二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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泣いて謝ってもボコす

「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。

なにを言ってるかわからねぇと思うが、俺にもわからねぇ。

ただ、性格に関しては、あのうざい文を考えたやつだと考えればまだ納得できる。

問題なのは、あのゴーレムが名乗った名前だ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は・・・もっと常識的になりたまえよ」

「あんな非常識なトラップを考えた奴に言われたくはない。それよりもだ、ミレディ・ライセンだって?」

「そだよ~」

「・・・マジで生きて、いや、違うな。魂とかを神代魔法でゴーレムに定着させた、ってところか」

「お、おおう。まさか1発でそこまでばれるとは思わなかったぞ」

 

ゴーレム操作とも重力を操る魔法とも違う魔力の流れが見えたため、まさかとは思ったが、どうやら俺の推測は当たりのようだ。

俺の推測を聞いたハジメたちも、それで我に返った。同時に、若干苛ついたような視線を感じたが無視した。

 

「俺には特別な眼があるんでな。それよりもだ、お前がこの大迷宮の最後の試練ってことでいいのか?」

「うん、そうだよ~」

「なら、その前にいろいろと聞きたいことがある。お前はどうしてゴーレムで延命なんてしたんだ?」

「そうだね~、それは『もっと詳しく知りたければ、見事私を倒してみよ!』って感じかな」

「ちっ、なら、お前の使う神代魔法はなんだ?それくらいは教えてもらってもいいと思うが」

「それも教えな~い」

「・・・結局、碌な説明ももらってないだが」

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん?迷宮の意味ないでしょ?」

 

・・・巨体のゴーレムが指をたててメッ!しているのが非常に腹が立つ。後ろからも、ユエが「・・・性格だけが問題」と呟いているが、俺も同感だ。

だが、押さえろ。ここでできるだけ情報を引き出す必要がある。

 

「で?どこまで俺の質問に答えてくれるんだ?」

「そうだね~、なら、その前にこっちの質問に答えなよ」

 

瞬間、背筋がぞわっとした。

最後の言葉だけ、いきなり雰囲気が変わった。先ほどまでの軽薄さを潜め、逆に真剣さを帯びる。

どうやら、真剣に答える必要がありそうだ。

 

「なんだ?」

「目的は何?何のために神代魔法を求める?」

 

嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなくミレディは問いかけてくる。もしかしたら、こっちが本来の彼女なのかもしれない。

そんなミレディに対して、ハジメとティアも真剣に答える。

 

「俺の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している・・・お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」

「私の目的は、あなたたちの言う狂った神に惑わされた魔人族を救うため。そのために、神代魔法を手に入れて強くなる。私の方も、自分から神様を殺そうとは思ってないわ。必要ならそうするだけ」

「・・・そっか」

 

ミレディはジッとハジメとティアの瞳を覗き、何かに納得するように頷く。

すると、再び軽薄な雰囲気に戻る。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界に、魔人族を救う、ねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~。よし、ならば戦争だ!見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

「・・・脈絡がなさすぎないか?なにが『ならば』だよ」

「俺としては、お前の神代魔法が転移系でないなら意味ないんだけど?それとも転移系なのか?」

「んふふ~。それはねぇ・・・」

 

ミレディはもったいぶるように嫌らしい笑い声をあげ、返答を先延ばしにするが、

 

「『教えてあ~げない!』って言うなら、速攻で叩き斬るが?」

「・・・・・・」

 

ミレディは視線を逸らした。図星らしい。

 

「ほう・・・図星か?」

「え、えっとね、その・・・」

「そうかそうか、つまりお前はそういうやつなんだな」

「つ、ツルギ?」

 

ハジメがなんか引き気味に話しかけてきた気がするが、今の俺には聞こえない。

ミレディの方も、なにやら開き直ったように言葉を投げつける。

 

「な、なんだよう!中二病みたいな格好してるくせにぃ!」

「・・・・・・」

「ひっ!?」

 

後ろからシアの悲鳴が聞こえるが、俺にとっては些細なことだ。

ミレディは、言ってはならないことを言った。

ハジメはともかく、俺まで中二病だと?

