二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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それは聞いてない

エリセンを発った俺たちは、そのあとアンカジに向かった。なぜかと言われれば、香織が「オアシスの浄化をしたい」と言ったからだ。

俺としては新たな恩を売るという目論見がまったくないというわけではないが、どのみち道中だから特に反対することもなかった。

そして、オアシスを浄化したところでトラブルが起きた。

簡単に言えば、アンカジにいた聖教教会の司教が神殿騎士を連れてやってきて、俺たちに異端者認定が下されたと告げたのだ。

もちろん、思っていたより早かったとはいえ、これくらいは想定内だった。そもそも、俺に関してはいつ出されてもおかしくなかったわけだし。司教は神殿騎士100人を連れて調子に乗っていたので、とりあえず適当に返り討ちにしておこうと考えた。

だが、ここで予想外だったのが、俺たちが戦い始める前に領主も含めたアンカジの民たちが俺たちを守ろうと動き出したのだ。

もちろん、装備や実力からして神殿騎士たちの相手ではなかったのだが、数と気迫に押されて引き下がった。

領主であるランズィとしては俺たちと敵対しないようにするという考えもあったが、アンカジを救った俺たちに対しての感謝の気持ちもたしかにあったようだ。

ただ、ちょっと残念なのが、これがきっかけでエヒトへの不信が募るということはなくて、あくまで教会と敵対しただけというのが、少し残念だったりする。もしエヒトへの信仰がなくなれば、多少は戦力を削げると思ったんだが、そう上手くはいかないらしい。

それでも、農作物と土地も浄化した後は、アンカジの民総出で俺たちに歓迎され、予定よりも2日ほど長く滞在してしまったが、いい思い出だ。

パーティーの際にプレゼントされたベリーダンスで着るような衣装を身に付けたユエたちにハジメの目が一瞬野獣になったり、その視線を一瞬ティアとイズモに向けそうになったところで俺が殴り飛ばしたりしたが、些細なことだ。

ちなみに、それで味を占めたユエ、シア、ティオ、香織は一日中その格好で過ごし、逆にティアとイズモは普段は着ないように俺が言っておいた。さすがに無いとは思うが、念のためだ。

まぁ、俺たちだけの部屋の中ではドレスの方に着替えたが。ティアとイズモのドレス姿に目を奪われたのがばれていたようだ。

まぁ、そんなこんなでいろいろとあって、現在はブリーゼを走らせてホルアドを通る街道に差し掛かったところなのだが、

 

「んー?」

「ツルギ、どうしたの?」

 

俺が運転席に座って運転し、その隣にティア、向かい側にイズモが座っているのだが、俺はフロント越しにあるものを見つけた。

 

「あれ、なんか襲われてないか?」

「・・・ふむ、隊商が盗賊に襲われているようだな」

 

イズモの言う通り、隊商が盗賊に襲われている最中だった。

盗賊がおよそ40人に対して対象の護衛は15人ほどしかいないが、戦力は拮抗している。

その要因は、隊商の周囲に展開されている結界と、一人の冒険者らしき人物が見事な回復魔法で冒険者を癒しているからだろう。

だが、盗賊たちも長期戦になれば有利になるとわかっているようで、なかなか退こうとしない。

さて、俺たちはどうするか。

状況を伝えつつ、ハジメに尋ねる。

 

「ハジメ、どうする?」

『俺はべつにどっちでもいいが・・・』

『待って!ハジメ君!ツルギ君!お願いだから、彼らを助けて!もしかしたら、あそこに・・・』

 

そこに、香織が焦燥をにじませて救援を求めた。

それからのハジメの対応は早かった。

 

『ツルギ』

「あいよ」

 

俺もハジメの答えを察し、ブリーゼをさらに加速させた。

香織の事情はわからないが、ついさっき結界が解けてしまった。あまり話している時間はないだろう。

 

『・・・ハジメ君、ありがとう』

「一応、走らせてるのは俺なんだけどな・・・それよりも、どこかに掴まっておけ」

 

また俺の存在を忘れたことに若干辟易しながらも、手っ取り早く指示を出す。

ティアやユエたちはすぐに俺の意図を察したようで、すぐにそれぞれ車内のどこかに掴まった。

そこで、香織も一拍遅れて俺の意図を察する。

 

