二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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ここからは神域sideと戦場sideを書いていきます。
とはいえ、おおまかな流れは原作と似たり寄ったりになるので、展開が完全に被ってしまうところは端折れるだけ端折って2,3話ずつにまとめられたらなあ・・・って感じで進める予定です。


もう一つの取り戻すための戦い

ツルギたちがヌルとの激戦を繰り広げているころ。

ハジメや雫たちもまた神域に突入し、そこで光輝、恵里と対峙したところだった。

その前に、伏兵を殲滅するついでに恵里たちがいたという廃ビルめがけてハジメがミサイルランチャーをぶっ放して廃ビルを崩落させる(本人は逃げる2人の足止めだと言い張ったが、シアとティオから見れば明らかにフラストレーションも溜まっていたという側面もあった)という出来事もあったが、結果的に言えば逃げようとしていた2人の足止めにはなった。

この神域はいくつもの世界がつながったような造りになっているのだが、ハジメたちがいる廃都市にそびえ立つ時計塔に向かおうとしていたことから、その時計塔が他の空間と繋がっているのだろうと看破。追撃されるリスクから他の廃ビルの屋上から動かなかった2人の前に降り立ったのだが、明らかに様子が違っていた。

 

「あぁ~あ、見つかっちゃった。わざわざ、エヒトのコレクションした空間の一つに隠れてたのに、何でよりによってここに来ちゃうかなぁ~。空間的には【神門】から一番遠い場所なのにぃ」

「恵里。どちらにしろ、俺は峯坂から皆を解放しなきゃならなかったんだ。南雲もまだ操られているみたいだし、向こうから来てくれたなら、むしろ僥倖だろう?」

 

まるで恋人のようにべったりと寄り添い合いながら交わされる言葉は、だが微妙にかみ合っていない。

恵里としてはただひたすらにハジメとは関わりたくなかったのだが、光輝はツルギに洗脳された仲間を助け出し、死体になってなお傀儡にされているハジメを開放しなければならないという思いが残っているようで、先ほどの逃げ出そうとしていた行動と矛盾する。その濁ったような瞳から、もはやその程度の矛盾すらも矛盾と感じないほどに“縛魂”によって洗脳されてしまっているのだろう。

ハジメを捉える瞳は、聖剣や聖鎧の放つ痛いくらいまぶしい光と対称に、様々な負の感情によってどろりとしたものになっている。

そして、そんな光輝にべったりとしなだれかかって甘い猫なで声を発する恵里は、胸元や背中が大きく開き、深いスリットが入っている純白のドレスを身に纏っている。

まるで自分が光輝のヒロインにふさわしいとでもいわんばかりだが、もしここにツルギがいれば、その男に媚を売るようにも見える姿に「結局、蛙の子は蛙か」と呟いていただろう。

それに構わず、ハジメはあくまで天之河を見据える。

 

「よう。相変わらず、てめぇの中だと俺は死んだことになってんだな。そもそも、峯坂が死んだら術の効果も切れるんじゃねぇのか?中村の“縛魂”でも、こんな風にぺらぺらしゃべることができないわけだし。ていうか、他の奴らの洗脳も解けたとは思わないのか?」

「峯坂は神の血をひいているんだろ?だったら、偽物の感情を植え付けることだってできるはずだ。洗脳も、峯坂が死んでも解けないようにしたに違いない」

「・・・使徒を見る限り、エヒトでもできないことをツルギができると思うのか?」

「そうか、やっぱりお前も峯坂に洗脳されているのか。親友すらも洗脳して、死んでからも利用しようとするなんて、やっぱり峯坂は許せないな。だから、俺がここで南雲を殺して、峯坂から解放してみせる」

「・・・・・・なるほど。期待してたわけじゃないが、話にならんな」

 

話の矛盾点を突けば、すべて洗脳のせいにする。

話を聞く限り、ツルギが剣製魔法で生きながらえていることは知らないようだが、それでもツルギが元凶だと断言するのをやめない。

人殺しは悪いことだと言っておきながら、自分が人を殺すことに欠片のためらいも持たない。

氷雪洞窟でもそうだったが、その時以上に今の光輝は話のロジックが崩壊している。

 

「そういうわけだ。ずいぶんと妙なことになっているが、俺に殺させたくないなら頑張ることだな」

「・・・ずいぶんとあっけないわね。南雲君なら、少しくらいは残りそうだと思っていたのだけど」

 

