二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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なんだこのステータスは

女性陣が思う存分に子狐イズモをモフモフしていると、馬車や人の行列が見えた。どうやら、フューレンに着いたらしい。

 

「お前らー、フューレンについたから、それくらいにしておけ」

「・・・わかったわ」

「・・・むぅ、仕方ない」

「ですねぇ、すこし名残惜しいですぅ・・・」

 

どうやら、子狐イズモの抱き心地がたいそう気に入ったようだ。一応、イズモも少し疲弊しているが、嫌がっている様子はない。

ティオ曰く、子供の時はティオがイズモによく同じことをやっていたようで、イズモもその頃を思い出していい気分になっているらしい。尻尾も本来は触らせる相手は選ぶらしいが、特に拒絶もしなかったし、イズモも俺たちと上手くやっていけそうだ。

そして、人の姿に戻るイズモを名残惜しそうに見るティアたちを横目に、ハジメはそのままブリーゼで行列の後ろに並んだ。

周りの人間は、得体のしれない物体に興味津々のようだ。

一応、今までなら隠すべきだっただろうが、ウルの町でひと暴れしたから今さらだ、ということで隠すことをやめた。

どのみち、遅かれ早かれ教会の方から接触してくるだろう。

それに、愛ちゃん先生とこれから依頼の報告に行くイルワの後ろ盾がある。少なくとも、すぐに一悶着起こるようなことはない・・・と思いたい。

ぶっちゃけ、イルワの後ろ盾に関しては、わりとすぐに出番が来る気がする。

なぜなら、「立ちふさがる奴は全部ぶっ壊す」を地で行くハジメがいるからだ。ハジメがいる限り、俺たちの旅に穏便はない。

なるべく、俺が平和的に・・・。

 

「よぉ、レディ達。よかったら、俺と・・・」

「何、勝手に触ろうとしてんだ?あぁ?」

「ヒィ!!」

 

・・・いきなりかよ。

考えてみれば、こんな人の多い場所にいたら客観的に見たら美女・美少女のユエやシアに声をかけてくるやつが一人くらいいるのは当然だし、ハジメがそれを許すはずもないよな。さっきの視線も、途中からユエやシアに集中してたし。

俺が遠い目をしながらそんなことを考えているうちに、ハジメはシアに寄ってきたチャラ男を投擲した。チャラ男は地面と水平に豪速でぶっ飛び、30mほど先で地面に接触、顔面で大地を削りながら、名古屋のシャチホコばりのポーズで爆進し、更に10m進んで一瞬頭だけで倒立をした後、パタリと倒れて動かなくなった。

・・・まぁ、今回はあのチャラ男が手を出したのが悪いし、これのおかげで俺たちに向けられる視線もだいぶ減った。俺たちにとっても、悪いことばかりじゃない、はずだ。

 

「はぅあ、ハジメさんが私のために怒ってくれました~。これは独占欲の表れ?既成事実まであと一歩ですね!」

「・・・シア、ファイト」

「ユエさぁ~ん。はいです。私、頑張りますよぉ~!」

「ふぅむ、何だかんだで大切なんじゃのぉ~。ご主人様よ。妾の事も大切にしてくれていいんじゃよ?あの男みたいに投げ飛ばしてくれてもいいんじゃよ?」

 

・・・たださ、ハジメサイドの女性陣の会話の内容をなんとかしてくれよ。なんでハジメに寄ってくる女はキワモノばっかなんだよ。

ユエとシアは、まだわかる。ただ、ティオがさっきのチャラ男の方を羨ましそうに見ているのが、どっと疲れる。結局、ハジメも思い切りビンタをするが、それでも喜ぶという始末だ。

 

「・・・はぁ~。結局、俺が神経をすり減らすことになるのな」

「・・・頑張って、ツルギ」

「・・・私たちがいるからな。大丈夫だ」

「えっと、その、応援してます」

 