『あ、あの、ツルギ君?もしかして・・・』

「こっちの方が手っ取り早い」

『そ、それはそうかもしれないけど・・・』

「心配しなくても大丈夫だ、香織」

『な、なにが?』

 

香織はちゃんと掴まりながらも何やら戦々恐々としているが、俺にはちゃんとした根拠がある。

 

「この世界に道路交通法は存在しない」

『問題しかないよ!それって、法律がないなら好き勝手やってもいいてことでしょ!警察官の息子さんがそんなこと言っていいの!?』

「むしろ、警察官も道路交通法を守ってばかりじゃいられないしな」

 

スピード違反をしている車を見つけたとして、パトカーが規定速度で走って追いつけるわけがない。さっさと引き離されて終わりだ。

俺の場合、それにちょっと交通事故が加わるだけで、この世界ならなんの問題もない。ちゃんと正当防衛になるはずだ。

俺はそのままギミックを作動させ、ボンネット下部の両サイドと屋根からブレードを展開し、そのまま突っ込んだ。

賊はブリーゼに魔法を直撃させたが、それで壊れるわけもなく、そのまま賊を轢いていった。

ある者は両サイドのブレードに引き裂かれ、ある者はボンネットから屋根に乗り上げて切り裂かれ、ある者は車両の体当たりで骨や内臓も粉砕された。

運よく轢き殺されなかった賊は、俺が車内から賊を確認してカラドボルグで撃ち抜いていった。

この一交錯で、賊はほぼ半数になった。

残りの賊は、ブリーゼを反転させてから再び俺がカラドボルグで撃ち抜いて全滅させた。

護衛の冒険者とつば競り合っている賊も、冒険者に当たらないように気を付けて撃ちぬいた。

 

「うし、こんなもんだな」

「・・・出る幕がないわね」

「大迷宮を攻略するたびに、ツルギ殿が化けていくな・・・」

 

ティアとイズモがもう何回目かもわからない感想を呟く。

今回のメルジーネ海底遺跡攻略で、また俺の“天眼”が新たな派生技能も添えて強化された。

今の俺なら、時速100㎞の車内からでも通り過ぎる人の顔の1つ1つを見分けることができる。

新たな派生技能は、ぶっちゃけ実用的ではないが、十分破格の性能だ。

ちなみに、再生魔法自体の適性は一番は香織で、その次が俺、続いてティオとイズモ、ユエという感じだった。“自動再生”に頼りきりのユエは、やはりというか適性がそこまで高いわけではなかったが、詠唱を必要としないという点ではやはりアドバンテージがある。まぁ、それでも俺よりは下になるんだろうが。

 

「とりあえず、治療は任せたぞ」

「う、うん、わかった・・・」

 

ちょっと複雑な表情になりながらも、ブリーゼから降りた香織は複数人用の光系回復魔法“回天”を連続使用して、一気に冒険者たちを癒していった。

そして、香織がすべての冒険者の治療を終えたところで、一人のローブの人物がこちらに駆け寄ってきた。

 

「香織!」

「リリィ!やっぱりリリィなのね?」

 

その人物は、真っ先に香織に抱きついて、香織もそれに応える。

にしても、リリィ?どこかで聞いたような・・・

 

「香織、治療は終わったか?」

 

そこに、ハジメが香織に尋ねてくる。

 

「・・・南雲さんに、峯坂さんですね?お久しぶりです。雫達から貴方がたの生存は聞いていました。貴方がたの生き抜く強さに心から敬意を。本当によかった・・・」

 

フードの人物は、フードから金髪碧眼をのぞかせながら笑いかけた。

が、

 

「・・・っていうか、誰だ、お前?」

「へっ?」

 

ハジメの問い掛けに素っ頓狂な声をあげ、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、思い出した。ハイリヒ王国のお姫様か」

「え?」

 

俺の呟きに、「今更?」みたいな表情を向ける。

よく見て思い出した。

この人物こそが、ハイリヒ王国の王女であるリリアーナ・S・B・ハイリヒだ。

召喚された俺たちがお世話になる王国のお姫様として、俺たちとコミュニケーションをとった記憶がある。

ただ、俺がリリアーナ姫と話したのは1,2回くらいだし、その内容もとりとめのないことばかりで特に気にとどめることがなかったから、顔とかすっかり忘れていた。

そこに、ハジメが俺に小声で話しかけてきた。

 

