二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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え~、そこそこ遅くなってしまいました。
ちょうどテスト期間で、あまり手が付けられなかったので。

さて、投票の結果、ヒロインは香織さんになりました。
最初はシアがトップだったのが急に香織さんに票が集まり、新話でアンケート告知したら、けっこう全体的にいい勝負になったという。
というより、新話投稿してアンケートの存在を知らせたら、投票数が予想以上に爆上がりして、思わず爆笑してしまいました。
最初は50票くらい集まればいいかと思っていたら、まさかの200票を超えたという。
投票してくださった皆様、本当にありがとうございました。


お気に入り登録者1000人突破記念:香織ifストーリー

いつもの朝。

今日もまた、俺はハジメとともに登校していた。

そして、今日からは俺たちは高校生だ。

顔ぶれも、中学の頃からガラッと変わって・・・。

・・・そういえば、ハジメ以外に親しいやつって、あまりいなかったな。ハジメも似たようなものだが。

とはいえ、それを気にする俺たちではない。

高校に入っても、いつも通り過ごしていこう。

・・・そう思っていた。

あの女の子に会うまでは。

 

 

* * *

 

 

入学式を終え、クラス分けを確認した俺たちはさっさと教室に向かった。

幸い、俺とハジメは同じクラスだったから、話し合うにしても都合がいい。

だが、そのクラスには新入生代表を務めた天之河光輝とかいうイケメンと幼馴染だという美少女たちも一緒で、新学期初日からかなり騒がしいことになった。

もちろん、俺とハジメは我関せずと自分たちの席で思い思い過ごしていた。

ただ、この喧騒の中でもぐっすりと眠れるハジメは大したものだと思う。いや、それを言ったら俺も入学式のときの、天之河が壇上に上がった時の女子の黄色い歓声の中で寝に入ったけど。

だが、今はそんな気分でもないし、持ち込んだ本でも読んでいるか・・・

 

「ねぇ、ちょっといいかな?」

「ん?」

 

さっそく持ってきた本を取り出すためにカバンの中をあさっていると、後ろから声をかけられた。

振り向いてみると、そこには、

 

「こんにちはっ」

「おう・・・たしか、白崎香織、だったな?」

 

入学式初日で、すでに二大女神と呼ばれ始めている女子だ。そして、天之河と幼馴染らしい。もちろん、周囲でそういう話があったというだけで、詳しいことは知らないが。

 

「うんっ。よろしくね、峯坂剣君」

「あぁ、来年はわからんが、今年1年よろしく頼む」

 

軽く挨拶を交わした俺は、もう話すことはねぇと再びカバンの中をあさろうとするが、

 

「香織、その彼がどうかしたのかい?」

「香織?いきなりどうしたの?」

「そいつ、誰だ?香織の知り合いか?」

 

さっさと大人しく過ごしたかったのに、また新たに人が増えた。

新たにやってきたのは、ちょうど入学式で新入生代表だった天之河に、白崎とともに二大女神と呼ばれ、一部からはなぜかお姉様と呼ばれている八重樫雫。あと1人のガタイのいい男子は・・・知らん。まだクラス内での自己紹介もしていないから、それが普通と言えば普通なのかもしれないが。

 

「どうも、峯坂ツルギだ。一応言っておくと、白崎とは今日が初対面だ。話は周りからちらほら聞こえたし、天之河にいたっては入学式で新入生代表だったしな。そっちのお前は・・・」

「俺か?俺は坂上龍太郎だ。よろしくな」

「一応、私も自己紹介ね。八重樫雫よ。よろしく」

「坂上と、八重樫か。よろしくな」

 

この時は、さっそく有名な奴らと知り合っちゃたなぁ、くらいにしか考えていなかったが、俺もまさかあんなことになるとは予想もしていなかったのだ。

 

 

* * *

 

 

「ねぇ、峯坂君!一緒に帰ろう!」

「悪い、この後用事があるから断る」

 

入学初日、いきなり白崎から一緒に下校しようとの申し出を受けた。

さすがに、初対面の女子(美少女)と一緒に帰ろうとは思わない。ていうか、どうして白崎はこうも満面の笑みを浮かべているのか。

 

「ていうか、幼馴染たちと帰ればいいんじゃないか?」

「大丈夫だよ!1人くらいなら増えても大丈夫だろうし」

「ハジメもいるんだが?」

「え?今、峯坂君しかいないよ?」

「あ?さっきまで後ろに・・・」

 

