二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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勇者の堕ちる時

天之河光輝と言う人間について、語らなければならない人物がいる。

その人物の名前は、天之河完治(かんじ)。光輝の祖父にあたる人物で、業界では名の知れた敏腕弁護士だった。これはツルギも知らないことなのだが、ツルギの義父である峯坂樫司(けんじ)がツルギを引き取る際、そのサポートをした人物でもある。

完治は、光輝の祖母である妻が早くに他界したこともあって、光輝のことをたいそう可愛がった。光輝も、そんな完治のことを慕っており、長期休暇に家族で完治の家に遊びに行く時を楽しみにしていた。

そんな光輝に、完治は自らの経験談を光輝に話していた。もちろん、守秘義務などもあるから、それなりのアレンジを入れて、絵本を読み聞かせるように光輝に語った。光輝もまたその完治の経験談が好きで、何度も心を踊らされた。

完治の話の内容は、簡単に言えば、「弱気を助け、強きを挫き、困っている人には迷わず手を差し伸べ、正しいことを為し、常に公平であれ」という、理想と正義を体現した、ありふれたヒーロー物語だった。

だから、光輝にとって、それこそ漫画やテレビ番組にでてくるヒーローに抱くような憧れを、完治に抱いた。いや、身近にいた分、むしろ他の子供よりもその念は強かったと言える。“いつか自分も祖父のように”、と。

だが、当然のことだが、世の中は理想と正義が無条件でまかり通り、理不尽と悪を切り裂き、理想の正しさを掲げ続けられるようにはできていない。完治が“敏腕”弁護士と呼ばれるのも、そのような清濁を併せ持った現実的思考ができるからこそだ。世の中の汚れた部分も理想や正義を掲げるだけでは足りないと知っているからこそだった。

もちろん、完治もいつかはそのことを話すつもりだっただろう。ままならない現実を含んだ自らの苦い経験談を語ることで、生きていくうえで大切なことを話すつもりだっただろう。

だが、その前に完治は他界した。急性の心筋梗塞で、光輝が小学校に入る前のことであり、ツルギの件が起こった1か月後のことだ。

完治の死は、光輝に多大な影響を残した。

子供にはきれいなままでいて欲しいと考えるのは当然のことであり、完治を責められるものではないが、それでも光輝の現状の原因と言わざるを得なくなった。

光輝にとって憧れのヒーローであった完治の死は、光輝に強い衝撃を与えた。

心の中で完治との思い出に浸っているうちに、いつしか光輝の中で完治のヒーロー像は美化されていき、光輝の心の根幹に“理想の正しさ”が根付いてしまった。

その正しさは、完治が光輝に教えてきた通りもので、清濁のうち“濁”を一切認めないものだった。もっと言えば、大多数の人間が正しいと思っていることが絶対的に正しいと思うようになった。

もちろん、それ自体は珍しいことではない。子供がヒーローものの番組を見れば、誰だってそう思うだろう。そして、年齢を重ねるうちに現実に直面して失敗し、時に挫折し、現実の荒波と上手くやっていく術を身に付けるものだ。憧れは憧れのままに、理想は理想のままに胸の中にしまう。そうなるはずだった。

だが、光輝はそうならなかった。

なぜなら、光輝の非凡なスペックが現実の壁を越えさせてしまったから。失敗も挫折もなく、子供の正しさがまかり通ってしまったからだ。

結果、光輝はいつしか自分の正しさを疑うことをしなくなった。

もちろん、その危うさを両親や雫を筆頭に何人かが注意したが、光輝は笑って聞き流すだけで、真剣に受け止めることも、改めることもしなかった。元々のカリスマ性から、その一部を除いた周囲の人間がむやみに光輝を正しいと支持したことも、原因の1つだろう。

もちろん、何も軋轢がおきなかったわけではない。雫に対するやっかみも、その1つだろう。

だが、自分の正しさを疑わない光輝は、ご都合解釈で自分の正しさを維持するようになった。それすらも、光輝をむやみに慕う者たちによって後押しされ、自分がご都合解釈していると気づくこともなかった。忠告されても、気づこうとしなくなった。