「おい、ツルギ、知り合いか?」

「いや、ハジメ、お前も話したことがあるぞ。ほら、あれだ、ハイリヒ王国のお姫さんだ」

「・・・・・・あぁ」

「ぐすっ、忘れられたり、思い出すのに時間をかけられるのって、結構心に来るものなのですね、ぐすっ」

 

俺たちの反応に、姫さんが泣き崩れてしまった。そこに香織が慌ててフォローに入る。

 

「リリィー!泣かないで!ハジメ君と剣君はちょっと“アレ”なの!2人が“特殊”なだけで、リリィを忘れる人なんて“普通”はいないから!だから、ね?泣かないで?」

 

ただ、その慰めにだいぶ俺たちへの罵倒が入っていたが。

姫さんはと言えば、「いいえ、いいのです、香織。私が少し自惚れていたのです」などと健気なことを言っている。

ティアとイズモも、さすがに人の顔と名前を本気で忘れるのはいただけないようで、ちょっと責めるような視線を俺にむけてくる。

 

「ツルギ様!お久しぶりです!」

 

そこに、栗色の髪の少女が俺に話しかけてきた。なにやら、やたらと弾んだ声で。

一瞬誰かと思ったが、すぐに思い当たった。

 

「あぁ、アンナか。たしかに久しぶりだな」

 

アンナ・クリスティア。たしかにこの少女と俺は知り合いだ。

ティアも自分の知らないところで他の女と知り合っているとなって、俺に問いかけてきた。

 

「ツルギ。その子、誰なの?」

「簡単に言えば、俺の元使用人だ」

 

そこでティアたちに簡単に説明をした。

俺たち召喚者には、それぞれ1人ずつに世話役としてメイドさんや使用人があてがわれた。

俺に就くことになったのが、このアンナだ。

聞いた話では、アンナはもともと王族仕えの使用人であり、父親は国王の重臣の1人らしい。王族などの召使いにはそれなり以上の格が必要だという話を聞いた事があるが本当だったんだなぁ、とあの時は感心した。

そして、俺がハイリヒ王国から出て行く際に、ある意味で八重樫以上に迷惑をかけたであろう人物でもある。

なにせ、国王と教皇に矢を放った人物の使用人だ。風当たりが強くなるに決まっている。結局、あのまま別れの言葉も言わずに出て行ってしまったが、どうやら元気にやっていたようだ。

背後では、姫さんが「私のことは時間がかかったのに、使用人はすぐに思い出すなんて・・・」とさらに落ち込んでいるが、こればっかりは付き合いの差だと思う。

昼間は単独だったりハジメと行動することがほとんどだったが、朝と夜の鍛錬のときには傍に控えてタオルや軽食を用意してくれていたりと、姫さんよりも関わる機会が多かったから、自然と覚えただけだ。

 

「それにしても、突然出て行って悪かったな。別れの言葉くらいは言おうと思ったんだが、変に敵視されるわけにもいかなかったから、さっさと出て行っちまった」

「いえ、気にしないでください。そうやって私のことを気遣ってくださったのは嬉しいですし、私たちはツルギ様は必ず帰ってこられると信じておりましたから」

 

こういう感じで、王国にいたときから俺のことを慕って・・・ん?

ちょっと、不穏というか、気になるワードが出てきたんだが。

 

「・・・私()()?俺って、そんなに歓迎される立場じゃないはずだが・・・」

 

いや、ある意味歓迎されるだろう、敵意と殺意マシマシの神殿騎士と王国騎士に。

だが、アンナは「俺の帰還を心待ちにしている」みたいな言い方をしていた。俺って、そんないい意味での人気者ではないはずだが・・・。

するとアンナは、キョトンとした表情で、

 

「いえ、私たち“ツルギ様専属メイド会”は全員、ツルギ様の帰還を心待ちにしておりますよ?」

「ぶふぉあ!?」

 

ちょっと聞き入れがたい事実を突きつけられてしまった。

ていうか、“ツルギ様専属メイド会”?んなもん知らねぇぞ!?

