二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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たまには傍観も悪くない

『と、とりあえず、香織。再生魔法で元に戻せるか試してみてくれ』

 

散々モフモフされた後、俺はぐったりしながらも香織に呼びかけた。

すると、ティアがなぜか猛烈に反対した。

 

「ダメよ、ツルギ!ツルギはまだこの姿でいて!」

『いったい何を言ってるんですかねぇ、ティアさん!?』

 

なにがティアを駆り立てているのか。あぁ、可愛いものへの執着心か。

八重樫の方も、頬を赤くしながら力強くうなずいている。

 

「なら、ツルギ君はそのままで・・・」

『いいわけないだろ。頼むから、2人を正気に戻してくれ。ていうか、俺もユエもこのままだと、ろくに迷宮攻略ができないんだが』

「むぅ・・・なら、仕方ないわね」

「・・・残念ね」

『マジで残念がらないでくれ』

 

仲がいいのはべつに構わないんだが、変なところで意気投合されても困る。

 

『そういうことだから、香織、頼んだ』

「わかったよ。それじゃあ、いくよ。“絶象”!」

 

俺の呼びかけに答えるように、香織は“絶象”を行使した。

再生魔法は神代魔法であることから、その効果は絶大だ。元に戻る可能性も・・・

 

「あ、あれ?なんで!?」

 

あると思っていたのだが、それは甘かったようで、俺とユエの姿はそのままだった。

香織がもう一度“絶象”を行使するが、いくらやっても俺とユエの姿は戻らなかった。

 

「どうして・・・」

『おそらく、この姿になったのも神代魔法の影響なんだろうな。おそらく、変成魔法あたりなんだろうが・・・』

『・・・ティアからの話を聞く限り、それだけで魔物の姿になるのは考えにくい』

 

ユエも俺と同じ考えに至ったようで、首をかしげる。

ティアから聞いた話では、変成魔法はあくまで生体内に魔石を生成することで、対象を魔物にする魔法だ。人からいきなり魔物の姿になるとは考えにくい。

となると、

 

『・・・他にも、私たちの知らない何かがあるってこと?』

『それが何かはわからないが・・・まぁ、ここに挑んでいる時点で再生魔法が使えるのは当たり前だから、何も対策していないはずはないか。それに、さすがに迷宮に入った瞬間にゲームオーバーってのはないはずだ。おそらく、この階層を突破したら元に戻るだろう』

「まぁ、そう考えた方が妥当か。ひとまずは、ティオと坂上を探すか」

 

今後の方針を決めて、俺たちは再び歩き始めた。俺はティアに抱かれたままだが。

ちなみに、天之河はユエを魔物だと思って斬りかかりそうになったらしく、それをユエに謝罪しようとしたのだが、ユエが「ハジメが助けてくれるとわかっていたから気にしていない」と言ったことでさりげなく天之河を傷つけた。

ていうか、どうしてちょっとでも自分を信じていたからなんて勘違いしそうになったのか、理解に苦しむ。やはり、俺と天之河は一生分かり合えないらしい。

 

 

* * *

 

 

その後、俺はティアに抱きあげられたまま再び歩き始め、ティオと坂上を探し始めた。

の、だが・・・

 

「・・・ハジメさん、今度は私にもわかりますよ。あれがティオさんだって」

「私もわかるよ。どうみてもティオだよ」

『・・・むしろ、ティオ以外にあんなのがいたら大変』

「満場一致で、あれがティオだな」

 

俺たちが合流してからおよそ30分後、ゴブリンの集団を見かけた。見た限り、1匹のゴブリンに複数のゴブリンが暴行を加えている現場だった。

暴行を受けているゴブリンに目立った傷がないことから、単純に弱い者いじめか、仲間内の序列のようなものだと考えるのだが・・・

 

「恍惚としてる・・・わよね?どう見ても・・・」

『日本だったら、余裕で放送禁止のレベルだな』

「少なくとも、人前で見せていいものではないわよね」

「南雲・・・認めるよ。懐の深さでは、俺はお前に敵わない・・・」

「よせ、天之河。俺があの変態を許容しているみたいな言い方は心外だ・・・諦めているだけなんだ・・・」

 