OK。

 

 

 

「泣いて謝ってもボコす」

 

 

 

キレた俺は、速攻でミレディの()()()()()()()()()

 

 

* * *

 

 

「泣いて謝ってもボコす」

 

ツルギの明らかにキレた声が聞こえたと思ったら、いつの間にかミレディの右腕が斬り落とされていた。

その時のツルギの動きは、身体能力がバグっているシアですら追い切れなかった。

 

「あ、あれ?いつの間に!?」

 

気付いたら、ツルギの姿が消えてミレディの腕を斬り落としていた。シアには、そのようにしか見えなかった。

それは、ユエとティアも同じだった。

 

「あー、ツルギのやつ、完全にキレてやがるな・・・」

 

唯一、ハジメはツルギの動きが見えていたし、その動きのからくりもわかったため、比較的冷静でいた。

完全に混乱しているシアが、ハジメに問いかける。

 

「ハ、ハジメさん!なんなんですか、今のツルギさんの動き!私でも見えませんでしたよ!?」

「あ?そりゃ、あれはただ速く動いただけじゃないからな」

「・・・どういうこと?」

 

ユエも疑問に思ってハジメに問いかけてきたため、他のゴーレムたちを相手にしながらもハジメは律義に答える。

 

「えっとな、生き物の動きっていうのは、最初から最高速じゃなくて加速って過程が入る。初速から徐々に速くなって、最終的に最高速になる」

「それと、今の動きになんの関係が?」

「動物の知覚っていうのは、突然の動きは認識しづらいんだよ。初速から最高速に達するのが早ければ早いほど、その動きを目で追えなくなる。さっきのツルギの動きは、初速が限りなく最高速に近かった。それが、シアでも見えなかったからくりだ」

「へぇ~、そうなんですか・・・あれ?そんな動き、人間に可能なんですか?」

「まずできないな」

 

そのような動きをするには、壁が高すぎる。

自分の体を真に自由自在に操ることが()()()()なのだ。

そのようなことができる人間など、まずいないだろう。

それは、ツルギであっても同じことだ。

 

「だからあいつは、“魔力操作”の“身体能力強化”でその辺りの問題を解決しているんだろう。ったく、まじであいつも化け物じゃねぇか」

 

例えば、全身の筋肉を同時に動かすために自分の体を操り人形のように脱力して“魔力操作”によって体を動かしたり、体を動かすために必要な血液も“魔力操作”によって心臓をブーストさせている。

人間の体の構造の問題は、すべて“魔力操作”で解決。

明らかに、ツルギの“魔力操作”の技量はユエをはるかにしのいでいた。

 

「あの~、ハジメさん。それってつまり、ツルギさんは技能もなしに“縮地”と“無拍子”が使えるってことになりませんか?」

「そうなるなぁ・・・」

 

高速移動の“縮地”と、行動の予備動作をなくす“無拍子”。これを技能もなしに行使する。

たしかに、ハジメの言う通りぶっ壊れでしかない。

 

「一応、日本にいたころも武術を習ってたらしいし、かなりの才能があるってのも知ってはいたが、これは予想以上だな・・・」

 

こうしている間も、ツルギは魔法陣の足場を駆使してミレディを翻弄している。

正直、ハジメたちの目に映っているツルギは、到底人間には見えなかった。

だが、やはり他のゴーレムもまとめて相手をするのは厳しかったらしく、ツルギはハジメたちの下に後退した。

 

「ちっ、他のゴーレムがうざってぇな。一応、人間の心臓の辺りに核があるんだが、胸の部分にアザンチウム鉱石の装甲があるから、黒刀でも簡単に斬れねぇ」

「正直、あれだけの動きしといてなにを今さらだとは思うが・・・たしかに、面倒だな」

 

ツルギのボヤキにハジメが同調すると、斬り落とされた腕を再構成したミレディが得意げに話してくる。

 

「おや?知っていたんだねぇ~。まぁ、その黒い刀や変な遠距離武器を作ったっていうなら、知ってるだろうねぇ~。ていうかもしかして、オーくんの迷宮の攻略者だったりするのかな?」

「オーくんが誰なのかは知らないが、オスカー・オルクスの迷宮ならたしかに俺が攻略した」

「なるほどねぇ。それなら、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」

 

ミレディは砕いた浮遊ブロックから素材を奪い、表面装甲を再構成するとモーニングスターを射出しながら自らも猛然と突撃を開始した。

 

「ど、どうするんですか!?ハジメさん!ツルギさん!」

「決まってるだろ?」

 

動揺した様子のシアの問い掛けに、ツルギは不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「あいつの動きを止める」

 

 

* * *

 

 

「止めるって、いったいどうやって!?」

 

シアが完全に動揺した様子で俺に尋ねてくるが、別に俺にそこまでの案があるわけではない。

 