振り返ってみると、白崎が話しかけてくるまで一緒に談笑していたハジメが、いつのまにか姿を消していた。

余計な空気を読んだのか、面倒ごとに巻き込まれるのは御免だと見捨てたのか・・・ハジメの場合、どちらかといえばたぶん後者だな。俺と白崎が初対面なのは、あいつも知ってるはずだし。

あるいは、俺なら大丈夫だと信じたがゆえなんだろうが、こればっかりは見捨てないでほしかった。

 

「あの野郎・・・」

「峯坂君の用事っで、どうしても外せない用事だったりするの?」

「いや、この後ハジメの家に行って遊ぼうと思っていただけだから、いったん家に帰ってからでも問題はないが・・・」

「だったら大丈夫だよ!」

「いや、白崎が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃないんだが・・・」

 

ちらりと、周囲に視線を向けてみる。

そこには、美少女と仲良さげに(?)話している俺へ憎悪嫉妬その他諸々の負の感情がこもった視線を向けている男子どもが。

とりあえず、勘違いしているだろう野郎どもに言いたい。

俺だって、この状況は不本意なんですが。初対面の女子に言い寄られて困っているだけなんですが!

はてさて、どうしたものか・・・

 

「香織!」

「あっ、光輝君!」

 

そこに、なかなか来ない香織を心配したのか知らないが、天之河たちが白崎を探して声をかけた。

その隙に、俺はサッと気配を消してその場から離れ、なんとか白崎をまくことに成功した。

ある程度離れたところでちらっと白崎たちに視線を向けると、白崎は周りをキョロキョロしているところだった。

ここで見つかるわけにもいかないし、さっさと離れることにしよう。

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの後、ハジメの家に遊びに行ったついでにハジメのこめかみをぐりぐりしてお仕置きした。

俺を見捨てた罰だ。

 

 

* * *

 

 

翌日、

 

「おはよう!峯坂君!」

 

「峯坂君、いっしょにお昼ごはん食べない?」

 

「ねぇねぇ、峯坂君?なんで昨日は何も言わずに帰っちゃったの?」

 

「峯坂君、今日は一緒に帰ろうね!」

 

・・・とにかく香織に話しかけられた。

なんというか、もう、疲れた。うん。

周りの殺気が半端ないし、天之河の態度がむかつくし、八重樫もあまり止めてくれないし、天之河の勘違いが腹立つし、天之河のキラキラが目に毒だし・・・。

・・・あれ?どちらかといえば天之河の方がストレスの原因になってね?

そういう今日も、香織に話しかけられる前にさっさと下校し、尾行されてないか確認しながら家についた。

やりすぎな気がしなくもないが、なぜか俺の直感がそうすべきだとささやいたのだ。

たしかに、この調子が家にまで持ってこられたら、いつかは俺の居場所がどこにもなくなってしまいそうだし。

そして、夜になってハジメと電話した。

 

「ハジメはさ、どう思うよ、白崎のあれ」

『う~ん、僕もわからないかな・・・だって、白崎さんと会うのは昨日が初めてなんだよね?』

「当たり前だ」

『本当は、どこかで会ってたとか?』

「少なくとも、俺に白崎らしき少女と会った記憶は皆無だ」

 

べつに、実は幼稚園児の時の幼馴染とか、過去に1度困っているところを助けたとか、そういうのはまったくない。そもそも、あの容姿なら1度会ったら忘れないはずだし。

有りうる可能性としては、

 

「俺の知らないところで姿を見かけた、か。だがなぁ・・・」

『それだと、あんなにツルギに話しかける理由がわからないもんね』

 

いやまぁ、少なからず一部の間で俺の話が出回っているのも知っているが、それだけだと証拠としては弱い。

でもなぁ・・・ハジメと会うまで、あまり人と話すことってなかったしなぁ・・・。

 

『とりあえず、しばらくは様子を見た方がいいんじゃないかな?』

「やっぱ、それしかないよなぁ・・・とりあえず、休みの日に、事情を知っていそうで、なおかつ家がどこかわかっているやつのところに話しに行こうと思う」

『それって、誰のこと?』

「そいつはだな・・・」

 

 

* * *

 

 