だが、光輝の“理想の正しさ”は、異世界召喚というイレギュラーによって崩れ去ることになった。

日本ではなかった本物の殺意や憎悪、超常と非常識を前にして、光輝のご都合解釈が通用しなくなったのだ。

その最たる例に、魔人族の女の襲撃とハジメの変心、ツルギとの勝負の連敗があげられるだろう。

今になって直面した現実の壁を前にして、光輝は自分の中の“子供”を露呈した。

結果、

 

『奪われた、だろう?』

「違う!奪われたなんて・・・」

 

光輝が戦闘を始めてから30分。ずっとこのような光景が繰り返されていた。

虚像が言葉を並べれば光輝は否定し、虚像が強化される。それに焦った光輝は攻撃を続けるが虚像にはかすりもせず、自分が押される。気持ちの余裕がなくなってきた光輝は、虚像の言葉をさらに強く否定するようになり、虚像はさらに強化される。

この負のループが、完全な形で出来上がってしまっていた。

さらに、光輝はハジメが聖剣に施した強化をまったく使おうとせず、逆に虚像は遠慮なく使っているのも、光輝を追い詰めている原因の1つだろう。

虚像から言われるのは、「香織がヒーローである自分の隣にいないのが許せない」、「香織を奪った南雲が憎く妬ましい」、「峯坂の言うことは間違っている」、「そんな南雲たちをユエやティアたちのような美少女が慕っているのが許せない」、「あの力は、本来自分のものだった。あの2人がその力を使っているのが気に入らない」といったところだ。

そのすべてを、光輝は否定し、自分が正しいと半ば以上盲目的に信じて攻撃を続ける。

もちろん、そんな状態で虚像とまともに戦えるはずもなく、光輝の攻撃は簡単にあしらわれ、逆に攻撃を受けてしまう。

そのまま激情に流される形で“限界突破”を使っても、やはり虚像を上回ることはなく、さらに“限界突破”のタイムリミットによる焦燥も合わさり、今の光輝にまともな思考はまるでできていなかった。

そして虚像は、さらに光輝を揺さぶる言葉をかける。

 

『そんなことじゃ、また奪われるかもしれないな』

「っ、何を・・・」

『気が付いていないふりはやめよう。俺が気が付いているってことは、お前も気が付いているってことなんだからさ?』

「もう黙れっ!」

 

光輝は猛烈な不安に駆られ、虚像の口を止めるために攻撃を激しくするが、それでも止まらなかった。

 

『雫は、誰を見ている?』

「っ!!」

 

光輝は、全身の血が沸騰するような錯覚に襲われ、頭の中が真っ白になり、音すら消えたような気がした。

そして、無意識に自分をまきこむほどの“光爆”ですべてを吹き飛ばそうとするが、虚像は“縮地”で難なくこれを回避し、容赦なく光輝の心を切り刻んでいく。

 

『考えたくもないか?香織は南雲に奪われ、雫は峯坂に・・・』

「死ねぇええええ!!」

『おいおい、それは勇者のセリフじゃないぞ?それにどれだけわめこうが、雫の心が峯坂に傾いているのは事実だ。まぁ、無理もないか。何度も助けられたわけだし、雫は意外と乙女チックだし?』

「ゼァアアアアアッ!!」

 

光輝は絶叫をあげ、黒く淀んだ目で虚像に斬りかかる。

まるで、そんな現実は認めないと言うかのように。

だが、それに比例して虚像のステータスも上がり、癇癪を起こした子供のような一撃は簡単に打ち返され、腹に回し蹴りをくらわされる。

 

「がぁっ!?」

 

防ぐこともできずにもろにくらった光輝は、再び壁際まで吹き飛ばされてしまう。

 

『聞く耳持たず、か。雫の心も否定するんだな』

 

カツカツと足音を立てながら近づいてくる虚像が、頭を振りながら冷めた眼差しで光輝を見下ろす。

光輝は聖剣を杖代わりにふらふらと立ち上がり、普段からはありえないような凶相を虚像に向ける。

 

「そんな、こと・・・雫が、峯坂になんて・・・絶対に、あり得ない」

『八つ当たりしたり、拗ねたり、本心からの笑顔を見せたり・・・気が付いているだろ?』

「そんなの、誰にだって、していることだ・・・」

『ティアやイズモと接する峯坂を見て、不機嫌そうな表情になるのに?』

「・・・場をわきまえないことが、不快なんだよ・・・」

『ティアやイズモを見て、複雑そうな表情をしているのは?』

「・・・雫も・・・本心では、峯坂のことを認めていないんだ・・・」

『くくくっ、我ながら極まっているなぁ。そんなに信じたくないか?』

 

