二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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漢女になるがいい

翌日、俺は今ハジメと二人きりで作業をしていた。

ティアたちは、一緒に買い物に行った。特に、ユエとシアが見事な連携で流れるようにティアを買い物に連れて行った。その流れるような動きは、ハジメをして「・・・お前ら、実は仲いいだろ」と言わせるほどだった。

どうやら、昨夜はいろいろと大変だったらしい。

ただ、ハジメの方も俺とユエが二人で話をしたことが気になるらしく、何回か聞いてきた。

 

「結局、お前はユエとなにを話したんだ?」

「内緒だ。別にやましいことはないから心配すんな」

「それはわかってるけどな。それよりも、そいつの使い心地はどうだ?」

「違和感はぬぐい切れないが、問題なく使えている。にしても、すごいな、これ」

 

そう言う俺の右腕には、尻尾を咥えたトカゲの意匠が施された金の腕輪をつけている。

もちろん、ハジメお手製のアーティファクトだ。

その名も“ウロボロス”。生成魔法を組み込んだアーティファクトだ。

この腕輪に魔力を通して魔法を発動することで、本物の生成魔法ほどではないが鉱物に魔法を付与できるという、今までハジメが作ってきた中でもかなりぶっ飛んだ性能だ。

アーティファクトを作る際、ぶっちゃけハジメ一人でも足りるのだが、やはり人手は多い方がいいということで作ったらしい。

なぜ俺なのかといえば、ハジメの作るアーティファクトのほとんどが日本のアニメや漫画の中の産物をもとにしているため、それなりに知識を共有している俺に渡されたのだ。

ただ、本物の生成魔法のように使えるわけではなく、あくまでハジメの補助くらいにしか使えない。

やはり、『鉱石に魔法を付与する魔法』を付与したアーティファクトというのも、使い勝手はあまりよくはないらしい。

 

「お前の魔法の腕は、魔力操作の技量で言えばおそらくユエよりも上だからな。やっぱり、お前に渡して正解だった」

「まぁ、またユエから嫉妬される気がするけどな。お前が作業してるところとか、ずっと見てたし」

「・・・それは、俺がなんとかする」

「シアが俺の部屋に来る未来が見えるなぁ・・・」

「・・・どうしろと言うんだ」

「どうにかしろ。お前の責任だろうが」

「ぐぅ・・・」

 

ハジメも、シアが好意を向けていることくらいわかっている。だが、ハジメが好きなのはユエだけであるからシアの気持ちに応えるつもりつもりはない。

それでも突撃してくるあたり、ある意味シアも大物だろう。

 

「ま、今はそんなシアと、あとティアのための武器を作るのに集中するぞ・・・ここはこうでいいか?」

「なんか流された気がするが・・・おう、それでいい」

 

とりあえず、先の大変なことはそのときに考えればいい。

俺とハジメは、シアのための武器作成を再開した。

 

 

* * *

 

 

「それで、ティアさんはツルギさんのことをどう思ってるんですか~?」

 

すでに喧騒に包まれている町の中をユエ、シア、ティアが歩いている中、シアがティアに尋ねた。

 

「どうって?」

「早い話、ティアさんはツルギさんのことが好きなんですか?」

「ふぇ!?」

「・・・私も気になる」

「ユエも!?」

 

シアのストレートな尋ね方に、ティアは顔を赤くして変な声を出し、ユエも興味津々という風に便乗してくる。

 

「それで、どうなんですか?」

「どうって言われても・・・わからないわ」

「・・・わからない?」

 

ティアのあいまいな言い方に、ユエは首をかしげる。

ティアも、恥ずかしそうにしながらも律義に説明する。

 

「ツルギのことは、嫌いではないわ。オルクスで私を助けてくれたし、私の目的を手伝うって言ってくれたときも、とてもうれしかった。ただ、好きなのかって聞かれると、まだ・・・」

「・・・なら、ティアはツルギのことをどう思ってる?」

 

真剣なまなざしで聞いてくるユエに、ティアも真剣に考えて答える。

 

「・・・なんていうか、近い、って思うわ」

「近い、ですか?」

「えぇ。なんか、言葉にするのは難しいのだけど、どこか私とツルギが同じな気がするのよ」

「・・・どこか、っていうのは?」

「わからないわ。ツルギって、なんか隠し事が多いし」

「あー、たしかにそうですねぇ」

 