ハジメの言う通り、別にティオの変態を許容しているわけではない。矯正しようとしても治るどころか、むしろ悪化する場合の方が多いのだ。

だから、俺たちの間ではティオのことはもう諦めようという結論になった。

そして、それはハジメに限った話ではなく、

 

『なぁ、イズモ。あれ、いいのか?』

「・・・里には、ティオ様は残念でしたが、と伝えておくから、問題ない」

 

イズモが、死んだ魚のような、それでもどこか達観したような目になりながら、さっと視線を逸らした。

ティオの変態化で最もダメージを負ったのは、他ならぬイズモだ。その傷心の度合いは、俺たちで測れるものじゃない。

 

「えっと、イズモ。はい、これ」

「・・・感謝する、ティア殿」

『うーん、なんか釈然としないなぁ・・・』

 

平然と、俺が慰めの道具として扱われるのは、男としてちょっと複雑な気持ちになる。

俺が慰めるんじゃなくて、俺をモフモフすることで傷を癒しているようなものだからなぁ・・・。

 

『とりあえず、ハジメ。ティオはどうする?』

「・・・あいつはもう手遅れだ。イズモもあぁ言ったことだし、残念だが諦めよう」

 

ハジメは悲し気な表情で頭を振り、そっと踵を返した。ユエやティアたちも、何のためらいもなく追随する。あの天之河ですら、「仲間を見捨てるのか!」と言わずに、どうしたものかと視線をさまよわせていた。

 

「グ?ギャギャ!!」

 

すると、俺たちに気づいた1匹のゴブリンが、声を上げて俺たちめがけて、正確にはハジメめがけて突進してきた。

その動きは今まで暴行を受けていたとは思えないほど素早く、なおかつ地面を這うようにして高速移動していたため、女性陣が思わず後ずさる。

 

「グギャギャギャ!!」

 

そうこうしている内にゴブリン(ティオ)がル〇ンダイブのような姿勢で飛び上がると、そのままハジメに向かって一直線に飛び込もうとする。

当然、ハジメの対応は、

 

「寄るな、このド変態が」

 

容赦のないアッパーカットをかました。

何だか鳴ってはいけない音を響かせながら、ゴブリン(ティオ)は四回転半の芸術的なバク宙を決めつつ傍の茂みにドシャ!と墜落した。

 

『・・・死んだ?』

『だったら、話は早いんだけどな』

 

たしかに、普通なら死んでもおかしくはない。

だが、ケツパイルによって目覚めたあのドMの変態のことだ。この程度では死なないだろう。

俺の予想は当たったようで、しばらくびくびくしながらも、意識を取り戻してガバッ!と起き上がった。

 

「ギャギャギャ! ゴゴ、グゲ! グギャ!」

 

そして、興奮したように鳴き喚きながら両手で自分の頬をはさみ、まるでイヤンイヤンするように身を捩らせている。そして、熱っぽい瞳でハジメをチラ見し始めた。

頬を赤らめながらチラ見するゴブリン・・・

 

『なんて冒涜的な生き物なんだ・・・』

「ツルギ、ちょっと吐きそう・・・」

 

ティアの言葉もなかなか失礼だが、この駄竜はそれすらも快感に昇華させることができるようで、息を荒くしながらビクンッと震える。イズモの向ける絶対零度の眼差しも同じように快感に変換している。

マジでどうしようもねぇな、この変態。

とりあえず、ドンナーに手を伸ばしているハジメに代わって香織が念話石を渡した。

 

『む、念話石じゃな・・・どうじゃ、ご主人様よ、聞こえるかの?再会して初めての言動が罵倒と拳だった我が愛しのご主人様よ』

「チッ。体は変わってもしぶとさは変わらねぇのか。そのまま果てればいいものを・・・」

『っ!?あぁ、愛しいご主人様よ。その容赦の無さ、たまらんのぉ。ハァハァ。やはり、妾はご主人様でなければだめじゃ。さぁ、ご主人様の愛する下僕が帰って来たぞ。醜く成り下がった妾を存分に攻め立てるがいい!!』

