二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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これが神とやらのしたことか

「はぁ、はぁ、ティア、イズモ、大丈夫か?」

「けほっ、けほっ、う、うん、私は大丈夫」

「私も、なんとか無事だ」

 

あれから結構な勢いで流されたが、なんとか生き残ったようだ。

ティアは少し海水を飲み込んでしまったようでむせているが、俺が背中をさするとすぐに落ち着いた。

さて、あの後どうなったかというと、まず俺たちが流された空間は、巨大な球状になっていて壁に何十個もの穴が空いており、そこから噴出される海水によって水流が入り乱れていた。

なんとか仲間で固まろうとしたが、水流の勢いが強すぎてできなかった。

できたことと言えば、空間魔法を使ってなんとか1人だけはぐれたという状態を作らなかったことだけだ。

それぞれ引きはがされてしまったティアとイズモは俺が剣製魔法で鎖を生成することでなんとか引き戻した。

そこでハジメたちともはぐれ、しばらく流されてここに落ちたということだ。

上を見上げれば、入り口と同じように水面がたゆたっている。

 

「・・・みんなは大丈夫かしら」

「はぐれたからなんとも言えないが、少なくとも1人だけってことはないだろう。俺が見た限りは、ハジメと香織、ユエとシアとティオがそれぞれ一緒にいるはずだ」

 

もちろん、見えなくなった後ではぐれてしまってはなんともならないが、今は無事を祈るしかないだろう。

 

「それにしても、ここはどこだ?なにやら林の中にいるが・・・」

「・・・たしかに、とても海底遺跡とは思えないよなぁ、これ」

 

俺たちが落ちたのは、見たまんまの林の中だ。

葉の形を見る限りは、針葉樹林だろうか。海の中関係なく、植生がおかしいが、もはや気にするのも億劫になってきた。

 

「まぁ、幸い俺も劣化版宝物庫を持っているからな。食料には困らないはずだ」

 

エリセンに滞在して準備をしていた際、俺とハジメは合同で空間魔法を付与させた宝物庫を作り上げた。

ただ、俺とハジメが力を合わせても、せいぜい劣化版を作るのがやっとだった。せいぜい、ちょっとした家庭用倉庫くらいのサイズで、ハジメの持っている宝物庫のようにアーティファクトを大量にしまうことなんてもってのほかだ。

今のところ、中に入っているのは食料と諸々の小物類だけだ。

いったい、あの宝物庫を作ったオスカー・オルクスとナイズ・グリューエンの魔法の腕はどれほどのものだったのか。さすがは、元祖神代魔法の使い手ということか。

 

「とりあえず、手ごろな木に登って上から確かめてみる。もしかしたら、なにか手掛かりが見えるかもしれないしな」

「わかったわ、気を付けて」

「下の方は私たちが見ているから、安心してくれ」

「あいよ。それじゃあ、よっと」

 

そう言いながら、俺は手近な木によじ登った。

別に剣製魔法の足場を作ったり風魔法や重力魔法で飛べば一発だが、たまにはこういう木登りもいい気がする。

やっぱ、まだこういうところは俺も男の子なんかね。

そんなことを考えながら登っていくと、すぐに頂上についた。

さて、ここから“天眼”を使って何か手掛かりを・・・

 

「・・・“天眼”を使うまでもなかったな」

 

すぐ近くに、なにやらでかい城と街があった。ハイリヒ王国の王都と大差ないくらいだ。

さすがに、あれだけの規模で何もないなんてことはないだろう。ティアとイズモに報告するためにも、いったん降りよう。

降りるときは、風魔法のクッションを添えて、ふわっと着地した。。

 

「ツルギ、どうだった?」

「ツルギ殿よ。なにかあったか?」

「ここからそう遠くないところに、でかい城と街があった。そこに行ってみよう」

 

これからの行動方針を軽く伝えて俺たちは先に進んだ。

だが、半分ほど歩いたところで、なにやら変化が生じた。

 

「・・・ん?」

「ツルギ殿よ、どうかしたのか?」

「いや、なんか変な魔力の歪みが見えた気が・・・ッ!?」

 

直後、魔力の流れどころか空間そのものが歪んで、景色が変わった。

 

「な、なんなの、これ!?」

「何が起こっているというのだ!?」

「とにかく、周囲を警戒しろ!」

 

俺たちは即座に背中合わせになって、周囲を警戒する。

さっきまではあくまで枯れた林という感じだったのに、今は草木が青々と生い茂っている。

どう考えても普通じゃない。

辺りを警戒していると、イズモの狐耳がピクピクと反応した。

 