一応、ツルギがこの世界に来てからのことはティアも聞いているが、それ以前のことはほとんど聞いていない。聞いたとすれば、ハジメとの関係くらいだ。

 

「・・・そういえば、ハジメもツルギのことでいろいろと知らないことがある、って言ったことがある」

「ツルギさんの親友であるハジメさんにも秘匿ですか。これはなかなか堅物ですね・・・」

「だから、そのことを教えてほしいと思うわ。それが、ツルギに助けてもらった私の恩返しになると思うから」

 

ティアの決意のこもった言葉に、ユエとシアも笑顔でエールを送る。

 

「・・・ん、頑張って」

「私たちも応援しますぅ!」

「ありがとう、ユエ、シア」

「おい、ユエちゃんとティアちゃんとシアちゃんでいいよな?」

 

そんなこんなで楽しそうに目的のものを探していると、無粋にも一人の男が話しかけてきた。

振り向いてみれば、その男の後ろにも数多くの男がおり、いつの間にかユエたちを囲んでいる。

亜人族であるシアにも“ちゃん”をつけて呼んでいることに訝し気な表情を浮かべながらも、ティアが頷く。

 

「合ってるけど、それがなに?」

 

すると、声をかけた男が後ろを振り向いて頷くと、覚悟を決めた目でティアたちを見る。後ろの男たちも、同じような目でティアたちに前に進み出て、

 

「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」

「「「「「ティアちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」

「「「「「シアちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」

 

一世一代の告白をした。

シアだけ口説き文句が違うのは、シアが亜人だからだろう。

本来なら奴隷の譲渡は主人の許可が必要なのだが、シアを落としてから交渉すればいいと考えているようだ。

一応、本来なら奴隷が主人に逆らうなどありえないのだが、宿での出来事が強烈すぎたせいでスルーしているらしい。

そして、そんな告白を受けたユエたちはというと、

 

「・・・シア、ティア、道具屋はこっち」

「あ、はい」

「一軒で全部揃うといいわね」

 

何事もなかったように歩みを再開した。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!返事は!?返事を聞かせてく・・・」

「断る」「断ります」「断るわ」

「ぐぅ・・・」

 

まさに眼中にないという態度に、ほとんどの男がうめいたり、何人かは膝から崩れ落ちている。

だが、諦めが悪い奴というのもどこにでもいるものだ。

 

「なら、なら力づくで俺のものにしてやるぅ!!」

 

暴走男の雄叫びに他の男たちも瞳にギンッと光を宿し、逃がさないように取り囲んでじりじりと迫っていく。

そして、最初にユエに声をかけた男が雄叫びを挙げながらユエに飛び掛かる。

対するユエは、冷めた目つきで一言つぶやく。

 

「・・・“凍柩”」

 

直後、男が頭を残して全身を氷の柩に閉じ込められ、バランスを崩して地面に顔面から落ちる。

周囲の男たちは、ノータイムで放たれた水属性上級魔法“凍柩”を目の当たりにしてひそひそと話し合う。幸い、全員が的外れの解釈をしている。

氷漬けの男に、ティアがわざと大きめに足音を鳴らして近づいていく。

 

「ユエ」

「・・・ん」

 

ティアが声をかけると、男を包む氷が溶けていく。

 

「ユ、ユエちゃん。いきなりすまねぇ!だが、俺は本気で君のことが・・・」

 

解放してくれるのかと男は期待してユエに目を向けてなお告白の続きをしようとするが、途中で溶かされていく氷がごく一部であることに気づく。

その場所は、

 

「あ、あの、ユエちゃん?どうして、その、そんな・・・股間の部分だけ?」

 

そう、ユエが溶かしたのは男の股間の部分だけだ。他の部分は完全に男を拘束している。

男も嫌な予感を覚えたのか、冷や汗をダラダラと流すが、少しも動けない。

「まさか、ウソだよね?そうだよね?ね?」という表情をティアに向けるが、ティアは無表情のまま位置を調整し、

 

「漢女になって反省しなさい」

 

股間の部分を思い切り蹴りぬいた。

 

 

 

アーーーッ!!

