いや、ステータス書くのがちょっとめんどくさかったですね。
とりあえず、今回で説明回は終わりなので、次からもとの文章量に戻る、予定です。
*固有魔法の説明を少し変えました。
光が収まると、俺たちは知らないところにでた。
まず目に入ったのは巨大な絵画、いや、この場合は壁画が正しいか。背景には草原や湖、山々が描かれており、中心には後光を背負った金髪の中性的な人物が描かれていた。おそらく、なにかの宗教画だろう。
周りをよく観察すると、そこは広場のような場所で、大理石のような白い石材で作られていた。だが、大理石とはすこし違うような気がする。彫刻が多数存在しているのもあって、なにかの神殿、というのがしっくりきた。
俺たちがいるのは、ドーム状になっているこの建物の奥にある、台座のようなところ。
周りをみると、愛ちゃん先生を含めたクラスの全員がこの場にいた。幸い、怪我人や足りないクラスメイトはいないようだ。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ」
そこへ、妙齢の老人がやってきた。
よく見れば、台座の下には跪き、祈りをささげている人間が多数いた。話しかけてきた老人は、その中でも特に豪華な服を着ていたが。
そして、トータス?そんな名前の国は知らんぞ?ていうか、勇者?誰のことだ?まさか、天之河がそうだとか言わないよな?
「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願いしますぞ」
聖教教会、か。なるほど、言われてみれば法衣のようなものをまとっている。ただ、こっちで言う美人の女神の名前なのに、目の前の人物がむさくるしいジジイなのは、ちょっとどうなんだろう。
なんにしろ、面倒なことになったな。
* * *
現在、俺たちは先ほどとは違う大広間に通された。10mくらいある食卓があることから、会合に使う場所なんだろうか。
そこまで案内されている間、他のみんなはとくに騒ぐことはなかった。おそらく、現状をまだ呑み込めていないんだろう。クラスの精神的支柱である天之河が落ち着かせたから、というのもあるんだろうが。
・・・生のメイドさんに興奮したから、というのもある、のかもしれないが。特に男子。
俺はといえば、天之河うんぬんに関係なく落ち着きを取り戻していた。今必要なのは、冷静な情報分析だ。
そして、全員が席に着いたところで(ちなみに、上座に近いところに愛ちゃん先生と天之河たち4人組が座っている)、聖教教会とやらの教皇であるイシュタルさんからの説明が始まった。
簡単にまとめると、最初に言っていたようにこの世界はトータスと呼ばれ、主に人間族、魔人族、亜人族と呼ばれる種族が生活しているという。生息域としては、人間族が北一帯、魔人族が南一帯、亜人族が東にある巨大な樹海の中でひっそりと暮らしているらしい。
現在はその中でも人間族と魔人族が何百年も戦争をしており、人間族は数で、魔人族は個々の実力で優れており、今まではその勢力は均衡していた。
だが、ある時、突然その均衡は破られることとなった。その理由は、魔人族が魔物を使役し始めたのだという。
魔物とは通常の野生動物が魔力を取り込んで変異した異形の存在で、それぞれの種族で強力な魔法が使えるらしい。魔物は本来なら人間、魔人に関係なく襲い、使役できても1,2体が限度だったのだが、その常識が覆された。
結果、人間族は数の有利を失い、窮地に立たされてしまった。
この状況を打破するために、聖教教会の唯一神であるエヒトが勇者を召喚するという神託をだし、現在に至る、ということだ。
ちなみに、召喚された俺たちはこの世界の人間に比べて上位の力を秘めているらしい。
「あなた方にはぜひその力を発揮し、エヒト様の御意思のもと、魔人族を打倒し我ら人間族を救っていただきたい」
ただ、その時のイシュタルさんの表情は恍惚としており、正直に言って気持ち悪かった。少なくとも、狂信の気配を感じる。
「すみません。一つ、質問してもいいですか?」
とはいえ、それに引いてばかりいうわけにもいかない。聞くべきことを聞きだす必要がある。
「それは構わないが、君は?」
「俺の名前は峯坂ツルギです。それで確認したいんですけど、俺たちが元の世界に帰れる目途はあるんですか?」
そう、それを確認しなければならない。向こうが今どうなっているかわからない以上、帰る手段くらいは知った方がいいだろう。
これに対し、イシュタルさんは、
「・・・申し訳ありませんが、あなた方の帰還は現状では不可能です」
と言った。
イシュタルさんが言うには、召喚したのはあくまでエヒトであり、自分たちでは帰すことができない。帰れるかどうかは、エヒト次第だとのことだ。
