二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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待ち受けていたのは

意識が覚醒し始めて最初に感じたのは、なぜか息苦しさだった。それに、目を開けても真っ暗だし、体も上手く動かせない。

ただ、本当に苦しいというわけではなくて、何か柔らかいものに包まれているような、そういう感覚。

まさかと思い、身をよじらせて顔を上げると、

 

「起きたか、ツルギ」

 

目の前に、イズモの顔があった。

いやまぁ、なんとなくわかってたけどな?

もはや、ツッコむ気すら起きない。

それはそうと、今いるのは住居の中の寝室でいいんだろうが、

 

「ティアはどこだ?」

 

動かせる範囲で周りを見渡しても、ティアの姿がない。別室の可能性もあるが、わざわざそうする意味はないだろうし。

 

「ん、んぅ・・・」

 

すると、どこからかティアの声が聞こえてきた。

近いところにいるようだが、声がくぐもっている。布団の中か?

首をかしげていると、イズモが少しいたずらっぽい笑みを浮かべ、

 

「ティアなら、ここだ」

 

そう言って、自慢の尻尾を振り振りさせた。

・・・まさか。

そう思って体を起き上がらせると、ティアの上半身がイズモの尻尾の中に埋まっていた。完全に顔が見えない位置まで深くもぐりこんでいるようだが。

ていうか、息できてるのか、これ?

少し心配になって、そっとイズモの尻尾を持ち上げてみると、

 

「んむぅ・・・えへへ・・・」

 

ずいぶんと幸せそうな表情で、イズモの尻尾に頬ずりしながら抱きついていた。

なんだか心配したのが馬鹿らしくなり、そっと尻尾を元の位置に戻して再び横になった。

 

「俺とティアが意識を失ってから、どれくらい経った?」

「3時間と少し、といったところだな」

 

なら、だいたいハジメたちと同じくらいの間か。

なるべく早いに越したことはないと飛ばしてきたが、予定の3日よりもだいぶ余裕を持てた。

今すぐ戻ってもいいが、ティアはまだ夢心地だし、少しくらいここでゴロゴロしても罰は当たらないか。

 

「それで、神代魔法の真髄は理解できたのか?」

「あぁ、問題ない。実践に関しても、何とかなりそうだ」

 

今回得た知識は、だいたい氷雪洞窟でハジメから聞いたのと同じだった。その分、頭の整理も簡単に済ませられる。

それに、俺の意図していなかった収穫もあった。

正直、それだけでもわざわざオルクスに挑んだ甲斐があったというものだ。

とはいえ、内容が内容だから、今はまだ話さないでおこう。

 

「にしても、解放者はこの深奥に自力でたどり着いたんだよな。そう考えると、俺たちよりもよっぽど化け物だな」

「・・・そういうツルギも、少しは独力でたどり着いただろう?」

「俺はあくまで推測だけで、実践なんてできる自信はなかったし、概念魔法の存在を聞かされたからこそだしな。それほどではない」

「ツルギなら、それでも時間をかければできそうだがな」

 

ずいぶんと俺のことを高く買ってくれるが、さすがに俺もそこまでは・・・できないって言いきれない、か?なんだろう、時間をかければできなくもない気がしてきた。

どうなんだろうと悶々としながら考えると、イズモが再び俺を胸元に引き寄せて抱きしめた。

 

「うわぷっ、いきなりだな」

「ツルギが悩んでいるときは、こうしてやるのが一番だからな」

 

すっかり味を占められているが、俺としても悪い気はしないから、抵抗せずにされるがままになってみる。

すでに何度もイズモに抱きしめられているが、やはりこの包容力には抗いがたいものがある。物理的にも、精神的にも。

やっぱり、この安らぎは年の功から成るもの、ということなのか・・・いや、そもそもの体つきが・・・

 

「ツ~ル~ギ~」

 

そこまで考えたところで、イズモの後ろから伸びてきた腕に抱きつかれ・・・いや、締め付けられる。

・・・もう、いつまで経っても学習しないとか、そういうことを考えることもなくなってきたな・・・。

むしろ、締め付けられるだけ感触がダイレクトに・・・。

 

「・・・ねぇ、まだ時間はあるのよね?」

 

すると、ティアが不意に尋ねてきた。

 

「え?あ、あぁ、もともと時間に余裕をもって攻略するつもりだったからな。3日目は丸々ではないが、それに近いくらいは時間がある」

 

質問の意図はわからないが、さっきイズモと話したことでもあるから、若干戸惑いつつも答える。

すると、

 

「・・・だったら、ここでしちゃわない?・・・3()()()

 

締め付けてくるティアの手が、指先で撫でるように俺の背筋をなぞった。

しちゃうってのは、つまり、そういうことか・・・?