「・・・む?ツルギ殿よ。なにやら声が聞こえるぞ?」

「声って、どんなだ?」

「・・・声、というよりは喧騒だな。それも、かなり激しい。街の方角ではないが・・・どうする?」

「・・・行ってみよう。さすがに、何も確認しないまま先に進みたくはない」

 

なにも確かめないまま先に進んで攻略できなかったなど、笑い話にもならない。

この不可思議な現象の正体を確認するためにも、イズモの言う声のする方に行った方がいい。

そうして俺たちは進路を変え、イズモの案内に従って先に進んだ。

しばらくすると、開けた場所に出た。

そこにあったのは、

 

 

「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」

「「「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」

 

 

何千何万という兵士たちが殺し合いをしている、要するに戦争しているところだった。

 

「な、んじゃ、こりゃ」

「・・・これって、幻惑だったりしない?」

「いや、この地響きや熱気、漂う血の匂い、間違いなく本物だ」

 

幸い、向こうは身を隠している俺たちに気づいた様子はない。

それにしても、尋常じゃない様子だ。

さらに、気になることがある。

その戦争をしている兵士たちなのだが・・・

 

「・・・あいつら、人間族と魔人族だよな」

「・・・あぁ、間違いない」

 

その戦争をしているのが、片や人間族の兵士で、もう片方は魔人族なのだ。

それに、よく耳を澄ませて聞くと、

 

「死ねぇ!この異教徒めがぁ!!」

「アルヴ様の御為にぃ!」

「エヒト様ァ!万歳ィ!!」

 

すべて、自分の信仰する神のために戦っている。

おそらく、宗教戦争だろう。

だが、どうしてこうなったのか・・・

 

「おい!貴様たち、何者だ!」

「っ、やっべ」

 

どうやらのんびりしすぎたようで、人間族側の斥候に見つかってしまった。

人数は5,6人程度だが、報告されるのもまずい。

俺は即座にマスケット銃を生成して、斥候兵を撃ちぬいた。

のだが、またしても不可解なことが起きる。

 

「あ?」

「霧散、した?」

 

撃ち抜かれた斥候兵は血を流さずに、ただ淡い光となって消えたのだ。斥候兵たちがいたあとには、血しぶきの1つもない。

改めて、戦場の方を見てみると、

 

「・・・ふ~ん、そういうことか?」

「どういうこと?」

「なにかわかったのか?」

「あいつらは、魔法で構成されたものだ。限りなく現実に近いが、肉体とかを持っているわけではないらしい・・・これはただの憶測だが、おそらく闇魔法の幻惑とかじゃなくて、過去の再現じゃないか?」

「過去の再現?つまり、これは昔、実際にあった戦争だということか?」

「多分な。それを、神代魔法で再現しているんだろう。少なくとも、それくらいしか考えられない」

「いったい、なんの神代魔法なのかしら?」

「思い当たるやつは1つくらいしかないが・・・さすがにそれだけだと説明がつかないな。それよりも、この変な現象をどうやって収めるかだが・・・手っ取り早く、戦争を終わらせた方がいいのか?」

「まぁ、それくらいしかやることもないな。だが・・・」

「さすがに、数が多いわね」

 

ティアの言う通り、ざっと見た感じでも双方合わせて数万はいる。すべてと真っ向にやり合うには多すぎる。

俺の“ラグナロク”なら1発だろうが、魔力につられて大勢こっちに来られても困るし、後のことも考えると魔力はなるべく温存しておきたい。

・・・そう言えば、さっき放った弾丸は実体化した魔力の弾だったが・・・

俺は宝物庫から安物の投げナイフを取り出して、戦場に向かって投擲する。

それを“天眼”で追ってみると、魔力を帯びていないナイフは人の体に刺さらずにすり抜けて地面へと突き刺さった。

これは、そういうことか。なら、なんとかなりそうだ。

 

「手っ取り早く一網打尽にする方法を思いついた。だが、そのためにはあの戦場のど真ん中に行かなきゃいけない」

「それくらいなら平気よ」

「うむ、全員と相手取るよりはるかにマシだ」

「そうか、なら頼んだ。それと、あいつらに物理攻撃は通じないが、魔力による攻撃なら通用する。おそらく、拳に魔力を纏わせたり、ただの魔力放射でもいけるはずだ」

「・・・なるほど、そういうことね」

「たしかに、それが一番の手だな」

 

俺の解説に、ティアとイズモも俺が何をする気なのかわかったらしい。

これなら、余計なことを考えなくてもよさそうだ。

 