この言葉に、周りが半ばパニックになる。
当然だ。家に帰ることができないのかもしれないんだから。
ハジメも、周りと比べれば落ち着いているが、かなり動揺していた。
とりあえず、今までの情報を整理する。
・俺たちをこの世界に呼び出したのは、エヒトという神様なる存在。
・この世界では人間族と魔人族が戦争をしており、人間族は窮地に陥っている。
・この状況を打破するために、俺たちが呼ばれた。
・現状、元の世界に帰ることはできない。
これが、今の俺たちの状況だ。
これからの展開で最悪なのは、俺たちが奴隷扱いされることだろう。自由意思もなく、ただ戦えといわれる可能性もある。
それに、イシュタルさんのエヒトの名前を出すときの恍惚じみた表情。あれは危険だ。下手したら、洗脳まがいのことまでやってくるかもしれない。
それに、今イシュタルさんが浮かべている表情は、決して優しいものではなく、むしろ不機嫌ですらあるといえるかもしれない。なぜエヒト様に選ばれたのに喜ばないのだ、と。やはり、この聖教教会は狂信者が多いのかもしれない。
さらに、部屋の中にいる銀髪のシスター。あの人もどこか危険な気がする。表面上は平静を保っているようにも見えるが、どこか表情が抜け落ちているようにも見える。まるで、感情そのものがないような。
思考を巡らせていると、不意にバンッと大きな音がたった。
音のなった方を見ると、そこにはテーブルに手をたたきつけた天之河の姿があった。
「みんな、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ」
たしかに、それはそうだ。それに、俺たちにもどうしようもできない。ないものねだりをしても意味はない。それに関しては天之河に賛成だ。
思いのほか、天之河が現実的で助かった・・・
「俺は戦おうと思う。この世界の人たちが滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんてできない」
・・・何を言っているんだ、こいつは?
「俺は戦う。人々を救い、みんなが帰れるように。俺が世界もみんなも救ってみせる!」
・・・世界を、みんなを救う?本当にそんなことができると思っているのか?
たしかに、天之河の言う通り、いったんはこの戦争を終わらせることができれば、帰れる可能性はあるかもしれない。
だが、世界を救うとはどういう意味か、
なのに、自分はできると信じて疑っていない。
・・・やっぱり、気にくわない。
とはいえ、それを面と向かって言うとそれはそれで問題が起こるだろうし、それに、幼馴染みたちが賛同し始めたことで、最終的にそれがクラスの総意となった。いや、なってしまった。
愛ちゃん先生だけは止めようとしているが、みんなそれを聞こうとはしない。
これは、一種の現実逃避だろう。少しでも、帰れるという希望を得るための。
こうなったら、止めることはできない。このままやっていくしかないだろうな。
心配なのは、教会の方だ。現に、話を天之河に振ったイシュタルさんは満足げに頷いている。
おそらく、クラス内で誰が一番影響が強いのかを見抜いたからこその、この結果なんだろう。
教皇がこれなんだ。幹部も同じだと考えていいだろう。
これからのことに、注意していかなければ。
幸い、ハジメも用心深い視線をイシュタルさんにむけていた。どうやら、思うところは同じだったみたいだ。
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会合の後、俺たちはハイリヒ王国という国に向かった。今まで俺たちのいた場所は聖教教会の総本山だったようで、神山というこの世界でもっとも標高の高い山の上に建てられているらしい。そこから、魔法を使ったロープウェイのようなもので麓まで下りた。とはいっても、あくまで台座だけだったけども。
ハイリヒ王国とは神山の麓にある国で、すでに俺たちの受け入れ態勢が整っているらしい。
そこの王宮で、ハイリヒ王国の現国王であるエリヒド・S・B・ハイリヒと謁見をすませた。
ここでの発見として、国王とイシュタルさんの上下関係がわかった。どうやら、立場的にはイシュタルさんの方が上らしい。これで、国を動かしているのが実質エヒトであることがわかった。
ちなみに、白崎たちが魅力的なのも異世界共通だった。国王の息子であるランデル殿下(10歳)も、しきりにアプローチを仕掛けていた。効果があるかは別として。
また、晩餐会で出された料理も俺たちの世界となんら変わりないものが出てきたことには安堵した。たまに見覚えのない食材や調味料がでてきたが、どれも絶品だった。
