二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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増える家族

アルカードの襲撃から、おおよそ1週間。ようやくいつもの平穏が戻って来た。

この1週間でやったのは、主に情報および認識操作だ。

内側にいた俺たちは知る由もなかったが、どうやら赤い霧のドームは不完全だったからか大勢の人に見られていたらしく、写真なんかもSNSで拡散されたりした。そのため、それらのデータを抹消しつつ、大規模認識操作によって一般人の今回の事件の記憶も抹消した。

今回の認識操作は、上の承認をもらったものだ。さすがに政府としてもあんなものを当たり障りなく片付けるのは難しかったようで、思ったよりあっさりと許可は下りた。

その分、俺たちの仕事量は格段に増えてしまったわけだが、相応に報酬はきちんと支払ってもらったから文句はない。

そんで、ルナを始めとした吸血鬼への対処なんだが・・・アルカードが消滅した現状、ルナを除いて他の吸血鬼を確認できていない()()()()()()()。“導越の羅針盤”を使えば一発だが、政府にその存在を知らせるわけにはいかないしな。

というか、アルカードが消滅したならルナにも影響があるのかもしれないと危惧していたのだが、幸か不幸か特に変化は確認されなかった。体調を崩したとか能力が使えなくなったとかそういうのもない。

これはあくまで推測でしかないが、おそらくルナの潜在能力はアルカードを上回っていたのではないだろうか。その結果、一度はアルカードの支配下から脱した。

そうでなければ、真の吸血鬼だなんだと豪語していたアルカードが能力を奪うのにてこずるとは考えづらい。

そこで、アルカードはルナの心を完全にへし折った上で改めて服従を誓わせることで能力を奪おうとしたのだろうが、途中でルナが逃走したことでそれも頓挫。そこで追跡の最中に偶然出くわした俺たち帰還者に目を付けて今回の事件が起こった、というのが、だいたいのあらましだと思う。

まぁ、アルカードは跡形もなく消し飛んだから、事の真相は誰にもわからないし、ぶっちゃけそこまで興味もないが。

そして最後にルナについてだが、正式に俺と雫の娘として戸籍に登録することになった。あくまで『戸籍上は』だが。

一応、親の欄に俺の名前だけ登録するという手もなくはなかったんだが、それだと雫をママと慕っているルナがさすがに可哀そうということで、最終的に俺と雫がルナの保護者ということになった。

当然、と言ってはなんだが、あくまで保護者として名前を連ねているだけで、ティアたちを差し置いて籍を入れたとかそういうわけではないのだが、親父はそういう捉え方をしてめちゃくちゃ不機嫌になった。

そんなんだからいつまで経っても出会いが訪れないんだと何度も言ってるし他からも言われてるはずなんだが、懲りないというかなんというか・・・。

一応、他からは特に反対意見はなかった。ハジメとミュウ、レミアさんが似たような感じになってるからな。

ただ、あらかた落ち着いたことで雫は実家の方に戻ることになった。

さすがに学生のうちに同居させるわけもないだろうから当然と言えば当然だが、ルナのこともあるため峯坂家に来る頻度は以前よりも多くなりそうだ。

そんなこんなで、一通りの事後処理を終えた俺は藤堂邸に足を運んでいた。ちなみに、今回はルナは連れてきていない。大人の会話なんて下手に聞かせるものじゃないしな。

 

「・・・で、ひとまず事態は沈静化したとみて問題ないな?」

「そうですね。一部の魔法的組織や吸血鬼狩りはまだ虎視眈々と狙っているかもしれませんが、余程でない限り我々で対応できる範囲です。こちらがその資料になります」

 

吉城の報告と差し出された資料の内容に、俺はホッと息を吐いた。

今回の騒動は世間のみにならず、国内外の裏組織にも広く知れ渡ってしまっている。

そのため、騒動の後処理に加えてそいつらの相手までしなくてはならなかったのだが、そっちは暇を持て余してたやつらに割り当てて事なきを得た。

ただ、中には今回の事件で記憶操作に勘づいた輩がいたようで、手を出さずに静観してたらしいやつもちらほらいた。

当面はそいつらに気を付ける必要があるが、そっちは藤堂家が対応してくれるとのことだから俺らがでしゃばる必要もないだろう。

 

「にしても、最初に適当な情報を寄越しやがって・・・」

「それに関しては、私も反論できませんね。固定観念にとらわれていたのもあるでしょうが、峯坂君が頼ってきたことで、知らず知らずのうちに浮かれていたのかもしれません」

 

