しばらく魔力駆動四輪・ブリーゼを走らせると、遠くに周りを堀と柵で囲まれた小さな町が見えてきた。小さな町と言っても、木製の門や詰所らしき小屋が確認できることから、それなりに物資は揃いそうだ。
隣のハジメも、口元を綻ばせている。
「・・・機嫌がいいのなら、いい加減、この首輪取ってくれませんか?」
後ろでシアが何かを言っている気がするが、気のせいに違いない。ハジメもスルーしているからそうに違いない。
ちなみに、今のシアの首には黒を基調とした首輪がつけられている。先ほどの失言の罰だ。
かなりしっかりした作りで、シアが外そうとしてもなぜか外れないでいる。
とりあえず、俺たちは町から視認されそうになるところでブリーゼから降りて、ブリーゼを宝物庫にしまって徒歩に切り替える。さすがにブリーゼで町に突撃したら騒ぎにもなる。
道中、シアがなにやらぶつぶつ言っている気がするが、おそらく幻聴だ。俺は疲れているんだ、きっと。
「そうだ。ハジメ、ステータスプレートを非表示にするぞ」
「っと、そうだったな。そういえば、ユエたちの分は・・・」
「ユエとティアのステータスプレートは、魔物に襲われてなくした、ってことにしておこう。二人も、それで合わせてくれ」
「・・・わかった」
「わかったわ」
「あのー、私の方は?」
門に近づく前にステータスプレートのあれこれを済ませておく。
ステータスプレートには、ステータスの数値と技能欄を隠蔽する機能がついている。元々は冒険者や兵士の戦闘能力の情報漏洩の防止のための機能だが、俺やハジメのステータスはこの世界ではバグもいいところだから見られない方がいい。ユエとティアの分は、この言い訳で通じるだろう。シアは、これなら必要ないか。
門に近づくと、門の隣にある小屋から門番らしき兵士がでてきた。兵士と言っても、格好は冒険者に近いが。
やはり、この小屋は詰所であっていたようだ。
打ち合わせ(という名の押し付け)通り、門番の対応は俺がする。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」
「食料や物資の補給がメインだ。旅の途中でな」
軽い感じで受け答えしながら、俺とハジメはステータスプレートを見せる。
ちゃんと数値や技能欄は隠蔽状態になっているため問題ない。
「たしかに。それと、そっちの3人は・・・」
そこで門番がユエたちに目を向けると、硬直してしまった。
ユエやシア、ティアは、控えめに言っても世間で言う“美女・美少女”だ。目を奪われても仕方ない、だろう。
一応、ティアの変装のアーティファクトは正常に機能しているため、ティアが魔人族だとは気づかれていないようだ。
「ごほんっ、こっちの2人は魔物に襲撃されたときになくしてしまってな。こっちの兎人族は、わかるだろ?」
俺の咳払いに我を取り戻した門番は、俺の嘘の説明に納得したようで、なるほどとうなずいた。
「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?あんたって意外に金持ち?」
門番が嫉妬と羨望が混じった表情で尋ねてくるが、それに対して俺は肩をすくめるだけで何も答えなかった。
「まぁ、いい。通っていいぞ」
「どうも。あ、素材の換金場所はどこにあるか教えてもらってもいいか?」
「あん?それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」
「へぇ、そりゃあ親切だな。ありがとよ」
門番に礼を言って、俺たちは門をくぐる。
門をくぐるときに確認したが、この町はブルックというらしい。
町中はそれなりに活気があり、ホルアドほどではないにしても露店の呼び込みの声や値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。
やっぱり、こういうにぎやかな町はいるだけで楽しくなってくる。
ただ、ちらりと後ろを振り返ってみれば、シアが涙目でプルプルとふるえている。
「どうしたんだ?せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」
「誰がゴリラですかっ!ていうかどんな倒し方しているんですか!ハジメさんなら一撃でしょうに!何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」
「・・・脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」
「まさかの追い討ち!? 酷すぎる!」
「さすがにそれは・・・」
どうやら、ハジメは奈落にいる間、かなりはっちゃけていたらしい。
その光景を想像したのかシアとティアはドン引きしていたが、俺としては見てみたいな、それ。
「って、そうじゃないですぅ!これですぅ!この首輪!これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですかぁ!ツルギさんも!否定してくださいよ!」
「なに言ってるんだ?わかっててそのままにしてたに決まってるだろ」
「ちょっ!?ひどいですよ!私たち仲間じゃなかったんですか!」
どうやら、そのことで終始不機嫌だったようだ。
これについて、ハジメが説明する。
「あのなぁ、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう?まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。そうなったら面倒・・・」
