遠藤が倒した4体も含めれば、残りは13体。
だが、大きな武器を見て俺の方が危険だと判断したのか、8体が俺の方へと向かってきた。
「さて、一撃で終わらせるのは容易いが、せっかくだ。少し遊んでやる」
逆を言えば、3分が奴らに許された時間でもある。
タナトスを構え、あくまでベルセルクの方から襲ってくるのを待つ。
僅かな間硬直していたベルセルクたちだったが、1体が前に出てくるのと同時に他の7体も襲い掛かってきた。
「まず1体目」
ベルセルクが飛び掛かってきたところを、タナトスを地面に突き刺してから飛び上がり、すれ違いざまにタナトスの刃に押し付けるように後頭部を蹴り飛ばして首を斬り飛ばす。
「2体目、3体目」
タナトスを地面から引き抜きざまに、その勢いを利用してバク転しながらタナトスに仕込んだマグナムを放ち2体のベルセルクの頭を吹き飛ばした。
「4体目」
マグナムの反動で空中回転しているところに、後ろから襲い掛かろうとしたベルセルクを上から柄で押さえ込み、回転の勢いのままベルセルクの首を斬り落とす。
「5体目、6体目」
タナトスの刃を再び地面に突き刺して無理やり回転を止め、同時に内蔵したマグナム2丁を射出してつかみ取り、2体のベルセルクの脳天を吹き飛ばす。
「7体目」
マグナムを空中に放り投げ、地面を抉るようにタナトスを振り上げて正面から襲い掛かってきたタナトスを両断した。
「ラスト、8体目」
そして、三度タナトスを地面に突き刺してから飛び上がり、空中で踵にマグナムを装着し、ベルセルクの顔を踏みつけながら発砲してベルセルクの頭を撃ちぬいた。
これで、俺の方に来たベルセルクはすべて片付けた。
チラリと遠藤の方を見やれば、遠藤の方もベルセルクをすべて片付けたところだった。
「3分・・・も経ってないな。まぁ、こんなもんか」
むしろ、遊んでいたとはいえ3分も耐えれれば上出来な方だろう。
「おっ、きたきた」
ベルセルクが全滅したのを確認したのか、次々とヘリコプターが降りて来た。
それを確認した俺は、タナトスを折りたたんで収納形態にして背中に背負いつつ、踵に装着したマグナムを両手に持った。
刃を持って前で斬りまくってもいいんだが、それだと特殊部隊の攻撃の邪魔になりかねない。ここは仕方ないが、屋内は特殊部隊に任せて、俺は後ろからの援護に徹しよう。
さすがにベルセルク相手は俺と遠藤がやった方がいいだろうが、
「おい峯坂ぁ!!」
そんなことを考えていると、遠藤から怒鳴り声が響いた。
「なんだ?」
「なんだ?じゃないだろ!?なんでお前俺のこと蹴落としたの!?」
「むしゃくしゃしたからやった。反省も後悔もしてないし、今後するつもりもない」
「どっちもしろよぉ!!危うくベルセルクの餌になるところだったんだけど!?」
「何を言ってるんだ。お前が獣如きに後れをとるはずがないだろ。つまりは、信頼した上でお前を蹴落としたわけだ、うん」
「なお質悪いわ!」
「でもなんの問題もなかっただろ?」
「そうだけど!そうなんだけどぉ!!」
やっぱ、遠藤は少し弄り倒すくらいがちょうどいい。
遠藤は基本的にシリアスを求めたがるが、こいつくらいの常識人ならツッコミさせる方がよっぽど活きる。
そんなコントを繰り広げていると、ヘリコプターから降りたエミリー博士が俺たちの方に走ってきたかと思えば、遠藤をかばうようにバッと両手を広げて俺の前に立ちふさがった。
「こ、こうすけをいじめないでっ」
「ほう?」
これはこれは。新しいオモチャが自分からやってきてくれるとは。
「え、エミリー?別に俺は・・・」
「おいおい、遠藤。仮にも男が年下の少女に庇われるのはどうなんだ?そういえば、アビスゲートになった後の傷心も、こっちではよく癒してもらってたよなぁ?」
「ふぐぅ!?」
「こうすけ!?しっかりして!あなたも!こ、こうすけをそれ以上いじめないで!」
精一杯の勇気を振り絞っているのだろう。涙目になりながらも、勇気を振り絞って俺を睨みつけている。
だが悲しいかな。俺からすればこの程度、子猫の威嚇となんら変わらない。
「これはこれは、威勢の良いお嬢さんだ。だが、それもいつまで続くかな?」
俺もついノリノリになって、ちょっと魔王ムーブをかましてみる。
