挿し絵じゃないのか、だって?
画力がないんだよちくしょう。
他の人に書いてもらえばいいじゃないか、だって?
そんな友人もいないんだよちくしょう。
峯坂ツルギ
身長:173cm 体重:64kg
見た目:黒髪で短髪ツンツン頭・黒のつり目・全体的に細身だが筋肉は引き締まっている
ティア
身長:164cm 体重:57kg
見た目:赤髪のセミロング・翠の猫目・全体的に引き締まっており、胸は普通
とりあえず、簡単にこんな感じです。
後はそれぞれイメージしていただければと思います。
服屋を後にした俺たちは、今日の宿を地図の中で紹介されている“マサカの宿”にした。
料理がおいしく防犯がしっかりしており、なにより風呂に入れるということから満場一致で決まった。風呂の使用料は少し割高だが、気にする必要がないくらいの手持ちが今の俺たちにはある。
中に入ると、一階が食堂になっているようで、すでに複数人が食事をとっていた。
入った瞬間に客の視線がユエたちに集中するが、それをなるべく気にしないようにしつつカウンターの方へと向かうと、15歳くらいの少女が元気よく挨拶しながら現れた。
「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿”へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」
「宿泊だ。この地図で紹介されているのを見て来たんだが、ここに記載してある通りでいいか?」
俺がおばちゃんの地図を見せると、少女が納得したようにうなずいた。
「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」
「一泊だ。食事付きと、あと風呂も頼む」
あのおばちゃん、キャサリンって名前だったのか・・・ちょっと、衝撃がでかかったな。ハジメなんか、遠い目をしてるし。
「はい。お風呂は15分100ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」
「そうだな・・・ここの2時間で頼む」
「えっ、2時間も!?」
少女は俺が指定した時間に驚いていたが、俺たち日本人としてはゆっくり入りたいため、男女で分けるとしてもこれくらいは当然だ。
「え、え~と、それでお部屋はどうされますか?2人部屋と3人部屋が空いてますが・・・」
そう言いながら、少女の視線が俺の後ろにいく。明らかに好奇心を抑えられないといった様子だ。
「そうだな、2人部屋と3人部屋を一部屋ずつで頼む。部屋割りは・・・」
「・・・私とハジメで2人部屋。あとは3人部屋」
周りから、主に男から「リア充死ね!!」みたいな波動が送られてくる。
てっきり、男女で分けられるとでも思っていたのだろうか。
シアの方からも、抗議の声が挙がる。
「ちょっ、何でですか!」
「・・・シアがいると、楽しめない」
「楽しむって、何をですかっ」
「・・・何って・・・ナニ?」
「ぶっ!?こんなところでなにを言ってるんですか!それを言ったら、ツルギさんとティアさんとユエさんで三人部屋でいいじゃないですかっ!」
「・・・それで、どうするつもり?」
「そ、それでハジメさんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」
店内に静寂が満ちた。俺とティアは、「こんなのの関係者だと思われてるのかなぁ・・・」みたいな感じで遠くを見ている。
ユエはというと、絶対零度の視線を宿している。
「・・・今日がお前の命日」
「うっ、ま、負けません!今日こそユエさんを倒して正ヒロインの座を奪ってみせますぅ!」
「・・・師匠より強い弟子などいないことを教えてあげる」
「下克上ですぅ!」
そう言いながら、シアが背中の戦槌に手をかける。
発せられるプレッシャーはすさまじいのに、なんだかやるせなさを感じていると、ハジメがため息をつきながら2人に近づいていき、
ゴチンッ!ゴチンッ!