ティアとイズモとウィルの慰めが心に響く。すごくありがたい。

そんなやり取りをしていると、にわかに行列の前の方が騒がしくなった。

見てみれば、門番がこちらに駆け寄ってきた。どうやら、ハジメの起こした騒ぎが見えたようだ。

簡易の鎧を着て馬に乗った男が3人、近くの商人達に事情聴取しながら俺たちの方へやって来た。商人の1人が俺たちを指差し、次いでチャラ男を指差す。男の1人が、仲間に指示を出してチャラ男の方へ駆けていく。残った男2人が俺たちの方にやってくるが、ブリーゼのボンネットの上に座ってくつろいでいる(いちゃいちゃしているとも言える)ハジメたちを見て険しい目つきになった。ただ、俺の気のせいじゃなければ、どちらかといえば嫉妬的な感じに見える。

 

「おい、お前たち!この騒ぎは何だ!それにその黒い箱?も何なのか説明しろ!」

 

門番の1人が高圧的に話しかけてくるが、視線がちらちらとユエたちの方に向いている時点で説得力は皆無だ。

ハジメが、ちらりと俺の方を見る。

・・・ですよね、結局やるのは俺なんですよね。わかってたよ、ちくしょう。

 

「この黒い箱は、俺たちのアーティファクトだ。そっちの男は、あいつの連れに手を出そうとして、カッとなってやっちまったみたいだ。嫌がってるのに抱きつこうとしたからな。仕方ないだろ?・・・門番さんは、そんな性犯罪者の味方をするのか?だとしたら、俺たちはもう二度とフューレンに来れそうにない。あっちの女の子も、かなり怯えちまってるからな」

 

一応、だいたいは本当だ。

違うのは、抱きつく前に投げ飛ばしたことと、シアは別に怯えていないってことくらいか。むしろ、今は幸せそうにハジメに体をくっつけている。見てみれば、シアの首輪が無骨なものから、おしゃれなチョーカーのようなデザインに変わっている。十中八九、ハジメのプレゼントだ。

ウィルが俺の方をジト目で見てくるが、気にしない。商人たちも俺の方を見てひそひそと何かをしゃべっている気がするが、なにも聞こえない。

とりあえず、門番の方は俺の言い分を信じたみたいで、「そうか、なら構わない」と碌に取り調べもせずに引き下がった。

その時、門番の1人が俺たちを見て首をかしげると、「あっ」と思い出したように隣の門番に小声で確認する。何かを言われた門番が、同じように「そう言えば」と言いながら俺たちをマジマジと見つめた。

 

「・・・君たちはもしかして、ツルギ、ハジメ、ユエ、シア、ティアという名前だったりするか?」

「ん?そうだが、もしかしてイルワから何か言われてるのか?」

「あぁ。ということは、ギルド支部長殿の依頼からの帰りということか?」

「あぁ、報告しに来たところだ」

 

どうやら、イルワがあらかじめ連絡しておいたようだ。

門番は、すぐに通せと言われているようで、順番待ちを飛ばして入場させてくれた。

長い行列をすっ飛ばすことができてよかったな。

周りからはブリーゼに乗る俺たちに好奇の目を向けてくるが、特に気にせずに俺たちはフューレンへと入って行った。

 

 

* * *

 

 

冒険者ギルドの応接室の1つに案内された俺たちは、出されたお茶やお菓子を堪能しながら待っていると、5分ほど経ったところで、イルワが部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできた。

 

「ウィル!無事かい!?怪我はないかい!?」

 

部屋に入るなり、イルワは俺たちへのあいさつをすっ飛ばしてウィルの安否を確認してきた。以前会ったときの冷静さを殴り捨てているという時点で、かなり心配していたようだ。

 

「イルワさん・・・すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を・・・」

「・・・何を言うんだ・・・私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった・・・本当によく無事で・・・ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ・・・2人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」

「父上とママが・・・わかりました。すぐに会いに行きます」

 

イルワは、ウィルに両親が滞在している場所を伝えると会いにくよう促す。ウィルは、イルワに改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、俺たちに改めて挨拶に行くと約束して部屋を出て行った。

