスが問い掛ける。

 被造物たるNPCにとって、支配者たるモモンガはまさに神にも等しい。そんな存在が自分たちの忠義に応え、その力を見せてくれたのならばそれはとても喜ばしいことのはずだ。

 だからコキュートスが何かを言い淀む理由など、思い当たらなかった。

 

「ウム……モモンガ様ハ我ラノ忠義ニ応エテ下サッタ。シカシ、フォーマルハウト様カラハソノ御力ヲ感ジル事ハ出来ナカッタ」

 

 コキュートスの言葉に、守護者たちの表情が沈む。

 最高支配者たるモモンガは認めてくれたが、もう一人の支配者たるフォーマルハウトには認められなかったのかと落胆し。

 

「それは私が説明しよう」

 

 暗い沈黙を破って口を開いたのはヴェルフェニアだ。

 その表情はむしろ嬉々とした微笑みを湛えた明るい表情であり、落ち込んだ様子を見せる他の守護者たちとは対照的であった。

 

「お待ち下さい。失礼ながら、貴方は一体どなたなのでしょうか? 先ほどフォーマルハウト様に対して不適切な発言をしていらしたようでしたが?」

 

 口を開こうとしたヴェルフェニアを制したのはセバスだ。

 ヴェルフェニアがどういう存在か説明された場にいなかったセバスには、フォーマルハウトに対する発言が許せなかった。

 

「あぁ、セバス……殿と言えばいいか。私は第八階層虚無の湖岸領域守護者、ヴェルフェニア・セレンルーナだ。創造主はフォーマルハウトだ」

 

 セバスは元々険しかった表情をさらに険しく歪め、鋭い眼光を発した。崇拝すべき支配者の一人であるフォーマルハウトの名を幾度も呼び捨てにしたからだ。

 あからさまな不快感を示すセバスを見たアルベドが助け船を出す。

 

「セバス、ヴェルフェニアは至高の御方々に対して敬語を使わないとフォーマルハウト様がお決めになられて御創造されたのよ。私たちを慮って他の至高の御方々に対しては敬語を使うようフォーマルハウト様が決められたけれど、フォーマルハウト様に対しては敬語でなくて良いと許可が出ているわ。だから気にする必要はないわ」

「なるほど、そうでしたか。しかし、フォーマルハウト様を夫と言っていたのは……」

「それも他ならぬフォーマルハウト様がお決めになられたことよ」

「なんと! そうだったのですか! ヴェルフェニア様、そうとは知らずに大変失礼致しました」

 

 セバスが自らの非を認め、腰を折って謝罪を述べる。

 知らなかったこととはいえ、至高の存在であるフォーマルハウトの妻と定められた相手だ、執事として無礼があっては許されない。

 

「いや、気にする必要はないし、私を特別扱いする必要もない。フォーマルハウトもそれを望んでいるわけではないだろう。他の領域守護者と同様に扱ってくれて結構だ」

「……畏まりました。それと、私はナザリックの執事として創造されておりますので、敬称は不要で御座います」

「私たちも敬称は必要ないわ。あなたは領域守護者だけど、フォーマルハウト様の奥方なのですから」

 

 アルベドの言葉に他の守護者たちも頷く。

 

「特別扱いの必要はないと……まぁ、そちらの方が有難くはあるな。どうも敬語は使わんと創られたからか、余り得意ではない」

「なるほど、畏まりました。ですが、他のシモベたちも何らかの反応を示すと思いますので、ヴェルフェニア様の立場については周知しておいた方が宜しいでしょう」

「そうね。各階層守護者は自分の階層にヴェルフェニアの件を周知するように。第九、第十階層に関してはセバス、お願いできるかしら?」

「畏まりました。ではヴェルフェニア様の言葉の理由も伺うことが出来ましたので、私は先に戻ろうと思います。お二方がどちらへ行かれたのかは不明ですが、お傍に仕えるべきでしょうし」

 

 セバスはナザリック地下大墳墓の執事の地位を預かっている。

 ゆえに自らの矜持と役職に基づき、主の下へ向かわなければならない。傍に控え、誠心誠意主に仕えることこそが、ナザリックの執事として創造された彼の存在意義なのだから。

 