ハジメが途中で説明をやめた。
なぜなら、シアが頬を赤らめてイヤンイヤンしてたから。
「・・・なにクネクネしてんだ?」
「も、もう、ハジメさん。こんな公衆の面前で、いきなり何言い出すんですかぁ。そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんてぇ、もうっ!恥かしいでっぶげら!?」
そんな調子に乗っているシアに、ユエが黄金の右ストレートを放った。実に見事なストレートだ。
「・・・調子に乗っちゃダメ」
「・・・ずびばぜん、ユエざん・・・」
ユエの冷めた声に、シアは体を震わせる。ティアも、呆れ100%の視線をシアに向けていた。
「要は、人間族のテリトリーでは奴隷って立場がシアを守ってるんだ。むしろ、それがなければお前はトラブルホイホイだからな」
「それは、わかってますけど・・・」
頭ではわかっていても、やはり感情面では割り切れないシアに、ユエが優しく声をかけて立ち直らせた。
「まぁ、奴隷じゃないってばれて襲われても見捨てたりはしないさ」
「街中の人が敵になってもですか?」
「あのなぁ、既に帝国兵とだって殺りあっただろう?」
「じゃあ、国が相手でもですね!ふふ」
「何言ってんだ。世界だろうと神だろうと変わらねぇよ。敵対するなら何とだって戦うさ」
「くふふ、聞きました? ユエさん。ハジメさんったらこんなこと言ってますよ?よっぽど私達が大事なんですねぇ~」
「・・・ハジメが大事なのは私だけ」
「ちょっ、空気読んで下さいよ! そこは、何時も通り『・・・ん』て素直に返事するところですよ!」
「・・・にぎやかだなぁ」
「なんか、若干仲間はずれな気がしなくもないわね」
道中でもそうだったが、今の俺たちのメンバーだと主にハジメ、ユエ、シアと俺、ティアのグループに分かれている。この世界に来てから一緒にいた時間を考えれば当然かもしれないが、なんだか自分だけ場違いな感じもしてちょっと居心地が悪かったりもする。
まぁ、それだけでハジメたちから離れるわけでもないが。
余談だが、シアの首輪には念話石と特定石が組み込まれており、魔力を流せば離れた場所でも会話ができるし位置もわかる。もっと言えば、首輪は特定量の魔力を流せば外すこともできる。
これを聞いて、シアがまた余計なことを言ってユエに蹴られたりしたが、いつものことだ。
そんなこんなで、目的地である冒険者ギルドに到着した。
ホルアドよりは二回り小さいが、この規模の町ならこんなもんだろう。
ギルドの扉を開けると、そこは思っていたよりも清潔さを保っていた。
周りには冒険者たちが各々食事をとったり雑談を交わしている。見た感じ、カウンターの左手が飲食店になっているようだ。
そして、受付カウンターの方を見てみると、そこには魅力的な笑顔を浮かべた・・・おばちゃんが立っていた。
まぁ、わかってたけどさ。現実はいつだって期待を裏切るものだし、小さな町にまで美人な職員をあてるほど、余裕があるわけでもないだろうし。
「3つもキレイな花を持ってるのに、まだ足りなかったのかい?残念だったね、美人の受付じゃなくて」
そんなおばちゃんの言葉とともに向けられた視線は、主に俺の後ろにいるハジメに向けられていた。ハジメは、わずかにだが頬を引きつらせており、ユエとシアの視線も冷えきっている。どうやら図星だったようだ。
まぁ、異世界ファンタジー大好きだったハジメのことだ。いろいろと妄想がふくらんでも仕方ないだろう。
「悪かったな。悪気はないんだ」
「別にこれくらいはかまわないよ。いつものことだからね。あんたは、そこまでがっかりしてないみたいだけど?」
「現実ってものをわきまえてるからな。ついでに言えば、ハジメ・・・白髪の男の方が抱えているのは、隣の金髪の方だけだ」
「なるほど。あんたも、余所見ばっかりして愛想つかされるんじゃないよ?」
「いや、そんなこと考えてないから」
「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ?男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね」
「・・・肝に命じておこう」
周りを見れば、「あ~、あいつもおばちゃんに説教されたか~」みたいな会話が聞こえる。どうやら、本当にいつものことらしい。
よく見れば、冒険者は粗野な雰囲気を纏っているのにおとなしくしている。どうやら、このおばちゃんの影響らしい。
そのおばちゃんは、気を取り直して再び受付嬢(?)として挨拶をした。
「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」
「ああ、素材の買取をお願いしたい」
「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」
「ん?買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」
俺の素朴な疑問に、おばちゃんが「おや?」という表情をする。
「あんたら、冒険者じゃなかったのかい?確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」
「へぇ、そうだったのか」
さらに、冒険者として登録すれば、他にもギルドと提携している宿で割引してもらえたり、高ランクなら馬車を無料で貸してもらえたりもするらしい。