日曜日、さっそく俺はとある人物に香織のことについて話をしに向かった。

幸いなことに、その人物の実家は俺の思った通りのところだった。ノンアポ突撃になってしまうが、一応菓子折りを持ってきたから、門前払いされるようなことはないはずだと思いたい。

いろいろなことを考えながら、自転車を走らせること十数分、目的地についた。

 

「ここか・・・」

 

俺の目の前にあるのは、立派な垣根と広大な敷地に、大きな日本屋敷。そこに入るための正門もまた、年代を感じさせる立派な代物だ。

そして、正門の横にある木製の名札にある名前は、『八重樫』。

そう、ここは白崎の親友である八重樫雫の実家であり、剣術道場でもあるのだ。

それと、ここに来て思い出したが、おそらく俺はここに訪れたことがある。

親父に引き取られたばかりの幼少期、強くなるために様々な道場で道場破りを行っていたのだが、たぶんここにも来ているはずだ。あのときは強くなることしか考えていなかったから、記憶はだいぶおぼろげだが、なんとなく懐かしい感覚を感じる。

あの時の相手は誰だったか覚えていないが、思い出す必要もないだろう。

さて、向こうはどんな対応をしてくるのか、気になるというか、不安になってくるが、ここで足踏みしている場合ではない。

俺は意を決して、正門の横にあるインターホンを押した。

 

『はい。どちら様でしょうか?』

 

インターホンを押すと、若々しくも落ち着いた感じの女性の声が返ってきた。おそらく、八重樫の母だろうか。

 

「はじめまして、峯坂ツルギと申します。今日は、クラスメイトの八重樫雫さんに話があって来たのですが・・・」

『峯坂ツルギ君でしょうか?少し待っててください』

 

そう言って、女性の声が遠ざかっていき、いったん会話機能がオフになった。

そして待っていること数分、正門が開いて中からおっとりとした女性となかなか渋いイケメン中年が現れた。

 

「初めまして、峯坂ツルギと申します」

「いや、厳密には初めてではないだろう?ツルギ君」

「・・・やはり、わかっていらっしゃいましたか」

 

まさかとは思っていたが、やはりここは俺が幼少期に来たことがあったようだ。

 

「あぁ。あのときの子供が、こうも立派になって再び家に来るとはな・・・そうだ、一応自己紹介をしておこうか。私は八重樫虎一。雫の父だ」

「私は八重樫霧乃で、雫の母です」

「はい、虎一さん、霧乃さん。今日は突然の訪問、すみませんでした。これ、つまらないものですが」

 

2人が丁寧にお辞儀をお辞儀をしてきたので、俺も急な訪問に謝罪して菓子折りを差し出した。

 

「わざわざ用意してくれなくても構わなかったのだが・・・本当に、あの時の子供が立派に成長したものだ」

「・・・自分、そんなに昔は悪かったですかね?」

「いい悪いではない。ただ、子供らしいとは言えなかったがな」

「なるほど」

 

虎一さんの言葉に、俺は思わず苦笑する。

たしかに、あの時の俺は、ほとんど強くなることにしか考えていなかった。到底、子供らしいとは言えないだろう。

 

「それはそうと、雫に話があるということだったな?雫は、なにかしら察していたようだが」

「あぁ、ちょっと個人的な悩みというか、疑問というか・・・困っていることがあるから聞いて欲しいって感じですね」

「ふむ?まぁ、ここで立ちっぱなしでいるわけにもいかないしな。上がってくれ」

「お邪魔します」

 

虎一さんに連れられ、俺は八重樫邸へと足を踏み入れた。

その道中の庭は日本庭園と言うほどのみやびさはないが、それなりに手入れはされている。

だが、灯篭や木が不規則に置かれているのはどういうことなのか。様式美というわけでもなさそうだし。

そんなことを考えながらも、今は頭の隅に置いておきながら玄関に上がり、居間に案内された。

 

「いらっしゃい、峯坂君」

「邪魔するぞ、八重樫」

 

中には、すでに八重樫が座椅子に座って待っていた。

虎一さんと霧乃さんは「あとは若いもの同士で」と言わんばかりに、そそくさと出て行ってしまった。いったい、何を勘違いしているというのか。

それはともかく、俺は八重樫に向きあった。

 

「急に来て悪いな、八重樫。予定とかは大丈夫だったか?」

「えぇ、問題ないわ・・・むしろ、峯坂君が家に来てくれて、ありがたいとすら思っているわ。あまり外では話せないことだろうし」

「やっぱ、何の話かわかっていたか」

「まぁね」

 

