二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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人質問題

俺たちの前に現れた、リヒト、フリード、中村恵里、数万はいるだろう魔物たち、そして、数百の同じ顔を持った神の使徒。

余裕の態度をとるフリードと中村にハジメは剣呑に目を細め、俺も油断なく俺たちを見据えるリヒトに対抗するために刀を2本生成して両手に持った。天之河たちは、目の前の光景に体を強張らせているが。

それにしても、ハルツィナ樹海で察していたが、やっぱりたくさんいやがったか。

だが、それくらいなら今の俺たちの相手ではない。昇華魔法によってステータスやハジメの兵器の性能が引き上がっているから、1対1はもちろん、対多数でも問題なく相手できる。

しかし、それを考慮しても向こうのあの余裕は解せない。

おそらく、真の神の使徒がいるから、というだけではないはずだ。

王都侵攻の際は、相手の魔物を軽く10万を葬り、ハジメも苦戦したものの神の使徒を1人撃破した。

そんなことがあって、今さら“数の利”を信じるバカではないと思うが。

そんな俺の思考を知ってか知らずか、ハジメは今にも殺意を解き放とうとしたとき、先んじてフリードが口を開いた。

 

「逸るな。今は、貴様らと殺し合いに耽るつもりはない。地に這い蹲らせ、許しを乞わせたいのは山々だがな」

「へぇ、じゃあ、何をしに来たんだ?駄々を捏ねるしか能のない神に絶望でもして、自殺しに来たのかと思ったんだが?」

 

ハジメの挑発に、フリードとリヒトはピクリと眉を動かした。

ハジメの言う“能のない神”とは、もちろんエヒトのことで、この反応で魔人族の崇める神がエヒト本人かその眷属であり、エヒトにとってはどっちも玩具でしかない、という俺たちの推測はあながち間違っていないようだ。

もちろん、向こうがそのことをどれだけ理解しているかは知らないが・・・というか、理解しようといているかすら怪しいが。

 

「・・・挑発には乗らん。これも全ては我が主が私にお与え下さった命。私はただ、それを遂行するのみだ」

「・・・寛容なる我が主は」

「俺たちを招待しろ、とでも言ったか?目的は、おそらくユエあたりか」

 

フリードが答える前に、俺が被せるようにして答えを口にした。

フリードは自分の台詞を遮られたことに怒りで顔を赤くしているが、俺は気に留めずにしゃべり続ける。

 

「ティアから聞いたが、アルヴとはお前たちが信仰する神であると同時に、魔王でもある。何やら偉大なる目的がどうたらこうたら言っているようだが、まぁ、どうせどうでもいいことだろうから、今は気にすることでもないか。っつーか、むしろ今はお前の方が邪魔だから下がってろ」

 

どこまでも眼中にない言い方にフリードが爆発する寸前だが、さっさと視線を切って俺は中村に視線を向けた。

本来なら谷口や天之河と話させるべきなんだろうが、2人とも唐突過ぎる再会にうまく口を動かせないでいるから、代わりに俺が口を開く。

 

「中村。少し見ない間に、ずいぶんと愉快な格好になったな。魔王とやらに改造してもらったのか?」

「・・・本当に、うざったらしいくらいに聡いね。うん、そうだよ。ボクは光輝くんと2人だけで甘く生きたいだけなのに、そんなささやかな願いすら邪魔するクソったれ共が多いからさ。だから、ごみ共を掃除するためにこの力をもらったのさ!」

 

そう言った、中村は空中でくるりと回り、灰色の翼から羽をまき散らす。羽ははらりと舞い散り、地面に落ちると一瞬で触れた部分を分解した。

 

「・・・体はそのままに、力だけを付与した、ってことか。ずいぶんと器用なんだな、魔王サマってのは」

 

俺の目が、間違いなく目の前の少女は中村恵里であると示している。おそらく、俺たちでいう変成魔法と昇華魔法によるものだろう。

やはり、神とやらは当然のように神代魔法の深奥に足を踏み入れているようだ。

だが、相手から返答を得る前に、隣からジャキッ!と硬質な音が鳴った。

音のした方を見れば、ハジメがすでにドンナーを構えていた。

 

