二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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カチコミ本番

翌日、俺は学校でハジメに昨夜の顛末を報告し、今夜仕掛けに行くことを話した。

 

「なるほどな・・・一応聞いておきたいんだが、夜に行くってことは対策を用意してあるってことだよな?」

「当たり前だろ」

 

厳密には、今日用意した、というのが正しいが。

さすがに吸血鬼の絶対領域である夜に無策で突っ込むような真似はしない。

 

「それで、俺の方にも協力してほしいって話か?」

「いや、そう言うわけじゃない。というか、自分のことに専念してくれ。おそらく、向こうも俺たちのことを異能の力を持つ“帰還者”として認識したはずだ。そうなると、俺だけでなく他の奴らが狙われる可能性もある。そうなったときの対処をハジメに任せたい。具体的には、周囲に被害が出ない程度に抑え込みつつ、できれば俺の方に連絡を入れてくれ。俺の方に転移させてまとめて潰す」

 

吸血鬼の類であれば、俺が用意した対策に巻き込めばまとめて対処できる。

問題なのは、相手の出方がまったくわからないこと。

相手の性格がわからない以上、拠点で俺を待ち構える可能性があれば、逆に俺たちの方に攻め込んでくる可能性もある。

わかるのは、容赦なく手駒を()()する程度には冷酷で、ルナをしつこく取り戻そうとしてくるだけでなく俺たちまで手に入れようとするほど強欲であること。

これを考えると向こうから出向いてくる可能性は非常に高いが、こちらの危険度はそれなりに伝わっているはずだから昨日の今日で来ることはない、と思いたい。

 

「一応、その辺りのことはティアたちにも話したが、情報が少なすぎるからなぁ・・・そのうち、俺の方で情報収集に特化した神器でも作っておくか」

「マジか?だったら、もしできたら俺の方でもちょっと使わせてくれ」

「なんだ、まだ終わってないのか?」

「まだめんどくせぇのがいくつか残ってる。それに、俺の方でもいろいろとやりたいことがあるからな」

 

一応、表向きの帰還者騒動は完全に沈黙したが、裏側での騒動、秘密組織とかそういう奴らの問題はまだ治まっていないようだ。

まぁ、そういう手合いの奴らは簡単に見つけて潰せるものじゃないからな。ゲートキーの改良にも忙しいだろうし、ハジメでもてこずるのはしょうがないだろう。

そういうことなら、こちらとしても協力をしぶる理由はないな。

となると、俺以外が使えるようにする必要もあるか・・・コンピューターの外付けハードみたいなのを付けて使用者の負担を減らせるようにすればいけるか?

まぁ、それについてはおいおい考えていこう。

今は今夜の襲撃の予定を・・・

 

 

* * *

 

 

「すっかり考え込んでるわね」

「そうね」

 

ツルギが思考に没頭している様子を、ティアと雫の2人は少し離れたところから眺めていた。

 

「・・・しょうがないってわかっていても、今回私たちにできることはあまりないわね」

 

少し寂し気な表情を浮かべながら、ティアは呟いた。

今回の作戦、基本的に襲撃はツルギが1人で行うことが決まっている。

当然、ティアたちを信頼していないわけではない。

むしろ信頼しているからこそ、ツルギはティアたちを連れて行かないことにした。

というのも、ツルギがいない間はどうしても家が手薄になってしまう。

その警備、というより防衛を任せられるのは、ルナのこともあってそう多くはない。

相手がルナを狙っている以上、“あの方”が直接乗り込んでくる可能性は決して低くないのだ。

だからこそ、ツルギは攻勢よりも防衛に人員を割いた。

ツルギ1人で攻めに行けば、自分たちに被害が出る前に撤退することも用意だが、複数人いるとどうしてもその分手間がかかってしまう。その点、ツルギ1人だけの方がいろいろと気楽に行けるのだ。