そして、王宮内で各自に一室ずつ与えられた部屋で一晩を過ごし、今日は終わった。ベッドが天蓋付きなのは正直びびったが。
そして翌日、いくら俺たちに才能があるといっても、そこは戦争とは縁のない平和なところで育った日本人。当然戦いの心得なんてものはまったくない。
そのため、今日から戦闘の訓練と座学が始まることになった。
指導教官は、ハイリヒ王国の騎士団長であるメルド・ロギンスが担当することになった。騎士団長が俺たちにつきっきりでいいのかという気はしなくもないが、対外的にも対内的にも、勇者一行を半端者に任せるわけにはいかないから、ということらしい。
メルド団長本人も豪胆な性格らしく、むしろ「雑事を副長に押し付ける理由ができて助かった!」と笑っていたくらいだ。副長さんにとっては笑えないどころか、むしろ胃が痛くなるだろうが。
そんな彼から、最初に銀色の金属プレートが渡された。
メルド団長が言うには、これはステータスプレート言うらしく、自分の客観的なステータスを数値化してくれる、身分証にもなるアーティファクトとのこと。アーティファクトとは、現代では作ることのできない魔法の道具のことで、基本的に希少なものらしい。このステータスプレートとそれを複製するアーティファクトは、例外的に唯一世間に普及しているらしいが。
使い方は、プレートにある魔方陣に自分の血をつけるだけ、らしい。自分を傷つけることに若干の抵抗を覚える者はちらほらいたが、さすがに針でプスッとやるくらいならすぐに覚悟を決められる。次々に自分の血をステータスプレートにつけていく。
俺もそれにならってやると、不思議なことにプレートに文字が浮かんできた。
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峯坂ツルギ 17歳 男 レベル:1
天職:弓兵
筋力:40
体力:50
耐性:20
敏捷:40
魔力:70
魔耐:50
技能:天眼・弓術・気配感知・魔力感知・全属性適性・言語理解
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これが、俺のステータスとのこと。
メルド団長曰く、レベルは領域の現在値のようなもので、100が上限であるらしい。
つまり、レベル100はその人間のすべての潜在能力が解放された状態、ということだ。
ステータスは日々の訓練ではもちろん、魔法や魔法具で強化することができ、また魔力が高いと他のステータスが高い傾向にあるとのことらしい。
次に、天職とはその人間の才能のことで、末尾の技能と連動していて、その分野では無類の才能を発揮するらしい。一応、技能の詳細も確認することができるらしい。
転職は主に戦闘系天職と非戦系天職に分けられ、戦闘系天職は1000人に1人、場合によっては10000人に1人しかいないとのこと。非戦系は、100人に1人か10人に1人くらいらしい。
そして、ステータスの値は、レベル1の平均値は10前後とのこと。
俺の場合はばらつきがあるが、だいたい平均よりは上だと考えていいな。
にしても、ツルギって名前なのに弓兵とは、いったいどういうギャグなのか。
というか、剣術や体術は習って弓術は習ってないのに、なぜ天職が弓兵なのか。
けっこうガバガバじゃないのか、これ。
そうだ。あいつのステータスも見ておくか。
「よっ、ハジメ。どうだった?」
「あ、ツルギ。えっと・・・」
ハジメに尋ねると、どこか気まずそうに渡してくる。
そこに書かれていたのは、
=============================
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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「・・・あ~、うん、まぁ、どんまい」
「・・・言わないで」
なんというか、バリバリ平均だった。がっつり非戦系だった。
ハジメになんとも形容しがたい表情を向けると、一角から、おぉっ、と歓声が響いてきた。
そっちを見ると、天之河のステータスプレートが周りに向けられていた。
その内容は、
=============================
天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
=============================
こんな感じだった。
なんというか、なるべくしてなったというか、チートの権化としか言いようがなかった。
メルド団長も少しうらやましそうだ。
ちなみに、技能は普通は2つか3つくらいが普通らしい。
また、基本的に技能=才能で先天的なもののため滅多に増えるものではないのだが、例外があるという。