「取り敢えず、皆殺しでOKだろ?」

「・・・ん。招きに応じる理由もない」

「ぶっ飛ばして終わりですぅ!」

「・・・流石に、こんなに同じ顔が揃うと、自分じゃないと分かっていても不気味だね」

「そも、招き方もなっとらんのじゃ。礼儀知らずには、ちと、お灸を据えてやらねばいかんのぅ」

 

ハジメだけでなく、ユエたちもやる気満々というように戦闘態勢をとり、言葉にはしていないもののティアとイズモも静かに戦闘態勢をとっていた。

だが、

 

「待て、お前ら」

 

俺が一歩前に出て腕を振り上げ、ハジメたちを制止させた。

 

「どういうことだ、ツルギ?」

「相手が明らかに余裕すぎる。何かしら小細工があるはずだ。例えば・・・人質とかな」

 

俺の言葉に天之河たちがハッとし、フリードもニヤリと笑って遠く離れた場所の光景を映し出す空間魔法“仙鏡”で、ガーランドの王城らしき場所を映し出した。

そこには、

 

「・・・やっぱりか」

「・・・クソが」

 

赤黒い魔力に包まれた金属の檻の中に、クラスメイトを始めとした俺たちの知り合いが閉じ込められていた。中には、姫さんとアンナもいる。

ハジメから思わず汚い言葉が飛び出し、ユエたちも苦虫をかみつぶしたような表情になる。天之河たちも、特に動揺がひどい。

映像をよく見れば、応戦して負傷したらしき永山パーティーや、彼らほどでないにしても愛ちゃん護衛隊の面々も苦悶の表情でうずくまっている。

 

「チッ、本物か・・・」

 

ハジメが咄嗟に羅針盤を取り出して確かめると、たしかにみんなが捕らわれているのがガーランドの王城であり、映像が偽物でないことを証明していた。

 

「ほぅ、随分と面白い物を持っているな、少年。探査用のアーティファクトにしては、随分と強力な力を感じるぞ?それで大切な仲間の所在は確かめられたか?」

 

フリードは優越感たっぷりに、羅針盤に興味を持ったように話しかける。

香織たちも苦渋の表情になり、天之河が真っ先に吠えようとした。

だが、その寸前で俺が刀を振り上げて天之河を制止させ、先ほどから一言も言葉を発していないリヒトに話しかけた。

 

「意外だな。こういう手は好まないと思ったんだが?」

「これは戦争だ。卑怯も姑息もないだろう」

「ごもっともだな。だが・・・相手が悪かったな」

 

俺がそう言った直後、ドパンッドパンッドパンッ!と聞き慣れた銃声がとどろいた。

ハジメが放ったレールガンはフリード、リヒト、中村に真っすぐ飛翔し、だが神の使徒が直前で前に割り込んで銃弾をはじいた。

大剣は今の1発でかなりでかいヒビを入れられたが、破壊することはできなかったようで、ハジメが小さく舌打ちした。

とはいえ、ここで中村を殺されるのは俺としても不本意だから、刀を振り上げてハジメを制止させる。

さすがに動揺したのか、フリードは冷や汗を流しながらも余裕の態度を崩さずに話しかけてくる。

 

「・・・この狂人が。仲間の命が惜しくないのか」

「お前は、いつになったら学習するんだ?」

 

フリードの問い掛けに、ハジメの代わりに俺が呆れ100%の声音で答えた。

 

「前も言っただろう。あいつらはクラスメイトだが、仲間じゃない。それにどのみち、大人しくついて行ったところで、最終的に殺されるのがオチだろう?早いか遅いか、その違いでしかない。あぁ、俺の方も期待するなよ。積極的に見捨てるつもりはないが、全員助けることにこだわりもないからな。それに、だ」

 

そう言って、俺は右足を一歩前に踏み出し、

 

 

 

 

「招かれる前に皆殺ししても、招かれた後に皆殺ししても、どっちも変わらない。そうだろう?」

 

 

 

 

本気の殺気を放った。

それだけで、近くに展開していた魔物は一切の例外なく息絶え、それ以外の魔物も取り乱して暴れるか泡を吹いて気絶した。

リヒトや神の使徒は一斉に戦闘態勢をとり、傍にいるハジメも思わず冷や汗を一筋流しながら「あれ?こいつ、こんな性格だったっけか?」と呟いていた。

一応、この発言には「死んでも1時間くらいならなんとか蘇生できる」という打算もあるからだが、俺の限りなく本物に近い本気の殺気に、さすがのフリードと中村も余裕の態度を崩しかけ、リヒトも殺気を高めて臨戦態勢をとった。