・・・しかも、3人で?

・・・ちょっと俺にはハードルが高い、っていうか、ハジメもまだの領域だと思うんですが・・・。

 

「ね、ダメ・・・?」

 

イズモの肩からのぞいてきたティアの表情は、すでにやる気になっているのを示すように、頬が赤く染まっていた。

いやまさか、と思いながらイズモを見てみると、

 

「・・・ツルギとティアと、3人で?いや、だがそれも・・・」

 

わりとまんざらではない、というかむしろ乗り気にすら見えた。

これは・・・逃れられないパターンだな?

 

「ねぇ?ツルギ・・・いいでしょ?」

 

とどめに、ティアから潤んだ瞳でねだられて、そこで俺の理性がプッツンして2人を押し倒した。

ついでに、帰ったらハジメと一緒にユエも殴っておこうと心に決めた。

 

 

 

ちなみに、一瞬、ほんの一瞬だけ、ここでハジメとユエも、と考えたのを悟られて、2人にさらに激しく求められたのはここだけの秘密にしておこう。

 

 

* * *

 

 

結局、終わったあとにそのまま力尽きて眠り込んでしまい、目が覚めたときにはすでに時間ギリギリになってしまった。

とはいえ、ここで慌てて戻ろうものなら、ハジメたちに余計な勘ぐりをさせるに違いない。

だから、できるだけ「攻略してちょっと休憩してから戻ってきました」な態度を装ってゲートを通った。

 

「おう、ツルギ。攻略後はよろしくやっごぶふっ!?」

 

出会い頭に、ニヤニヤしながら話しかけてきたハジメに一発全力の右ストレート(浸透勁+魂魄への衝撃付き)を顔面にかまし、

 

「・・・ん。これは3人でやっはきゅん!?」

 

ハジメの言葉に同意しようとしたユエに強めの指弾(剣製魔法で生成して痛覚操作を無効にできる効果も付与)を額に直撃させた。

 

「・・・で?他に何か言いたい奴はいるか?」

 

言外に「ハジメとユエみたいな質問したらぶっ潰す」と伝えて、周りに視線を送った。

とりあえず、顔を真っ赤にしている谷口と、俺とティア、イズモを交互に見ながらぶつぶつ呟いている雫は見えないふりをし、雫を意味ありげに見るティアにも気づかないふりをして、主に天之河と坂上に尋ねた。「お前らはわかってるよな?」みたいな感じで。

シアとティオ、香織に話を振らなかったのは、小さい声でキャッキャとはしゃぎ気味に話しているからだ。主にシアが赤くした頬を抑えてイヤンイヤンしていることから、シアがユエと一緒にやるのかとか、そんな感じのことを話しているんだろう。

俺としても天之河に話を振るのは癪だが、ここで余計に事態を悪化させるよりはマシだ。

天之河も、俺の意志を理解してくれたのか、望んだ質問をしてくれた。

 

「そ、それで、峯坂。オルクスは攻略できたのか?」

「あぁ。ハジメの言っていた概念魔法の前提知識、神代魔法の深奥は、俺もティアも身に付けた」

 

おそらく、やろうと思えば概念魔法の構築も可能だろう。

それに、

 

「もう1つ、でかいおまけがついたな」

「え?それってなんだ?まさか、変成魔法で奈落の魔物を手なずけたとかか?」

 

坂上が、少し食い気味に尋ねてきた。

この3日で、谷口と坂上、雫は樹海の魔物を従えたが、単純な強さで言えば奈落の魔物の方がはるかに上だ。変成魔法で味方にしつつ強化すれば、かなり心強い。

だが、残念ながら違う。

 

