今回はわりとグロ注意です。
自分でも、どうしてこんな描写にしてしまったんだろうと、軽く反省しているくらいにはやばいです。
親友を殺され、最愛の恋人を奪われたハジメの慟哭は、あまりに悲痛な叫びだった。
さし伸ばした腕も、何とかして上げた首も使徒により床に押さえつけられたハジメの眼は・・・それでもまだ、死んでいなかった。
ツルギの置き土産により、ユエの魂が残っていることがわかった。なら、たとえエヒトが本気でユエの魂魄を消しにかかっても、ユエならなんとかするだろう。
それになにより、
(あいつが、ツルギが死んでも手を残して、あのクソ野郎に一矢報いようとしたんだ。だったら、俺がここで無意味に暴れるわけにはいかねぇ・・・!)
親友であるツルギが、死んでもなお抗ったのだから、まだ生き残っているハジメが絶望するにはまだ早い。
幸い、相手もまだ油断している。
ハジメたちにとどめを刺さずに、さっさと神域に戻ったのがいい証拠だ。
先ほどの叫び声も、向こうは絶望の慟哭と捉えているだろう。
「ククッ。無様なものだな、イレギュラー。最後に些か問題はあったが、エヒト様はあの器に大変満足されたようだ。それもこれも、お前が“あれ”を見つけ出し、力を与えて連れて来てくれたおかげだ。礼を言うぞ?」
そこに、アルヴヘイトがコツコツと足音を鳴らしながらハジメに近づき、どす黒い悪意の言葉を吐き出す。
これにハジメは、殺意をまき散らしながら立ち上がろうとする
「ふむ、威勢はいいようだが、何もできないようだな?だが、無理もあるまい。実際、貴様には何も出来ぬのだから。これ以上無意味に足掻くのは見苦しいぞ?それとも、恋人と親友を一度に失って、怒りに我を忘れているのか?うん?」
アルヴヘイトの言葉に、ハジメは耳を貸さない。
とはいえ、今の段階ではどうしようもないのは事実だ。
いっそ怒りに身を任せれば、何かしらの概念魔法を発動できたかもしれない。
だが、それで他に被害を出すようでは本末転倒だし、そもそも魔法陣がない今、“想像構成”を持たないハジメは錬成すらできない。
ちらりと視線をシアたちに向けると、どうにかして神言を解こうとしていた。
あの様子なら、近いうちに動けるようになるだろう。
それならば、まずは何とかして使徒をどかしてもらうか。
そう思うよりも先に、ティアが動き出した。
最初に変化があったのは、ハジメを押さえつけている使徒の1体だった。
ハジメの頭を押さえつけていた腕が、なんの前触れもなく消えたのだ。
「は・・・?」
目の前にいるハジメは身動き一つとれていなければ、他に神言を解除した者も、魔物の群れを破って救援に来た者もいない。
当然、ティアもまだ拘束を破って・・・
「な、んだ、あれは・・・」
頭の拘束がなくなったハジメは、嫌な予感と共に視線を向けた。
そこでは、相変わらずティアは拘束されたままだったが、またその姿が大きく変わっていた。
ティアの背中から、触手のようなものが8本伸びていたのだ。
触手の先には、骨か爪のようなもので作られた刃がついている。
そして、その刃で斬られたであろう使徒の腕は、空中で回転しながら分解されていき、赤黒い魔力を纏う触手に吸収されていった。
ハジメたちが呆然としている間にも、ティアの触手はヒュンヒュン!と風を切りながら振り回され、ティアを拘束していた空間の十字架を破壊し、ゆっくりと立ち上がった。
それだけでなく、シアたちを貫いていた石の狼の牙や爪も破壊する。
アルヴヘイトは、復活したティアに煩わし気な視線を送る。
「ふん。この土壇場で理性を取り戻しでもしたか?だが、所詮は無意味なこと、ッ、がっ、ぁぁあああああああっ!!」
だが、侮蔑の言葉を言い終えることもできず、アルヴヘイトの腕が肩からバッサリと切断された。
そこでアルヴヘイトは、ハジメに四肢と額を撃ちぬかれても平然としていたのに、今になって激痛に襲われ、切口を抑えて絶叫を上げる。
アルヴヘイトの腕もまた、分解されてティアの触手に吸収されたが、アルヴヘイトは腕を再生することもできず、激痛にうずくまることしかできないでいる。
突然の変化と生まれて初めての激痛にアルヴヘイトは混乱を隠せないが、その答えは使徒からもたらされた。
「お気を付けください、アルヴヘイト様。どうやら、対象の分解対象が魂魄にまで及び始めたようです」
そう、ここにきて、ティアの分解能力が魂魄や魔力にまで作用し始めたのだ。
これで、魔法による拘束はもうできない。
さらに、アルヴヘイトの腕が再生されないことから、ティアに喰われたものはその存在を抹消させるだろうことも予測できる。
ハジメも、そのことを理解していた。
その上で、違うことに対して焦燥を覚えた。
それは、
(ティアの野郎、とうとう俺たちまで認識できなくなってやがる・・・!)