「それじゃあ、行くぞ!」

「ええ!」

「うむ!」

 

俺が合図を出し、勢いよく突撃する。ティアとイズモも俺に続き、前に出る。

50mくらいまで近づいたところで向こうにも気づかれたが、それにも構わず俺たちは突っ込み、

 

「はぁ!!」

「“黒霧”!」

 

ティアが魔力を纏わせた拳で前線を思い切り殴り飛ばし、中に入りこんだところでイズモが闇魔法“黒霧”を俺たちの周囲に展開した。

“黒霧”は、本来は霧に含まれる毒によって相手を殺したり、幻惑を見させる魔法だが、今回は俺たちの周りに台風のように展開することで、鉄壁の要塞のようにした。

魔力で消滅するこいつらなら、触れるだけでも致命的だ。

これなら、問題なく中心部に近づける。

その間、俺はひたすらに魔力を圧縮していた。自分の魔力はもちろん、消滅した兵士たちの魔力も収束して。

中心部に着くころには、これでもかと言うくらいに魔力が集まり、太陽のような輝きを放っていた。

中心部についた俺たちは、なるべく集まってから“聖絶”を展開した。

 

「さて、効果はどれほどか、見せてもらおうか」

 

俺は不敵に笑みを浮かべ、圧縮した魔力を“聖絶”の外に出し、解放した。

その直後、実体を持たない魔力の波は、核爆弾さながらの勢いで戦場の端まで広がり、すべてを消滅させた。

それにともなって、周りの風景が元に戻っていった。

 

「・・・思ったよりやばかったな、これ」

「そうね。“聖絶”がなかったら、私たちまで危なかったわ」

「相変わらず、ハジメ殿もツルギ殿も無茶をする」

 

ティアとイズモが呆れた様子でそんなことを言うが、俺もあまり否定できない。

俺がやったのは至極単純で、圧縮した魔力を解き放っただけだ。

あらゆるものは、圧縮するだけでもエネルギーを持つ。

例えば、空気も圧縮すれば爆弾になるし、太陽もそれ自身が熱を放っているのではなく、極限まで圧縮された結果として熱を放っているという話もある。

それは魔力も同じなようで、ただ放出するよりも、圧縮してから放出する方が威力を増す。

それを利用して、俺は持ちうる“魔力操作”の技術をフル活用して周囲の魔力も収束しつつ圧縮し続けたわけだが、予想以上の威力だった。魔力の波を遮断する目的で展開した“聖絶”がミシミシと嫌な音を響かせたくらいだ。

“魔力放射”そのものには殺傷能力はなく、魔力を吹き飛ばすことで気を失わせる程度だが、ここまで来るともはや戦略級だな。

 

 

「それで、今度はあの城に向かうのか?」

「あぁ。ていうか、それしかやることないしな」

 

イズモの問い掛けに頷きながら、俺たちは再び城へと向かった。

そこからは特に何も起こらず、そのまま王都の中に潜入した。

 

「・・・なんと言うか、そのまま廃墟だな」

「いったい、どこから用意したのかしらね・・・」

「おそらく、オスカー・オルクスが作ったのだろうが・・・よくもまぁ、ここまでのものを用意できたものだ」

 

俺たちが入った街は見るからに廃墟なのだが、実際に人が住んでいたと言われても納得してしまいそうな完成度だ。

それに、おそらくだが、この他にも同じような場所があるだろう。ハジメたちも、そこに流されたはずだ。

それを考えると、昔の魔法の技術がとんでもなく化け物なレベルだとわかる。

本当に、現代のこの世界の人間とは比較にならないな。王都の錬成師がこれを見たら、白目をむいて倒れそうだ。

 

「ツルギ、これからどうするの?」

「無難なのは、あの城の中を探索することだな。ていうか、それくらいしか思い浮かばん」

「まぁ、あれだけ立派なら、なにも意味がないなんてことはないだろう」

 

まぁ、苦労させといて実は何もありませんでした~、なんてオチはあったけどな、ライセンで。

とりあえず、総意で城に向かおうということになったのだが、また空間が歪んだ。また、さっきみたいなやつらが襲ってくるのか。

そう思って身構えたが、現れたのは、

 

「いらっしゃーい!安くておいしいよー!」

「お客さん!こっちのブレスレットはどうだ?」

 

いたって平穏な、喧騒溢れる商店街だった。辺りには、露店がひしめき合っており、魔人族の店員が声を張り上げて客引きをしている。周りには、亜人族や人間族の姿もある

 