察しのいい八重樫に思わず苦笑し、八重樫も俺に釣られるようにして苦笑いを浮かべた。

 

「それで話なんだが、察しの通り、白崎に関してだ」

「まぁ、そうよね」

 

八重樫は、わかっていたと言わんばかりに頷いた。

そう、白崎が俺に対して猛烈にアプローチしている理由を知っていそうな人物は、おそらく八重樫しかいない。

幼馴染なら天之河や坂上も知っている可能性も0ではないが、俺と顔を合わせた時、天之河たちは完全に初対面に対する対応だったが、八重樫だけは何かを知っていそうな表情だった。

だから、こうやって尋ねに来たのだ。

 

「少なくとも俺は、白崎とは入学式の日まで1度も会ったことがない。白崎から、何かそういう話を聞かなかったか?」

「そうね、私としても話してあげたい気持ちはあるのだけど・・・やっぱり、それは香織から直接聞いて欲しいわ」

「まぁ、そりゃそうか」

 

こうやって尋ねた俺だが、もちろん、ただで話してくれるとは思っていなかった。いや、仮に対価を用意しても話さなかっただろう。

これに関しては、聞けたらラッキーくらいの気持ちだったから、大して落胆はしていない。

本題は次だ。

 

「だったら、せめて連絡先くらいは交換してもいいか?俺1人だと手に余る」

「それくらいはかまわないけど、あなたにも親友がいるんじゃないの?ほら、南雲君って言ってたわよね?」

「それはそうなんだがな、あいつ、完全に丸投げしてるからな。今回ばかりは頼りにならん。そもそも、あいつも恋愛とも女子とも縁がないから、参考にもならん」

「ずいぶんと辛辣ね・・・」

 

まぁ、事実だし、これくらいは俺たちなら軽口の範疇だ。

そんなことを話しながら連絡先を交換していると、廊下からこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

どうしたんだろうと思っていると、霧乃さんが再び顔を出して、

 

「雫、香織ちゃんが遊びに来たわよ?」

「「え?」」

 

あまりのタイミングの良さ・・・いや、この場合は悪さか。これには思わず俺と八重樫も口を開ける。

思わず「マジで?いやいやまさか」と思いながら冷や汗を流していたが、

 

「雫ちゃん!峯坂君!遊びに来たよ!」

 

霧乃さんの言葉を肯定するかのように、後ろから白崎が顔を出した。

霧乃さんは、またすぐにどこかへと行ってしまったが、とりあえず聞かなければならないことがある。

 

「白崎。なんで俺がいるってわかってたんだ?」

「峯坂君のお家に行ったらね、お父さんが『ツルギなら今、八重樫の家に行っている』って聞いたから、遊びがてら来たの」

「いや、なんで俺の家を知ってるんだ?教えたことはなかったはずだが・・・」

「南雲君に偶然会って聞いたんだ」

(あの野郎っ!!)

 

どうして平然と個人情報をバラしたんだよ、あいつは!

さすがにモラルに反することはしないって信じてたのに!

 

「あっ、あまり南雲君を怒らないであげてね?私が無理言って教えてもらっただけだから・・・」

「・・・どのみち、あいつとはOHANASHIする必要があるな」

 

個人情報とは、しつこく聞かれても気軽に答えるものではない。

それはさておき、今日の目的は最低限果たしたし、もうさっさと帰ろうか・・・。

 

「そうだ!峯坂君。せっかくだし、雫ちゃんのお部屋でいろいろと話さない?」

「は?」

「ちょっ、何言ってるのよ、香織!」

 

俺は白崎の提案に思わず耳を疑ったが、それ以上に八重樫の慌てぶりの方が気になった。

そんなに、人に見られて困るようなものがあるのか?