「分かりました、セバス。お二方に失礼が無いように仕えなさい。それと、何かあった場合にはすぐに私に報告を。至高の御方々……特にモモンガ様がお呼びの場合は即座に駆け付けます。他の何を放っても!」

 

 言葉と共にアルベドが瞳を輝かせる。その瞳はまるで恋する少女……というよりは情欲に塗れた一人の女のようであった。聞いていたデミウルゴスが困ったものだという表情と共に眉間を抑える。

 

「ただ、寝室にお呼びという場合はそれとなく時間が必要だということを伝えなさい。湯浴みなどの準備が必要でしょうから。勿論、そのままでいいから来いという事であれば私は全然構いません。何時如何なる時に呼び出されてもお応え出来るように、身は可能な限り清めていますし、着ている物も細心の注意を払っています。つまりは当然のことですが、モモンガ様の御意志こそを最優先し――」

「了解しました、アルベド。あまり時間を無駄に費やすとお傍に仕える時間が減ってしまいます。それではお二方に大変失礼かと思いますので、申し訳ありませんがこれで失礼します。では、守護者の皆様も」

 

 言外にお前の話は時間の無駄だと伝えながら、セバスは優雅に別れの挨拶をして小走りで去っていった。

 まだ話し足りなそうな顔をしているアルベドから逃げるように。

 

「フム、デハ聞イテモ良イダロウカ。ナゼフォーマルハウト様ハ我ラニソノ御力ヲオ見セ下サラナカッタノダ?」

 

 セバスが闘技場から去り、姿が見えなくなった辺りでコキュートスが口を開く。

 気になって仕方が無い。そんなソワソワした様子だ。

 

「そもそも、あれが何という種族かお前たちは知っているのか?」

「当然でありんす。フォーマルハウト様は精霊(エレメンタル)種最上位種族にして炎を司る生ける炎(クトゥグァ)でありんすぇ」

「そうだ。では扱う力はどのようなものだ?」

「炎でありんす。さっきから何なんでありんすか? この程度のことはナザリックに住まう者たちならば常識。答えられないほうが不忠を疑われるような知識でありんすよ?」

 

 シャルティアの言葉通り、ナザリックに住まう者たちにとって至高の四十一人の情報は頭に入っていて当然だ。

 もちろんその全てを知っている者は直接創造された者くらいだが、どのような姿をしているのか、何という種族なのか程度すらも知らないのは恥ずべきことですらあり、不忠の誹りも免れない。

 

「……なるほど、そういうことですか」

 

 静かに呟いたデミウルゴスの顔には深い笑みが浮かべられており、尻尾は機嫌良さげにゆらゆらと揺れている。ほぼ同時にアルベドも何かに気付いたように顔を上げ、次いで恍惚さと歓喜が交じり合った笑みを浮かべた。

 

「え、なになに? なんか分かったの、アルベド、デミウルゴス?」

「えぇ、分かったわ、アウラ。なぜフォーマルハウト様が御力を解放されなかったのか。恐らくだけれど、私たちを気遣って下さったのよ」

 

 アルベドの言葉に理解が及ばない守護者たちは首を傾げる。

 

「ドウイウコトダ、アルベド。デミウルゴスモ何カ気付イテイルヨウダガ」

「つまりはこういう事だ。フォーマルハウト様の御力は炎を操る力。そんなものを我々に向けて解放すればどうなるかね? 特にアンデッドであるシャルティアや蟲王(ヴァーミンロード)のコキュートスは炎を弱点としているし、何より隣に立っておられたモモンガ様もアンデッドだ。如何に完全耐性を有していても、至高の御方の御力なのだからダメージが皆無とはいかないだろう」

 

 シャルティアとコキュートスの背筋に電流が走った。

 確かに自分たちは炎や熱を弱点としており、対策として耐性を有している。しかし、スキル一つで押し潰すかのようなプレッシャーを放つモモンガと同格の存在であるフォーマルハウトが力を解放すれば、もはや耐性など関係無くダメージを受けてもおかしくはない。

 

「つ、つまりわたし達がダメージを受けないように気遣って下さったということでありんすね?」

「恐らくはそうだろうね。どうなんだい、ヴェルフェニア。今ここにいるメンバーの中では君が最もフォーマルハウト様のことを良く知っているだろう?」

「私もそう考えている。あれが能力を解放すれば完全耐性でも容易に貫通せしめる。同格の存在であるモモンガ様ならばともかく、我々程度ではただでは済まないだろう」

 