ハジメの言う“妙なこと”は2人の言動のことではなく、今までとは比べ物にならないほどに充溢している力のことだ。

間違いなく、使徒クラスの力を持っている。

雫の問いかけに、ハジメは軽く苦笑して肩をすくめた。

 

「俺のことを諸悪の根源とか言うならまだしも、死んで操られている俺を殺しなおすとか気持ち悪いことをぬかすやつと関わりたくもねぇし、関わるだけ時間と体力の無駄だ。だったら、最初からお前らに任せた方が早いと考えただけだ。それに、俺らがお膳立てしたんだ。あのバカ共の相手は最初から決まっていただろ?」

 

この言葉に、シアとティオは軽く、雫、鈴、龍太郎は盛大に目を見開いた。

なにせ、先ほどの爆撃もそうだが、それ以前にも獰猛な笑みを浮かべて使徒を葬りまくっているのだ。

今までの所業も考えれば、いくら仲間とはいえ、シアやティオと違って“大切”のくくりにいるわけではない人物に優しく話すなど、本当にハジメなのか疑ってしまいそうになる。

ハジメもそれを感じ取ったのか、額に青筋を浮かべてドンナーを肩でトントンと叩いた。

 

「・・・やっぱ、ここでサクッと殺しとくか」

「待ってっ、それはいいから!私たちでなんとかするから!」

「悪かったって、悪かったから!頼むから南雲は手を出すな!振りじゃねぇぞ!!」

「そうだよ!南雲君に任せたら2人とも跡形もなくなっちゃうよ!だから落ち着いて!」

 

せっかくハジメからの厚意を得られそうだったのに、ここでそれを無駄にするわけにもいかない。

雫たちもなんとか抑えるために必死になるが、その中にしれっとディスリが入ってしまうのは、やはり普段の行いが原因なのだろう。

ハジメもキリリと眉を吊り上げるが、ここで時間を浪費するわけにもいかない。

ため息をこらえつつも、ハジメはシアとティオに視線で先を促した。

光輝もハジメたちが自分を無視して先に進もうとしていることを察知し、魔力を膨れ上がらせ、聖剣を振りかぶる。

 

「待てっ。南雲は俺が・・・!」

 

そうして聖剣を振りかぶろうとした瞬間、光輝は衝撃と共に吹き飛ばされ、引っ付いていた恵里もいつの間にか間近に展開されていた極小のシールドの爆発によって強制的に距離を取らされた。

 

「くっ、龍太郎。やっぱり、お前も峯坂に洗脳されて・・・」

「なに言ってんだ。今のは、むしろお前を助けたんだぜ?南雲に殺気を向けるとか・・・親友をミンチにさせるわけにはいかねぇからな」

「なにを言って・・・」

「わかんねぇだろうな。今のお前には。滅茶苦茶ダセェもんな。だからよぉ、いっちょこの親友様が、死ぬほどぶっ叩いて目ぇ覚まさしてやらぁ!」

 

龍太郎はガツンッと拳と拳を打ち合わせ、現実を見ようとしない親友と、何もできなかった無力な自分に対して怒りを募らせて咆える。

そして、その怒りを拳に込めて、龍太郎は光輝に飛び掛かった。

 

「あぁ~ん、もうっ、光輝くんと引き離すなんて酷いじゃない。それがし・ん・ゆ・う・のすること?ねぇ、すずぅ?」

「・・・親友だと思っていたから、今、ここにいるんだよ。南雲くん達には手を出させないから、そんなに怯えなくていいよ。ね、恵里?」

「・・・へぇ、言うようになったねぇ」

 

恵里は鈴が取るに足らない相手ではないことを認識し、また内心でハジメの対策で頭をフル回転させていたことを見抜かれ、スッと表情を消した。

 

「南雲君。シズシズの言う通り、ここは鈴達に任せて、ね?」

 

杖の先を恵里に向けて構えながら、鈴はハジメに言う。

 

「・・・半端はするなよ。ツルギがサクッと殺しなおす可能性もあるし、場合によっては俺も手を出すからな」

「うん。わかってる。どんな形でも、きちんと結果は出すから。南雲くん達も、気を付けてね」

 

ハジメは肩を竦め、それから雫と龍太郎を一瞥した後、今度こそ振り返らずにシアとティオを伴って真っすぐと時計塔に向かい、文字盤から別の空間へと向かっていった。

 

