二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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てめぇは絶対に許さねぇ

「久しぶりだな、我が娘よ」

 

試練をクリアしたと思った瞬間に現れたこの魔人族の男は、ティアを「我が娘」と言った。

なら、

 

「お前が、ティアの父親なのか」

「いかにも。私の名はリヒト・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」

 

・・・なるほど、聖教教会の教皇とかと同じ感じがするな。

神に選ばれたことを強調するあたり、こいつも狂信者に近い感じになっているな。

 

「で?お前は何しにここに来たんだ?あと、あの光の柱はお前がやったのか?」

「ふん、前者に関してはわかっているのではないか?ここに来たのは、新たな神代魔法を手に入れるためだ。あの極光は、我が兄の使役する魔物によるものだ」

「・・・なるほど、今まで見た魔物とは違うってことか」

 

あくまで遠目で確認しただけだが、あのハジメが重傷を負っていた。並大抵の威力ではない。

今まで倒してきた魔人族の魔物とは、格が違う。

だが気になるのが、こいつの周りには魔物が1匹もいない。

魔物を従える必要がないのか、単に魔法の使役が苦手なのか。しっかりと見極めよう。

 

「まぁ、まさかここで娘に会うことになるとは思わなかったがな。よくも生き延びたものだ。それで、お前たちは何者だ?先ほどの一撃を防いだお前といい、兄者のウラノスのブレスに耐えきったあの者といい、ただ者ではあるまい」

「・・・それを聞いて、俺が答えると思っているのか?」

「思っていないな」

 

・・・どうも、気に入らない。

さっきから、律義に自分から名前を明かしたことと言い、俺と考えが似通っているところがあることと言い、どことなく敵ということを感じさせない。

そのくせに、闘志が駄々洩れになっている。俺たちを叩き潰そうと言わんばかりだ。

いまいち、この男の真偽を測りづらい。

 

「それよりもだ。ティアよ。なぜ異教徒と共に行動している?なぜ、アルヴ様に仕えようとしない?逃げたところで、無駄だということはわかっているはずだ」

「っ、そ、それは・・・」

 

ティアの声音は、今までに聞いた事がないほどに弱々しい。

ティアの中では、覚悟を決めたつもりでいた。だが、父親を目の前にして、その覚悟が揺らぎそうになっているのか。

 

「父さんは、同族が安心して暮らせる世界を作るって、そう言っていたのに、なんで神なんかが一番だって考えるの?なんで自分たちが優れているからって、意味のない戦いを自分からしようとするの!?」

 

たしかに、ティアの言う通り、ただ単純に安全な世界を作るというだけなら、わざわざ戦争を続ける理由もない。

まぁ、身も蓋もないことを言えば、エヒトが裏で糸を引いているからだが。

そして、リヒトの答えは、あっさりしたものだった。

 

「アルヴ様が統治する世界こそが、私の目指す世界だからだ。それを為すためには、アルヴ様を認めない異教徒など不要だ」

「そ、んな、なん、で・・・」

 

リヒトの言葉に、ティアは崩れ落ちる。

今のリヒトの言葉は、見方を考えれば『理想の世界のためには、戦争によって同族を失うのもやむを得ない』とも、『神に比べれば、そのようなことは二の次だ』とも受け取れる。

つまり、ティアの記憶の中にあるリヒトは、もういないということだ。

 

「ティアこそ、なぜアルヴ様の偉大さを理解できない?アルヴ様こそ、この世界を統べるにふさわしいお方だというのに」

「どう、して・・・」

「本来なら、裏切者として処刑しなければならないが、一度だけチャンスをやろう。異教徒と別れて、私と共に来い。今なら、同志として迎えることができるぞ」

「わ、わた、しは・・・」

「私たちの下に戻ると言うなら、まずは手始めにその男を・・・」

「ちょっと黙れ」

 

いい加減我慢できなくなって口を挟んだが、その声は自分でも驚くほどに怒りに満ちていた。

リヒトは、そこで初めて真っすぐに俺を見据える。

 