「どうやってでも止める。その隙に、でかいのを叩き込めばなんとかなるだろ。ハジメも、そのための武器があるだろ?」

「あぁ、ちょうどお前と同じことを考えたところだ」

 

俺の問い掛けに、ハジメはにやりと笑う。

 

「とりあえず、まずは俺が引き続き斬りこむ。シアも、隙ができ次第あいつにでかい一撃を叩き込め」

「わ、わかりました!」

 

俺は再び黒刀を構え、ミレディに突撃しようとする。

 

「させないよぉ~」

 

だが、そこでミレディが俺たちの足場を高速回転させて体勢を崩す。

そこに、モーニングスターがすさまじい勢いで激突し、足場を木っ端みじんに破壊する。

俺は若干無理な体勢から思い切り跳び上がり、モーニングスターの上に着地する。

ハジメたちもなんとか他の足場に着地したのを確認した俺は、モーニングスターにつながれている鎖の上を疾駆して再びミレディに突撃する。

 

「こんのぉ!」

 

先ほどまで俺にいいようにされていたミレディは、俺に近づけさせまいと鎖を振って俺を振り落とそうとするが、俺は魔法陣の足場を形成してミレディに近づく。

すると、ミレディが急激に“落ちて”俺の一撃は空振りに終わる。

そこにミレディがヒートナックルで俺をたたきつけようとするが、そこにティアが跳んできて俺を抱えて離脱した。

 

「助かった、ティア」

「これくらいはいいわよ」

「ついでだ。あいつに一発ぶちかましてこい!」

「わかったわ!」

 

俺は魔法陣をティアの足元の辺りに展開し、ティアはそれを足場にしてミレディに突撃した。

 

「ハ、ハジメさん!?」

「いっちょ逝って来い!」

 

ふと悲鳴が聞こえた方を見ると、ハジメがショットシェルの勢いも利用してシアを思い切りミレディにぶん投げていた。

 

「こんちくしょうですぅー!」

 

シアは自棄になりながらもドリュッケンを振りかぶる。

ミレディもその様子に気持ち引き気味になりながらも、迎撃のためにヒートナックルを放とうと拳をグッと後ろに引き絞る。

 

「はぁっ!」

 

俺はそこでモーニングスターの鎖を斬り裂き、その破片を思い切りミレディに向かって蹴飛ばす。

 

「ちょ、なっ、なに!?」

 

突然の攻撃にミレディは戸惑い、さらにその隙に俺はミレディの両腕を斬り裂く。空中でとっさの動きだったため斬り落とすことはできなかったが、かなりの損傷を与えることができた。

 

「りゃぁあああ!!」

「やぁあああ!!」

 

そこへ、シアがドリュッケンを振りかぶり、ショットシェルの勢いも上乗せしてミレディにたたきつけ、ティアが空中で拳を引き絞り、思い切りミレディを殴った。

ミレディはボロボロの左腕で防ごうとするが、ドリュッケンとフェンリルは、脆くなった左腕を打ち砕き肩口から先を容赦なく粉砕した。

勢いのままに宙に浮くシアに、ミレディがヒートナックルを放とうとするが、今度はユエが“破断”(水流のレーザーを放つ水魔法)を俺が右腕につけた切れこみに命中させ、右腕を切断した。

 

「っ、このぉ!調子に乗ってぇ!」

 

ついにミレディがイラついた様子で声を張り上げた。

その間に、ハジメがシアを脇に抱え込む形で回収する。

俺の方も、一撃で核を破壊するために足場に乗り、黒刀を水平に構えて体を引き絞るが、ミレディが俺たちではなく上の方を見ているのを見て、猛烈に嫌な予感がした。

 

「避けてぇ!()()()()()()!」

 

次の瞬間、シアが声を張り上げる。おそらく、シアの未来視が発動したのだろう。

俺はちらりとハジメを見やり、ティアに近寄って何が来てもいいように身構える。

直後、空間全体に低い地鳴りのような音が響き、天井からパラパラと破片が落ちくる。

いや、これは破片だけではない。

天井そのものが落ちてこようとしている!