 

 

 

この瞬間、町中に男の心からの悲鳴、もとい第二の服屋の店長の誕生の産声が響きわたった。

ユエたちを狙っていた男たちは完全におびえた視線をむけているが、そんな視線を気にすることなく道具屋へと向かった。

また、道中で女の子たちが「お姉さま・・・」などとと呟いてユエとティアを見つめていたのだが、それらもすべて無視した。

 

 

* * *

 

 

「ただいま」

「おう、おかえり。道具はそろったか?」

 

ちょうど俺とハジメが作業を終えた頃、ティアたちが帰ってきた。

 

「えぇ、問題ないわ。必要なものは全部そろったから」

「そうか」

 

買い物を終えたティアに話しかけるが、ハジメは別の、俺の気になったことをユエに尋ねた。

 

「お疲れさん。それはそうと、町中が騒がしそうだったが、何かあったのか?」

「なんか、男の叫び声が聞こえた気がするんだが」

 

俺とハジメが作業をしている最中、どこからか痛烈な男の叫び声が聞こえたのだ。

この町で騒ぎが起こったとすれば、十中八九ティアやユエたち絡みだろう。

若干心配になって尋ねるが、

 

「・・・問題ない」

「あ~、うん、そうですね。問題ないですよ」

「心配しなくても大丈夫よ」

「そうか」

 

何かがあったのは否定してないあたり、やはり面倒ごとに巻き込まれたのだろうが、問題ないと言っているなら気にしなくても大丈夫だろう。

ハジメも一応納得し、シアに預けていた宝物庫を受け取った。

シアはハジメの宝物庫をうらやましそうに見ていたが、宝物庫は今のハジメではまだ作れない代物であるため、ハジメも苦笑いするしかない。

その代わりにと、ハジメはシアに例のものを渡す。

 

「さて、シア。こいつはお前にだ」

 

そう言ってハジメは、シアに直径40cm長さ50cm程の円柱状の物体を渡した。銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている。

シアが受け取ろうとすると、あまりの重さに思わずたたらを踏みそうになり、身体強化の出力を上げた。

 

「な、なんですか、これ? 物凄く重いんですけど・・・」

「そりゃあ、お前用の新しい大槌だからな。重いほうがいいだろう」

「へっ?これが、ですか?」

 

シアが疑問に思うのも無理はないだろう。

今の状態は取っ手が異様に短いため、どこからどう見ても大槌には見えない。

 

「ああ、その状態は待機状態だ。取り敢えず魔力流してみろ」

「えっと、こうですか、ッ!?」

 

ハジメに言われたとおりに魔力を流すと、カシュン!カシュン!という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった。

これこそが俺とハジメで作ったシア専用の大槌型アーティファクト・ドリュッケン(ハジメ命名)だ。内部にはいくつものギミックが組み込まれており、特定の場所に魔力を流し込むことで作動させることができる。

ハジメからの贈り物に、シアは嬉しそうにしてドリュッケンを抱える。

 

「それと、こっちはティアにな」

 

そう言って、俺は黒塗りの籠手と脛当てをティアに渡す。

 

「これは?」

「“フェンリル”。早い話、ティアの武器だ」

 

籠手・脛当て型アーティファクト・フェンリル(俺命名)。こちらも俺とハジメの合作で、それぞれにに6つの神結晶をはめ込んでおり、それぞれに属性魔法を付与させた。これにより、火・水・風・土・光・闇の属性魔法を籠手に纏わせることができる。それらに加えて、籠手には“豪腕”、脛当てに“縮地”、両方に“金剛”の技能を使えるようにしている。

 

「本当はシアのドリュッケンみたいにもうちょいギミックを加えてもよかったんだがな、まずは使いやすいように数を絞った。それの扱いになれてきたら、徐々に増やしていくつもりだ」

「・・・すごいわね。ありがとう、ツルギ」

「ハジメにも礼を言えよ。俺はハジメの補助くらいしかやってないからな」

「何を言ってるんだよ。ツルギの手助けのおかげで、この短時間で2つ作ることができたんだからな」

 

俺とハジメが互いに互いを賞賛し、そのことに思わず笑いがこみあげる。

 

「さてと、やることも済ませたし、出発するか」

「そうだな」

 

そうして、俺たちはチェックアウトをして町を出て行った。

目指すはライセン大峡谷にある大迷宮だ。




ネーミングセンスが欲しい・・・。
僕には一からかっこいい名前を作り出せる技量がないのですよ・・・。
それを考えると、今回を機に調べてみてわかりましたが、ありふれの中の名称ってほとんどドイツ語なんですね。
そんな自分は、神話の中の名称を使ってやることにしました。
それならパクリもひったくれもないので。
まぁ、たまに自分でドイツ語一覧を見て考えるかもしれませんが。

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