これらの理由はティアたちも理解しているが、やはり本心ではツルギと共に戦いたいのだ。雫とアンナは神話決戦で共闘していないこともあってなおさら。

だが、ルナがツルギ以外で最も懐いているのは雫で、その次がアンナだ。この2人がルナから離れるわけにはいかない。

それでも、基本的にツルギ側の女性陣は良くも悪くも1人で背負い込みやすいツルギの役に立ちたい、あるいは甘やかしたい性分なため、どうしてもモヤモヤしたものが残ってしまうのもまた事実だ。

とはいえ、それを抑える術も発散する術も両方持っているため、問題になったことはあまりないが。

 

「私たちが守るべきは、第一にルナ、第二にお義父さんや知り合いの人たち。クラスメイトに関してはハジメに任せる・・・相手を考えれば、これくらい慎重な方がいいわね」

 

相手は伝説の吸血鬼。ユエとは違う、正真正銘の化け物。しかも、何かしらの“奪う”能力を持っている。

相手の力が未知数である以上、慎重に慎重を重ねて損はない。

ないのだが・・・

役回り的に損だと思ってしまうのは、仕方ないことでもあるだろう。

 

「・・・やっぱり、他にもできることが」

「あればいいわねー」

「うぐぅ」

 

被せ気味に声を重ねる雫にティアは思わず呻く。

ツルギ、イズモ、アンナによる地獄の特訓によって人並みの家事力を手に入れたとはいえ、ツルギメンバーの中ではまだ最弱でやることを取られがちなティアは役に立てる機会を虎視眈々と狙っている。

ただ、今回はどうしようもないだろう。

そう思いながら、雫はあーでもないこーでもないと頭を抱えるティアを苦笑を浮かべながらに眺め続けた。

 

 

* * *

 

 

学校から帰り日も沈んだ頃、俺は黒の装束に身を包んで山の中を走っていた。

一応、夜中に行動するということで、できるだけ目立たないようにと用意したものだが、図らずも忍者っぽくなってしまったのは、忍者のあの格好が合理的でもあるということなのだろうか・・・用意してくれたのも上月さんだし・・・。

それはそうと、今向かっているのは一番近くにあった拠点なのだが、なんと俺たちが住んでいる町のすぐ近くの山の中だった。

少なくとも、そこから突然現れたかのように残滓が残っていた。

おそらく、空間魔法の類で本拠地と仮拠点の間に通路を繋げているのかもしれない。

だとしたら、日本人離れした容姿のルナが日本の山奥で見つけた理由にもある程度合点がいく。

問題は、詳しい場所までわかっていないということだが、それはあまり問題にならなかった。

 

「へぇ・・・案外わかりやすいもんだな」

 

目星をつけていた付近に近づいてすぐにわかった。

まさに魔窟と呼ぶにふさわしいような、独特な気配を放っている場所がある。

十中八九、そこが奴らの本拠地に繋がる通路だ。

周囲を探りながら、慎重に気配の出所へと向かう。

しばらく進んでいくと、大きめのうろがある樹を見つけた。

間違いなく、これが独特な気配の出所だ。

さて、見つけたはいいが、どうやって入ろう。力づくで入ることはできるだろうが、できるだけ向こうにばれないように侵入したいところだ。

遠藤なら難なく侵入できそうなものだろうが、残念ながら隠形に関しては遠藤よりも下だ。というか、あいつよりも隠形に優れている人間がいるのかは甚だ疑問だが。

とはいえ、俺だからこそできる方法もある。

周囲とうろの辺りに誰もいないことを確認してから接近し、“魔眼”でうろを視る。

・・・やっぱり、空間魔法の類か。俺が知っているものとは微妙に違うが、これなら俺でも干渉できる。

 

「さて・・・覚悟しておけよ」

 

俺に喧嘩を売ったらどうなるか、骨の髄まで刻み込んでやる。

 

 

 

侵入は思っていたよりも簡単にできた。

転移された先は石レンガでできた円形の部屋で、部屋の中央でもある俺の足下には精緻な魔法陣が描かれていた。他に特徴的なものはなく、あとは1つの扉の奥に通路が繋がっているだけだ。