「いや、悪いが今回は奈落の魔物は手なずけていない。一応、オルクスの隠れ家にもゲートを設置しておいたが、難易度を考えてもまた今度だな」

「だったら、なんなんだよ?」

「細かい話は後だ。俺としても、もう少し整理してから話したいしな」

 

今回ばかりは、俺も使いこなすのに骨が折れそうだ。だから、ある程度安定して使いこなせるようになって機会があれば言うくらいでいいだろう。

 

「おい、ツルギてめぇ!!」

 

あらかた話し終えたところで、復活したハジメが俺の方に近づいてきた。

 

「なんで1発殴るだけであんなに手が込んでいるんだよ!」

「1発だけだからこそ、いろいろと手間をかけるんだよ。1発でできるだけダメージを与えれるようにな」

「くそ、確信犯かよっ」

 

そもそも、俺とハジメのステータス差だと、ただ殴っただけではダメージを与えられない。だから、今までは浸透勁なんかを組み合わせていた。そして、神代魔法の深奥を理解した今なら、拳1発に様々な要素を追加することもできる。魂魄への衝撃もその1つだし、何なら昇華魔法の情報操作によって衝撃を全身に浸透させることだってできる。神代魔法の無駄使いな気がしなくもないが、有効打になるのであれば無駄ではない。

 

「・・・ん。ツルギひどい。わざわざ痛くなるように細工するなんて」

 

続いて、ユエが額を押さえながら俺に文句を言ってくるが、

 

「俺はな、ユエにもいろいろと言っておきたいことがあるんだよ。ティアに余計なことを吹き込みやがって」

「・・・ん、なんのことだか」

「とぼけんな。思えば、ライセンを攻略した後が最初だったな。わざわざ大胆にさせるように仕向けやがって」

「・・・でも、悪くはなかったでしょ?」

「良い悪いの問題じゃねぇんだよ。人の彼女をエロく仕上げやがって」

「・・・ティアは、私が育てた」

「それ、できればシアだけにしてほしかったな」

 

もうこの時点で、さっきまで何があったのか白状しているようなものだが、すでにばれていそうな雰囲気だったから気にしないことにした。実際、ティアがここまでエロくなっちゃったのは、だいたいユエのせいだし。

 

「まぁ、無駄話はこれくらいにしておいて、さっさと出るぞ」

 

これ以上この話を続けるのは、俺の精神的につらい。

 

「それで、出る準備はできているのか?」

「あぁ、この攻略の証で出られるだろう」

 

そう言って、ハジメは宝物庫から氷雪洞窟の攻略の証だというペンダントを取り出した。垂れる水滴を模した、青みがかった透明な石でできており、中に解放者の紋章が刻まれている。

ハジメはそれを持って邸宅を出て、泉の直前にある魔法陣の上に足を踏み入れた。

 

ビキビキッ

 

すると、眼前の泉が突然音をたてながら凍り付き始め、徐々に盛り上がっていった。そして、高さ10mほどの卵型の氷塊になると、膨張しながら全体に亀裂が入り始め、最後に氷塊がはじけ飛んだ。

バリンッ!と音を立てて中からでてきたのは、半透明の氷でできた竜で、その体は水晶のような光沢をおびている。

その竜は俺たちの近くに寄ると、ゆっくりと首を下ろした。どうやら、背中に乗れということらしい。

 

「これまたファンタジーなショートカットだな」

「・・・ん。ご褒美?」

「ずいぶんと粋なことをするな。徹頭徹尾、芸術にこだわっているともとれるが」

「でも、試練の内容とかけ離れた親切心よね」

 

あるいは、あのような試練を課したからこそ、かもしれないが。

そんなことを話しながら、鱗が階段状になっている首を登って背中に乗り込んだ。

全員が乗り終えると、氷竜は翼をはためかせて飛び上がった。みるみると天井が迫ってくるが、当たる直前に天井の伊津部が溶け出し、一本の通路になった。

俺たちを乗せた氷竜はぐんぐんと加速し、地上に飛び上がってもそのまま上昇し続け、とうとう雲の上にまでたどり着いた。

氷竜は俺たちを振り落とそうとはせず、そのまま雲海の上を優雅に飛翔し始めた。

 