光輝の眼前に、虚像は黒い聖剣・・・魔剣とでも言うべきものを突き付ける。

光輝は虚像を射殺さんばかりににらみつけるが、それは虚像の失笑を誘うだけだった。

すると、不意に虚像が「来たか」と呟き、なにもない氷壁の方を見た。そして、その口が三日月のように裂ける。

 

『実にいいタイミングだ』

「余裕のつもりか!」

 

光輝が隙アリだと聖剣を跳ね上げるが、虚像は見もせずにそれを防ぐ。

つば競り合いをしながら視線を光輝に戻し、宣告のように言葉を下した。

 

『さぁ、現実がやって来るぞ?』

「何を言って!」

 

その直後、氷壁の一部が溶け出し、新たな通路が出現した。

光輝がそちらに視線を向け、そこで見てしまったのは、

 

「ここは、まだ試練中・・・あ」

 

聞えたのは、もう聞き慣れた、だが今最も聞きたくなかった声。

そこには、()()()()()()ツルギが立っていた。

背負われた雫を見て、その表情が焼き印のように脳裏に刻まれる。

ツルギの肩に頬を預け、心から安心しきった表情で眠る・・・幸せそうな表情が。

そこで、光輝の中で何かがはじけた。

 

 

* * *

 

 

純白の輝きが、大瀑布となって降り注ぐ。

それが、俺が通路を抜けてから見た光景だ。

だが、その前に視界に入った顔を見て、嫌な予感がして苦無を生成して手首のスナップだけで投擲しておいたから、苦無を基点に座標交換を発動して難なくその一撃を躱した。

もし魔物だと勘違いしたのなら、八重樫を紋所を掲げるようにして見せれば死ぬ気で止まるかもしれなかったが、俺の視界に映った表情は、その目は、明らかに正気ではなかった。

俺がついさっきまでいた場所に、深い亀裂が刻まれたことからも、俺を本気で殺す気だったのがわかる。

後ろに背負っている八重樫は、「んんぅ」と軽く身じろぎしただけで、眠り続けるままだ。

呆れとともに、嫌な、ていうよりもう手遅れな予感を感じながらも、ニヤニヤ笑っている虚像をちらりと見てから、俺は攻撃した人物、天之河に声をかけた。

 

「んで?これはどういうつもりだ、天之河?」

 

対する天之河は、聖剣を地面に深くめり込ませ、うつむいた状態のまま小言でなにかを呟くだけだった。

 

「・・・が・・・だ。・・・で、う・・・ら」

「あ?なんだって?まぁ、それはともかく、相手は俺たちじゃなくてあっち・・・」

「俺たち?」

 

なんでそこに反応したんだ?

だが、ぐるりと顔を上げた天之河の目は、妖しい輝きを帯びている。

 

「まるで、自分と雫がワンセットみたいな言い方だな、え?雫はお前のものじゃないぞ。ふざけているのか?」

「・・・ふざけてるのはどっちだよ。いいから、さっさと終わらせろ。敵はあっちだって・・・」

 

できるだけ平静を努めて言葉を返したが、聖剣を引きずりながらゆらゆらとした足取りで俺の方に近づいてくる天之河を見て、予感が確信に変わった。

案の定、俺の言葉は通じなくて、

 

「・・・あぁ、終わらせるよ。お前なんかに一々言われなくても、全て終わらせてやるさ!」

 

カッと目を見開き、絶叫した天之河は聖剣に光を纏わせ、躊躇なく俺の首を狙って薙ぎ払った。

 

「ちっ。やっぱ堕とされやがったか、バカが!」

「黙れ!お前が消えれば全て元に戻るんだっ!さっさと死ねぇえええ!!」

 

やはり、俺の確信は間違っていなかった。

追い詰められた天之河は、自分に敗北したのだ。

そして、俺が背負っている八重樫がとどめになったんだろう。

本当に、くそったれなタイミングだ。

 

「“天翔閃・八翼”ッ」

「おっ、とっと」

 

さっきから、本気で俺を殺しにかかっている。別に避けるのに苦労はしないが、俺が後ろに背負っている八重樫が見えないのか?