だが、自分が気圧されたことに対する憤怒からか一瞬表情を歪め、それもすぐに取り繕って唇の端を吊り上げる。

 

「威勢のいいことだ。これだけの使徒様を前にして正気とは思えんが・・・ここは、もう1枚、カードを切らせてもらおうか」

「なに?」

「あぁ?」

 

さっきのだけだと思っていたんだが、まだ用意してあったのか?

訝しむ俺たちをよそに、フリードは映像の視点を切り替えた。

まだ檻を用意していたようで、先ほどのものと比べてずいぶんと小さい。

その中に誰が入っているのか、姿を映した瞬間、

 

 

 

すべての音が、消失した。

 

 

 

先ほど俺が放った殺気と同じ・・・いや、ひたすらに殺意を研ぎ澄ました俺のものとは違い、比較にならないほど暴力的で、先ほどの殺気で生き残っていた魔物のすべてにとどめを刺した。

それほど、この殺気・・・ハジメの放つ殺気はとてつもないもので、今度は俺が冷や汗を流す番だった。

それほどに、向こうが人質としてとらえた人物は、最悪だった。

 

「っ、っ、き、貴様、あの魚モドキ共がどうなっても、いいのかっ」

 

“魚モドキ共”・・・そうフリードが言った、クラスメイトとは別に用意した人質は、ミュウとレミアさんだった。

檻の中央で、お互いの存在を確かめるようにギュッと抱きしめ合っており、不安そうな表情を隠しきれていない。それでも、涙を浮かべることなく気丈に辺りを観察している辺り、本当に強い心を持っている。

とはいえ、俺は内心で驚きを隠せなかった。

エリセンを離れる時、もちろん何も対策をとらなかったハジメではない。

2人の存在を隠す気配遮断系のアーティファクトや、敵が現れた場合にハジメへ警告が行くようにした感知系アーティファクト、時間稼ぎをする為の結界系アーティファクトを、それとなくエリセンの街中やミュウ達の家に設置しておいたのだ。それに、俺も魔晶石を基点とした結界や罠をそこら中に敷き詰めた。

そのすべてに引っかからず、ミュウとレミアを誘拐してのけるなんて、ほぼ不可能なはず・・・いや、違うか。

俺とハジメの非常識な防衛システムとミュウとの絆、それらからこの発想にいきつき、なおかつ実行に移せる人物がここに1人だけいる。

その人物に、ハジメがスッと視線を向ける。

 

「ッ・・・」

 

視線を向けられた人物、中村恵里は、ハジメの殺気に体温を低下させ、呼吸も荒くなっていく。

だが、ハジメは数瞬で中村から視線を外し、発する鬼気はそのままだが、静かな瞳を宿し、その眼差しをフリードに向ける。

そして、静かな声音で口を開いた。

 

「・・・招待を受けてやろう」

「な、なに?」

 

ハジメの言葉にフリードは戸惑い、ハジメは続けて言葉を発する。

 

「・・・招待を受けてやると言ったんだ。さっさと案内しろ」

「っ・・・ふん、最初からそう言えばいいのだ」

 

繰り返される言葉と同時に収まっていく鬼気に、フリードは幾分か余裕を取り戻し、それでも周囲に散乱している魔物の死骸を見てわずかに憤怒に顔を歪ませ、それを抑えながら魔王城へと通じるゲートを開くための詠唱を始めた。

 

「・・・ツルギ、いいの?」

 

そこに、ティアがふと俺に耳打ちをしてきた。

ティアが聞いているのは、素直に招待に応じて大丈夫なのか、ということだろう。

その問いかけに、俺は小さくうなずいた。

 

「あぁ。今のクリスタルキーだと発動までタイムラグがあるし、あの檻には魔法を阻害する機能もある。空間魔法ですぐに連れ去るのも無理があるだろう。それは、向こうも承知のはずだ」

「たしかに、クラスメイト殿たちならまだしも、ミュウとレミア殿には自力で抗う力はないからな」

 