 

「ちょっ、これは!」

「っ!?こいつぁ!」

「ふふふ、お返しだよぉ。騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に“落とす”だけなら数百単位でいけるからねぇ~。見事凌いで見せてねぇ~」

 

のんきなミレディの言葉に苛立つが、そんな事に気を取られている余裕はない。

この空間の壁には幾つものブロックが敷き詰められているのだが、天井に敷き詰められた数多のブロックが全て落下しようとしているのだ。一つ一つのブロックが、軽く10t以上ありそうな巨石である。

それらが、豪雨のように降ってくる。

ハッキリ言って、かなりやばい。

 

「ツルギ!どうするの!?」

「ここからだと、ハジメたちと合流するにしてもミレディを追うにしても、ちょっと遠い。俺が道を切り拓くから、ティアはついて来てくれ!」

「わかったわ!」

 

ティアが俺の言葉にうなずき、ハジメたちの方も向こうで合流したのを確認した。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!ゴバッ!!

 

次の瞬間、天井が崩れて数多の巨大なブロックが降り注いだ。

しかも、丁寧なことにある程度なら落ちた巨石も操れるのか、俺たちとハジメたちのところに特に集中して落下してきた。

ここからは、ハジメたちを気にする余裕はない。

 

「いくぞ、ティア!」

「えぇ!!」

 

俺とティアは、ミレディの元に向かって駆け出した。幸い、ミレディが落下するブロックの操作に集中しているおかげで、足場まで注意する必要はない。

俺が先行し、ティアがそのあとに続く。

なるべくブロックを避けて走るが、やはりいくつかは俺たちに直撃する軌道で飛んでくる。

そのようなブロックは俺が黒刀で斬り飛ばし、後ろに飛んで行った破片はティアがフェンリルで殴り飛ばして防ぐ。

このまま上手くいけば、なんとかミレディの元までたどり着くことができそうだが、

 

(やばっ、しのぎきれない・・・!)

 

だんだんと俺たちに向かって落ちてくるブロックの数が増えていき、だんだんと対処がギリギリになっていく。

このままでは、ブロックに圧殺されかねない。

 

(死ぬのか?このまま・・・)

 

俺の頭の中にわずかに不安がよぎるが、後ろのティアを見て、頭を振る。

 

(いや、俺が道を切り拓くって言ったんだ。このままあきらめるわけにはいかねぇ!)

 

そう思った次の瞬間、俺の視界がモノクロになり、世界がさらに遅く見えた。

いったい何が起こったのか、それを考える余裕は今の俺にはない。

だが、これなら抜けることができる!

 

「ああぁぁーー!!」

 

裂帛の気合を放ち、ついに俺たちは降り注ぐブロック群を抜けた。

 

「え!?うそぉ!」

 

俺たちだけで抜けてきたのが予想外だったのか、ミレディは間抜けな叫び声をあげる。

その隙を、俺とティアは見逃さなかった。

 

「はあぁぁーー!!」

「やあぁぁーー!!」

 

再び刀身に手を添えて黒刀を水平に構えた俺は切っ先をミレディに向けて突進し、ティアも思い切り踏み込む。

そして、俺は黒刀をミレディの核がある部分に突き刺し、ティアが思い切り振りかぶって拳をたたきつける。

だが、

 

「ふふふ、残念だったねぇ」

 

俺とティアの攻撃はアザンチウムの装甲をへこませただけで、核を破壊するには至らなかった。

やはり、ボロボロの状態では威力が足りなかったようだ。

 

「惜しかったけど、あの白髪君たちも来れてないし、やっぱり無理だったかなぁ~。でも、これくらいは何とかできないと、あのクソ野郎共には勝てないしねぇ~」

 

そう言いながら、ミレディは俺たちにとどめを刺そうとヒートナックルを振り上げる。

 

「は、はは」

「・・・なにがおかしいの?」

 

いきなり笑い出した俺に、ミレディが訝し気に問いかけてくる。

 

「なにがおかしいって、その勘違いに決まってるだろ」

「勘違い?」

「1つ、俺たちはそのクソ野郎どもに興味がないって、何度も言ってるだろう。そして、もう1つは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつらが、あの程度でくたばるわけないだろう?」

 

「え?」

 

 

「“破断”!」

 

 

次の瞬間、ユエの凛とした詠唱が響き渡り、幾筋もの水のレーザーがミレディ・ゴーレムの背後から背中や足、頭部、肩口に殺到した。

 

「う、うそ!?」

 

ユエの“破断”は表面の装甲を削るにとどまったが、ミレディは突然の攻撃に困惑する。

その隙を俺とティアは見逃さない。

 

「ティア、やるぞ!」

「わかったわ!」

「「“凍柩”!」」

 

俺とティアは、同時に“凍柩”を行使してミレディの周囲を氷漬けにする。

 

「なっ!? 何で上級魔法が!?」

 