「あらら~、本当に行っちゃった。意地を張らずに助けてぇ~って言えば良かったのに。はっきり言って、あの化け物がいないなら何の問題もないよぉ?」

「それはどうかしらね。確かに、今のあなた達からは尋常でない気配を感じるわ。でも、私達だって、以前のままというわけではないのよ?」

「あははっ、コワイコワイ。特に、雫は油断ならないからねぇ~。それじゃあ、僕も心強ぉ~い仲間を呼んじゃおうかなぁ!」

 

そう言って恵里がパチンと指を鳴らすと、倒壊した建物の残骸がゴバッと爆ぜ、中から無数の人影が跳躍して鈴と雫を取り囲んだ。

 

「傀儡兵・・・さっき南雲くんに潰されたんじゃ・・・」

「ふふふっ、言ったでしょう。化け物がいないなら問題ないって。こいつらはねぇ、特別製の体になってるから、流石にミサイルの直撃は無理だけど、建物の崩壊に巻き込まれたくらいじゃ壊れないんだよぉ」

 

さらに、

 

「どわぁああああっ!?」

 

そんな豪快な悲鳴を上げながら、雫と鈴に向かって龍太郎が吹き飛ばされてきた。

 

「“光輪”!」

 

鈴は咄嗟に杖を龍太郎が吹き飛ばされる先に向け、光のリングが連なってできた網を展開して龍太郎を受け止めた。

 

「やべぇやべぇ。鈴、助かったぜ」

「どういたしまして、光輝くんはどう?」

「ダメだなぁ、ありゃ。自分の立場も、なにをしているのかも、なんにも分かっちゃいねぇ。矛盾を指摘されても全部“洗脳”で片付けやがる。拳骨の1発や2発じゃ足りなさそうだ」

 

頭を掻きながら龍太郎が溜息を吐くように報告し、雫が周囲の傀儡兵と、ちょうど恵里の隣に着地した光輝に視線を向けながら質問を重ねる。

 

「強さはどうだった?」

「間違いなく、なんかされてやがるな。“限界突破”みたいな光を纏っていやがるだろ?実際、強くなってやがるんだが、“限界突破”みてぇに疲れる様子が微塵もねぇ」

「そう・・・まぁ、前途多難は最初から覚悟の上ね」

 

小声で情報を確認し合う3人に、光輝は光に包まれながら悲しげな表情を見せて口を開いた。

 

「雫、鈴、龍太郎。降伏してくれないか?俺はお前等と戦いたくないんだ。洗脳されていて、俺の言っていることは戯言にしか聞こえないのかもしれないけど、俺は、皆を救いたいんだ。峯坂の呪縛から解放したいんだ!」

「光輝くん、可哀想ぉ~。幼馴染達に裏切られてぇ、それでも健気に助けようなんてぇ」

「恵里・・・いいんだ、俺のことは。皆が無事ならそれで。悪の権化である峯坂から解放させれば・・・」

「大丈夫だよぉ!僕はぁ、僕だけはぁ、光輝くんの味方だからねぇ~」

「ありがとう。恵里。昔から、恵里には支えられてばかりだな・・・」

 

矛盾にまみれた会話に、空虚さを増していく光輝の瞳と亀裂を帯びる恵里の歪んだ笑みに、雫は思わずため息を漏らす。

 

「な?会話が通じる段階じゃあねぇだろ?」

「・・・はぁ、確かに、ね。そうすると、あの馬鹿を元に戻すには、恵里の“縛魂”からの解放と・・・」

「その上で、光輝くんを完膚無きまでに叩きのめして現実を教えて上げる必要があるってことだね・・・取り敢えず、恵里は鈴が担当するよ。光輝くんの突破力に、恵里の闇系魔法のサポートは最悪だから」

 

3人は互いに頷きあい、光輝はそれを見て悲しげに頭を振った。

 

「やっぱりダメか・・・わかった。なら、たとえ恨まれることになっても、まずは3人を無力化しよう。その後に、南雲も峯坂から解放する!」

 

ここに、それぞれの親友と幼馴染を巡った戦いが開幕した。




ありふれの12巻の発売日が年をまたぐどころか半年以上先になるっていうことを知って、軽く頭を抱えてしまいそうに・・・。
いや、10巻と11巻の間を考えれば納得はできなくもないんですが。
それに、さすがにその間に零の方が出ると思いますし・・・出ますよね?
出ると思いたい。
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