二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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俺はどうすればいい?

「そういえば、峯坂さん」

 

それぞれ目的の場所に送り、俺は姫さんや愛ちゃん先生たちと王都に戻ったのだが、その姫さんから尋ねられた。

 

「先ほど、細かい指示を出すと言っていましたが、指示自体はどうやって出すのでしょうか?峯坂さん1人で各所に指示を出すのは難しいと思うのですが・・・」

「それについては問題ない。こいつを使う」

 

そう言って、俺は虚空に八咫烏を生成した。それも、たった数羽ではなく、軽く100羽くらい。

 

「これなら、問題なく指示を送れるぞ」

「な、なるほど。ですが、その数を維持するのは難しいのでは?」

「今の魔力体なら、肉体的なリミッターはほとんどないに等しい。単純な力比べはともかく、情報処理の容量ならほぼ無制限だな」

「そ、そうですか・・・」

「つーか、これくらいならハジメでもできると思うぞ?これくらいで驚いてんじゃねえよ」

 

俺はいったん八咫烏を消して、姫さんに呆れた表情を向けるが、俺以外の全員は俺に対して呆れた表情を向けていた。

 

「・・・なんだ、その目は」

「いえ、峯坂さんも大概だと思いまして」

「自覚がないのが、質が悪いのよね」

「峯坂君も、あまりハジメ君のことを言えませんよね」

 

ちょっと何を言っているのかわからないな。基本的にハジメを諫める側の俺がハジメと似たり寄ったりのはずがないだろ。

 

「・・・まぁ、王都侵攻の際も同じようなことをしていたしな」

 

ちょっと、リヒトも。賛同するようなことを言わなくてもいいだろ。3人も「うんうん」って頷いちゃってるし。

たしかに、あの時は俺もハジメと一緒にまとめて魔物の大軍を消し飛ばしたけど、だからって同類扱いしなくてもよくない?

 

「・・・まぁ、それよりもだ。さっさと事情説明と避難誘導を始めるぞ」

 

なんかこれ以上は何を言っても藪蛇になりそうな気がしたから、先を促す。時間は限られているのだから、あまり無駄話をしていられない。

4人は呆れの視線を向けてきたが、時間がないというのは理解しているから、先を急いだ。

ちなみに、今は俺たちの姿を見えないようにしているから、他から変な視線を向けられることはない。

そのままツカツカと歩いていくと、王都を出て行くことになって以来の謁見の間のたどり着いた。中から様々な声が聞こえているから、いなくなった姫さんのことについて議論しているのだろう。

俺が不可視の魔法を解くと、扉の前に立っていた兵士がギョッと俺たち、厳密には姫さんとその後ろにいるリヒトを見て武器を構える。

 

「姫様!ご無事でしたか!」

「早くお下がりください!そこの男は・・・」

「武器を下ろしてください。彼は味方です。詳しいことは中で話します」

 

姫さんがそう言うと、兵士たちは困惑しながらも武器を下ろし、謁見の間に続く扉を開けた。

扉を開けると、議論をしていたうちの1人が俺たちの方を見て驚きの声を上げた。

 

「ひ、姫様!ご無事でしたか!!」

「姫様!っ、その後ろの男は、まさかリヒト・バグアーか!」

「なんだとっ、我々を始末しに来たと言うのか!」

 

リヒトの姿を見たことで、場が渾沌に包まれるが、

 

「落ち着いてください!!」

 

姫さんの鶴の一声で、一気に静かになった。

それを確認してから、姫さんは説明を始める。

 

「彼は今は味方です。それよりも、緊急事態が起こりました。私たちが連れ去られてからの出来事も含めて、説明します」

 

そう言って、映像記録のアーティファクトを起動して説明を始めた。

ユエのこと、俺のこと、エヒトのこと、リヒトのこと、そして、これから起こる大侵攻のこと。

これらのことを飲み込むのにはやはりそれなりの時間がかかったが、ここにいるのは本当の歴史を知っているメンバーだ。リヒトのことも半信半疑ではあったが、一応は受け入れてくれた。

ここで、姫さんの説明を俺が引き継ぐ。

 

「このことは、ブルックのキャサリン、フューレンのイルワ、ホルアドのロア、アンカジのランズィ、フェアベルゲンの長老衆のアルフレリック、帝国のガハルドにも伝えて、戦力を提供してもらうつもりだ」