それだけで、エミリー博士は「ひっ」と軽く悲鳴を上げてプルプルと震えるが、それでも遠藤の前から動かない。その姿勢は、健気と言うには少しばかり情熱的だ。
ここまでからかい甲斐のある女性は、俺やハジメの周りにはいないのではないだろうか。強いて言うなら、たまに雫を照れさせるくらいか。
俺でさえそうなのだ。ラナを始めとしたハウリア族は、嬉々として彼女を迎え入れることだろう。
それが遠藤にとっていいことなのか悪いことなのかは別として。
さて、ここまでからかい甲斐のあるおも・・・女性はなかなか珍しい。もう少し遊んでみようかとも思ったが、さすがにそこまでの時間はなかった。
「あ~、ミスター・ミネサカ、コウスケさん、エミリー博士。じゃれ合うのはその辺りで」
後ろから、パラディ捜査官が声をかけてきた。
見てみれば、保安局の特殊部隊はすでに準備できていて、後は俺たちを待っているだけだった。
「わかった。ほら、遠藤。さっさといくぞ」
「どの口で・・・」
「あ?」
「いえっ、何でもないであります、Sir!」
おいおい、俺をどこぞの鬼畜教官と一緒にしないでもらいたいんだが。
ちなみに、エミリー博士はそのまましれっと遠藤の横に立っている。
彼女にとっての安全地帯であるのは確かだが、それでもずいぶんと大胆になったものだ。あるいは、図太くなった、とも言えるかもしれないが。
とりあえず、
(ほい。ハジメに渡すネタゲット、っと)
この光景を写真に収めてハジメに流そう。んで、ハジメの方からもいじってもらおう。
* * *
研究所に突入してからは、ほとんど特殊部隊が敵を駆逐していった。
ある程度わかってはいたが、ベルセルク化していない人間が相手とはいえ、武装集団を相手にまったく後れをとらないのはさすがと言う他ない。各部隊に1体ずつ送っている遠藤の分身体がほとんど活躍していないことも考えれば、やはり実力は相当なものだ。
こうして、敵はほとんど俺たちを足止めできないまま、どんどん先へと進んでいく。
そして、ひと際広い部屋に到着した。
ケイシスから奪った情報が正しければ、ここがメインの研究室のはずだ。
「隊長さん」
「あぁ、分かってる」
小さく声をかけた遠藤に、バーナードは頷いた。既にハンドサインを出し終えていて、隊員達も死角のないよう銃口を向けている。
「よぉよぉ、保安局のエリートさんじゃねぇか。こんな場所で雁首そろえて、いったいどうしたんだ?」
軽いノリで、そんなことを言ったのは、大きな頬傷が特徴の軽薄そうな男だった。たしか、名前はヴァイス=イングラム。金さえもらえれば何でもやる傭兵集団の頭で、今まで散々あくどいことをやってきて指名手配されているはずだ。
保安局、厳密には裏組織であるJ・D機関のエージェントが取り逃がして行方不明になっていたはずだが、どうやらケイシスに雇われていたらしい。
とりあえず、殺すのは確定した。
「お、おいおい、ちょっと待ってくれって。俺を殺したら、大変なことに・・・」
「撃てッ!」
何かを言い募ろうとしたヴァイスの言葉をさくっと無視し、バーナードは銃撃の合図を出した。
ヴァイスは横っ飛びで回避しながらデスクの陰に隠れ、愚痴りながらも無線を飛ばし、部屋に隠れていた彼の部下が一斉に引き金を引いた。
隊員たちも即座に互いをカバーできる位置に散開し、応戦を始めた。遠藤も、半分アビスゲートになりながらエミリー博士を守っている。
「くそっ。ケイシスの野郎。これじゃあ全然、割に合ってねぇっての!おいっ、おっさん!まだか!?もう持たねぇぞ!」
「ッ」
ヴァイスが軽マシンガンで応戦しながら怒声を上げると、部屋の奥のデスクの陰から四つん這いの男が這い出てきた。おそらくは、彼がレジナルド教授だろう。さすがに銃撃戦のさなかにいるのは初めてなのか、身動きが取れずに蹲っている。
それを見たヴァイスは舌打ちしながら、スマホを操作し、ためらいなくボタンを押した。
「悪ぃな。ちょいと俺のために死んでくれ」
「ちっ、気を付けろ!ベルセルク化するぞ!」
ヴァイスの部下が悲鳴を上げ始めるよりも一瞬早く、俺はマグナムを踵に装着してから背中に背負ったタナトスを装備し、前に駆けだした。