「太陽の位置からして、北西に向かって飛んでいるな・・・どうやら、親切に雪原の境界まで乗せていってくれるらしい」

「へぇ・・・ミレディとメイルはどうして汚物みたいに流したんだよ」

「・・・ん。ミレディとメイルは見習うべき」

「私、解放者って女性の方が悪辣な気がします」

「たしかに、試練の内容も悪辣なのが多いわよね」

 

たしかに、リューティリス・ハルツィナは帰りは親切だったが、媚薬やGをふんだんに使うという正気とは思えない試練を用意しておきながら、最後の空間で休憩するスペースを用意しなかったしな。ある意味、解放者の女性陣には碌な人物がいなかったことがわかる。

それに、北西に飛んでるということは、北のガーランドにも西のライセン大峡谷にも行きやすい方角だ。

本当に、解放者の女性陣にはこういう気遣いを見習ってほしい。

そんなことを考えながらしばらくして、氷竜はゆっくりと降下を始めた。そのまま雲の中を突っ切り、吹雪の中を少し進んでちょうど雪原と峡谷の境界に柔らかく着地した。

最初から最後まで気遣いにあふれた、本当に素晴らしい帰還だった。

俺たちが降りると、氷竜は俺たちを一瞥してから飛び上がり、雪原の奥へと飛び去って行った。

後は、この雪原から出るだけだが・・・

 

「・・・お前ら、気を付けろ。境界の外にいろいろといやがるぞ」

「ずいぶんとやばい気配が、数えきれないくらいあるな・・・ざっと400から500ってところか。他にも、数百の魔物っぽい気配が待ち受けている」

 

俺とハジメの警告に、緊張が走った。全員が武器を手に取ったり、戦闘態勢に入った。

そして、互いに目を合わせて頷きあい、吹雪の外に足を踏み出した。

そこにいたのは、

 

「やはりここに出て来たか。私のときと同じだな・・・それで、全員攻略したのか?白髪の少年よ」

「来たな。峯坂ツルギ」

「ふふっ、光輝くん、久しぶり~。元気だったぁ?」

 

白竜ウラノスに乗るフリードに、白い竜の翼を生やして滞空するリヒト。

竜種を主軸にした飛行型の魔物の軍隊、およそ数百。

灰髪をなびかせ、同じく灰色の翼をはためかせている中村。

 

 

そして、銀髪銀翼のまったく同じ顔で、両手に大剣を持った女・・・真の神の使徒、およそ500体だった。




「さて、今日で3日目だが・・・ツルギたちはどうしていると思う?」
「無難なのは、攻略の疲れをとっているんじゃないかな?」
「むしろ、ツルギさんは疲れることになりそうですぅ」
「・・・案外、3人でしているという可能性も」
「ふむ、前までのイズモなら考えられないが、今なら・・・それなら妾も・・・」
「お前は却下だ、駄竜」
「ハジメ君・・・まだダメかな?」
「香織も、変なことを言わないでくれ」
「・・・なら、私とシアは?」
「えっ、ユエさん?!で、でも、それなら・・・」
「ユ~エ~?何を言っているのかな?そんなことしたら、ユエとシアの戦力差が露呈するだけだよ?」
「・・・香織っ、ぶっ殺すっ!」
「受けて立つよ!」
「・・・ダメだ。こっちもこっちで落ち着けねぇ」

ツルギたちがオルクスに行って3日目のハジメたちの図。

~~~~~~~~~~~

今回、ちょっとぶっこんでみましたが・・・大丈夫ですよね?
ちょっと不安な部分もありますが・・・ほら、最近はなろうでもそういうのが風当たり強いって聞きますし。
実際、それで自主削除&改稿予定になった作品もありますし。
まぁ、ハーメルンはそのあたりはまだゆるめですし、多少はね・・・?


さて、お知らせですが、しばらく本作の投稿をペースを下げようかなと思います。
息抜きもそうですが、次のありふれ文庫が零の方だと分かり、文庫に沿っている本作だと行き詰まるところが多少あるので。
もちろん、web版の方も参考にしながら書きますが、文庫が出てから書き直そうと思うと、かなり間が空いて、作業が大変なことになりかねないですし。
とはいえ、次からはオリジナル展開がわりとたくさんの予定なので、そこまで大変なことにはならないでしょうが。
とりあえず、しばらくは何か新作でも考えながら合間に本作を執筆する、という感じになると思います。
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