だが、そのことで驚いている暇もない。

背後から両肩をガッ!!された。

振り向けば、絶対零度を纏うティアと闇の炎を立ち昇らせているイズモがいた。

 

「ツルギ?いつの間に他の女の子を誑かしていたの?ちょっと話を聞きたいのだけれど」

「ツルギ殿。まさか、狙っているのではないか?その辺りの話も聞きたいんだが」

「ちょっと待て。気持ちはわかるが俺も何のことかわからないから!それと狙ってもないし!むしろ俺の方が話を聞きたいんだが!!」

 

なにせ、そのような集まりというか組織があるなんて、少なくとも王都では聞いた事がない。

それに関しては、アンナが説明してくれた。

とりあえず、身も蓋もない言い方をすれば、「もともと召喚者に仕えていたメイドや使用人が中心となって、ツルギ様に仕えたい、もしくはツルギ様こそ主にふさわしいと考えているメイドや使用人が集まってできた会」とのこと。

もうちょっと詳しく説明すれば、“ツルギ様専属メイド会”のメンバーは、その全員が「天之河よりもツルギ様の方が勇者にふさわしい」と考えているらしい。そのうえで、俺に仕えることを望んでいる、と。

ついでに言えば、無能なりに努力していたハジメにも一定の理解はあるらしい。

とりあえず、ツッコミたいことが多すぎるから、1つずつ消化していこう。

まず、1つ目の質問、

 

「なんで天之河じゃないんだ?」

「あの勇者っぽいなにか様は無駄にキラキラしているのが気持ち悪いというのと、すぐに歯を見せて笑いかけるのが気持ち悪いのと、当然のように女性の身体に触ってくるのが気持ち悪いのと、その他諸々が気持ち悪いからです」

「あー、うん、とりあえず、それを他の人がいるところで言うなよ」

 

絶対に面倒なことになる。

ていうか、俺でも天之河をそこまでボロクソ言うつもりはないんだが・・・。

まさか、こんなところで天之河に同情することになるとは。

香織の方も、ちょっと遠い目をしている。今、アンナが言ったことはたしかに天之河の長所でもあり短所でもあるんだけど、そこまで言っちゃうのは・・・といったところか。

とりあえず、“ツルギ様専属メイド会”のメンバーのほとんどがアンチ天之河なことはわかった。

続いて、2つ目の質問、

 

「どうして、俺の方がふさわしいってなってるんだ?」

「私たちは、ツルギ様が自らの力に驕らず、ひたむきに鍛錬をされていたのを知っております。そして、あの能天気な勇者モドキと違って、ツルギ様は戦うことの意味を知っておられる様子でした。であればこそ、ツルギ様が兵を率いて戦うにふさわしいからです」

 

合間に挟まれる天之河ディスリは置いといて、とりあえずアンナの説明に納得しかけるが、ふと思ってしまった。

俺が鍛錬をしているときは、もちろん目の前のことばかりに集中するわけではない。いつ襲われても対処できるように、周囲に知覚の網を張り巡らしていたし、向けられる視線にも注意していた。

少なくとも、王都で鍛錬をしているときは傍にいるアンナ以外の気配を感じたことはなかったんだが・・・それでも、“ツルギ様専属メイド会”のメンバーは俺の鍛錬の様子を知っているという。

つまり、俺の感知範囲を見極めて様子を見ていたか、俺の技能抜きの感知をかいくぐって様子を見ていた、ということだ。

どこで身に付けたんだよ、そんなスキル。

どうやら、俺の知らない間にヤバめの人種が増えていたらしい。

・・・とりあえず、3つ目の質問。

 

「その・・・“ツルギ様専属メイド会”は、全部で何人いる?」

「およそ40人です」

 

40人・・・ということは、元クラスメイトの使用人の大半が所属していると考えてもいいだろう。

同時に、王宮にそれだけの数の俺の信奉者がいるってのは・・・複雑な気分だ。

いったい、俺が王宮に戻ったらどうなるのか・・・あまり考えたくない。

そして、最後の質問だ。

 

「なにか問題とか起こったりしなかったのか?一歩間違えたら、異端認定されそうな気もするが・・・」

「その心配は大丈夫です。私たちの活動はツルギ様の居場所を確保することであり、表立って活動することは少ないですから。それに、国王陛下や教皇様に矢を放ったのも、ハジメ様を助けに行くためだと理解しておりましたから」

 