このままヴァイスとレジナルドを捕らえようかとも考えたが、どうにも特殊部隊と奴の部下の距離が近く、さらに周囲を囲まれてしまっている。1人でも内側からベルセルクになってしまえば、壊滅状態になってもおかしくない。
やむを得ずいったん追跡を諦め、ベルセルクになりかけている奴らの排除を優先する。
とはいえ、ここには俺や遠藤以外に手練れの捜査官やプロの殺し屋もいる。エミリー博士を守りながらベルセルクを駆逐するのは難しいことではない。
だが、俺がある程度崩したとはいえ、さすがに囲まれている状態ではヴァイスたちから意識が逸れるのは避けられず、
「ちッ」
ベルセルクを片づけた頃には、ヴァイスたちの逃走を許してしまった。
遠藤もヴァイスを捕らえようと踏み出そうとした直前、
「そんじゃあ、さよならみなさん。是非、最後まで歓迎の品を堪能していってくれ」
ヴァイスはそう言い残して、頑丈そうな扉を閉めた。
あの手の輩があーいう捨て台詞を残して逃げるということは、相応の
それはすぐに明らかになった。
「グルゥルルルルル」
低い唸り声が、ヴァイスたちが出て行った扉の反対側から聞こえてきた。
「隊長さん!奥の扉だ!」
「ッ、おいおい、なんだあれは・・・」
遠藤が指さした先に居たのは、体長が2mはあるだろう巨大な獣だった。おそらく元は猫だろうが、ベルセルクによって肥大化し狂暴性も比較にならないほど増している。
さらに、奥からは犬やネズミ、サルなど、ベルセルクを投与されただろう動物たちが次々と現れる。
「なるほど。ベルセルクを人間以外に投与させてはいけない、なんて決まりはない。ましてや、ここは研究所。サンプルには事欠かないか」
おそらくは、他の場所にも出てきているだろう。遠藤の分身がいるから間違っても全滅はないだろうが、足止めをくらうのは間違いない。
なら、
「遠藤、お前たちは先に行け。あれは俺がやる」
そう言って、遠藤の返事を待つよりも先に飛び出した。
さすがに動物をベースにしている分、人間のベルセルクよりも敏捷性は段違いだが、対処できないわけではない。
それでも厄介なのは、たとえベルセルクで狂暴化しても野生の本能が残っているのか、逃げ足も速い。おかげで、大鎌で確実に仕留めるには通常のベルセルクよりも深く踏み込む必要がある。本来ならば気にならない程度の誤差が、力を大幅にセーブしている今に限って、その僅かな差のせいで1体にしか詰め切れない。
できればさっさとすべて片付けたいところだが、未だに途切れる気配がない。この部屋に閉じ込めて俺も追いかけるという手もなくはないが、1匹たりとも外に逃がすわけにはいかない以上、それはできない。
マグナムで対処するにしても、数が多すぎる。どのみち接近されるのは変わらないだろうし、俺のガン・カタはハジメと比べればまだまだだ。大鎌で切る方が早い。
少しばかり悩んでいると、俺から少し離れた場所にいた獣がアサルトライフルの銃撃によって撃ち抜かれた。
「ミスター・ミネサカ!ここは俺たちに任せてくれ!」
そう声をかけてきたのは、隊長のバーナードだ。
他の隊員はすでに戦闘を開始しており、だがヴァイスらが逃げた扉は確保している。
俺は武器をマグナムに持ち替えて獣を牽制しながら、バーナードに問いかける。
「あんたらは大丈夫なのか?さすがにこの数は手に余ると思うが」
「なぁに、この戦いが終わったらアビィと酒を飲む約束をした。ここで死んだりしないさ」
それは死亡フラグだ、とは思ったが、口には出さないでおいた。口にした方が縁起が悪い気がするし。
ただ、あくまで時間稼ぎに徹するようで、遠藤も分身体を送るつもりらしい。
それなら、まぁ大丈夫か。ここは厚意に甘えさせてもらおう。
「なら、ここは任せた」
「おう、任された!そうだ、あんたもこの戦いの後に」
「んじゃ」
最後まで言わせずに、俺も扉を通って遠藤たちの後を追った。
・・・これ、あいつが死んでも俺のせいにならないよな?
RWBYの動画見ながら書いてました。
普通にクオリティ高くすぎてめっちゃ感動して、思わず執筆の手が止まっちゃいました。
あーいう言語化が難しい高速戦闘は映像作品の醍醐味ですねぇ。
あと、前回言ったデリンジャー型の拳銃をデリンジャーみたいなマグナムにしました。
そっちの方がロマンあるし、多少はね?