二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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今回は結構すっとばしました。
表のオルクスの情報が少なかったのと、ぶっちゃけ書くのが面倒だったので。
それはそうと、オリヒロの登場ですよー。
*オルクス大迷宮の探索期間を3ヶ月から2ヶ月に変更しました。
これからのストーリー的に、こっちの方が都合がいいので。


これが出会いってやつか

王国を出てからオルクス大迷宮に潜ってからおよそ2か月ほど、俺はいまオルクス大迷宮の1()0()0()()()にいた。

目的があくまでハジメを探すことと、固有魔法の剣製魔法のおかげでかなりのハイペースでオルクス大迷宮を踏破することができた。

だが、決して楽をしていたわけではない。

俺の今のステータスは、

 

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峯坂ツルギ 17歳 男 レベル:63

天職:神子

筋力:780

体力:800

耐久:240

敏捷:760

魔力:4080

魔耐:4050

技能:天眼[+魔眼][+夜目][+遠見][+先読][+看破]・剣製魔法・気配感知・魔力感知・全属性適性[+魔力消費減少][+発動速度上昇]・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化]・想像構成[イメージ補強力上昇][+複数同時構成]・高速魔力回復[+回復速度上昇][+魔素収束]・言語理解

 

=============================

 

こんな感じに、ベヒモスとも一対一で瞬殺できるくらいには上昇した。

魔力と魔耐の上がり具合は何とも言えないが、今の俺は剣製魔法を主にして戦っているからむしろありがたいくらいだ。

そして、いくつか俺なりの戦い方を編み出している。

そのうちの一つに、剣製魔法による魔法陣構成がある。

“想像構成”は魔法陣なしで魔法を発動できる便利な技能だが、魔力の消費は魔法陣有りよりも多くなってしまう。最初の方の俺は、今ほど魔力は多くなかったため、高速魔力回復があっても楽観視はできなかった。

そこで思いついたのが、剣製魔法の“魔力の実体化”という性質を利用して、魔力で魔法陣を構成できないか、という試みだ。

俺はこの技術の体系化に成功し、魔法陣を構築するのに魔力を消費するが、魔法陣そのものの魔力を使うことで、魔法陣なしで行使するよりも魔力の消費を抑えることに成功した。

また、この方法なら魔法陣を途中で組み替えることで、使用する魔法をとっさに変更することにも成功した。

だが、結局のところ俺のメインの戦闘方法は剣製魔法で武器を生成しての近接戦闘だ。

この剣製魔法の万能性がすさまじく、銃ですら再現することができた。

ただ、この魔法は俺のイメージに大きく関わってくるから、どうしてもイメージの元になるものがでてくる。

例えば、「もうなにも怖くない」と言った某魔法少女のマスケット銃だったり、「別にあれを倒してしまっても構わないのだろう」と言った某アーチャーの双剣だったり。

・・・最初に名死亡フラグ台詞を思い浮かべた俺は、すぐにその言葉を頭の中から振り払ったが。

若干縁起の悪さを醸し出しつつ、所々の戦闘で危ない目に遭いつつも、俺はとうとうオルクス大迷宮の100階層に到達することができた。

のだが・・・

 

「見つからねぇ・・・」

 

前人未到の65階層を突破してからも、人っ子一人どころか、人がいた形跡すら見当たらなかった。

ハジメが横穴から流されてどこかに出ているなら、なにかしらの痕跡があってもいいはずだったのに、それらが何もなかった。

それに、100階層の奥で気になるものを見つけた。

 

「これが問題なんだよなぁ・・・」

 

オルクス大迷宮は全部で100階層という話だったはずなんだが、さらに奥に続く階段を発見してしまった。

つまり、一般に知られているオルクス大迷宮とは別に、さらに下の階層があるということだ。

もしかしたら、ハジメもそこに流されているのかもしれない。

だが、一つ問題がある。

 

「俺の実力で大丈夫か?」

 

表のオルクス大迷宮を攻略するにしても、それなりの労力を強いた。

それなのに、さらに下に階層がある。

もし、さらに下に100階層存在し、それに従って魔物もどんどん強くなっているのなら、今の俺には手に余る。

 

「もしかしたら・・・いや、これは考えるべきじゃないな」

 

一瞬、「ハジメはもう死んでしまったのでは?」という考えが頭をよぎったが、それでも今はハジメが生きていると信じて行動するしかない。

 

「とすると、まずは『ハジメが生きている』と仮定すると・・・」

 