それが派生技能というもので、一つの技能を磨き続けることで取得する後天的技能で、“壁を超える”という表現が正しいだろうか。簡単に言えば、「今まではできなかったけど、コツをつかんで猛練習したら熟練度が上がった」という感じらしい。
そんな天之河を筆頭に、他にも戦闘職系の天職持ちが多く現れた。
というか、非戦闘系がハジメ以外に見当たらないのだが・・・。
技能に関しても、異世界人にデフォルトでついている“言語理解”を除けば、一つしか技能がないということになるのでは・・・
メルド団長がステータスプレートを確認していると、俺のところにやってきた。
「ふむ、弓兵にしては、魔力が高いな。魔法の適性もありそうだ。もしかしたら、固有魔法を習得できるかもしれないな」
「そうなんですか?」
「あぁ。まぁ、おそらくないだろうが」
メルド団長が言うには、ある程度誰でも使える魔法のほかに、個人しか使えない固有魔法に目覚めることも、ごくまれだがあるようだ。それでも、今のところ、この世界にはそういった人間はいないらしく、神代の話で現代ではあまりあり得ないらしいが。
そして、ハジメのステータスプレートに目を向けると、なんとも言えない表情になった。
「あー、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛冶職のものだ。鍛冶をするときに便利なんだとか・・・」
メルド団長、精一杯のフォロー。
だが、これを聞いて、普段ハジメを目の敵にしている輩が黙ってみているはずもなく、
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?」
案の定、ハジメいびり筆頭の檜山がやってきた。
ハジメは適当に流そうとするが、「戦えるのか?」と言われてステータスプレートを見せないわけにもいかず、ステータスプレートを投げやりに渡す。
そうしたら、やはりというかなんというか、爆笑した。
なんというか、見てられないな。
「まったく、バカだな、お前ら」
「あぁ?何言ってんだ、てめぇ?」
俺が呆れたように呟くと、今度は俺につっかかってきた。
とりあえず、バカに常識を叩き込む。
「鍛冶職だからってバカにしてるが、戦場じゃむしろいなきゃ話にならんぞ?鍛冶師がいなければ、誰が武器の整備をするんだ?後衛ってのは、戦線を維持するのに必要不可欠なんだよ」
「な・・・」
「それに、俺たちには普通よりも才能があるんだろ?だったら、メルドさんの言ってたアーティファクトを作ることだってできるかもしれないぞ?」
「ぐっ・・・」
「そんなことも考えないで、よくもまぁ人のことをバカにできるもんだ」
ひとまず、俺の正論に檜山たちはいったん黙った。
ハジメは、助かったと目で言ってくる。
メルド団長はと言うと、俺を興味深く見ていた。
「ほぉ、平和なところに住んでいたという話なのに、よくもそんなことがわかるな」
「まぁ、それなりに」
断じて、ハジメのオタク魂に引っ張られて調べてみたわけではない。
「そうですよ、南雲君、気にすることはありませんよ!先生だって非戦系?とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」
そこに、ハジメがいろいろと言われたことを気遣って、愛ちゃん先生が駆け寄ってフォローをいれてきた。
だが、その愛ちゃん先生のステータスというのが、
=============================
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収獲・発酵操作・範囲温度調節・農場結界・豊穣天雨・言語理解
=============================
「おうふ・・・」
「・・・」
「あれっ、どうしたんですか、南雲君!」
愛ちゃん先生もぶっ壊れだった。
作農師、つまり食料も戦争において重要なファクターだ。だが、魔力は勇者の天之河に匹敵しているし、技能の数にいたっては超えている。
ハジメのそれはぶっちゃけ代わりはいるが、愛ちゃん先生の場合は代替が効かない天職だ。これならおそらく、愛ちゃん先生一人で食料生産率に影響を与えるだろう。
結果、ハジメにとどめを刺しことになり、ハジメの目が死んでしまった。
愛ちゃん先生は必死に肩を揺さぶるが、果たして復活するのだろうか。
愛ちゃん先生の空回り自体はそこまで珍しいものでもないが、まさか異世界でも発揮されるとは。
白崎がハジメに心配そうに駆け寄ってきて、八重樫も苦笑いをする。周りも生暖かい目になっている。
今後のことが少し不安になってきたな、これは。
主に、精神的な意味で。