「なんだ?今はお前に用はないのだが」

「俺は峯坂ツルギ。ティアの恋人だ」

「ほう?なら、お前も客人として招くことも・・・」

「寝言は寝てから言え。お前の戯言なんざ、少しも聞きたくはない」

 

今の俺は、今までにないほどに怒っている。少しでも気を抜けば、すぐに殺しにかかりそうだ。

それでも、今はギリギリで殺意を抑える。

この男には、一つだけ聞いておくことがある。

 

「お前に一つ、聞いておくことがある。なぜ、ティアを魔物にするような真似をした?ティアは自分の娘じゃないのか?」

 

この問いは、わずかでもティアのことを想っているのか、それを確認するためのものだ。

返答によっては・・・

 

「アルヴ様がおっしゃったのだ。我が娘に変成魔法をかけることで、強力な兵士になると。アルヴ様のために戦えるというのなら、本望ではないのか?」

「・・・そうか」

 

結局、答えは決まってしまった。

別に、リヒトが根っからの悪人というわけではない。あくまで、エヒトの被害者の1人というだけだ。

それでも、ティアを()()()()としか扱わないというのは、俺の一線を超えさせるには十分だ。

 

「てめぇは、絶対に許さねぇ」

 

俺は即座に黒刀を2本生成し、初速を最高速とする踏み込みで斬りかかった。

常人なら、今の一撃で斬り裂かれている。

だが、

 

「ふむ、なかなかの踏み込みの速さだ」

 

俺の渾身の一撃は、リヒトにつかみ取られていた。

俺の神速の剣技を、初見で見切ったということだ。

押し込もうとするが、その刃はピクリとも動かない。

 

「まさか、防がれるとは思わなかったな」

「たしかに目では追いきれなかったが、攻撃がくるとわかっていれば、防ぐことは容易い」

 

・・・今の言葉でわかった。

こいつは、生粋の武人だ。

己の目的のために、徹底的に自分を鍛える。そういう人物だ。

このような人物がアルヴ、あるいはエヒトに惑わされたというのは残念ではあるが、だからといって手心を加えるわけにはいかない。

俺にも、守るべきものがある。

 

「私は忠実なる神の使徒。我が主の望みの障碍となる存在を、全力で排除する」

「できるものならやってみろ」

 

俺の挑発と同時に、リヒトが膝蹴りを繰り出すが、当たる直前に黒刀から手を離して後ろに跳躍することでダメージを抑える。

リヒトから距離をとった俺は、両手に再び黒刀を、背後に10本の長剣と10丁のマスケット銃、5体の八咫烏を生成し、臨戦態勢をとる。

これが、今の俺が出せる全力だ。

対するリヒトは、何かを呟いているかと思うと、その体の色を浅黒色から白へと変え、表面に鱗を生やしていき、口からも鋭い牙が生えている。背中からは、こちらも白い翼を生やした。

始めてみる魔法だが、魔力の流れからだいたいの予想がついた。

 

「・・・なるほど、そういえば変成魔法は、魔石に干渉できるんだっけな」

「“天魔転変”。魔石を媒体として、自らの体を魔石の元となる魔物と同じように作り替える変成魔法だ。今は、ウラノスの土台になっているドラゴンと同種の魔物の魔石を使った」

 

道理で、視界の端に映っているドラゴンと同じ色の鱗が浮かび上がっているわけだ。

おそらく、あのウラノスと呼ばれるドラゴンと同等とまではいかなくても、ステータス値は最低でも身体強化を使っていないティアに迫るかもしれない。

 

「我が敵よ。この力の前にひれ伏すがいい!」

「倒れるのはお前の方だ!」

 