おそらく、ハジメは上でなく下を目指して移動しているだろう。

もしかしたら、一番下まで攻略しているかもしれない。

その場合、おそらく地上に出ているだろう。

外に出るにしても、凶悪な魔物がはびこる迷宮を再び歩かせる、なんてことはないはず。

おそらく、転移魔法などによる外への出口があるはずだ。

その場合、ハジメはまずどこに行くか。

俺の中にはいくつか候補があるが、もっとも可能性が高いのは、

 

「ハルツィナ樹海か。あいつ、ケモミミ好きだし」

 

図書館でも、ケモミミを一回は見てみたいと言っていた。間違いないはずだ。

理由があれだが、そんなことは知ったことじゃあない。

 

「ならさっそく、外に出て・・・あ、そういえば俺、死んだことになってるんじゃね?」

 

いざ外に出ようと思って、ふとめんどくさいことに気づいた。

オルクス大迷宮に潜る際に言われたのだが、一定期間たっても戻ってこなかった場合は自動で死亡扱いになると受付嬢に注意されたことを、今思い出した。

このまま戻れば、めんどくさいことになるのは間違いない。

 

「こっそり出て行くしかないか・・・ん?」

 

ここを出てからのことを考えていると、不意に何かの足音が聞こえてきた。

これが魔物とかなら、問答無用で撃ち抜くのだが、さらに人間的な息遣いも聞こえてくる。

しかも、

 

「だいぶ弱ってるな・・・」

 

100層に来ている時点で只者ではないが、弱っているなら積極的に無視することもない。

 

「あ、倒れた」

 

ついに、どさり、と倒れたような音も聞こえてくる。

どうせなら情報ももらっておこうなどと考えながら音のした方に向かってみる。

そこで倒れていたのは、赤い髪に浅黒い肌、尖った耳を持った女だった。

この特徴に当てはまる種族と言えば、一つしかない。

 

「魔人族・・・?どうしてここに・・・」

 

現在進行形で人間族と戦争をしている魔人族だ。

だが、それにしては様子がおかしい。

衣服もボロボロだし、多くの魔物を従えているという話だったが、周りにそれらしき魔物はいない。

それに、ひどく衰弱しきっている。

普通なら、人間族の敵ということで見捨てるか、殺すかのどちらかになるのだろうが、

 

「面白そうだし、手当てくらいしておくか」

 

人間族のどうのこうのなんぞ関係ねぇ。俺はやりたいようにやらせてもらおう。

それに、俺と同じく一人でオルクス大迷宮の100階層に来た、というのも興味をそそる。

とりあえず、適当に広い場所に行きつつ、認識阻害や遮音その他諸々の効果を持つ結界を剣製魔法の苦無を起点に張って、魔人族の女に回復魔法で処置を施す。

全属性適性があるとはいえ、やっぱり攻撃魔法の方が得意だからどうしても応急処置程度になるが、ないよりはいいだろう。

魔人族の女を壁に寄せて寝かせつつ、俺はこの階層の魔物で料理を作り始めた。

今回の献立は、牛型の魔物の肉だ。魔力も事前に抜いてある。

ほとんどの魔物は肉が固かったりしてまずかったが、とりあえず切り込みを入れるなどして柔らかくしてから、炎魔法で上手に焼いていく。

最初は趣向も考えて調味料を使っていたが、もう使い切ってしまって今はない。

そういう時は、盛り付けを工夫してみたりした。

ちなみに、食器や調理器具は全部剣製魔法で用意した。剣製魔法、汎用性がやべぇ。

日本に戻ったら不便するかもなー、とかなんとか考えていたら、

 

「うぅ・・・え?」

 

料理の音か匂いにつられて、魔人族の女が目を覚ました。

 

「おっ、起きたか。これ食べるか?いま作ってるところなんだが・・・」

「ッ、人間!?どうしてここに!?」

 

俺の姿を見た途端、警戒心をあらわにして飛びずさった。

若干傷付くけど、今は戦争をしている最中だから考えれば当然か。

 

「んな心配しなくても、取って食おうなんてことはしないから。落ち着け」

「そう言われても・・・あれ?体が軽い?」

「ボロボロだったからな。簡単にだけど治しておいた」

「そ、そう。それは、ありがとう・・・」

「ついでだ。これも食っとけ」

 

そう言って、俺は皿を出してその上に肉を乗せる。当然、フォークを出すのも忘れない。

 