「はい。亜人族の皆さんとリヒトさんについては、まだ思うところがあるかもしれませんが、今は世界の危機です。私たちが一致団結しなければ乗り越えられません。そのことを念頭に置いたうえで、これからのことを説明します」

 

ここからは、主に姫さんから今後の予定を話していった。

さすがは王族というか、説明に一切のよどみがなく、すらすらとそれぞれの役割を伝え、細かい指示を飛ばしていく。

 

「ここでは以上です。後のことは追って連絡します。それでは、皆さんもお願いします」

「「「「「わかりました!」」」」」

 

そう言って、側近たちは足早に部屋を出て行ってそれぞれの持ち場に向かった。

 

「さすが、姫さんだな」

「そうだな。ここまで人心掌握をしっかりできる者は、そうそういない」

「これくらいは当然です。さて、次は愛子さんですが・・・」

 

俺とリヒトの感嘆の言葉に、姫さんは何でもないように言って、次の予定に移ろうとするが、俺が待ったをかける。

 

「いや、愛ちゃん先生の出番はまだだな。まずは避難誘導を済ませて、戦力を集める方を優先しよう。士気上げの演説は、兵士が集まってからでいい」

「それは・・・いえ、たしかにそうですね。今回の場合、あまり何回もやるのは好ましくありませんし」

 

姫さんも、すぐに意図を察する。

今回の戦い、一般兵士には特にきつい戦いになる。

入念に士気を上げようと何回も演説を行うようでは、余計な緊張を抱く可能性も0ではない。

それに、演説とは大人数でやればやるほど、その効果は大きくなる。最も兵士が集まったときに一気にやった方が、効果を望めるだろう。

すぐにやるにしても、市民の前と兵士の前の2回がベストだ。

となると、

 

「さて、兵士が集まるかハジメからアーティファクトが届くまでは、俺たちは暇になるが・・・」

 

専門外のことにはなるべく手を出したくないが、このまま何もしないのもあまり良くない。

ハジメのアーティファクトに関しては、砦作成組に能力を底上げするものを渡しただけで、他の武器や兵器はまだ十分な数がそろっていない。

とはいえ、少数ならすでに送られているから、やっぱり一部の隊長格の人間にあらかじめ教えておこうか・・・。

 

「「「ツルギ様!!」」」

 

そんなことを悩んでいると、不意に扉の方から俺の名前を呼ぶ大合唱が。

振り返ると、そこには大勢のメイド服の女性が。

 

「お前ら・・・」

 

そう、“ツルギ様専属メイド会”だ。口に出すのは、そこはかとなくためらわれるが。

 

「皆さん!大丈夫でしたか!」

「アンナも、無事で何よりです。怪我は大丈夫ですか?」

 

アンナが駆け寄ると、先頭に立っていたメンバーの中では最年長(そうは言っても、おそらくは20代前半)っぽいメイドさんが話しかけた。

 

「はい。あくまで捕縛が目的であったので、怪我はありません。他の攫われた方々も同じです」

「そうですか。皆様も無事で何よりです」

 

アンナの返答に安堵の息をつき、ついで俺に視線を向けた。

 

「こうして直接お話しするのは、初めましてですね。わたくし、“ツルギ様専属メイド会”のリーダーを引き受けております、ウェンディ・ルアンと申します」

「いつの間に統制が取れるようになったのかは敢えて聞かないでおくが・・・どうやら、鍛錬は怠らなかったようだな」

 

流れるような動作に、服の上から見た体つきだけでも、彼女たちが毎日鍛錬を欠かさなかったことがわかる。

後ろから「あれ?私のことは・・・?」という声が聞こえたが、今は無視した。

さらに、隣からジト目の視線を感じるが、今はスルーする。

 

「はい。ですが・・・まるで敵いませんでした」

「まぁ、今回ばかりは相手が悪かったからな。仕方ないと言えば仕方ないだろう」

「たしかにそうかもしれませんが・・・話を聞けば、その為すすべなく破れた敵が、今度は大勢、襲い掛かってくるということです。それなら、到底このままでいるわけにはいきません」

「・・・つまり、どうしたい?」

 

俺がそう問うと、ウェンディは眼差しに強い意志を込め、

 

「再び、私たちの指導をお願いします。それも、以前よりも厳しいものを」

 