 

「おい、ちょっと落ち着け。八重樫が死んでもいいのか?」

 

そう思った俺は、背負っている八重樫を天之河に見せつける。

場合によっては、人質をとっているように聞こえなくもないが、事実は事実だ。

これでちょっとは、天之河も落ち着いて・・・

 

「この卑怯者がっ。雫を開放しろ!」

 

くれるはずもなかったか。

自分で致死性の攻撃を放っておきながら、俺の言葉をそのまま悪い方向にもっていって勝手に激昂するこいつの神経、マジで理解できん。

そこで、ようやく八重樫が目を覚まし始めてくれた。

 

「ん、んむぅ、な~にぃ?もう少し寝かせ・・・」

「よくもまぁ、この状況で寝ぼけていられるなぁ、おい!さっさと起きないとこのまま投げ飛ばすぞ!」

 

あまりにも緊張感のない言葉に、俺も思わずイラっとして八重樫の太ももを強くつねながら、天之河からの攻撃を防ぐための空間遮断障壁を展開する。

別に本当に投げ飛ばすつもりで言ったわけではないが、これで起きないようなら本当に投げ飛ばすか検討する必要がある。

幸い、八重樫はこの痛みと戦闘中の轟音で目を覚まし、慌てて俺の背中から飛び降りた。

 

「爆睡しすぎだろ。どんだけ図太いんだよ」

「べ、別に図太くなんてないわよ。ただ、峯坂君の背中が気持ちよごにょごにょ・・・」

 

途中あたりから何を言ったのかわからないが、どうでもいいことなのは間違いないだろう。

 

「まぁ、それはどうでもいいんだ。それより、あれをどうにかしてくれ」

「ど、どうでもいいって・・・っていうか、この状況、いったいどうなって・・・え?」

 

八重樫は俺の言葉で攻撃を放っている人物を見て、呆けた声を出して棒立ちになり、信じられないといったような視線を正面に向ける。

それもそうだろう。なにせ、自らの幼馴染が自分たちに対して殺傷性の高い攻撃を放っているわけだから。

 

「どうやら、堕ちたみたいだな。俺が諸悪の根源って感じで」

「そんな・・・」

 

天之河がこうなった原因の一つである虚像は、相変わらずニヤニヤと俺たちの方を見るだけだ。

八重樫も、だいたいの事情は察したようで、再び砲撃を放とうとしている天之河に向かって声を張り上げる。

 

「光輝!ダメよ!もう一人の自分に負けてはダメ!正気に戻って、自分に打ち勝って!」

 

深い憂慮を含んだ声で、天之河に語りかける。

俺としては、天之河はただただウザイ奴だが、幼馴染みである八重樫にはいろいろと思うところがあるのだろう。必死に声を張り上げて、天之河の心を奮い立たせようとする。

だが、

 

「・・・大丈夫さ。雫のことは必ず助け出してみせるよ」

「光輝?何を言って・・・」

「峯坂に洗脳されてしまったんだろ?大丈夫。峯坂を倒せば解けるはずだ」

 

天之河は笑みを浮かべながら、俺にとってもちょっと想像の斜め上の言葉が返され、八重樫は絶句する。

ついで、天之河は殺気はそのままに、視線を俺に向ける。

 

「・・・峯坂、元クラスメイトでも俺の大切な幼馴染を傷付けてただで済むと思うな。お前を倒して、香織や他の女の子達にかけられた洗脳も全て解いてやる!そして、彼女達と共に、俺は世界を救う!!」

 

いつのまにか、香織やユエたちも俺が洗脳したことになっていた。こいつ、ここまで意味不明なことを言うやつだったっけ?