「な、なにもないところから食器が?」

「あぁ、これは俺の固有魔法な。それで、食べる?食べない?」

「・・・いただきます」

 

おずおずと遠慮しながらも、肉を口の中に運んでいく。

 

「・・・おいしくない」

「それは、まぁ、勘弁してくれ」

「これ、なんの肉?」

 

食べ物にありつけたのはうれしいが、味はいまいちだからか気になったのだろうか。

そんな彼女に、ちょっといたずら心が湧いてきた。

 

「これはな、牛・・・」

「牛肉?」

「の魔物の肉だ。部位的にはロースか?」

「え!?!?」

 

案の定、女はびっくりして飛び上がる。

いい反応するなぁ。

 

「安心しろ、食べれるようにしてあるから」

「でも、どうやって?」

「それもまぁ、俺の固有魔法なんだが、俺としてはお前の話も聞きたい。どうして魔人族がここにいるんだ?」

 

俺の言葉に、女の表情が険しくなる。

 

「・・・私をどうする気?」

「ちなみに、お前はどうされると思ってる?」

「拷問?それとも、私で弄ぶつもり?」

 

俺の問いかけに、女の表情がさらに険しくなるが、別に心配されるようなことはしない。

 

「安心しろ、って言っても信用しないとは思うけど、そういうのはしねぇよ。そもそも、俺は人間族の兵士というわけでもないからな」

「そう、なの?」

「あぁ。俺は別にこの戦争に自分から介入しようとは思っていない。そもそも、教皇にもケンカを売ったからな」

「・・・それ、本当?」

「本当だよ。俺は、この世界の人間ではないからな」

「・・・どういうこと?」

「それが知りたいなら、まずはお前のことを教えてくれ。まだ名前も知らないし」

 

俺の顔を見て、とりあえずは納得したようにうなずいて自己紹介を始める。

 

「・・・私の名前は、ティア。あなたの名前は?」

「俺は峯坂ツルギだ。それで、ティアはどうしてここに?」

「それは・・・」

 

ティアは一拍おいて、自分のことを話し始めた。

ティアが言うには、自分はもともと冒険者の父と一般人の母の間に生まれた子供で、幸せに暮らしていたという。

父は冒険者だが、戦争のこともあるので兵士として戦うこともあった。

自分の父は、同族のことを誰よりも想う人物で、すべての魔人族が平和に暮らせる世界を目指していた。

だが、それに終わりの時が来た。

 

「お父さんは、魔人族の国・ガーランドである偉業を成し遂げた」

「偉業って?」

「・・・七大迷宮の一つを攻略した」

 

この世界にある七大迷宮の一つ、シュネー雪原にある氷雪洞窟に踏み込み、見事攻略してきたのだ。

 

「お父さんはそこで、神代魔法を覚えた」

「神代魔法って、あれか?神代に存在した、世界の理にも干渉できるっていう」

「そう。変成魔法。普通の生き物を魔物にしたり、魔物を強化したりできる」

 

もう少し詳しく説明すると、普通の生物に疑似的な魔石を生成することで魔物にして体を作り替えたり、その延長線で魔石に干渉することで魔物を強化したり、主従させたりできるようだ。

つまり、魔人族が人間族を追い詰めた要因になっている魔法、ということだ。

そんなこともあって、ティアやその家族は英雄の家族としてたたえられた。

だが、それを機に幸せが次第になくなってしまったらしい。

 

「七大迷宮攻略を称えられて、お父さんは魔王様に仕えて将軍としての地位を得た。でも、しだいにお父さんはおかしくなっていった」

「おかしく?」

「うん。最初は『魔人族のために』って言ってたのに、今は『我が主のために、我が神のために』って言うようになった」

「それって・・・」

 

このティアの話に、既視感を覚えた。

極端に神に傾く。まるで、聖教教会の幹部や教皇みたいじゃないか、と。

 

「そして、神に仕えることこそが至上の喜びだと言って、それを私たちにも強要してきた。お母さんは、すぐにそれに賛同し始めて、結局『神命のために』って命を落とした」

「それはまた・・・」

「私は、とても怖かった。私の大好きだったお父さんが、とても怖くなった」

 

ティアは、それとなく考えを改めさせようとしたが、すべて上手くいかず、むしろ不信心だと叱られることすらあった。

そして、決定的な事件が起こる。

 

()()は、変成魔法を使って魔人族を強化できるのではないかって言った。お父さんは、()()()は最初は拒絶したけど、次の日には『神の声を聞いた』と言って、私を実験台にして、変成魔法をかけた」