この様子だと、また後ろ盾が増えそうだ。

ウィルが出て行った後、改めてイルワと俺が向き合う。イルワは、穏やかな表情で微笑むと、深々と俺たちに頭を下げた。

 

「ツルギ君、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。君たちには感謝してもしきれないよ」

「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かったからだ。俺たちは見つけただけだからな」

「ふふ、そうかな?確かに、それもあるだろうが・・・何万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?女神の騎士様?」

「・・・ずいぶんと情報が早いな。幹部専用の通信かなんかか?」

 

まさか、すでにその名前を知られているとは思わなかった。

あの時は必要だったとはいえ、人から聞かされると恥ずかしいな。軽く黒歴史になりそうだ。

 

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君たちに付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど・・・彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」

 

どうやら、最初から監視されていたらしい。まぁ、ギルド支部長なら当然の措置だし、非難することもないか。

むしろ、支部長直属なのに俺たちのアーティファクトのせいで常に後手に回っていたと聞かされると、同情心すら湧いてくる。

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは・・・二重の意味で君たちに依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力にも興味はあるのだけど・・・聞かせてくれるかい?一体、何があったのか」

「あぁ、それは構わない。だが、その前にユエとシアとティアのステータスプレートを頼むよ。ティオとイズモは・・・」

「うむ、せっかくだし、妾たちの分も頼もうかの」

「そうですね。あって困るものでもありません」

「・・・ということだ」

「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか・・・わかったよ」

 

そう言って、イルワは職員を読んで真新しいステータスプレートを5枚持ってこさせる。

そして、5人のステータスを確かめてみると、

 

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ユエ 323歳 女 レベル:75

天職:神子

筋力:120

体力:300

耐性:60

敏捷:120

魔力:6980

魔耐:7120

技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法

 

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シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40

天職:占術師

筋力:60[+最大6100]

体力:80[+最大6120]

耐性:60[+最大6100]

敏捷:85[+最大6125]

魔力:3020

魔耐:3180

技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化]・重力魔法

 

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ティア・バグアー 16歳 女 レベル:???

天職:なし

筋力:2760[+最大11010]

体力:2680[+最大10930]

耐性:2490[+最大10740]

敏捷:2810[+最大11060]

魔力:2750

魔耐:2690

技能:魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅲ][+集中強化][+魔力圧縮][+魔力放出][+効率上昇]・魔狼・重力魔法

 

*魔狼:魔法などの外部の魔力を吸収し、自らの魔力とすることができる。有効射程は術者の身体の部位から約50㎝。

 

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ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89

 

天職:守護者

筋力:770[+竜化状態4620]

体力:1100[+竜化状態6600]

耐性:1100[+竜化状態6600]

敏捷:580[+竜化状態3480]

魔力:4590

魔耐:4220

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法

 

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イズモ・クレハ 558歳 女 レベル:87

天職:呪術師

筋力:590[+最大2740]

体力:870[+最大3420]

耐性:850[+最大2190]

敏捷:680[+最大4570]

魔力:5040

魔耐:4970

技能:変化[+能力模倣][+魔力効率上昇][+自動発動][+身体能力強化]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・闇属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法

 

*能力模倣:ほかの人物や魔物に変化した場合、模倣対象の技能や固有魔法を使用できるようになる。対象のステータスを正確に理解しなければ、十全に使用できない。

 

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「なっ・・・」

 

表示されたステータスに、さしものイルワも口をあんぐりと開けて絶句している。

まぁ、ユエとティオとイズモは既に滅んだとされる種族固有のスキルである“血力変換”と“竜化”、“変化”を持っているし、シアも種族の常識を完全に無視している。驚くなという方が無理だ。