推測でしかないが、おそらく香織をハジメに奪われた(と本人は思っている)天之河の最後の砦が八重樫だったのだろう。

だが、その八重樫が、俺の背中に頬を預けて眠っていた。

そんな認められない現実を突きつけられてしまった結果、「峯坂ツルギは複数の女の子たちを洗脳し、世界を救おうとしている自分を邪魔する諸悪の根源」と、自分の都合のいい空想に置き換えたんだろう。

ここまで徹底したご都合主義は、俺も始めて見た。感心すら抱いてしまう。

絶句していた八重樫は、それでも天之河を元に戻そうと言葉を絞り出す。

 

「光輝!しっかりしなさい!何を吹き込まれたのか知らないけれど、惑わされないで!」

「雫・・・」

「聞いて、光輝。自分の嫌な部分と向き合うのは本当に辛いことよ。私も危うく死ぬところだったから良くわかるわ。でも、受け入れて乗り越えないと先へは進めない。強くなって沢山の人を救いたいなら、ここで都合のいい思い込みに縋ってはダメ。貴方の敵は貴方自身。あそこでニヤついてるもう1人の光輝よ!目を覚ましなさい!」

 

八重樫が必死に呼びかけるが、虚像は微動だにしない。おそらく、これも試練の1つということか。

俺も、天之河の対処は八重樫に任せ、後ろで黙ったまま待っていた。

そんな中、天之河は微笑みを浮かべた。

だが、それは日本で見かけたものよりも歪で、根本的に違っていた。

 

「ありがとう、雫。雫は、いつもそうやって俺の為に真剣になってくれるよな」

「光輝・・・」

 

八重樫は元に戻ったのかと、僅かな期待を浮かべたが、

 

「本当に嬉しいよ。洗脳されているのに、それでも俺を想ってくれているんだから」

「・・・光輝?」

「大丈夫。あの俺と同じ顔をした魔物は倒すし、峯坂からも救い出す。もう、好きでもない男の傍に寄り添う必要はないんだ。雫がいるべき場所に帰してみせるからな」

「・・・」

 

天之河の言葉に、八重樫はその表情から感情が抜け落ちつつも、静かに問い返す。

 

「・・・私がいるべき場所?それは何処のことを言っているのかしら?」

「そうか・・・それもわからなくなってしまったんだな。かわいそうに。峯坂は本当に許せないな」

「光輝。答えて」

「あぁ、それはもちろん、俺の隣だよ。今までずっとそうだったし、これからもそうだ」

「・・・光輝。あの夜のことを覚えているかしら?香織が旅立った日、橋の上で話したこと」

「ああ、もちろん覚えているさ。正しさを疑えってやつだろう?」

 

ふ~ん?あの時に、そんなことを話していたのか。こっちはこっちで、いろいろとあったんだな。

 

「大丈夫。最初から峯坂は危険な奴だと思っていたけど、雫の言葉があったから、今まで散々峯坂を見てきてやったんだ。でも、やっぱり最低な裏切り者以外の何者でもなかったよ」

 

・・・効果はまったくなかったみたいだけど。

ていうか、今までの話の中でハジメの名前が出ていなのはどうなっているんだ?今の天之河からすれば、ハジメもあいつの言う諸悪の根源ってことになりそうだが。

これはこれで、嫌な予感がするな。

 

「違うでしょっ。光輝!私が言いたかったのは・・・!」

「問答は無用だ、雫。洗脳された状態ではわからないだろうけど、これが“正しい”ことなんだよ」

 

八重樫の言葉を、問答無用と切り捨てた。

説得は失敗、か。

だとすれば、今度は俺の番になる。

ちょうどいい機会だ。一度、天之河には本気で痛い目にあってもらおう。




「なんだか、昼ドラを見てる気分だ・・・」
「そこ!何を言ってるのよ!」
「いっそ、『私のために争わないで!』って言ってみたらどうだ?」
「そんなこと言うわけないでしょ!」
「峯坂、やっぱりお前は・・・!」
「あ~もう!いい加減にしなさい!」
『・・・こんなつもりじゃなかったんだがな』

大迷宮の意図しない方向で光輝のヘイトを稼ぐツルギの図。

~~~~~~~~~~~

何気に初登場・・・のはずのツルギの親父の名前。
どこかで名前を出したような出してなかったような、って感じで全文検索でざっと見直して、やっぱり見当たらなかったので書きました。
それでも、ぶっちゃけ、それでも「どこかで書いたような、書いてないような・・・」、って感じでかなり不安なんですよね。
ツルギ視点だと基本的に「親父」ですし、3人称視点で書く機会もあまりなかったので・・・。
もしどこかで見かけたっていう読者様がいたら、感想欄に書いていただけると幸いです。

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