 対等であれと創られたために普段はそんな様子を見せないが、ヴェルフェニアもまたNPCである。その心の内は忠誠心の塊であり、主たる至高の四十一人を神の如く崇める存在に他ならない。

 実際は何も考えておらず、自分よりも焦ってスキルを発動したモモンガを見て辛うじて冷静さを保てたというだけなのだが、ヴェルフェニアがそんなことに思い至るわけがない。彼女の中では、信奉する神々の一柱が矮小な自分たちを気遣い、その力の解放を止めたということこそが真実なのだ。

 確信をもって告げられたヴェルフェニアの言葉に守護者たちは一様に喜び、同時にフォーマルハウトへと畏敬の念を向けた。

 喜びはシモベであるにも関わらず、気遣ってくれたという慈悲深さを感じて。畏敬は百レベルである自分たちにも、気遣わなければならないほどの力を有しているということを知って。

 知らないところで間違った理由でフォーマルハウトの株が上がる。とっくに上限突破していたはずの忠誠心がさらに増加した。

 

「はぁ……それにしても、妻として生み出されるなんて、同じ女として羨ましいわ」

「まったくでありんすねぇ。あぁ……わたしもモモンガ様と……」

 

 恍惚とした表情を浮かべたシャルティアに、アルベドが険を込めた視線を向ける。

 

「このビッチ」

 

 続いて投じられたアルベドの軽蔑の言葉に、シャルティアは眉を吊り上げた。その表情はアルベドに対して嘲笑の笑み浮かべると共に僅かな怒りも表している。

 

「はぁ? 至高の御方々のお一人であり、超美形なモモンガ様でありんすよ? 愛しく思わない方が頭が可笑しいのではないでありんすか? ねぇ、大口ゴリラ」

「確かにそうね。私もモモンガ様が愛しくて堪らないわ。でも貴方のは単なる情欲でしょう? 私は純粋な愛をあのお方に捧げているの。貴方とは違うのよ、ヤツメウナギ」

「純粋な愛ぃ? はっ、さっきまで寝室がどうの湯浴みがどうのと宣っていた癖にちゃんちゃら可笑しいでありんすねぇ」

「あら、私は男女の愛の営みという意味で言っているのよ?」

「私だってそうよ、大体アルベドは――」

 

 怒りに満ちた形相で罵り合うアルベドとシャルティア。実際に殺し合いに発展してしまう可能性は低いため心配はしていないが、零ではないため多少の不安が残る。

 

「あー、アウラ。同じ女性同士、二人のことは任せたよ?」

「えっ!?」

「え、えっと、が、頑張ってねお姉ちゃん」

「マッタク、喧嘩スルホドノコトナノカ?」

「私も悪いが面倒事は御免被る」

「ちょっと、コキュートス!? というかヴェルフェニア! あんたも女でしょーが!」

 

 叫ぶアウラを無視し、ヴェルフェニアたちは少し離れた位置まで移動する。

 触らぬ神に祟りなしと。

 喧嘩に巻き込まれない程度に離れた位置でアルベドたちの様子を眺め、デミウルゴスが口を開いた。

 

「個人的には結果がどうなるのか、非常に興味深いところですね」

「ナニガダ、デミウルゴス?」

「戦力の増強という意味でも、ナザリック地下大墳墓の将来という意味でもね。あぁ、しかし将来という意味では君がいるのだから安泰かな、ヴェルフェニア?」

「さぁな、私の夫が子供についてどう考えているのかはわからん。ただ、そういう意味では最高支配者であるモモンガ様の方が相応しいのではないか?」

「ど、どういう意味ですか?」

 

 会話の意味が理解できていないマーレに対して、デミウルゴスはどう説明すべきか思案する。無垢なる者を汚すが如く大人の知識を吹き込んでやりたいというサディスティックな欲求が湧き上がるが、それをすぐさま掻き消した。

 悪魔らしく残忍かつ冷酷なデミウルゴスだが、同じく至高の四十一人に忠義を捧げるナザリックの仲間に対してはその限りではない。

 