イズモの言う通り、この軍勢を叩き潰すにしても、先生たちを助けるにしても、この場所ではいささか遠くて安全が保障できない。ミュウとレミアさんの安全を確保するためにも、ここは相手の誘いに乗るしかない。

 

「・・・さぁ、我等が主の元へ案内しよう。なに、粗相をしなければ、あの半端な生物共と今一度触れ合えることもあるだろう。あんな汚れた生き物のなにがいいのか理解に苦しむがな」

 

話しているうちに、フリードがゲートを完成させて、うざったらしい言葉も添えてきた。

ゲートの先は、先ほどの謁見の間ではなく、王城の上部のテラスらしく、街並みが見えている。

おそらく、たとえフリードであっても謁見の間へ直接転移することはできないのだろう。魔王の防衛を考えたら、普通ではあるが。

すると、フリードが何かに気づいたように声をかけてきた。

 

「そうだった。少年、転移の前に武装を解いてもらおうか」

「・・・」

「聞こえなかったか?さっさと武装を解除しろと言ったのだ。あぁ、それと、この魔力封じの枷も付けてもらおうか」

 

言葉の節々に優位に立った愉悦と嘲笑を隠しもせずに要求してきて、じゃらりと手錠のような枷を取り出した。招待と言っておきながら、扱いは完全に捕虜だ。

いくら人質の強みがあるとはいえ、少々タガが外れすぎている感じが否めない。むしろ、小者臭さまで醸し出している。

おそらく、王都侵攻のあとに何かがあったのだろう。その何かによって、フリードの狂信がさらに深まったと考えるべきか。

むしろ、以前と態度がまるっきり変わっていないリヒトの方が、不自然かもしれない。

まぁ、それはそうと、

 

「「断る」」

 

フリードの問い掛けに、俺とハジメは同時に否を返した。

 

「・・・なんと言った?」

「今度は耳までおかしくなったのか?断ると言ったんだ」

 

フリードの再度の問い掛けに、今度は俺が嘲りも含んだ返答を返す。

さすがのリヒトも、俺たちに意外そうな表情を向けた。

次の瞬間、フリードは理解しがたいものを見るような眼差しを向けた。

 

「・・・己の立場を理解できていないのか? 貴様等に拒否権などない。黙って従わねば、あの醜い母娘が・・・」

「調子に乗るな」

「っ・・・なんだと?」

 

フリードのありきたりな台詞を、ハジメが静かな声音で遮り、言葉を届ける。

 

「ミュウとレミアを人質に取れば、俺の全てを封じたとでも思ったのか?理解しろ。お前たちが切ったカードは、諸刃の剣だってことを」

「諸刃の剣・・・だと」

 

今のハジメは、威圧も魔力も殺気も鬼気も、なにも放っていない。

それでも、ウラノスはわずかに後退し、フリードの手も小刻みに震えていた。

それに構わず、ハジメは無機質な言葉を紡いでいく。

 

「お前達が今生かされている理由もまた、ミュウとレミアのおかげということだ・・・二人に傷の一筋でも付けてみろ・・・子供、女、老人、生まれも貴賎も区別なく、魔人という種族を・・・絶滅させてやる」

「・・・っ」

「なにが目的で招待なんぞしようとしているのか知らないが、敵の本拠地に丸腰で乗り込むつもりはない。それではなにも出来ずに全て終わってしまうかもしれないからな。そんなことになるくらいなら、イチかバチか暴れた方がまだマシだ」

「・・・あの母娘を見捨てるというのか」

「見捨てないさ。ただ、ここで武器を失う方が、見捨てることに繋がると考えているだけだ」

 

たしかに、よくある物語では言われるがままに装備を手放すことも多いが、ハジメはそれを選ばない。それは、俺も同じだった。

人質を助けるのに、助ける側が無力化されては意味がない。それを弁えているから、ハジメはこの要求を突っぱねたのだ。

それに、死んでさえいなければ、あとはどうにでもなる。必要なのは、どんな状態でも()()()()()()()()()だ。

ついでに、

 

「あぁ、俺から言わせてもらうなら、その程度は枷にならない。あってもなくても同じだ」

 