アルヴヘイトはわずかに残った理性でハジメたちを助けたと考えたようだが、事実は全く逆。
むしろ、今のティアは見境なく襲うようになっている。
ハジメやシアたちを助けたのは結果的な話であり、ただの偶然だった。
ハジメたちが地面に縫い付けられるように拘束されていたおかげで、ティアの触手の射角から外れただけだ。
もし起き上がろうものなら、今度はハジメたちも容赦なく狙われることになるだろう。
それを理解しているのかいないのか、使徒は双大剣を構えてアルヴヘイトを守るように囲んだ。
「ですが、分解を纏った大剣でなら防げるでしょう。対象の始末は、我々、使徒が。これ以上、御身がきずつ」
言い終える前に、ティアの触手が
体を両断された使徒は、さらなる追撃によって細切れになり、分解された後に吸収されていった。
自身の腕を喰われ、目の前で使徒があっさり殺され、その上でアルヴヘイトが抱いたのは・・・怒りだった。
なぜなら、ティアは一度も使徒やアルヴヘイトに視線を向けず、ただ前傾姿勢でうつむいているだけだったから。
まるで、自分たちが取るに足らない存在であると、態度で示しているように、アルヴヘイトは錯覚した。
錯覚、してしまった。
「おのれっ、ケダモノの分際で逆らいおって!こうなれば、我が手ずから・・・」
怒りに我を忘れて魔法を発動しようとした瞬間、アルヴヘイトの四肢が消し飛んだ。
支えを失ったアルヴヘイトの体は、重力に引かれて地面に落ちる。
もちろん、神としての矜持があるアルヴヘイトは地面に這いつくばっている状況に耐えれるはずもなく、魔法で自らの体を浮かせようとするが、
(なっ、なぜだ!?魔法が発動できん!)
ただ芋虫のように体をよじらせることしかできず、簡単な魔法すら発動できなくなってしまっていた。
その理由は、アルヴヘイトの傷口にあった。
アルヴヘイトの傷口に赤黒い魔力が付着しており、そこから魔力が糸のように伸びてティアと繋がっているのだ。
これによって、アルヴヘイトが魔法を行使しようと魔力を放出すれば、それをティアが片っ端から喰らっているのだ。
ならば、使徒に運んでもらうしかないと、アルヴヘイトは縋るように顔を上げるが、
「ぁ・・・」
使徒はすでに、どこにも見当たらなかった。
残っていたのは、人数分の双大剣のみ。
あの短時間で、神の使徒が1人残らず、ティアに吸収されたのだ。
そこまでして、初めてティアがアルヴヘイトに視線を向けた。
視線を向けられたアルヴヘイトは今までに感じたことのない恐怖に襲われた。
今のティアの眼にあるのは、憤怒でも絶望でもなく、ただ対象を喰らうという、視界に写るすべてを餌としか思っていない、まさに獣のようなものだった。
「っ、きっ、貴様っ!!我を誰だと思っている!!エヒト様の眷属神である我に対して・・・」
恐怖を誤魔化すために、アルヴヘイトは声を張り上げるが、それはアルヴヘイトをさらに苦しませるだけだった。
「アガッ!」
ティアは触手をアルヴヘイトの背中に突き刺し、引きずりながら自身の近くに引き寄せる。
アルヴヘイトはその間も喚き散らすが、ティアは毛ほども気に留めずに引き寄せていく。
そしてついに、アルヴヘイトはティアに腕で押さえつけられる。
口を開けて顔を近づけるティアに、アルヴヘイトは自身の末路を理解して恥も外聞も捨てて命乞いを始めた。
「よっ、よせっ!やめろ!!こんなっ、このような結末など、決して認め」
ティアがそれを聞き入れるはずもなく、ティアはその牙をアルヴヘイトに突き立てた。
それも、一噛みで意識を奪うのではなく、端から削るように、なぶるように喰らっていく。
「イギィッ!や、やべてっ。もっ、もうごろじで・・・!」
もはやアルヴヘイトの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっており、先ほどまでの余裕の表情は欠片も残っていなかった。
アルヴヘイトの懇願が聞こえたのか、それともただの気まぐれなのか。
ティアはアルヴヘイトの頭を押さえている手に力を込め、グシャリと頭蓋を握りつぶした。
その後、ティアは開いた手を胸に突き立て、中から心臓を引きちぎって口の中に入れた。
その光景を誰もが血の引いた顔で見ることしかできなかった。
それは、ハジメも同じである。
いや、自身も奈落で同じような経験をしたからか、他よりも顔色が悪いようにも見えた。
(あれが、ティアだって・・・?)