「偉大なる支配者の方々の後継はあるべきだろう? お二方とも最後まで残られたが、もしかすると他の御方々と同じようにこの場所を去られてしまわれるかもしれない。その場合、我々が忠義を尽くすべき御方を残していただければ、とね」

「えっと、そ、それは、どちらかがモモンガ様の御世継を?」

「ソレハ不敬ナ考エヤモ知レンゾ、デミウルゴス。ソウナラナイ様忠義ヲ尽クシ、オ二方トモココニ残ッテ頂ケルヨウ努力スルノガ、守護者デアリ、創ラレタ者ノ責務ダ」

「勿論、理解しているとも。しかし、モモンガ様の御子息とフォーマルハウト様の御子息にも忠義を尽くしたくはないかね?」

「ムゥ……ソレハ確カニ憧レル……」

 

 コキュートスが脳内で夢想したのは、二人の子供たちを背に乗せて走る光景だ。

 それだけでなく、剣技を教示するところ。迫り来る敵から二人の子供たちを背に庇い、剣を抜き放つところ。成長した二人の子供たちに命を受けるところまでもを思い浮かべる。

 

「……イヤ、素晴ラシイナ。素晴ラシイ光景ダ。オォ、爺トオ呼ビ下サルカ。オ坊チャマ、凛々シイ剣捌キニ御座イマスゾ! ナント、コノ爺ガ一本取ラレテシマウトハ、成長サレマシタナ。偉大ナル御父上方ニモ負ケヌヤモシレヌ才ヲ……」

 

 恍惚とした様子で妄想の世界を垂れ流すコキュートスを見て、ヴェルフェニアは『こいつに子供の教育を任せてはダメだな』と思った。

 コキュートスの夢が一つ潰えた瞬間である。

 

「ところでヴェルフェニア。君は何でそのマントの下は何も着ていないのかね?」

 

 デミウルゴスの問いにヴェルフェニアは黒いマントの裾を引っ張った。

 ちらちらと美しい純白の肌が覗いていたが、それを隠す様子はない。

 

「あぁ、これか。理由はいくつかあるのだが……一番大きいのは夫にそうあれと創造されたからだな。どうも私の夫はこの格好が好きらしい」

「ふむ……なるほど」

「確か……裸エプロンに通じるものがあるとか言っているのを聞いたことがある。他には手ブラジーンズだの裸ワイシャツだのとペロロンチーノ――様と熱心に語らっていたな」

「じゃ、じゃあ、モモンガ様もそういう格好がお好きなんでしょうか?」

「いや、確かモモンガ様と語らっていた時は、清楚系がどうのとかいう話をしていたような……? すまんな、随分昔の記憶なので酷く朧げなんだ」

「清楚……ですか」

 

 未だ争っている様子のアルベドとシャルティアにデミウルゴスは冷たい視線を送る。それにつられたようにマーレとヴェルフェニアも。

 見た目はともかく振る舞いは清楚という言葉からは程遠い二人だ。未だ口汚く罵り合っており、万が一が無いように見張っているアウラも既にうんざりとした表情だ。

 

「デミウルゴス、統括殿とシャルティアはいつもああなのか?」

「まぁ、いつも通りなのではないかな」

「あれがいつも通りなのか。いや、第八階層に籠りきりだったからな。他の階層のことは全く知らないんだ。だからここに来た時も天井――いや、空の綺麗さには驚かされたな。フォーマルハウトから聞いてはいたが、これほどとは。流石はブルー・プラネット様ということか」

「いや全くだね。至高の御方々の御業の数々には本当に驚かされる」

「み、湖とかもあるんですよ。良ければ今度ご案内します」

「そうだな、頼もう。しかし、二人で行くと旦那に焼き餅を焼かれてしまうな」

 

 ふふ、と楽しそうに笑うヴェルフェニアを見たデミウルゴスとマーレは羨望と嫉妬を抱いた。

 至高の存在の妻であれと生み出された。その言葉の何と甘美なことか。

 もしもナザリックでその権利の争奪戦でもやれば、血で血を洗うような大戦争が巻き起こってもおかしくはない。いや、起こると断言出来る。戦闘能力が皆無である一レベルの一般メイドたちも参戦するであろうことは間違いない。