「ひぅ!」
「はきゅ!」
2人の脳天に鉄拳を叩き込んだ。それなりの力で殴ったのか、2人は頭を押さえてうずくまる。
「ったく、周りに迷惑だろうが。何より俺が恥ずいわ」
「・・・うぅ、ハジメの愛が痛い・・・」
「も、もう少し、もう少しだけ手加減を・・・身体強化すら貫く痛みが・・・」
「自業自得だバカヤロー」
とりあえずハジメが冷えた眼差しを二人に向け、一応は落ち着いたということで俺は気を取り直して少女に話しかける。
「っと、騒がせて悪いな。部屋割りは、そこの3人が3人部屋で、俺ともう1人が2人部屋だ」
「こ、この状況で男女で2人部屋と3人部屋・・・つ、つまり、こっちの人たちは3人で?す、すごい・・・はっ、まさかお風呂を2時間も使うのはそういうこと!?お互いの体で洗い合ったりするんだわ!それから・・・あ、あんなことやこんなことを・・・なんてアブノーマルなっ!」
「おーい、聞いてるかー?」
少女はなにやらどこかへとトリップしていた。顔を真っ赤にしてぶつぶつとなにかをつぶやいている。
それを見かねた女将さんらしき人物が、少女の首根っこを掴んでずるずると引きずっていき、代わりに父親らしき人物が手早く手続きを済ませた。
ただ、その途中で「うちの娘がすみませんね」と言ったのだが、その目には「男だもんね、わかってるよ?」などといううれしくない理解の視線を向けられた。きっと、翌朝になったら「昨日はお楽しみでしたね?」などと言ってくるに違いない。
とりあえず、今はなにを言っても泥沼にはまっていきそうな気がしたため、鍵を受け取ってさっさとそれぞれの部屋に向かった。
「・・・そういえば、私とツルギはしれっと同じ部屋なのね」
部屋の中に入ると、ふとティアがそんなことを尋ねてきた。
「まぁ、男女で別れることも考えたんだが、あの様子だとどうせあの2人が突貫してきそうだしな。ユエとシアをどっちかに分けても、どうせどっちかが突撃するのは変わりないだろうし、それなら、こっちの方が手っ取り早い。それとも、俺と2人は嫌だったか?」
「そういうわけではないのだけど、なんだかすごい自然だったから・・・」
見た感じ、ティアもまんざらではなさそうだ。とりあえず、嫌がっているわけではないらしい。
「正直言って、俺の安息のためにはどうしても必要だからな。とりあえず、これで我慢してくれ」
「別に、我慢なんてしてないわよ」
ティアが苦笑しながら、気にしなくていいと声をかけてくる。
ティアが話のわかるやつで本当によかった。
* * *
「あ”~、生き返るぅ~・・・」
「それ、なんだかおっさんくさいぞ、ツルギ」
「しょうがないだろ、今日一日でかなり疲れたからな」
あの後、俺とハジメはさっそく風呂に入った。
男の俺たちが先なのは、女の子の風呂はどうしても長くなるからだ。
こうして俺とハジメ2人だけでいるというのも久しぶりなので、遠慮なく話すことができる。
「それにしても、お前の体、ずいぶんと傷だらけだな」
「あぁ、これな」
そういうハジメの視線は、俺の体にある様々な傷に向けられていた。
そのどれもが、オルクス大迷宮でついた傷だ。
「一応、致命傷とかはないんだが、それなりに大けがを負うこともあったな。お前と違って、自分の回復魔法でどうにかするしかなかったし」
「なるほどな」
俺がハジメの方に顔を向けると、そこには鍛え抜かれたハジメの体があった。だが、奈落から生き延びたというには、不自然なほどに傷が少ない。
これは、ハジメが奈落に落ちたときに見つけた神結晶と、そこからでる神水の効果だ。
神結晶というのは、大気中の魔力がゆっくりと時間をかけて結晶化したもので、魔力が飽和した神結晶にさらにゆっくりと魔力を注入することで湧き出るのが神水だ。この神水がすさまじく、あらゆる傷を癒し、これを服用している間は食事をとる必要もないという、この世界で最高級の、否、伝説上の産物ともいえる薬なのだ。
ハジメは、この神水の出る神結晶を見つけたことで、奈落を乗り切ったそうだ。
だが、残念なことに今は神結晶からは神水は出ず、残りは試験管12本分だけだそうだ。
残った神結晶は、優れた魔力貯蔵庫にもなるということで、ハジメがアクセサリーにしたり、神結晶を媒体にしてアーティファクトを作ったりもしている。
そんなことを湯船につかって話していると、妙な気配をつかんだ。
「・・・ん?」
「どうしたんだ?」
「いや、誰か入ってきたような・・・」
「・・・まさか」
この状況で、風呂に入ってくる人物といえば、
ガラリ、と風呂の扉が開けられた。
そこに立っていたのは、一糸まとわぬ格好のユエ・・・
ブスリ
「イッタイメガーーーーッ!!??」
俺の目に神速の目つぶしが決まった!犯人はハジメ。
ていうか、俺の天眼でもまったく見えなかったんだが。
ハジメはそんな俺に目もくれず(見えないから多分)、ユエに質問を投げかける。
「ていうか、なんでユエがここに!?」
「・・・え?ハジメ、私に背中を流してほしいって?」
「そんなこと一言も言ってないんだが!?」
「ハジメー、前が見えねぇよー・・・」
俺からささやかな抗議をいれるが、まったく相手にしてもらえない。