ていうか、ティアのステータスがぶっ壊れすぎるんだが。シアよりも身体能力がバグってるじゃねぇか。それに、見知らぬ固有魔法まで備えている。

これは、俺の“看破”で技能が見えないという欠点が全力で露呈したな。

これのせいで、ティアの実力を正確に測ることができなかった。その結果、ティアの固有魔法らしき“魔狼”の存在をまったく知らずに今まで過ごしてしまった。

ていうか、下手をしなくても十分俺に勝てるステータスじゃねぇかよ。今までの鍛錬でティアをあしらえたのも、ティアが自分のステータスをわかっていなくて、全力を出せなかったからだな。

あの時、ハジメには「いつかはハジメを超えるかもしれない」と言ったが、今の時点でも身体強化込みならハジメの素のステータスに匹敵するな。

我ながら、とんでもない化け物を相手にしていたものだ。

 

「いやはや・・・何かあるとは思っていましたが、これほどとは・・・」

 

冷や汗を流しながら、いつもの微笑みが引き攣っているイルワに、少し気の毒に思いながらも俺はお構いなしに事の顛末を語って聞かせた。

普通に聞いただけなら、そんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能を見てしまっているので信じざるを得ない。

イルワは、すべての話を聞き終えると、一気に10歳くらい年をとったような疲れた表情でソファーに深く座り直した。

 

「・・・どうりでキャサリン先生の目に留まるわけだ。ツルギ君たちが異世界人だということは予想していたが・・・実際は、遥か斜め上をいったね・・・」

「それで、あんたはどうする?やっぱり俺たちを危険分子として教会に突き出すか?」

 

俺があえて挑発するような質問をすると、イルワは非難するような眼差しを向け、そして居住まいを正した。

 

「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう?君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としてもありえない選択肢だよ・・・大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

「・・・そうか、それはよかった。悪いな、試すような質問をして」

 

俺の謝罪に、イルワは気にするなというように首を振った。

 

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員“金”にしておく。普通は“金”を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど・・・事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに“女神の剣”という名声があるからね」

 

イルワの大盤振る舞いにより、他にもフューレンにいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、イルワの家紋入り手紙を用意してくれたりした。何でも、今回のお礼もあるが、それ以上に、俺たちとは友好関係を作っておきたいということらしい。ぶっちゃけた話だが、隠しても意味がないだろうと開き直っているようだ。

俺としても、別にそれくらいはかまわない。今回は俺たちが世話になっている側でもあるから、この程度で非難するというのはお門違いだ。

その後、ウィルの両親であるクデタ伯爵夫妻がウィルを伴って挨拶に来た。かつて、王宮で見た貴族とは異なり随分と筋の通った人のようだ。ウィルの人の良さというものが納得できる両親だった。

グレイル伯爵は、しきりに礼をしたいと家への招待や金品の支払いを提案したが、俺はそれを固辞し、代わりに必要な時に手助けをしてもらうという約束をした。

 

「おい、ウィル、ちょっと待て」

「え?はい、なんですか?」

 

そして、クデタ伯爵夫妻が去ろうとしたときに、俺はウィルを呼び止めた。呼ばれたウィルは、少し不安そうに俺の方へと振り向いた。俺としては、そこまで警戒しなくてもいいとは思うけどな。

 

「そう警戒するな。1つ、お前にアドバイスだ」

「アドバイス、ですか?」

「あぁ。お前が誰かを救いたいというなら、何があっても目を逸らすな。目を逸らした先に、守りたいものなんてないからな」

「・・・!!」

 

これは、どちらかと言えば俺のお節介のようなものだ。特に意味はないが、言っておくのも悪くはないだろう。

 

「・・・はい!僕、頑張ります!」

 

どうやら、俺の言葉はウィルの心に届いたらしい。顔を興奮で少し赤くしながら、力強く頷いている。

クデタ伯爵夫妻も、その様子を微笑まし気に見て、次いで俺に軽く目礼をし、そして去っていった。

 

「ふぅ、思いのほか収穫はあったな」

「そうね」

 

ティアは、どこか嬉しそうに頷きながら俺の肩にもたれかかる。

ちなみに、このVIPルームには個室が4つあり、俺とティア、ハジメとユエ、シアとイズモとティオに分かれた。また、個室の全てに天蓋付きのベッドが備え付けられており、テラスからは観光区の方を一望できる。