 

「な、なぁ、白崎。さすがに、いきなりクラスメイトの部屋に入るのは気が引けるというか、常識的にどうかと思うんだが・・・」

「? 峯坂君って、雫ちゃんのことを知ってるんじゃないの?峯坂君のお父さんが昔会ったことがあるみたいなことを言ってたけど」

「親父・・・」

 

俺の周りには、口の軽い人間しかいないのか。親父も、その言い方は誤解を招くと思うんだが。

 

「別に会ったことはない。俺がガキの時に、道場の方に来たことがあるってだけだ」

「あっ、そうなんだ?だったら、せっかくだし雫ちゃんのお部屋に行こうよ!」

 

何がどうせっかくなのか、俺には全く理解できない。

それ以前に、良くも悪くも、白崎の思考回路が理解できないわけだが。

 

「だ、ダメよ、香織!私の部屋、まだ片付けてないから!」

「? 雫ちゃんのお部屋、いつもきれいでしょ?」

「そういう問題じゃなくて!」

 

そして、この八重樫の拒絶の度合いが半端じゃない。いったい、八重樫の自室には何が隠されているというのか。

だが、白崎は一度こうと決めたら絶対に曲げない類の人間らしく、

 

「大丈夫だよ!ほらっ、峯坂君も行こう!」

「わっ、ととっ!?」

「ちょ、ちょっと!香織!」

 

俺の呼びかけも八重樫の反対も押し切り、ガッと俺と八重樫の手を掴んで、そのまま引きずるようにしてどこかへと向かい始めた。

周りから「なんだなんだ?」みたいな視線を浴びせられながら引きずられること少し。ようやく香織が立ち止まった。

おそらく、ここが八重樫の自室なのだろう。

そして、着いてから八重樫がずっとそわそわしている。

 

「ね、ねぇ、香織。本当に、私の部屋でやるの?」

「いいでしょ?」

「私は一言もいいって言ってないわよ!」

「それじゃ、お邪魔しまーす♪」

「香織!?」

 

八重樫の制止のすべてを無視して、白崎は扉を開け放った。

すると、目の前に飛び込んできたのは、

 

「これは・・・すごいな」

「うぅ、見ないで・・・」

 

部屋の隅々まで敷き詰められているかわいい動物系のぬいぐるみの数々に、可愛らしい小物や猫さんカレンダーなど、いっそあざといまでに女の子な部屋だった。

学園では、お姉様とかそんな感じで呼ばれているが・・・なるほど。これが素なのか。

そして、八重樫が顔を真っ赤にしてうずくまっている元凶である白崎は、そんな八重樫に気づいているのかいないのか、なぜか嬉しそうに俺に話しかけてくる。

 

「ねねっ、可愛いでしょ?」

「いや、まぁ、意外っちゃあ意外だが・・・年相応でいいんじゃないか?」

 

俺の口から出たのは、フォローと言えるかどうかも微妙な慰めだったが、バカにしているわけでないのは感じたのか、八重樫が恐る恐る顔を上げた。

 

「・・・おかしくない?」

「年頃の女の子なら、別におかしくないと思うぞ」

「・・・本当に?」

「他の女子の部屋は知らんが、こんなもんだろ」

 

女性とは無縁な生活をしていたせいで、男女の付き合いとか女性の趣味については詳しくないが、別におかしいところはないと思う。

だが、なんとなく八重樫が拒絶した理由を察した。

そりゃ、巷でお姉様って呼ばれてる人物の部屋がこんなにかわいらしかったら、羞恥心の1つや2つはあるだろう。

 

「ね?大丈夫だったでしょ?ほらっ、早く中に入ってお話しようよ!」

 

この俺の返答に、なぜか白崎が満足そうにしながらも、グイグイと俺と八重樫の背中を押して無理やり部屋の中に入れられた。

俺としては、さっさと帰りたかったんだが、完全に機会を見失ってしまった。

ここは観念して、このまま会話に興じよう。

 

 

 

 

 

 

結局、白崎が俺に質問したり白崎が八重樫のあれこれを暴露したりと、数時間ずっと白崎のペースで話し合い、終わるころにはすっかり日が傾いてしまった。

白崎はこのまま泊まらんばかりの勢いで話し続けたが、さすがに俺は辞退して帰宅した。

ちなみにこの後、あっさり個人情報を暴露した親父とハジメをこってりと絞った。

本人たち曰く、「教えなきゃいけないような気がしたから・・・」などと言っていたが、許される理由にはならない。

 

 

* * *

 

 