そう言って、俺は空間魔法でフリードの持つ手錠を1つ手元に転移させ、自分から腕に取り付けた。

そして、強引に引きちぎることもせず、手錠を木っ端みじんに砕いた。

それは、俺だけではなく、フリードの持っている残りの手錠はもちろん、魔王城に捕らわれている全員に付けられている同じ手錠もすべて砕け散った。

 

「なっ、なっ・・・」

「お前たちを殺すことは、いつでもできる。お前たちの方こそ、立場を弁えてもらおうか」

 

突然の信じられない現象に、フリードは顔色をせわしなく変えて口をパクパクと開き、だが激昂してミュウたちを殺す命令は下さない。

さっきのハジメの発言があれば、ここでミュウとレミアさんに手を出せばどうなるか、さすがにこれでもわからない愚か者ではないようだ。

 

「さて、さっさと連れて行ってもらおうか。でないと、俺の隣にいる化け物が同族の全てを肉塊にするぞ」

 

俺の脅しに、フリードは露骨に表情を歪め、だが答えられないでいた。

今のフリードには、魔王のもとに危険分子を連れていく不敬と、同族の絶滅の可能性の間に揺れて答えを出せないでいる。

それに・・・おそらくだが、この武装解除はフリードの独断だ。ここで意固地にならずに揺れているということは、魔王からは武装については特に指示を受けていないのだろう。リヒトが口を挟まないのも、その証拠だ。

フリードが悩んでいると、神の使徒の1人がフリードに話しかけた。

 

「・・・フリード。不毛なことは止めなさい。あの御方は、このような些事を気にしません。むしろ良い余興とさえ思うでしょう。また、我等が控えている限り、万が一はありません。イレギュラーへの拘束は我等の存在そのもので足ります」

「むっ、しかし・・・」

 

それでも渋るフリードを尻目に、神の使徒は俺たちに視線を向けた。

 

「私の名は“アハト”と申します。イレギュラー、あなたとノイントとの戦闘データは既に解析済みです。二度も、我等に勝てるなどとは思わないことです」

 

言外に、武装できるものならしてみろと言っているようだ。

だから、

 

「なら、ここで1人殺しても文句を言うなよ?」

 

そう言って、俺は魔力を噴き上がらせ、指1本動かさずに前にいた神の使徒の首を刎ね飛ばした。

まったく察知出来ていなかった神の使徒は、露骨に俺に警戒心をむき出しにして大剣を構えた。

 

「・・・いったい、何をしたのですか」

「言うわけないだろ。少しは、その足りない頭で考えたらどうだ?」

 

俺は余裕の態度を崩さずに、神の使徒に視線を向けた。

俺がやったのは、昇華魔法の“情報に干渉する”という性質によって、殺気とともに「斬られた」という錯覚を強引に現実にさせるものだ。

発動条件として、俺の殺気に僅かでも恐怖を覚えれば発動するが、逆に言えば恐怖を覚えなければ発動しない。さらに、“斬られた”と錯覚させるほどの殺気は、今はまだ1度に1人しか向けられない。

ついでに言えば、ユエのような不死性を持っている相手には、首を切ることはできても殺すことはできない。

神相手にどれだけ通用するかはわからないが、少なくとも神の使徒に通じるとわかっただけ十分だ。

 

「ほら、さっさと案内しろ。いい加減待ちくたびれてきたからな」

 

俺の要求に、フリードはようやくゲートへと潜っていき、リヒトと中村もそれに続いた。

ゲートをくぐる直前、リヒトは俺に視線を向け、だがすぐに前を向いてゲートをくぐった。

その視線の意味を、俺はなんとなく察し、だが表面には出さずに、ハジメたちを連れてゲートをくぐっていった。




お久しぶりです。
ちょっとツルギを無双させてみましたが、ちょっとした伏線ともいえないような伏線なので。

それと、今さら感はありますが、念のためお知らせを。
読者様方のおかげで、「二人の魔王の異世界無双記」はお気に入り登録者1000を突破しました。
それを記念して、今アンケートでハジメパーティーのヒロインをifストーリーとしてツルギのヒロインにするキャラを投票してもらっています。
期日は、1月30日の0時0分までです。
今のところ、香織さんが怒涛の追い上げで1番ですが、まだ期日まで時間はありますので、どしどし投票してください。

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