 

「・・・なるほど、ここだけでいろんな場所に転移できるようになっているのか」

 

転移先の座標を決める条件まではわからないが、活動範囲は相当広いだろう。

そもそも、ここはどこだ?地下にあるのか窓がないから、外の様子がわからん。

敵の拠点のど真ん中で無防備になるような真似はしたくないんだが、それでもだいたいの位置は把握しておきたい。

ひとまず魔法陣からどいて、半径10mの探知結界を展開してから視界を外に飛ばす。

 

「・・・あぁ?」

 

外の景色は、はっきり言って奇妙の一言だった。

周囲に広がる枯れ木の森に、おそらく俺が中にいるであろう中世ヨーロッパのような城はまだいい。

問題なのは、それらがすべて赤で染まっていること。それこそ、空や霧、地面なんかもすべて。

城や木自体が赤いのではなく、空間そのものが赤い感じだ。

俺の記憶では、こんな場所は存在しないはずなんだが・・・。

 

「いや、なるほど、結界の類か」

 

おそらく、結界の内部を異界化させて、現実の世界から切り離しているんだろう。

物理的な手段では侵入することができず、さっきのような魔法を用いた特殊な通路を通ることでこの空間に行きつくことができる、といったところか。

おそらく、原理としては大樹ウーア・アルトの隠蔽に近い。違うのは、物体ではなく空間そのものに働きかけているところか。

 

「こりゃ、思ったよりめんどくさくなりそうだな・・・」

 

最低でも、黒幕が神代クラスの魔法、それこそ境界への干渉を行えるくらいの力を持っていることが判明した。

同時に、相手が超常の存在という実感が湧いてくる。

もちろん、今さらになって怖気づくことはないんだが、少しティアたちのことが気がかりになってくる。

入れたのはいいが、この魔法陣無しで外に出るのは少し骨だし、よほど特別な空間なのか端末の調子が悪い。最悪、俺がここにいる間に攻められる可能性すらある。

それを考えると、ここからは派手に行動して俺に注意を向けさせる方がいいかもしれない。

なら手始めに、まずはここをぶっ壊しておこうか。

 

「“黒天窮”」

 

もう少し離れてから重力魔法を発動し、床ごと魔法陣を消滅させる。

あ、しまったな。目立つように動くならシンプルに火魔法とかで爆発させた方がよかったかもしれない。

まぁ、結果から言えば杞憂だったが。

城の中の気配が一気にあわただしくなった。

どうやら、音とか衝撃に関係なく魔法陣に何かあったらわかるようになっているようだ。

ただ、特別大きな気配を感じないのが気になる。

まさか、本命はここにはいないとかそういうオチじゃないよな?

・・・なんだか胸騒ぎがする。やっぱ魔法陣を壊したのは早計だったか・・・。

まずいな、ハジメの行き当たりばったりの悪癖が俺にも移ってるかもしれん。

今回の件が済んだら、ちょっと自分を見つめなおしておこう。

 

「いたぞ!侵入者だ!」

 

そんなことを考えていると、通路の奥から大勢やってきた。

この気配は、前に襲撃してきた3人と同じだ。ということは、“あのお方”の手駒といったところか。

ていうか、思っていたよりも多いな。捜索願とか出されなかったのか?あるいは、けっこう昔からこまめに攫ったりしてたのか?

まぁ、俺がそんなことを気にする必要はないわけだが。

 

「悪いが、俺のエゴと安寧のために死ね」




久しぶりの「二人の魔王」更新です。短いのは許せ。
今まで鬱で死にそうとか言ってましたが、精神科クリニックに行ったところ症状としては鬱じゃなくてパニック障がいの類って言われました。
まぁ、体調面でキツイのはあまり変わりませんが。
ついでに言えば、発達障がい持ってるって言われるのってこういう気分なのかー、って思いました。
まぁ、だからといって今後の活動が大幅に変わるとか、そういうのはないんですけどね。
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