「それで、どうする?登録しておくかい?登録には1000ルタ必要だよ」
この世界の北大陸では共通通貨の“ルタ”で取引される。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から1、5、10、50、100、500、1000、5000、10000ルタとなっている。意外にも、貨幣価値は日本とおおよそ同じらしい。
また、先ほどおばちゃんがちらっと言ったように、冒険者にもランクと言うものがあり、通貨の色と同じランクが設定されている。
早い話、青ランクの冒険者は「所詮てめぇの価値は一ルタしかねえんだよ」ということだ。わかりやすいが、ちょっとこれを考えた人間の性根を疑う。おそらく、よっぽど捻くれた人間だったんだろう。
「そうだな。なら、俺とハジメの分は登録しておくか。悪いが、今は持ち合わせがまったくないんだ。買取金額から差っ引いてくれないか?もちろん、買取金額は最初のままでいい」
「カワイイ女の子を3人も連れているのに文無しなんて、なにやってるんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」
どうやら、このおばちゃんはかなり気前がいいらしい。きっと、周りからも信頼されているんだろう。
俺とハジメはそれぞれステータスプレートをおばちゃんに渡した。
少し経ってからステータスプレートが返され、見てみると天職欄の隣に職業欄が追加され、そこに冒険者の文字と青色の点が表記されていた。これで晴れて冒険者になったというわけだ。
一応、ユエたちの分も登録するかと勧められたが、ステータスプレートのいざこざを回避するためにやんわりと断った。個人的にはユエたちのステータスも気になるが、そうすると一からステータスプレートを発行することになり、ユエたちの技能が丸々ギルドに知られることになる。それは避けなければならない。
「男なら頑張って黒を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪ところ見せないようにね」
「あぁ、そうするよ。それと、買取はここでいいのか?」
「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」
「あぁ、これだ」
そう言って、俺はあらかじめハジメから受け取っていた樹海の魔物の素材をカウンターに出した。
品目は魔物の毛皮や牙、爪、魔石だ。
俺がこれらの素材をカウンターの上に並べていくと、おばちゃんの顔が驚愕の表情をする。
「こ、これは、とんでもないものを持ってきたね。これは・・・樹海の魔物だね?」
「あぁ、そうだ」
「・・・・・・」
後ろから、期待外れな感じの気配を感じる。また、あの
「お前も懲りないなぁ」
「何のことかわからない」
俺の呆れた声にハジメはとぼけるが、おばちゃんも同じように呆れた視線を送っている。
「なんにせよ、樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」
「やっぱり、そうなのか?」
「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」
「なるほどな」
そう言うおばちゃんの目は、俺の後ろにいるシアに向けられている。
おそらく、シアに案内してもらったと推測したのだろう。やっぱり、シアの外聞を奴隷にしておいて間違いはなかったようだ。
結局、今回の買取金額は四十八万七千ルタになった。かなりの額だ。
「これでいいかい?中央ならもう少し高くなるだろうけどね」
「いや、これで構わない。それと、門番の男にここでこの町の地図がもらえると聞いたんだが・・・」
「ああ、ちょっと待っといで・・・ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」
そういっておばちゃんが差し出した地図はなかなか精巧に作られていて、おすすめの宿や店も簡単に説明している素晴らしい出来だった。正直、これだけでも十分に金を取れるレベルだ。
「この立派な地図が本当に無料なのか?これだけでも金が取れると思うんだが・・・」
「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」
予想以上におばちゃんのスペックが高かった。どうしてこんな田舎のギルドで働いているのか疑問に思うくらいに。
「そうか。まぁ、助かる」
「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その三人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」
「わかってるさ」
おばちゃんが心配している通り、今こうして話している間にも周りの男連中がユエやシア、ティアを見ながらこそこそと話していた。
まぁ、いざとなれば多少の実力行使もやむを得ないし問題ないだろう。
おばちゃんに礼を言って、俺たちはギルドから出て行った。
* * *
「それじゃあ、次はどこに行く?」
ギルドを出たあと、俺はユエたちに次の行き先を尋ねた。
「私は、新しい服が欲しいわ。さすがにこれだと窮屈だし・・・」
「・・・シアも、ちゃんとした服を着るべき」
「そ、そんなに変ですか?」
「そりゃあ、それだと服(笑)だろ」
「まぁ、俺も新しい服が欲しいし、決まりだな。地図によると近くにいい服屋があるみたいだから、そこに行こう」
次の行き先は服屋に決まった。