思い出すのは、かつて奈落で爪熊に向けられた視線。
あの時も、ハジメのことを食料としか認識していなかったように感じた。
もしティアの視線が、自身に向けられたら、果たして、自分は逃げられるのか。
逃げられなかった時のことを想像し、ハジメの表情から血の気が引き、呼吸も浅く速くなっていき・・・
「ハジメさん!ハジメさんっ!!」
ティアに喰われる恐怖に捕らわれる寸前で、力強い声によってハッと意識を取り戻した。
視線を上げれば、シアがハジメの肩を掴んで真っすぐ見つめていた。
「っ、すまない、シア。危うく・・・」
「いえ、大丈夫です。ハジメさんの気持ちも、痛いほどわかりますから・・・」
シアたちも、直接ではないとはいえ、クリスタルキーを創造したときの魔力の奔流とともに、ハジメがあの時に味わった恐怖を感じている。
あのハジメが恐怖に囚われるのも無理はないと思った。
それに、
「それは、私たちも同じです。まさか、ティアさんがあのようになるなんて・・・」
シアが視線を向けた先には、ボリボリとアルヴヘイトの死体の残りを貪るティアの姿があった。
さらに、アルヴヘイトの体を取り込んだ影響か、ティアの身に纏う魔力がさらに濃くなり、もはや黒い靄が化け物の形を作っているようにも見えた。
その姿からは、つい最近までのツルギに寄り添い、様々な表情を浮かべていたティアを想像することはできない。
「それで・・・私たちは、どうすればいいんですか?」
「・・・・・・」
シアの問い掛けに、ハジメは答えを返すことができない。
周囲を見渡せば、ほぼ全員は動けるようになっている。香織がシアも含めた全員をある程度回復魔法によって回復させたから、いざとなれば、ある程度戦うこともできるだろう。
今のハジメは、親友への義理と現実的な問題の板挟みになっていた。
死んだツルギのことを想えば、ここでティアを殺すわけにもいかないが、本能のままに捕食を繰り返すティアの正気を取り戻す方法もまだ思い浮かばない。仮に殺すことになっても、ろくに武器を持っていない状態でできることでもない。
必死に最良を模索するが、ティアはそれを待ってくれない。
「AAAAAAAAAAA!!」
ティアは今までとは明らかに違う雄叫びをあげ、神門へと真っすぐに突っ込んだ。
魔人族はもうほとんど神門を通過しており、残りは100と数十人というところだった。その中には、女子供や老人など、非武装の一般人も混ざっている。
「なっ、き、来たぞ!」
「バカなっ、アルヴ様や使徒様は!?」
突然現れた、異形の姿となったティアに殿の魔人族が咄嗟に初級魔法を放つ。ほぼ無詠唱に近いそれは、ティアの触手によってすべてはじかれ、逆に切り刻まれ、ティアへと取り込まれてしまった。
「こっ、この!とま」
数人の魔人族が先に行かせまいと立ちふさがろうとするが、もはやティアに触れるだけで取り込まれてしまい、進路上にいた数十人の魔人族がティアに取り込まれてしまった。
あり得ない光景に他の魔人族は動揺を隠せずに硬直するが、ティアはそれらをすべて無視して神門へと突撃した。
だが、
「GAAA!!」
神門に突っ込む前に、光り輝く壁によって阻まれた。
ティアは何度も触手を振るい、拳をたたきつけるが、壁はびくともしない。
それでもティアは、神門を通らんと突撃を敢行し続ける。
「ハジメさん、これ・・・」
「あぁ、向こうに自分の
おそらく、アルヴヘイトと使徒で味を占めてしまったのだろう。
「だが、この間に準備するしかない。簡単な武器をここで作るぞ。ただ頑丈なだけだが・・・」
「それで構いません。どうせ、今のティアさんに魔力を使った攻撃は通用しませんから」
幾分冷静さを取り戻したハジメは、自らの血で簡単な魔法陣を何個も描き、“錬成”を行使する。
作り出すのは、籠手を5個、短剣を2本、ハンマーと刀を1本ずつだ。
どれも生成魔法による能力付与はせず、頑丈さを重視した。
「お前ら、これを使え!」