これ以降、白崎のアプローチがさらに多くなった。

最初は捕まる前に帰れたものの、2,3か月経った頃には俺が帰る前に捕まってしまい、ハジメだけそそくさと先に帰ってしまうのも定番になっていた。

かくいう俺も、途中あたりから逃げるのをあきらめていたが。

だって、だんだん俺の逃走ルートをつぶすように先回りするし、なぜか休日も「偶然だね~」と言いながら外出しようが必ず遭遇するし、家にいようが遊びに来る。

この時点で、俺はハジメや親父の気持ちがわかったような気がした。

たしかに、これはやべぇわ。どことなくヤンの気配がする。

そして、俺が白崎や八重樫と仲良くなっていると捉えられた俺は、まぁ周囲からの妬み嫉みの嵐を受けることになった。主に男子から。

一部のバカ共があの手この手で俺に喧嘩をふっかけてきたが、そいつらは例外なく丁寧に返り討ちにして、二度と手を出さないように念を押して(脅して)おいたから、時間と共に減っていったのが救いだった。

女子の方は、思ったよりそこまでひどくなかった。というよりむしろ、興味の対象になっていた。どういう関係なのか、とか、俺とお似合いなのはどっちか、とか。

この情報は、巻き込まれる前に退散することで相対的に影が薄くなりつつあるハジメに調べてもらったものだ。

思わず「どうしてこうなった」と思ったが、こっちは直接の影響はないから無視することにした。

だが、女子にも例外がいるもので、「お義姉様に近づく害虫が!」とか言いながら特攻を仕掛けてくる奴もいたが、こっちは適当にあしらう程度にとどめた。なぜなら、何度返り討ちにされてもゾンビのようによみがえり、毎回手を変えてくるせいで、次第にめんどくさくなってきたから。

こっちは多分、“お義姉様”というワードから、八重樫関係のやつらだろうけど。白崎と話しているときはたいてい近くにいるし相談することも多くなったから、変な勘違いでもしたのか。

とまぁ、こんな感じで、俺の高校生活は思いもよらない方向で退屈しないものになってしまったわけだが、

 

「それでね、峯坂君っ」

「あぁ、あぁ、なんだ?」

 

こんな回想をしている今も、白崎に捕まってしまい、近くにあった適当な喫茶店で飲み物を飲みながら話していた。

会話というよりは、白崎から一方的に話しかけられることがほとんどで、たまに俺のことを聞かれるくらいだが。俺から話すことなんてほとんどない。

そう考えると、俺の方から白崎について聞いた事なんてほとんどないよな。

ていうか、八重樫の家にお邪魔して以来、まったく進展がない。俺と白崎の関係ではなく、どうして白崎が俺のことを知っていたか、だが。

だとしたら、このままというのもいただけない。

 

「・・・なぁ、白崎。ちょっといいか?」

「ん?なに?」

 

意を決して、俺の方から白崎の会話を遮って尋ねかけた。

 

「ずっと前から疑問に思っていたんだが、白崎はどうして俺のことを知っていたんだ?少なくとも、俺は白崎と会った記憶はないんだが」

「あ~。そう言えば話したことなかったね。うん、私は峯坂君と直接会ったことはないよ?一方的に知っていただけだったから」

「一方的?」

 

言いたいことがよくわからずに思わず返すと、白崎は頷いて、俺のことを知った時のことを話し始めた。

 

「私が峯坂君のことを知ったのはね、中学の2年生の時なんだ。お母さんのおつかいをしてた時に見かけたんだけど、その時の峯坂君、取り調べ?かなんかでお巡りさんと一緒にいたんだよ」

「あ~、中学の時はたまに手伝っていたな」

 

中学になってから、親父の伝手で特例で警察の仕事を手伝うことが何度かあったんだ。もちろん、給料も出ないボランティアのようなものだったが。

そうか、それを見られていたのか。たしかに、少なからず人目もあるから、俺が白崎に気づかないのも無理はないか。

そう思っていたんだが、白崎は違うと首を横に振っていた。

 

「そうじゃなくてね、おばあさんと小さい子供が一緒にいたんだよ。後で近くのお店の人に話を聞いたら、2人の不良の人に絡まれていたところを助けたんだって」

「あぁ?・・・あ~、そんなこともあったな」

 

多分、あれだな。ハジメが衆目観衆の前で盛大に土下座したやつ。白崎が見かけたのは、その後始末をしてた時のことだろう。

あの後、親父に連絡を入れて証言を聞いて、最終的にあのバカ2人をとっ捕まえたんだ。たしか、最終的に余罪もいろいろと見つかって刑務所送りになった記憶がある。

 