「ずるいです、ユエさん!私も背中流します!」
「ちょっと、少しは落ち着いたら?」
「シアと、ティアまで!?」
女性陣最後の常識の砦であるはずのティアまでもが突入していた。もう終わりだ。
「ツルギ、大丈夫?」
「ちょっと待て。今、回復魔法をかけるから・・・」
回復魔法はそこまで得意ではないが、ハジメがギリギリ手加減してくれたおかげで、なんとかすぐに視力を回復させることができた。
目を開けると、俺の隣にティアが腰かけていた。変装のアーティファクトも起動させたままだ。幸い(?)、バスタオルを巻いていたためそこまで目のやりどころに困るわけではなかった。
ちなみに、俺も目が見えないながらも腰にタオルを巻いたから見られる心配はない。
「それにしても、なんでティアまで来てるんだよ・・・」
「だって、私だけ1人で待ってるのも寂しかったし・・・」
「その寂しさの代わりの羞恥心はどこに行ったんでしょうかね・・・」
1人で待っているのが嫌なのに裸を見られるのは構わないとか、正直ティアの感性を疑う。
ティアの中では何がセーフで何がアウトなのだろうか。
「はぁ、ゆったり風呂に浸かっていたかったんだがなぁ・・・いや、ある意味、この状況くらいなら予測すべきだったのか・・・?」
「男の人が入っているお風呂に女の人が突入してくることを前提にするのも、ある意味すごいことではあるけどね」
そう言われても、実際に起きてしまったんだからなんとも言い様がない。
なんとなく黙って風呂に浸かっていると、ティアが俺の肩に頭を預けてきた。
「・・・どうしたんだ?」
「・・・べつに、なんとなく」
ティアの方も口数が少なくなり気まずい沈黙が続くが、不思議と嫌な感じはしなかった。
こうしている間にも、ユエがハジメの背中を流したり、シアが「ユエさんはペッタンコじゃないですか!」と口を滑らせてユエの水魔法で錐揉みにされたり、そんな状況を実はこっそり見ていた宿の看板娘をハジメが見つけて制裁したりとかなりカオスなことになっていたが、水魔法と風魔法を使って周りからシャットダウンした俺たちには関係のないことだ。
疲れてるからゆっくりしたいんだ、こういうときくらい。
* * *
風呂と食事を済ませたあと、それぞれの部屋に戻ったのだが、俺とユエだけは外に出ている。俺の方から「話がある」と誘ったのだ。
ユエの方も二つ返事で頷き、ハジメも特に勘ぐることなく俺とユエを送り出した。
今は、宿の裏庭にいる。ここなら、この時間帯はあまり人は来ないはずだ。
「悪かったな、急に呼び出したりして」
「・・・べつに構わない。それで、話って?」
俺の謝罪にユエは首を振り、先を促す。
俺も、あまり長くならないように本題に入る。
「ハジメのことで、礼を言おうと思ってな」
「・・・ハジメのことで?」
「あぁ。ハジメを救ってくれて、ありがとうな」
俺の礼に、ユエは首をひねる。
「・・・救われたのは、私の方」
「ユエにとってはそうなんだろうけどな、それでも、ハジメもユエに救われてるんだよ」
ハジメがはっきりと口にしたわけではないが、俺には大体の想像がついている。
「クラスメイトに裏切られて、奈落で一人で過ごしたハジメの心は壊れかけた。いや、少なくとも一度は壊れたな。下手をすれば、俺にも銃を向けていたかもしれない」
ハジメがただ生き残る、自らの望みを叶えるために手段を選ばないようになっていたら、事実、そうなっていただろう。
「俺はな、もしハジメが外道も辞さない化け物に道を踏み外していたら、自分の手で殺すつもりだった。親友である俺が殺すべきだと考えていた」
「・・・それは、今も同じ?」
「同じって言えば同じだがその心配はいらねぇよ。今のハジメはそんな化け物じゃないからな」
そして、そんなハジメをつなぎとめてくれたのが、
「ユエのおかげで、少なくとも俺の危惧していた化け物にはなっていなかった。ユエが、俺の知る“最後の”ハジメをつなぎとめてくれたんだ」
もしユエがいなければ、あるいは、ユエが違う態度をとっていたなら、ハジメは本当に道を踏み外していただろう。
「だから、礼を言うんだ。ハジメを救ってくれて、ありがとうってな」
「・・・ん」
俺の感謝の言葉に、ユエはわずかに恥ずかしがるが、すぐに口を開く。
「・・・やっぱり、ツルギはハジメの友達。ハジメのことを一番に考えている」
「まぁ、そうだな」
「・・・ツルギにとって、ハジメはどんな存在なの?」
「そうだな・・・」
正直、それをここで言うのは俺も恥ずかしいが、周りに誰かがいる気配もないし、言ってもいいだろう。
「俺にとってハジメは、一番の親友で、恩人で、憧れだな」
「・・・憧れ?」
「それはまぁ、ここでは勘弁してくれ。さすがに恥ずいし、ちょいとハジメのプライバシーにも関わるからな」
「・・・ん、わかった。なら、聞かないでおく」
「ありがとよ。んじゃ、そろそろ戻るか。体も冷えてきたし」
「・・・ん」
そうして、俺とユエはそれぞれの部屋に戻った。
ムスカ大佐かと思ったか?
残念、めぐみんだ。
こういうのはムスカ大佐が多いので、ちょっと変化球にしてみました。