ハジメは、籠手をリヒトと龍太郎に投げ渡し、自らも片腕にはめる。短剣はイズモとティオに、刀は雫に渡した。
「ないよりはマシなはずだ!これでなんとしてもティアを押さえるぞ!香織はそこらへんに落ちてる大剣を使え!」
ティアの触手は使徒の双大剣をあっさり折ったが、何本かは無事なものも残っていた。おそらく、正面から受け止めることはできずとも、受け流すくらいはなんとかできるだろう。
ハジメがちょうど錬成を終えた瞬間、神門は徐々に小さくなっていき、とうとう完全に閉じてしまった。
神門を通れなかったティアは、4本の触手を地面に突き刺して空中にとどまる。
「くそっ、貴様のせいで!」
「残りの者たちは、あの化け物に魔法を・・・」
神門を通り損ねた魔人族の兵士、およそ20人が、ティアに向けて魔法を放とうとする。
だが、そのすべてが、例外なくティアの触手によって切り刻まれ、吸収された。
残っているのは、非武装の一般人が70人ほどだ。
ティアはゆっくりと残りの魔人族に視線を向け、触手を放った。
ティアの触手が、その軌道にいる魔人族を切り裂こうとした。
その直前、
「おおぉぉぉ!!」
「どっせーい!」
ギリギリのタイミングでリヒトとシアが間に割り込んで、襲い掛かってきた触手を違う方向に逸らした。
「ちょっとは、大人しくなりやがれ!!」
触手が戻る前のタイミングでハジメがティアの顎にアッパーカットを放ち、体を浮かばせる。
だが、ティアは引き戻した触手を地面に突き刺し、アンカーのようにして体を固定した。
「ここ!」
「はぁ!」
そこに、触手が動かせないタイミングを狙った香織と雫が触手を根元から斬り落とす。
触手を斬り落とされたティアは、四つん這いになって地面に着地した。
「よかった!ちゃんと斬れたよ!」
「そうね。スピードを重視して、防御はそれほどでもないのかしら」
触手を斬れたことに、香織と雫はホッと息を吐く。
あれほど見せつけられた圧倒的なステータスなら、即席の刀と使徒の大剣でも斬れない可能性があったが、耐久はそれほどでもなかったようだ。
「お前ら!油断すんな!」
だが、ハジメの声にハッとしてティアを見ると、背中から新たに触手が生え始めていた。
しかも、それは先ほどのような太いものではなく、およそ20本の触手が絡まり合って1本の巨大な触手を形作っていた。
再び、ティアが残りの魔人族に向けて触手を放つ。
それをシアとリヒトが迎撃しようとするが、
「んなっ!?」
「ぐっ!」
先ほどよりも明らかに重くなった触手は、2人でも合わせて2本しか落とせなかった。
残りの触手は、魔人族の集団に突き刺さり、先端が花のように開いて針のように体を突き刺した。
触手を上げれば、40人近い魔人族が触手に貫かれ、持ち上げられている。
このままではまずいと、香織と雫は触手を斬り落とそうとするが、
ガキキンッ!
「えっ!?」
「うそでしょ!?」
振るわれた武器は、甲高い音とともに受け止められた。
今度の触手は、速度をある程度犠牲にし、耐久性能を上げた上で、縄のように束ねてさらに丈夫にしたものだったのだ。
さらに、触手の先を開くと、そこに新たな口が現れた。
「やっ、やめ」
必死の命乞いも届かず、捕まった魔人族は口の中に放り込まれ、血をまき散らしながら咀嚼された。
(くそっ、どうする?どうすればいい?)
このままでは、全滅の可能性も0ではない。
必死にハジメが頭を回していると、視界の端に黒い影が疾走するのが見えた。
その手に、ハジメが即席で作った武器は握られていない。
「八重樫!?」
「雫ちゃん!?」
ハジメと香織が驚きの声を上げるが、雫は一目散にある場所に向かっていた。
そこは、ツルギがエヒトに殺された場所。そこには、エヒトによって折られた“無銘”と、踏みつけにされたペンダントが転がっている。
雫は迷わずにその2つをつかみ取り、再びティアに接近する。
(お願い、ツルギ。力を貸して!)