一応、俺の服はハジメのサイズでも問題ないのだが、ハジメの黒コートみたいな厨二スタイルに合わせるのがいやだったから断った。
ちなみに、あのおばちゃんの地図は本当に優秀で、服屋一つとっても用途に分けられて紹介している。
その中で、俺たちは冒険者用の服屋に入った。そこでは、ある程度普段着も買えるらしい。
中に入ると、様々な服がおいてあり、そのどれもが品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという、おすすめされた通りの良店だった。
そして、奥から店主らしき人物がでてきた。
「あら~ん、いらっしゃ~い♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいわぁ~、た~っぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」
一言で言うと、
身長2m強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は・・・いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。
後ろにいるハジメたちも、あまりの異様に硬直している。
だが、俺は違う。
「あらあらぁ~ん? どうしちゃったの?せっかくの可愛い顔がもったいないわよ?」
「すまないな。後ろの面々はあなたのような人に会うのが初めてで慣れてないんだ。大目に見てやってくれ」
「あらら、それだったらしょうがないわねぇ~ん」
「「「「!!??」」」」
後ろから驚愕の気配が発せられた。
ハジメがうろたえながら俺に尋ねてくる。
「ツルギ、お前っ、なんでこんな化け物相手に平然と話してられるんだよ!?」
それを聞いた濃ゆい店長は怒りの咆哮をあげた。
「だぁ~れが伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴルァァアア!!」
「そっ、そこまで言ってねぇっ!!」
あのハジメが、完全に及び腰になっている。
それほど、店長の怒りはすさまじかった。
(ハジメ、謝れ!こういうのは怒らせたらダメだ!)
(わ、わかったよ)「あー、すまない。さすがにデリカシーに欠けていた」
「わかってくれればいいのよん♥それでぇ?今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」
脅威は去った。だが、その影響はすさまじく、ハジメとユエは及び腰になっているし、シアとティアに至っては完全に腰を抜かしてしまっている。
「俺と、後ろで座り込んでいる2人の服を見繕ってほしい。組み合わせは、店長に任せる」
「わかったわ。任せてぇ~ん。あなたもついてきてねぇん?」
「わかった」
「あ、ちょっと!おろしてください!って、抜け出せない!?」
「ハ、ハジメさん!ユエさん!助けてください!」
「んじゃ、また後でな」
「お、おう・・・」
「・・・ん」
店長さんはティアとシアを肩に担いで店の奥に向かい、俺はその後ろをついていく。
ハジメとユエは、最後まで見ていることしかできなかった。
結論から言うと、店長のセンスは抜群だった。
また、店の奥に連れて行ったのも、シアが粗相をしたと気づいて着替える場所を提供するためだったらしい。
そんな店長が選んだ服は、あのおばちゃんがおすすめするだけあって、見事の一言だった。
シアの服装は、以前と変わらない露出過多なものだったが、実用性に富んだもので、ミニスカートの中にホットパンツも着用して機動性を重視している。
ティアも機動性重視だが、シアほど露出は多くなく、タンクトップの上にバトルベストを羽織り、こちらもホットパンツとアウトドアブーツを着用していた。
そして、俺の服装なんだが・・・
「んで?俺に厨二スタイルが嫌だと言ったツルギ君?今の気持ちは?」
「・・・結局、俺もハジメの同類なんだなって」
「えっと、ツルギ?似合ってるわよ?」
有り体に言えば、某アニメ臭い服だった。もっと言えば、赤い外套に黒を基調としたインナーとズボンという、完全に某弓兵な服装だった。
はっきり言って、狙ってやってるのかと思った。俺の剣製魔法といい、完全にマッチしている。コスプレ感は否めないが。
そんな姿を見たハジメは、今までの弄りをやり返すかのように笑っていた。
ティアは慰めたりしてくれているが、それが地味に心にダメージが入る。
「まぁ、それは置いといてだ。どうしてあの化k・・・店長とまともに話せたんだ?」
「・・・親父の知り合い、っていうより部下に、同じような人がいたから慣れてる」
「・・・お前の親父さん、警察官なんだよな?」
「警察官だよ」
たしかに俺の親父は警察官だが、親父のいる部署はどういうわけかいろいろと
そのせいかおかげか、ちょっとやそっと癖が強いだけでは動じない精神を身に付けた。
「・・・お前も、大変だったんだな」
「・・・とりあえず、宿に行こう。早く休みたい」
一応、あの店長さんは見かけによらずいい人だったが、いろいろなことがありすぎて疲れた。
そういうわけで、満場一致で俺たちは宿に向かった。
運営から「クロスオーバーのタグ付けろ」と注意されてしまいました・・・。
まぁ、いくら自分ではオリジナルのつもりでも、“剣製魔法”とか完全にエミヤさんの魔法だよなぁ、と思い直しました。
というわけで、今回でオリ主を完全にエミヤ属性にしました。
もう行くところまで行っちゃおうかと。