その要求に、俺は即答せずにじっと見る。

 

「・・・期間は4日しかない。いや、休息を考えれば、どれだけ長くても3日あるかどうか、といったところだろう」

「でしたら、その3日間で2倍でも3倍でも強くなってみせます」

「・・・本当にその気なら、相当きついものになるぞ。それこそ、本番までにリタイアする奴が出てくるくらいにな。それでもやるか?」

「構えません。それに、その程度で脱落するほど、生ぬるい覚悟はしておりません」

「・・・それは、お前たちの総意ということでいいな?」

「はい。皆様が攫われた後、私たちで話し合って決めました」

 

ウェンディの言葉に、他のメイドたちも力強くうなずく。

アンナも、ウェンディと同じく力強い眼差しを俺に向ける。

・・・彼女たちの覚悟は受け取った。

ならば、

 

「わかった。なら、前よりも相当キツイメニューをくれてやる。途中でくたばるなよ!」

「「「「はい!」」」」

「決戦のときまで残ったら、特別な装備も用意してやる!気張っていけよ!」

「「「「はい!」」」」

「いい返事だ!なら10分後、城内の訓練場に集合!各自、動きやすい戦闘に適した服装を用意して着替えておけ!」

「「「「はいっ!!」」」」

 

俺が号令をかけると、アンナやウェンディも含んだメイドたちは一礼してから、謁見の間を後にした。

・・・さて、そろそろ殺気に近い視線を向けているティアと「全員、私の方を見てくれない・・・私、王女なのに・・・」と暗いオーラが駄々洩れになっている姫さんにも構わないとな。

 

「・・・言っとくが、俺のせいばかりにされても困るぞ」

「でも、元をたどればツルギの普段の行動の結果よね」

「うぐっ・・・」

 

それを言われると、強く言い返せない。

俺にその気がなくても、相手の方が俺の知らないところでそういう行動を起こしているし、何より相手にまったく悪気も悪意もないから「やめてくれ」と強く言うこともできない。

「どうにかしたい」というのが俺の本音ではあるが、「どうしようもない」というのが現実であるだけだ。

ついでに言えば、

 

「それに・・・増えてたわよね?明らかに」

「・・・そう・・・だな・・・」

 

例のメイド会の人数が、明らかに増えていた。

以前は40人ほどだったが、ついさっき見た限りは60人ほどに増えていた。この場に来なかった人がいる可能性を考えれば、もっと増えるかもしれない。

いつの間に増えてたんだよ。ていうか、増えた分のメイドさんたちも他と変わらない洗練された動きになってるとか、俺はどう受け取ればいいんだ。

俺は(お姉様)じゃないんだぞ。

 

「ていうか、姫さんは知らなかったのか?人数が増えていたの」

「・・・いろいろと雑務をこなしていたので、見落としていました・・・それに、私の仕事を手伝ったりしてくれていたので、あまり気にしてなかったと言いますか・・・」

 

あぁ、姫さんも大変だったんだな。その結果があれだけど。

まぁ、それはともかくだ。

 

「俺は、いったいどうすればいいんだ・・・?」

「どうしようもないんじゃない?それか、責任をとって彼女たちの面倒を見るか」

 

ですよね~。

くっそ・・・これをハジメに知られたらなんて言われるか・・・。

それに、例のメイド会のメンバーって基本的に若手のメイドさんが集まってるわけだし、他のメンバーからも何を言われるか・・・。

ていうか、面倒を見るって言ってもどうすればいいんだ?まさか、数十人のメイドさんを日本に連れていくわけにもいかないだろ?

 

「はぁ・・・胃が重い・・・いや、重くなる胃もないけど・・・」

 

今の俺の魔力体は、基本的に魔力の塊であって、臓器とかそういう類は一切ないし筋肉とかもないから、基本的に物理的な痛みや疲労は感じない。

感じない、はずなんだがな・・・。

なのに、お腹の辺りが重くなっているのはどういうことなのだろうか・・・。

まぁ、このことは全部終わらせてから考えることにしよう。

新しい頭痛と腹痛のタネがやってきたし。

 

「・・・いるのはわかっている。来るなら来い」

 

俺が扉の方に向かって呼びかけたのを見て姫さんは首を傾げていたが、すぐに顔を引きつらせることになった。

なぜなら、今度は大量の女の騎士がなだれこんできたから。

特に、その先頭にいる女性騎士を見て驚いていた。

 