「・・・どういうことだ?」

「てっきり、さっきみたいな戦場になるのかと思ったのだけれど・・・」

「まずは、様子見でもするか」

 

イズモの言う通りにするものの、本当に戦いが起きる気配がない。

うっすらと喧嘩のような声が聞こえはするが、さっきの戦場とは比べ物にもならない。

 

「お?あんたら、旅の人かい?」

「あぁ、そうだ。途中で立ち寄ってな」

「そうかい、なら、これはサービスだ」

 

近くのおばちゃんの屋台から、肉串をもらった。たぶん、鶏だろうか。

 

「・・・毒の反応はなし、か。まぁ、そもそも食べたところで腹の足しにもならないが・・・」

「・・・本当に、どういうことなのかしら?」

「おそらく、この風景そのものに意味があるのかもしれないが・・・」

 

イズモが周りを見渡して首をひねるが、俺も内心は似たような感じだ。

本当に、戦争とも狂信とも縁がない、ただの日常の風景だ。

だが、それにしても、

 

「なんていうか、平和ね」

「様々な種族の人がいることから、戦争が終わった後なのかもな」

「戦争の後にも関わらず、このような様々な種族で溢れかえっているとはな。戦争を終わらせた者たちの、努力の証だ」

 

戦争の後には、少なからず軋轢が生じる。

終戦からどれほど経ったのかはわからないが、並大抵の努力では、この光景は生まれなかっただろう。

不審ではあるが、これはこれでいいかもしれない。

 

「・・・む?」

 

そう思っていたら、なにやらイズモが耳をピコピコさせながら反応した。

 

「イズモ、どうした?」

「いや、なにやら騒ぎがこちらに近づいてきているんだが・・・」

 

イズモが見ている方に顔を向けると、たしかになにやらざわざわしている。

それも、困惑の方が大きそうだ。

しばらくすると、人垣の向こうから鎧を身に付けた魔人族の男たちが数人やってきた。おそらく、この国の兵士、あるいは騎士といったところだろう。

その男たちは、俺たちにほど近いところにいた人間族のカップルに近づいた。

カップルの男の方が、先頭にいる他よりも豪華な鎧を身に付けた男に尋ねる。

 

「あの、なんの用で・・・」

 

次の瞬間、人間族の男が傍らにいた騎士に斬り捨てられた。

女の方は悲鳴をあげ、周りの観光客や店員も目の前の惨劇にどよめくばかりだ。

そんな中、先頭の騎士の男が剣を引き抜き、高らかに宣言した。

 

「クルド王国にいる民に告げる!今日付けで、今使われている入国許可証はすべて無効となる!つまり、ここにいる観光客はすべて不法入国者であり、我らが神に仇名す神敵である!これは神託である!この国にいる神敵をすべて殺せとの、神の神託である!」

 

その宣言のあと、周囲の空気が変わった。

観光客の表情が恐怖で彩られたのはもちろんだが、今まで笑顔で客引きをしていた店員たちの目が、明らかに冷たく、いや、むしろ血走ったものになる。

先ほどまで、種族の違いなど関係なく接していた人たちが、だ。

先ほど俺に串をくれたおばちゃんも、俺たちを見る目が親の仇とでも言わんばかりに鋭くなる。

 

「クルド王国の民よ!我らが神敵に、神罰を下すのだ!」

 

豪華な鎧の男がそう締めくくった次の瞬間、騎士、市民関係なく、あらゆる魔人族が俺たち、というよりは観光客に襲い掛かった。

ただの市民でも、魔人族は全体的に優れたステータスを持っている。現代よりも優れた才能が多い時代ならなおさらだろう。

結果、なんの武器も戦闘能力も持たない観光客は成すすべなく殺されていった。

 

「・・・平和とはいったい」

「ちょっと、これは異常というか・・・」

「手のひら返し、というには、少しばかり度が過ぎるな」

 

あくまでこれは過去の映像のようなものであるから、見えたことが必ずしも正しいとは限らない。だが、少なくとも、ついさっきまではここまでの殺意や敵意を持っていなかったはずだし、隠していたというにも無理がある。

つまり、いきなり俺たちに対して敵意を持ったということだ。

 

「とりあえず、逃げよう。最初から乱戦は避けたい」

「逃げるって、どこに?!」

「建物の上だ。そこなら、来れる人数も絞られる」

 

少なくとも、ただの市民はそこまで登ってこないはずだ。

ティアとイズモも俺の提案に頷き、それぞれ魔力で身体能力を強化して屋根の上に飛び乗った。

そして、上から見るとさらに惨状がよく見える。

あちこちから悲鳴や怒号が聞こえ、中にはこの国が信仰しているらしき神の名前も時折聞こえてくる。

そして、上から見て気づいた事があった。

 