「それで、お話が終わった後、男の子にたこ焼きを買ってあげてたでしょ?」

「あぁ。元々、そのバカのズボンにたこ焼きをぶちまけたのが発端だったからな。新しく買ってやったんだ」

「それで、おばあさんが遠慮しても、優しく笑いかけながら男の子にあげたのを見て、すごいなって思ったんだ。警察の人と話していた時もそうだったけど、男の子にやさしくしながら、ちゃんとおばあさんと警察の人が話しているところの架け橋もして、すごいなって思ったんだ」

「なるほどなぁ・・・だが、似たようなことは白崎のあの幼馴染もしてると思うが?」

 

天之河という名前を出すことすら嫌でこんな呼び方になってしまったが、それくらいには最近になって話すことが多くなったあのバカにストレスを感じていた。あの頭の中お花畑で無駄にキラキラしていて平然と気持ち悪いご都合解釈をするバカとはなるべく話したくないんだが、白崎や八重樫が俺の元に来る以上、少なくとも学校では半分諦めていた。休日中に会わないだけ、まだマシというものだ。

そんな俺の言葉に、白崎はあいまいな笑みを浮かべ、

 

「光輝君は、それでトラブルになったことが何回かあるから・・・」

「あぁ、なんとなく察したわ」

 

おそらく、後のフォローと言うものが皆無なのだろう。あの顔とカリスマくらいしか取り柄のないバカに集まる女なら、水面下でどろどろの抗争をしていてもおかしくなさそうだし。もしかしたら、八重樫もそのあおりを受けているかもしれないな。

 

「だから、見ず知らずの人なのに、後のこともちゃんと考えて行動している峯坂君がすごいと思ったんだ」

「・・・まぁ、あれくらいは当然だ。俺はむしろ、後のフォローを大事にしている人間だからな」

 

表面上だけ解決しても意味はない。同じことが起こったり、その時の心の傷が残るのを防ぐためにも、できる限りフォローを入れるのは、俺にとって当然のことだ。

 

「峯坂君にとっては当然かもしれないけど、私にとってはすごいことなんだよ。そこまで行動できる人なんて、ほとんどいないよ。だって、困っている人を見てみぬふりをする人の方が多いんだから。だから、困っている人のためにできる限りのことをする峯坂君は、私にとってすごい人なんだ」

「う~ん、あの時のことも、最初に突撃したのはハジメなんだがな・・・」

 

もちろん、俺としても無視するわけはなかったが、先に行動したのがハジメなだけあって、そのことで褒められても素直に受け取りがたい。

内心で微妙な気持ちになっていると、白崎から衝撃の事実が飛び出してきた。

 

「だからね、峯坂君の中学校に行って会おうと思ったんだけど、1度も会えなくて」

「・・・ん?なんで俺の中学がわかったんだ?」

「? あの時の近くにある中学校で、徒歩でいける距離にあるところをリストアップして、制服を照らし合わせただけだよ?」

「・・・・・・」

 

・・・ちょっと、受け止めきれないかな・・・。

えぇ?もはやストーカーの域じゃん。なんで気づかなかったんだよ、当時の俺。

いや、気づいたら気づいたであれだけど。

 

「だからね、入学式のときに峯坂君を見つけた時は嬉しかったんだ!」

「お、おう。そうだったのか」

「だから、これからもよろしくね、峯坂君っ」

 

正直、ちょっとよろしくできないかな。

だって、目が「今度は逃がさないからね?」って言ってるし。

我がことながら、非常にやばい女子に目をつけられてしまったな・・・。

これからのことに思いをはせ、思わず天を仰いだが、なるようになっていこう。

今までの修羅場に比べれば、これくらいはどうってことない・・・いや、訂正しよう。

今までで最大の修羅場と言っても過言ではないが、それでもなんとかしてみせよう。

少なくとも、監禁バッドエンドにならないための努力は欠かさないようにしよう、うん。




今回は、ちょっと趣向を変えて、日本サイドでくっつかない状態で書いてみました。
ついでに、八重樫家とのあれこれも。
原作展開でやってもよかったのですが、それだと物足りない感じがしたのと、ハジメの存在が薄くなることによる弊害がいろいろとあったので。
まぁ、個人的にはちょっと中身が薄くなっちゃった気はしますが・・・。
それと、そろそろ投稿ペースを上げようかと思っています。
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