それを聞いて、安心した。

異端者認定された俺を慕っているというだけでも、まとめて異端認定されるには十分な理由だ。それ以前に、俺が国王と教皇に矢を放っているという時点で、これがばれれば王都から追い出される可能性も十分あった。

そのような大きな問題がなかったというのは、俺としてもホッと・・・

 

「あぁ、でも、“ソウルシスターズ”と名乗る組織と小競り合いを起こしたことはありましたね。その時は、クゼリー様にすぐに取り押さえられましたが」

「がはっ!!」

「ツルギ!?」

 

それを聞いて、俺は吐血してしまった。一瞬のうちに溜まったストレスによって。

とりあえず、キリキリと痛みだした胃は自分の回復魔法で癒す。

 

「? ツルギ様は、その組織のことを知っておられるのですか?」

「・・・直接の面識はないが、心当たりはある」

 

それは、日本にも存在した組織というか、集団だ。

義妹結社(ソウルシスターズ)”。簡単に言えば、八重樫を信奉する集団だ。

八重樫を“お姉さま”と呼んで慕い、自らを“義妹(ソウルシスター)”と呼んですべてをささげようとする、ある意味で言えば変態の集りだ。

厄介なところは、八重樫の世話焼きな性格から生まれた存在であり、本人たちにあくまで悪意らしい悪意はないこと。Gのように無限増殖すること。そして、八重樫に近づく異性の存在を決して許容しないことだ。

八重樫に近づく男を排除するためなら、場所や年齢など関係なく集まる狂気の集団でもあるのだ。

俺も、1回だけだが襲われたことがある。

ハジメ関連で八重樫や香織と会う頻度が多くなった俺だが、それでなにやら勘違いした“義妹”どもが数の暴力で襲い掛かってきたのだ。

その時は、陰湿ないたずらの全てをそっくりそのままお返しして、最後は八重樫による説明と折檻によって落ち着いたのだが、そう言えばその翌日に八重樫から「なんか知らない女の子が数人やってきて手伝ってくれたのだけど、なにか心当たりはない?」と聞かれた。

その時は首を横に振ったが、今ならはっきりとその正体がわかる。

おそらく、というか確実に、俺の知らない間に発足されていた俺のファンクラブだ。

・・・日本に戻ったら、きちんと調べておこう。

それと、今回の暴走はおそらく俺が八重樫に“黒鉄”をプレゼントしたことが原因だろう。それで“義妹結社”が変な勘違いをし、その矛先が俺を信奉している“ツルギ様専属メイド会”に向けられた、というところか。

これに関しても、とりあえず八重樫と話し合う必要があるな。

とりあえず、気になることは全部聞いた。

その上での、ティアとイズモの反応は、

 

「・・・ツルギ、あとで()()しましょう?」

「今夜は、すぐに寝れるとは思わないことだ」

 

有罪判決だった。イズモも加わる分、今までより大変なことになるだろう。

とりあえず、商人と話し終えて別れを済ませながらも「私、空気・・・王女なのに・・・」と泣きべそをかいている姫さんをちらっと確認してから、本題を尋ねる。

別に、俺の援護をまったくしてくれなかった姫さんやハジメたちに対して怒ったりはしないが、それでもハジメあたりが俺にニヤニヤ笑っているのを“風球”で撃ち抜いてから、本題に入る。

 

「それで、どうして姫さんがここにいるんだ?まさか、王都で何かあったのか?」

 

俺がそう尋ねたところで、本来の目的を思い出したらしく、ハッとして俺たちに向き直った。

そこで姫さんから告げられたことは、俺たちをしてもなかなか衝撃的なことだった。




「・・・ふむ」
「・・・ハジメ?」
「ハジメ君?何を考えているのかな?かな?」
「いや、なんでもない」

メイドと話し合う剣を見て、なにやら考えるハジメとそれを追及するユエと香織の図。


~~~~~~~~~~~


はい、というわけで、3人目のオリヒロです。
なにやらティアの侍女を予想していた方がいらっしゃいましたが、本編でもあまり出てくる機会がなかった召喚者就きの使用人にしました。
そして、ソウルシスターズと肩を並べる組織も新たに作りました。
無限増殖するソウルシスターと張り合えるくらいには強い組織です。
これで、ツルギの修羅場はさらに加速した!

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