俺とリヒトは、同時に踏み込む。

俺は踏み込むと同時に長剣をリヒトに射出し、マスケット銃を乱れ撃つ。

対するリヒトは、その口を大きく広げ、極光のブレスを吐きだした。

俺の一斉攻撃とリヒトのブレスは中間地点で衝突し、わずかに拮抗した後に俺の攻撃を食い破って直進する。

どうやら、思っていたよりも威力が高かったらしい。

だが、この程度は想定済みだ。

俺に向かって直進したブレスは、俺に当たる直前で横に逸れ、周りに飛んでいた灰竜を10体ほど消し飛ばす。

俺が今やったのは、単純に重力魔法で軌道を捻じ曲げただけだ。

超重力場であるブラックホールでは、光すら方向を捻じ曲げられて飲み込まれるという。なら、重力魔法を使えば光魔法の屈折も可能だろうと考えていた。結果としては、ブレスにも通じるようだ。

ブレスを捻じ曲げた俺はそのまま突き進んで白黒の双剣を生成し、リヒトに斬りかかる。

一方のリヒトは、後ろに下がらずに腕を中段に掲げ、籠手で俺の双剣を受け止める。

“看破”で確認すると、この籠手は金属だけでなく魔物の素材も併用しているらしい。おそらく、変成魔法で作り変えた魔物の素材のはずだ。並みの魔物の素材では、俺の双剣を防げるはずがない。

双剣を受け止められた後も、俺は攻撃の手を緩めない。左右の双剣で、あるいは蹴りでラッシュを続けるが、リヒトはそのことごとくを両腕の籠手で的確に防御する。

別に、俺だって感情に任せて攻撃しているわけではない。

感情を高ぶらせると同時に意識を冷静に保つ術を、俺は身に付けている。

今の俺はこれまでにないくらいに怒っているが、その分意思を一振りの剣のように鋭く殺気を研ぎ澄ませている。相手を倒すために、必要な手を計算している。

それなのに、リヒトはそのすべてを見切って防ぎ、あまつさえ反撃の手まで打ってくる。

俺も自分の才能にそれなり以上の自覚と自信を持っているが、この男、俺とは比較にならない鍛練を積んでいる。

たとえ俺の動きが眼で追えなくても、その圧倒的な経験を以て、俺のわずかな初動や気配から次の行動や攻撃する位置を見切り、的確に防ぐ。

俺の周囲に展開しているマスケット銃で牽制しようと思っても、俺と射線が重なったりしてなかなか機会が巡ってこないし、機会が巡って銃弾を放ってもさりげない動きで躱す。

このような状況じゃなかったら、素直に尊敬の念を覚えるレベルだ。

だが、この状況だからこそ、俺も容赦はしない。

 

「はぁ!」

 

ギギンッ!!

 

「っ!?」

 

リヒトが俺の双剣を両手でつかもうとする瞬間を狙って、俺は双剣を急加速させリヒトの拳を打ち上げる。

俺の方も無理な体勢で放ったせいでバランスを崩すが、俺の背後から長剣を4本急襲させる。

リヒトはこれに素早く反応し、辛くもこれを防ぐ。

だが、それでいい。

今のリヒトは、4本の長剣を防ぐのに手いっぱいになっている。

その隙に、俺の最高速をもってリヒトの首を薙ぎ払う!

リヒトは驚愕に目を見開かせるが、俺のこの動きに体を動かせていない。

これで、俺の勝ち・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!」

 

 

 

 

俺の必殺の一撃はわずかに横に逸れ、リヒトの拳が俺の腹部に深々と突き刺さった。

 

「おぉぁあ!!」

 

リヒトは雄叫びをあげ、拳を思い切り振りぬいて俺を吹き飛ばした。

吹き飛ばされた俺は、小島にある扉のすぐ横にたたきつけられる。

 

「がふっ、かはっ」

 

衝突した瞬間に受け身をとったおかげで致命傷は免れたが、ダメージが深い。

これ以上は、立つのも厳しい。

 

「ツルギ!!」

 

そこに、ティアが駆け付けてきた。ティアは俺のすぐそばに座り、回復魔法をかける。

回復速度は遅々としたものだが、ないよりはましだ。

 

「くっ、まさか、あそこからでも手が出るとはな・・・」

 