 

「とりあえず、今日のところはもう休むか。んで、明日は食料とかの買い出しとかをしなきゃな」

 

俺が明日の予定を言うと、シアがおずおずと手を挙げた。

 

「あの~、ツルギさん。私、ハジメさんとの約束が・・・」

「・・・そうだったな。観光区に連れて行くんだったか・・・」

 

どうやら、ウルの町で愛ちゃん先生を助けたご褒美として、1日ハジメと観光区でデートをする約束をしたらしい。

なら、ハジメとシアはそっちに行くとして・・・

 

「・・・大丈夫、買い物は私とティオとイズモがしておく」

「ん?俺とティアは?」

「・・・2人は、せっかくだからお出かけに行ってほしい。最近、忙しかったみたいだから」

 

・・・たしかに思い返してみれば、最近は夜以外ではティアと2人の時間が減っていた。それに、俺とティアは恋人同士だが、こういうデートとかは一回もしたことがない。

ウルの町の襲撃やらなんやらで疲れているのも確かだし、今回は言葉に甘えさせてもらおう。

 

「そうだな。せっかくだし、そうさせてもらう」

「ありがとうね、ユエ」

 

俺とティアのお礼に、ユエは微笑む。

どうやら、明日は俺とティアも楽しめそうだ。

 

 

* * *

 

 

その日の夜、月が頂点に差し掛かかった頃・・・冒険者ギルドの直営宿、最上階のテラスに抜き足差し足でこそこそ動く人影があった。

 

「・・・ティオさん。この先でいいですよね?」

「うむ、それで間違いないはずじゃ」

 

黒装束に身を包む2人は、言わずもがな、シアとティオだ。

2人がこんなことをしている理由も単純、愛し合うハジメとユエを見るためだ。ついでに、ユエとハジメの部屋の手前にあるツルギとティアの部屋の様子も見ようと画策している。

 

「それにしても、イズモさんはもったいないですね。せっかくの機会なのに」

「うむ、『どうなっても知りませんよ』と言っておったが、その程度で止まる妾たちではない。さて、ツルギ殿とティアの様子は・・・」

 

そう言って、ティオが窓に手をかけた瞬間、2人の足元に魔法陣が輝いた。そこから無数の鎖が現れ、シアとティオの体をぐるぐる巻きにして拘束する。

 

「これって、うきゃあ!?」

「へぶっ!?」

 

そして、顔面を思い切り外壁にたたきつけながら、2人は宿の外に逆さのままぶら下げられた。

このトラップを仕掛けたのは、もちろんツルギだ。2人の覗きを予想したツルギは、あらかじめ剣製魔法による魔法陣トラップを全力の魔力隠蔽も加えて仕掛けた。

そして、ツルギたちが起きるまでの間、シアとティオは宿の外壁に宙吊りのまま周囲の目にさらされることになった。




「あれ?ツルギ、なんか声が聞こえた気がするのだけど・・・」
「気のせいだろ」
「あ、んぅ・・・」

「・・・ハジメ、なにか聞こえなかった?」
「気のせいだろ」
「んっ・・・」

ツルギたちは、シアとティオには構わず、それぞれ愛し合ったようです。


~~~~~~~~~~~


ティア、どうしてこうなった。
“変換効率Ⅱ”だとシアと被るしⅢでいいかなー、と思った結果がこれです。
まぁ、それを言ったらハジメは限界突破で一時的にステータスが全部3万越えになるし、別にいいかな?ということにしました。
イズモの天職は、完全にfate/extraのキャス狐を参考、というかそのまま使いました。
いや、諜報員ということで“忍者”とかその辺りにしようか悩んだのですが、“変化”と闇魔法による毒生成を考えたら、やっぱりこっちの方がしっくりきました。
それと、原作キャラの技能の説明が知りたい方は、自分で読むなりして調べてください。
正直、そこまで書くのはめんどくさかったです、はい。

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