「ティア!これを見なさい!」
雫はそう叫んで、ツルギが身に付けていたペンダントをティアの前に投げた。
ペンダントが視界に入ったティアは、ほんの一瞬だけ、すべての動きを止めた。
その一瞬を、雫は逃さなかった。
「はぁっ!!」
ティアの目の前に移動した雫は、裂帛の気合を込めて“無銘”を一閃した。
放たれた“無銘”はティアの喉元に迫り、
次の瞬間、ティアを覆っていた赤黒い魔力がすべて消し飛び、中から元の魔人族の姿のティアが現れた。
「ぁっ・・・」
ティアはよろめきながら、雫の方に倒れ込みそうになり、
「反省しなさい、このおバカ!!」
「へぶぅっ!?」
思い切り頬に平手打ちを喰らった。
相当力を込めたのか、吹き飛ばされたティアは近くにあった柱に陥没した。
それでも物足りないのか、雫はずかずかと歩み寄り、胸倉をつかんで引っ張り出してさらに説教を重ねる。
「ツルギが、なんのために体を張ったと思ってるの?少しでも私たちに繋げるためでしょ!?それを、肝心のあなたが自分でぶち壊してどうするのよ!!」
「っ、ぁ・・・」
ツルギの狙いは、まさに雫の言う通りだった。
もちろん、ツルギは本気でエヒトを殺すつもりだったが、それができなかったときのことまで考えていたのだ。
それこそ、あの血の刃で少しでもエヒトとユエのつながりを断ち切り、早急にエヒトたちを退却させると同時に、猶予を作り出すことで、十分な準備をした上でで迎え撃たせようとしたのだ。
そのことを、ティアは雫に言われて気づき、一筋の涙をこぼした。
そこに、
「悪いが、俺からも1発ぶん殴らせてもらうぞ」
「はきゅんっ!?」
雫の後ろから現れたハジメが、ティアの頭に強めの拳骨を放った。
ティアは殴られた勢いのまま地面に激突した。
鼻の頭を赤くしながら見上げると、そこではハジメが先ほどの石の刀を肩の上でトントンしながら見下ろしていた。
「ったく、てめぇがブチ切れて暴れるくらいならまだ許すがな、俺たちまで無差別に襲おうとしてんじゃねぇよ。一歩間違えたら、間違いなく俺たちまであの世行きだったからな」
「うっ、えっと、その、はい、ごめん、なさい・・・」
「おう。んで、迷惑かけた分はきっちり働いて返してもらうぞ。逃げるのも無しだからな」
「はい・・・」
雫とハジメの説教(ハジメは迷惑料の取り立ても含む)によって、ようやく正気を取り戻したティアは、申し訳なさそうに俯く。
他の面々も、ようやく落ち着いたティアにやれやれと嘆息した。いろいろと言いたいことはあったが、全部雫とハジメが言ったから、それでよしとすることにしたのだろう。
だがそれでも、ツルギが死んだことによるティアの心の闇が完全に晴れたわけではない。
ツルギのことはどうすればいいのか。
そのことを口にしようとした、その直前、
『ったく、いつまで経っても世話が焼けるな』
ティアたちのいる空間に、聞き覚えのある声が響いた。
まさかと思って周りを見渡すが、どこにも姿が見えない。
『雫やハジメたちがいるから、大丈夫かと思っていたんだが・・・これは、簡単には死ねないな』
再び声が響くと、雫が握っている“無銘”が光を放ち始めた。
その色は、きれいな淡紅色。
思わず雫が“無銘”を手放すと、“無銘”は地面に落ちずに宙に浮かび、周囲から魔力を呼び寄せ、収束していく。
そして、“無銘”がひと際強い光を放った。
ティアたちは思わず顔を覆い、光が収まったのを感じてから目を開けた。
そこには、
「あっ・・・ツル、ギ・・・なの?」
「あぁ、正真正銘、峯坂ツルギだ」
わずかに光る体を宙に浮かばせた、峯坂ツルギの姿があった。
この時のティアさんのイメージは、ナルトの初期あたりの九尾みたいな感じですね、はい。
・・・いやまぁ、それで誤魔化せるような感じではないですが。
なんか興が乗ってノリノリで書いたら、こうなってしまいました。
こういう鬱展開、いくら敵に対してとはいえ、割と苦手なはずだったんですがね・・・。
書いている間も、その光景を想像してちょっと口から魂が抜き出そうになったのに、それでもキーボードをたたく指が止まらないという・・・。
歌ってみたの音声を流しながら執筆してなきゃ、途中でダウンしていたかもです。
後悔はしてません、が、反省は割としています。
さて、ツルギ君の復活です。
詳しい説明はまた次回に。