「ちょっ、あなた!こんなところで何をしているんですか!?」

「知り合いか?」

「えっとですね・・・元、私の近衛騎士です。ついでに言えば、クゼリー直属の部下でもあります」

 

クゼリーってのはたしか、今の騎士団長殿だったな。そういう話を聞いたことが・・・。

ん?()

 

「・・・今は?」

「・・・クゼリー直属の普通の騎士です。雫関連でトラブルを起こしすぎて、降格処分を与えたのですが・・・」

 

懲りるどころか、さらにやる気に満ち溢れているんだが。

ていうか、まーた義妹かよ、めんどくせぇ。

 

「んで?何の用だ?」

 

とりあえず、決戦前に無駄に戦力を削りたくないから、まずは話し合うことにする。

俺もね?問答無用で即斬るわけじゃないし?穏便に済むならそれに越したことはないと思ってるわけなんだよ。

あとは、相手が話し合いに応じてくれるかどうか・・・。

 

「決まっているのであります・・・今日こそ、お姉様からあなたという害虫を排除して」

「そこで害虫らしく潰れとけ」

 

早々に話し合いを諦めて、俺は重力魔法で連中を潰した。

もちろん、床のシミにしたわけではない。少し床にめり込むくらいだ。体感的には10倍くらいか?

 

「んじゃ、姫さん。さっさと外に出よう。残念だが、すでに数十人は使い物にならないことがわかっちまった。その分の戦力の補強を考えるとしよう」

「あ、はい」

 

あくまで無視を決め込む俺に姫さんは反射的に頷き、俺たちとともに扉へと歩き始めた。

扉の前で潰れた義妹は、空間魔法でどかした上で重力魔法をかけなおした。今の重力を固定しておいたし、決戦が終わるまでは、ここでこうしてもらおうか。

だが、

 

「な、なめるなでありますぅ!」

 

こともあろうに、義妹共は10倍の重力の中で立ち上がろうとした。

どういう根性をしているんだ、こいつら?

というわけで、

 

パチンッ

「「「ふぎゃっ!?」」」

 

重力を20倍に引き上げた。なにやらミシミシと音が鳴っている気がするが、気のせいだろう。

 

「さて、姫さん。早く行くぞ。時間は限られているんだからな」

「ハイ、ソウデスネ」

 

姫さんの眼から生気が消えて片言になった。

ティアも、ゴミ虫を見るような、というほどではないが、それに近い眼差しを送っている。

っつーか、義妹共も増えてないか?襲撃してきた人数が前よりも増えているんだが。

まさか、決戦の最中に背後からこいつらに刺されたりしないよな?

・・・できれば迅速に、このことを雫に話して対処してもらおう。少なくとも、決戦の最中に横やりを入れられることはないはずだ。

・・・多分、きっと。




「うおっ!き、君たちはいったいどうしたのだ?」
「いえ、お気になさらないでください。私たちも、こちらに用がありましたので」
「? そ、そうか・・・」

扉の外で待機していた大勢のメイドに一瞬ビビる官僚たちの図。

「ぬあっ!?お前たちも、いったいなんだというのだ!?」
「気にしないでくださいであります。少し害虫駆除をするだけでありますから」
「そ、そうか・・・?」

この後、大勢で待機している“義妹結社”にもビビる。

~~~~~~~~~~~


やはり、オリジナル回は何度書いても難しいものですね。
合宿免許に行っていて時間がとりづらいからというのもありますが、なかなか進みません。

それとお知らせなのですが、このままツルギ視点のままだと、神域組と使徒迎撃組って完全スルーになっちゃうんですよね。
ですが、雫パーティーと迎撃組には少なからずオリジナル要素があるので、完全無視というのも気が引けます。
ということで、いっそアンケートでどうするか決めてもらおうということにしました。
選択肢としては、

・両方無し
・雫パーティーのみ(オリ要素少なめ)
・迎撃組のみ(オリ要素そこそこ)
・両方書いて!

という感じです。
期日は未定ですが、目安としては最終決戦直前に締め切るつもりです。
ハジメパーティーの方はほぼオリジナル要素はないので、今のところがっつりは書かない予定です。
また、あくまで参考に、という形ですが、ご要望があればできる範囲で応えるつもりです。
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