ミレディは、完全に予想外なのか驚愕の声をあげる。

俺とティアがこの場所で上級魔法を使えたのは、単純な話、あらかじめ水を用意して消費魔力を削減しただけだ。

その水は、ユエが先ほどから使っている“破断”から利用した。俺が傷をつけたところに撃ち込んだこともあり、思ったより内部まで浸透していたようだ。

それでも、消費魔力が多すぎて、ティア共々魔晶石からすべての魔力を引き出す羽目になってしまった。

 

「よくやったぞ!ツルギ!ティア!」

 

そこへハジメが、切り札を出す。

虚空に現れたそれは全長2m半程の縦長の大筒で、外部には幾つものゴツゴツした機械が取り付けられており、中には直径20cmはある漆黒の杭が装填されている。下方は4本の頑丈そうなアームがつけられており、中程に空いている機構にハジメが義手をはめ込むと連動して動き出した。

“パイルバンカー”。それが、俺とハジメがブルックの町で作った最終兵器だ。

ハジメはそのまま、直下の身動きが取れないミレディ・ゴーレムをアームで挟み込み、更に筒の外部に取り付けられたアンカーを射出した。合計6本のアームは周囲の地面に深々と突き刺さると大筒をしっかりと固定する。同時に、ハジメが魔力を注ぎ込んだ。すると、大筒が紅いスパークを放ち、中に装填されている漆黒の杭が猛烈と回転を始める。

 

「存分に食らって逝け」

 

そんな言葉と共に、動けないミレディの核に漆黒の杭を撃ち放った。

凄まじい衝撃音と共にパイルバンカーが作動し、漆黒の杭がミレディの絶対防壁に突き立つ。胸部のアザンチウム装甲には一瞬でヒビが入り、杭はその先端を容赦なく埋めていく。あまりの衝撃に、ミレディの巨体が浮遊ブロックを放射状にヒビ割りながら沈み込んだ。浮遊ブロック自体も一気に高度を下げる。ミレディは、高速回転による摩擦により胸部から白煙を吹き上げていた。

だが、

 

「ハ、ハハ。どうやら未だ威力が足りなかったようだねぇ。だけど、まぁ大したものだよぉ?4分の3くらいは貫けたんじゃないかなぁ?」

 

ミレディが若干固い声で余裕を装う。

どうやら、この環境下で本来の威力を発揮できずに、惜しいところで貫通できなかったようだ。

だが、それでもよかった。

 

「やれ!シア!」

 

杭以外のパイルバンカーを宝物庫にしまい、すぐさまそのまから飛びのいた。

そこへ、シアがドリュッケンを大上段に構えたまま、遥か上空から自由落下に任せて舞い降りてきた。

 

「っ!?」

 

シアが何をしようとしているのかミレディは察したのかすぐに逃げようとするが、間に合わないと悟ったのかその動きを止めた。

シアはそのままショットシェルを激発させ、その衝撃も利用して渾身の一撃を杭に打ち下ろした。

轟音と共に杭が更に沈み込むが、まだ貫通には至らない。

シアは、内蔵されたショットシェルの残弾全てを撃ち尽くすつもりで、引き金を引き続ける。

 

「あぁあああああ!!」

 

シアの絶叫が響き渡る。

その一撃に自分のすべてをかけるとでも言わんばかりに、ドリュッケンにありったけの力を込めているのが見える。

そして、轟音と共に浮遊ブロックが地面に激突した。

その衝撃で遂に漆黒の杭がアザンチウム製の絶対防御を貫き、ミレディの核に到達する。先端が僅かにめり込み、ビシッという音を響かせながら核に亀裂が入った。

地面への激突の瞬間、シアはドリュッケンを起点に倒立すると、くるりと宙返りをする。

そして、身体強化の全てを脚力に注ぎ込み、遠心力をたっぷりと乗せた蹴りをダメ押しとばかりに杭に叩き込んだ。

シアの蹴りを受けて更にめり込んだ杭は、核の亀裂を押し広げ・・・遂に完全に粉砕した。

ミレディの目から、完全に光が消える。

 

それは、七大迷宮の一つ、ライセン大迷宮が攻略された瞬間だった。




これを書きながらweb版の方を見ていたんですが、最後の挿絵の部分が、なんか東方の鈴仙に見えなくもないなぁ、とふと思いました。
セーラー服のスカートとか、特に。
それと、今回のツルギの動きは落第騎士にでてくる某最強剣士をパク、参考にしました。
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