 生まれた瞬間からその権利を有しているのだ。例え男の身であってもそれほどに愛されていることを羨ましく思わない者などナザリックには存在しない。無論それを不満に思う者も存在しないが。

 

「まぁ、機会があれば是非第七階層も案内させてくれたまえ。あぁ、もちろんフォーマルハウト様をお連れしてね。さて……コキュートス、いい加減に戻ってきたまえ」

 

 同僚の声にコキュートスは妄想の世界から帰還し、心の底から満足そうに吐息を漏らす。

 興奮冷めやらぬ様子でブシュウゥと白い冷気を口元から噴出させながら、未だ残る妄想の余韻を振り払うように数度頭を振る。

 

「良イ光景ダッタ……アレハマサニ望ム光景ダ。ヴェルフェニア、御世継ガ生マレタラ是非私ニ剣ノ指南役ヲ――」

「却下だ」

「何故ダ!?」

 

 その時のコキュートスの叫びは、それはそれは悲痛なものだった。

 

「コキュートス、その話はまたにしたまえ。……アルベド、シャルティア、まだ喧嘩をしているのかね?」

 

 睨み合っていた二人はデミウルゴスの声に反応し、視線を動かす。しかし、答えたのは横で疲れたような表情を浮かべていたアウラだ。

 

「喧嘩は終わったよ。今やってるのは……」

「第一妃はどちらかといわすこと」

「ナザリック地下大墳墓の最高支配者であるモモンガ様が妃を一人しか持てないなんて余りにも可笑しなことだわ。ただ、どちらが正妃となるかというと……あなたもそう思うでしょう、ヴェルフェニア?」

「私に振るのか……ハーレムには賛成するが、どちらが正妃かというのは結局のところモモンガ様の好みの問題だろうし、お前たちがここでいくら争っても仕方が無いだろう」

 

 ヴェルフェニアの正論に二人は固まった。

 アルベドとシャルティアの間で上下が定まろうと、選ぶのは支配者であるモモンガだというのは当然のことだ。

 

「まったくだね。ところでその発言からすると、君はフォーマルハウト様が複数の女性に寵愛を与えても気にしないのだね?」

「まぁ、優れた男の周りに女が集まるのは当然のことだからな。それに好きな男のことを好きな女が多いと言うのは最初に愛し、寵愛を賜った女として誇らしいものだ」

「おぉー、なんか大人って感じだね」

 

 まさに大人の余裕というものだろう。あるいは正妻の余裕か。

 女として格の違いを見せられたかのように錯覚したアルベドとシャルティアは、植え付けられた敗北感に肩を落とした。

 

「では、アルベド。落ち着いたようだし、命令をくれないかね? これから色々と動かなければならないのだから」

 

 デミウルゴスに促され、アルベドは俯いていた顔を上げる。

 

「え、えぇ、そうね……命令しないとならなかったわね。シャルティア、ひとまずこの話は保留にしましょう」

「そ、そうでありんすね。えぇ、異存ありんせん」

「良し、ではこれからの計画を立案します」

 

 緩んでいた気を張り直し、アルベドは表情を守護者統括としてのものへと変化させる。同時に守護者たちは気を引き締めなおし、アルベドに対して頭を垂れて敬意を示す。

 しかし、礼は見せるが跪きはしない。

 守護者統括という地位にあるため敬意は当然示すが、それは絶対のものではない。至高の四十一人によって生み出された存在に大きな立場の違いはないのだ。しかしながら、守護者統括という地位をアルベドに与えたのもまた至高の四十一人だ。だからその地位に相応しいだけの敬意を示す。

 そのことに対してアルベドも腹を立てたりなどはしない。それこそが最も正しい考えだと理解しているから。

 彼らが跪くのは、偉大にして至高の四十一人以外にはあり得ない。




 語彙が……圧倒的に……足りない!!
 フォーマルハウトは様々な性癖を持っています。というかぶっちゃけ可愛ければそれでよしなので、あんまり深くは考えません。
 裸エプロンとか裸マフラーとか裸ワイシャツとか裸ニーソとか、裸体+αって素晴らしいですよね。
 誰でもいいからエントマの裸エプロンの絵を書いて?
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