まぁ、組織的にはともかく、個人的には基本的に立場は逆だからなぁ。

ぶっちゃけ、やろうと思えば藤堂家の力を借りなくても俺たちだけでどうとでもなる。

ただ、そうなると少なからず直接的な手段が増えるわけで、必然的に日本国内での小競り合いも多くなる。

政府としては、当然そんな事態を容認するわけにはいかない。

そのため、“帰還者”が組織として動いているという大義名分を得るために、そのお目付け役兼補佐として藤堂家が動いている。

そういうわけで、立場としては俺らが藤堂家に対して「お願いします」と頼んでいるのではなくて、藤堂家が俺らに対して「お願いしてください」と頼んでいるようなものだ。

だから、あくまで情報収集のみとはいえ俺から藤堂家に頼んだのは今回が初めてなのだから、浮かれるのもわからなくはない。

もちろん、次はないが。

 

「まぁ、それに関してはきちんと反省して再発防止に努めてくれればいい」

「肝に銘じます。それで、あのお嬢さんはどうですか?」

「あぁ、ルナのことか?」

 

言うまでもないことではあるが、俺は笑みを浮かべて答えた。

 

「当然、上手くやってるよ。元気いっぱいだ」

 

 

* * *

 

 

吉城との対談を終え、帰路につく。

道中、ふと視線を横に向けると、ケーキ屋があった。

 

「・・・土産に買っていくか」

 

別に手ぶらで帰ったところで文句は言われないだろうが、買っていけば喜ぶだろう。

特に最近は、ルナがよく食べるようになっている。

その分、献立も気を遣うようになった。吸血鬼とはいえ、子供の食事ということで栄養バランスを前よりも考えるようにしようと話し合った。

 

「すみません。これとこれとこれと・・・」

「お買い上げ、ありがとうございます。合計で2180円になります」

 

まったく、ルナが来てから、本当に親をやるようになった。

ぶっちゃけ、まともな子供時代を送ってこなかった俺がやれるもんかと最初は軽く不安になったこともあったが、やろうと思えばやれるもんだ。

・・・あるいは、俺が送りたかった生活を意識した結果、それが上手くいったのか。

おおよそ10年、見ようとも思わなかった光景が目の前にあると思うと、どうしても物思いにふけってしまうな。

母さんと過去で再会して話し合ったときもそうだ。

異世界召喚を経て地球に帰還してから、こうも“今さら”が連続して起こるというのはどういう偶然なのか。

神や運命のいたずら、とは思いたくもないものだ。

だが、なるべくしてなった、とも言い難い。

どうにも俺の人生というのは、様々な苦難・苦悩が待ち構えているようだ。

そして、その先には些細な幸せが待っている。解決した苦難や苦悩に見合うかどうかは別として。

 

「帰ったぞー」

「パパ!おかえりなさい!」

 

玄関で靴を脱いでいると、ルナがとててて!と駆け足で近づいてきた。

俺がしゃがむと、その勢いのまま俺の胸に飛び込んできたルナを回転して勢いを分散しながら抱きかかえた。

 

「パパ、それ何?」

「ケーキだ。帰る途中で買ってきた」

「ケーキ!」

 

あれから、ルナはよくしゃべるようになった。

言葉通りの意味でもあるが、言葉足らずで口下手なしゃべり方が、年相応の子供のようにはきはきと喋るようになった。

ルナの中でどういう変化があったのかはわからないが、それがいい方向なら何だっていい。

 

「おかえりなさい、ツルギ」

 

遅れて、雫も奥からやってきた。

 

「あら、お土産を買ってきたの?」

「あぁ。せっかくだし買っておこうと思ってな。アンナに飲み物を用意するように言ってくれないか?」

「わかったわ」

 

なんとも()()()会話だが、こればっかりはどうにも自然とこうなってしまう。雫がオカン故だからだろうか、あるいはユエたちをしてチートと言わしめる乙女力からくるのか。

たまにティアたちから羨まし気な視線を向けられることもあるが、本気で嫉妬しているというわけではないだろう。あるいは、子供が出来たら自分たちも、と思っているのかもしれない。

とはいえ、世間から見て俺たちはまだ学生の身。そう言った話はまだ先の未来のことだ。

そう考えると、ルナはその先の未来を先取りしている、ということになるな。

 

「パパ?」

「いや、なんでもない。おやつにしようか」

「うん!」

 

ただ今は、この幸せを噛みしめながら前に進んでいこう。

だから、俺たちのところに来て些細な幸せを運んでくれてありがとう、ルナ。




短いですが、吸血鬼編はこれにて完結です。
しばらくは改修作業に集中します。おそらく、3月いっぱいは投稿は難しいかもしれません。
改修作業が終わったら、間話を2つくらい挟んで新章突入って感じで。
今のところ、原作の深淵卿1章のアレンジを予定しています。
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