そこに、リヒトが血を流しながらも近づいてきた。

必殺の一撃を外した俺だが、一方的にカウンターを喰らったわけではない。

吹き飛ばされた直後に、俺は双剣を投擲した。

致命傷には至ってないが、両肩に深く突き刺さっている。これで、満足に拳を振るうことはできない。

だが、なぜあそこで決めきれなかったのか。

俺はそれに思いを馳せて歯噛みをし、リヒトは軽蔑の視線を()()()()向ける。

 

「だが、愚かなことをしたな。まさか、この状況でなおも縋るとは」

 

そう、双剣を振りぬく直前、俺は見てしまったのだ。

どこかすがるような眼差しを向けるティアを。

何に縋っているのか、それも理解している。

ティアは、このまま終わらせたくなかったのだ。

リヒトとの、家族としての関係を。

それを見て取った俺はわずかに剣先を鈍らせ、狙いが逸れてしまった。リヒトはその隙をついたのだ。

ティアは、リヒトの視線にビクリと体を震わせる。

次の瞬間、

 

「がぁああ!!」

「ルァアアアアン!!」

 

近くから、男とドラゴンの悲鳴が響いた。

そちらを向くと、ハジメが対峙していた魔人族の男が吹き飛ばされ、白いドラゴンが腹部を激しく損傷しているところが見えた。

だが、白いドラゴンは空中で体勢を立て直し、もう一人の魔人族の男も灰竜につかまって白い竜に乗り移った。

 

「フリードおじさん・・・」

 

ティアが、無意識といったようにつぶやく。

リヒトの話とティアの言葉から察するに、あの白いドラゴンがウラノスで、魔人族の男がリヒトの兄であるフリードということか。

 

「兄者!」

 

リヒトはすぐに跳び上がり、灰竜に乗ってフリードの下に向かう。

俺もハジメの方に視線を向けると、今は近くの足場に乗り移っており、竜化したティオの背に乗って傷口や口から激しく血を流している。

どうやら、あの状態で“限界突破”を使った代償がきたらしい。

 

「くっ、ハジメ!」

 

俺はティアの肩を借りながら、ハジメの下に駆け付ける。

傍に近づいてみれば、左の義手もひどい損傷を受けている。満足に動かすことさえできなさそうだ。

 

「ハジメ、大丈夫か!?」

「俺はまだやれる。ツルギこそ、大丈夫なのか?」

「正直きついが、戦えなくはない」

 

リヒトに殴られた部分はかなり痛む。内臓も傷ついているだろう。だが、回復魔法で応急処置をしたおかげでなんとか動ける。

 

「兄者、無事か?」

「私は問題ない。だが・・・恐るべき戦闘力だ。侍らしている女共も尋常ではないな。絶滅したと思われていた竜人族に、無詠唱無陣の魔法の使い手、未来予知らしき力と人外の膂力をもつ兎人族・・・よもや、神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められるとは・・・最初の一撃を当てられていなければ、蹴散らされていたのは私の方か・・・」

「そうか・・・私も、偶然で命をつないだようなものだ。娘が甘くなかったら、おそらく殺されていた」

「なに既に勝ったこと前提で話してんだ?俺は、まだまだ戦えるぞ」

 

フリードとリヒトの会話に、ハジメは不快気に表情を歪めながらも、瞳を殺意でぎらつかせる。

 

「・・・だろうな。貴様から溢れ出る殺意の奔流は、どれだけ体が傷つこうと些かの衰えもない。真に恐るべきはその戦闘力ではなく、敵に喰らいつく殺意・・・いや、生き残ろうとする執念か・・・」

 

フリードはわずかに目を伏せ、決然とした表情で俺たちを睨む。

 

「この手は使いたくはなかったのだがな・・・貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」

「なにを言ってる?」

「兄者、まさか・・・いや、わかった」

 

フリードの言葉にハジメは首をかしげるが、リヒトは察したようで、重くうなずく。

その直後、

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!ゴバッ!!!ズドォン!!