「・・・ふ~ん?今、観光客を襲っているの、ほぼこの国の魔人族だな」

「それがどうかしたの?」

「これは過去の映像のようなものなんだろうが、さっきまでここの人たちは俺たちに敵意や殺意を持っていなかった、むしろ友好的ですらあったのに、今じゃあこの通りだ。おそらく、神からの干渉だろう」

「たしかに、そう考えるのが妥当だろうが・・・いや、ここまでの大人数なのに、なぜ細かい調整ができるのだ?洗脳の類なら、多少の誤差はありそうなものだが・・・」

「500年前の竜人族と妖狐族の迫害や、数千年前の解放者の件もそうだけどな。ここまでの大規模な干渉なのに、見事に同士討ちが起きていない。ただ敵を殺せというだけなら、なおさら起きそうなのにな」

「・・・なにか気づいたのか、ツルギ殿?」

「あぁ、あくまで憶測だが・・・」

 

ただの状況証拠しかないが、これくらいしか考えられない。

 

「おそらく、神とやらは“信仰心”に干渉しているな」

「信仰心に干渉って、どういうこと?たしかに、違う神様を信仰しているからって襲っているけど・・・」

「まだ確証はないが、クソ神はエヒトだけではない。他にも配下がいると考えた方がいいだろう。それでだ、この世界の人間が特定の神を信仰することによって、信仰されている神は力を得ることができ、同時に自分を信仰している人間をある程度操ることができる。つまり、信仰されている複数の神が全員グルで、エヒトを中心としてこの世界で遊んでいる、ということだな」

 

つまり、この世界の人間を俺たちがどうこうすることはできない。神への信仰心は深く根付いているだろうし、多少の揺らぎならすぐに矯正される。

仮に信仰をなくすことができれば大幅な戦力ダウンになるだろうが、「信仰している神様は、戦争大好きで人間を遊びの駒としか認識していないクソ野郎です」といっても、自分の信じていたものが崩れ去ってパニックになるだけだろう。

逆に言えば、この世界の信仰に関係ない俺たちが操られることはまずないし、この事実を受け止めることができる人物もまた然りだ。

また、信仰の対象を上手くずらすことでも、ある程度弱体化するかもしれない。

とりあえず、手口はわかった。あとは神とやらの実力を具体的に知ることができれば、いざというときに役に立つ。

ハジメは自分から積極的に関わるつもりはないようだが、向こうがそうとは限らない、というよりむしろ、俺たちに興味を持っているだろう。それも、かなりめんどくさいタイプの。

それなら、なるべく対抗策は考えておきたい。

そういう意味では、これは役に立ったかもしれない。

 

「なんだか、とてつもない話ね。この世界にどれだけの人がいると思っているのよ」

「そうだな・・・だが、少なくとも亜人族はそのような信仰には無縁の種族だ。つながりはあった方がいいだろう」

 

魔力を持たない亜人族は、戦力として数えられないが、ハウリア族のように改造することはできる。いや、あんなヒャッハー連中を量産するつもりはないが。それに、竜人族や妖狐族のような例外もいるし。

少なくとも、戦えるように仕上げておけば、これからのためになるかもしれない。

問題は、そのためのハジメの説得だが・・・いや、今は考えなくてもいいだろう。

今、考えるべきは、現状打破だ。

 

「まぁ、それに関しては今考えてもしょうがないから、まずはここから脱出しよう。とりあえず、予定通り、あっちの城に向かうか」

「ええ、そうね」

「わかった、ツルギ殿」

 

ティアとイズモも俺の言葉に頷き、立ち上がる。

いろいろと悩ましい問題がでてきたが、それは後回しだ。まずは、メルジーネ海底遺跡を攻略しよう。




「・・・・・・(じー)」
「ツルギ、どうしたの?鏡なんか見て」
「・・・いや、なんでもない。ただ、ちょっと期待外れだっただけだ」
「そう・・・ツルギもかわいらしいところがあるのね」
「ちょっと何言ってるかわからない」

本格的に写〇眼みたいに目の色が変わっていないか確認するツルギと、それをちょっと察してからかうティアの図。

~~~~~~~~~~~

とりあえず、自分が思いついた神様外道を掻いてみました。
若干、ハジメサイドに似ているような気がしますが、こっちでは急な認識の変化について触れてみました。
たしか、エヒトが「信仰を魔力に変換する」みたいな話があった気がしたので、それを元に考察してみた感じです。

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