 

ティアは泣いて拒絶したが、ついには抗えずに、変成魔法をかけられてしまった。

ということは、

 

「・・・つまり、ティアは本質的には魔物に近い、と」

「私の体内には魔石もあるし、魔力も直接操作できる」

 

実験は成功した、ということだ。

とはいえ、完全に魔物になったわけではなく、体内に魔石が生成されただけで、普通に腹も減るし、確証はないが生殖もできるだろうとは言われている。

だが、さすがに倫理に大きく背くということと、非常に手間がかかるということで、魔物化したのはティアだけらしい。

だからと言って、それで終わるわけではなかった。

 

「あの男は、他の魔人族に変成魔法を使わない代わりに、私をひたすらに強化しようとした。それが怖くて、私は逃げてきた」

 

もちろん、追手も来たが、途中で人間族と鉢合わせになり、ティアは逃げ切ることができたという。

 

「なるほどね・・・ん?なら、魔物の肉を食べても平気なんじゃ?」

「・・・反射的に、つい」

 

うっすらと顔を赤くして、目を逸らす。どうやら、今まで必死過ぎて忘れていたらしい。

 

「それで、ここに来た目的は?」

「・・・魔人族を、あの男を止めるため」

 

今の魔人族は、神に心酔している者が多くなっている。

早く止めなければ、悲惨なことになってしまうだろう。

 

「そのために、迷宮を攻略して、神代魔法を手に入れる」

「そういうことか・・・」

 

そして、今に至る、ということか。

わざわざオルクス大迷宮に来たのも、数少ない、場所がはっきりしている七大迷宮だからだろう。

だが、一つ問題がある。

 

「ちょっとなかり空気を読めないことを言うが、たぶん今のままだと無理だぞ。少なくとも、オルクス大迷宮は」

「え、どういうこと?」

「俺もな、ついさっきこの100階層を攻略したところだ。だが、奥にはさらに奥に続く階段があった」

「え・・・?」

「おそらく、さらに下にも迷宮があるんだろう。つまりそれこそが、神代魔法を手にするための()()()オルクス大迷宮だ。ここでボロボロになっているようなら、たぶん一番下まで行けないと思うぞ?途中でアウトだな」

「そんな・・・」

 

俺の言葉に、ティアが目に見えて意気消沈する。

 

「そ、それなら、ツルギも一緒に・・・」

「俺がいても同じだ。一人で潜ってたから、っていうのもあるが、ここに来るまでにだいぶ疲れた。1人が2人になっても結果は同じだろう」

「う・・・」

 

この下にさらに100層あって、魔物も強くなると考えたら、それだけで萎えてくる。

少なくとも、今潜っても攻略はできないだろう。

その俺の言葉に、ティアはしょんぼりとしてしまう。

その様子を見て、俺は頬をポリポリとかきながらある提案をした。

 

「なら、俺と一緒に旅をするか?」

「え?いいの?」

「あぁ、実はな・・・」

 

そう言って、俺はここに来るまでの経緯を話した。

ちなみに、教会の勇者召喚の話は、オルクス大迷宮に入る途中で耳にしていたらしく、それについても話をした。

そして、ハジメを探すために迷宮に潜った、と話し終えると、

 

「ツルギ、すごい・・・」

 

目を真っ赤に腫らして泣いていた。

ちょっと、予想の斜め上の反応だ。

 

「それで、この100階層にもあいつはいなかった。なら今頃は地上に出ていると考えてもいい。だから、いったん地上に戻って、ハジメを探す。その道中でも、もしかしたら他の大迷宮を攻略する機会もあるかもしれない」

「でも、私も一緒にいていいの?」

 

俺の励ましに、ティアは不安気に俺の目を見つめる。

 

「魔人族は、人間族の敵。だから、そのせいでツルギが大変に・・・」

「気にするな。んなもん教皇にケンカを売った時点で今さらだ。それに、俺は魔人族だからってだけで差別したりはしねぇよ」

「ツルギ・・・」

 

俺の言葉に、ティアの目がさらにうるんでいき、俺の胸にしがみついてきた。

そんなティアの肩に手をのせながら、ふと思った。

・・・なるほど、これが“ぼーいみーつがーる”ってやつか。

 

 

 

そういうことで、俺は魔人族のティアと共に、ハジメを探しつつ七大迷宮を攻略することになった。

 

 

 

だが、ハジメとの再会は、意外にも早く果たされることになった。


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