 

この広場、いや、グリューエン大火山全体に響くような轟音と地鳴りがほとばしり、マグマの海が狂い始めた。

 

「うおっ!?」

「んぁ!?」

「きゃあ!?」

『ぬおっ!?』

「っと、これは、なんか水位が上がってないか?」

「っ、何をしたの!?」

 

俺たちはそれぞれ必死にバランスをとりながらも、俺はなぜか急に上がっていくマグマの水位に冷や汗を流し、ティアが声を張り上げてリヒトとフリードに問いかける。

ティアの質問に、フリードが中央の天井付近に移動しながら答える。

 

「要石を破壊しただけだ」

「要石、だって?」

「そうだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか?グリューエン大火山は明らかに活火山だ。にも関わらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということ」

「それが“要石”ってことか・・・っ、まさかっ!?」

 

ここまでくれば、バカでもわかる。

 

「そうだ。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが・・・貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」

 

フリードは冷たく言い放ち、ペンダントを頭上に掲げる。

すると、天井に亀裂が走り、扉が開かれた。

どうやら、あれが攻略の証のようだ。それで、ショートカットを開いたということか。

そこに、灰竜の群れが俺たちに向けて小規模の極光を放ち始めた。どうやら、何が何でも俺たちをここで殺すつもりらしい。

それの守りをユエに任せながら、俺はティオに視線を向ける。

 

「ティオ、お前は宝物庫を持って、ここから脱出しろ」

『・・・ツルギ殿、それはどういうことかの?まさか、妾はご主人様たちと最後を共に過ごすことはできないと・・・』

「そうじゃない。一度しか言わないからよく聞け。俺たちは、ここでくたばるつもりはない。神代魔法は手に入れるし、あいつらともケリをつけるし、静因石を届ける約束を守る。だが、今の俺たちじゃ無理だ。だから、お前の力を貸してくれ。お前が、静因石を届けてくれ。これは、ティオにしかできないことだ」

 

俺の言葉に、ティオは瞑目する。すると、その視線をハジメに向ける。

 

『・・・ご主人様も、それでよいのかの?』

「・・・あぁ、言いたいことは全部言われたが、思っていることは同じだ」

『・・・わかった。ここは妾に任せよ!』

 

ハジメの言葉にティオは力強く応える。

それを確認した俺は鱗の内側に宝物庫を入れる。こうすることで、内部の人型のティオに宝物庫を渡せるらしい。

ティオが宝物庫を渡したことを確認すると、その頭をハジメにこすりつけた。おそらく、今できる精いっぱいの愛情表現なのだろう。

・・・普段からこれなら、ありがたいんだけどなぁ・・・。

ハジメはティオに力強い視線を向け、最後の頼みを言う。

 

「ティオ、香織とミュウに伝言を。『あとで会おう』だ。頼んだぞ」

『ふふ、委細承知じゃよ』

 

ハジメのある意味軽い伝言を受け取り、ティオは思わず笑い声を漏らしながらも、力強く羽ばたいて一気に飛び上がった。

 

「んじゃ、俺たちも急げ!」

 

本当はもう少しティオの姿を確認したかったが、そうも言ってられない。

俺たちは、できるだけ急いで隠れ家らしき扉に向かった。

その間、ティアは一言も言葉を発しなかった。




「・・・あれ?これって挨拶とかした方がよかったのか?」
「お前はなにを悠長なことを言ってるんだ?」
「いや、仮にもティアの父親にあったんだから、恋人としての挨拶をした方がよかったのかなと」
「んなもん、『娘さんはもらいました。異論は認めません』でいいだろうが」
「なるほど、その発想はなかった」
「お願いだからいろいろとツッコませて!?」

独特な挨拶感を持つハジメに納得するツルギと、どこをツッコめばいいかわからなくなるティアの図。

~~~~~~~~~~~

父親に向かって「どうか娘さんをください」と土下座をするのはフィクションの産物だと考えている自分がいます。
さて、ティアの父親であるリヒトさん、ツルギと張り合えるくらいに強くしてみました。
まぁ、あくまで経験的に、ね?
ちなみに、ちょっとした裏話なのですが、ティアを最初に出した当初は、フリードをそのまま父親にしようと考えていました。
なんですが、それだとユエの絡みが難しくなると思ったのでオリキャラとしてだしました。

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