 

そう言って、ティオは煮るなり焼くなり好きにせよ!と言わんばかりに地面に大の字になって寝転がった。

イズモの俺を抱く腕に力がこもる。どうやら、精神的にかなりのダメージが入っているらしい。

とりあえず、慰めの意味も込めてイズモのキツネ耳を撫でる。ティアも同じように俺と反対側のキツネ耳を撫でることで、多少は回復したようだ。

ハジメもティオから視線を切って、他のゴブリンを射殺してから無言で探索を再開した。他のメンバーもティオを見ないようにしてハジメに追随する。

後ろからなにやら変態の言葉が聞こえたが、それも無視した。

この変態なら、たいていのことでは死なないだろう。

 

 

* * *

 

 

その後、オーガの姿になった坂上も発見した。

ただ、他のオーガと戦っていたようで、かなりボロボロになっていた。発見するのがあと少し遅かったら、死んでいたかもしれなかった。なぜ逃げないのかと疑問に思ったが、脳筋だからで片付けた。

幸い、俺の教え通りの動きはできていたから、ギリギリ及第点といったところだろう。一応、八重樫がオカンのごとく説教をしたし。

それから探索を再開したのだが、進んでいるうちに巨大な木が鎮座している場所にたどり着いたのだが、その巨木は実はトレントのような魔物だったようで、「この先に通りたければ我を倒していけ!」と言わんばかりに暴れ始めた。

そこに、今のところ戦果がない天之河たちが「こいつは俺たちが倒す!」と言って飛び出し、俺たちもそれでいいかということで、ハジメの展開した四点結界の中で香織が回復するだけで、俺たちは手を出さないようにした。

久しぶりに傍観を決めた俺たちだったが、天之河たちの連携はなかなかのものだった。八重樫が入ったことでちゃんとした指揮の下で動けるようになり、後ろで全体的な動きを観察している谷口が的確に障壁を展開してサポートする。

が、やはりきついようで、苦戦を強いられている。

香織が回復を入れることで経戦能力は問題ないが、決定打になる一撃が入れられないでいる。

業を煮やした八重樫が天之河に“神威”を放つように指示し、詠唱の間に守り切って天之河が“神威”を放ったが、トレントモドキの固有魔法らしき木の根に阻まれて直撃せず、谷口が“聖絶”で防御するが、一撃でひびを入れられる。

“聖絶”は香織が再生魔法で再生することで機能を保つことができたが・・・

 

『もうそろそろ限界だな』

「ツルギもそう思うか?」

『あぁ。天之河が“限界突破”の上位互換を使えば倒せるだろうが、後のことを考えればそこで消耗するのは避けたいな。“限界突破”の疲労は、通常の回復魔法だと簡単には治らないし、だからと言って再生魔法は消耗が激しいし』

「たしかにな。だが・・・」

 

そこまで相槌を打っておきながら、ハジメは渋る。

おそらく、天之河たちが神代魔法を得られないことで肉壁の役割を果たすことができないと考えているのだろう。

だからと言って、先に何があるのかわからないのにほいほいと神代魔法を使うわけにはいかない、といったところか。

だが、その心配はいらないだろう。

 

『ハジメ。戦闘の成果を気にしているなら、その必要はないと思うぞ』

「あ?どういうことだ?」

『ご主人様よ。おそらくじゃが、ハルツィナは絆を試しておるのではないかの?』

 

俺の言葉を引き継いで、ティオがハルツィナの試練についての推測を口にした。ティオの言ったことは、俺が考えていたこととだいたいは同じだ。

そのことに、俺は内心で嘆息する。

ティオは根本的にはドMの変態だが、年長者らしく鋭い考察を行ったり、含蓄のある助言をすることがある。

こういう時に、ユエが最初に言った“高潔で敬意を払うべき種族”という言葉に納得できるのだが、基本的には変態が全面に押し出されているという・・・。

これだから、この変態はどこまでいっても残念なんだよなぁ・・・。

とりあえず、ハジメには責任を取ってもらうことにしよう。ティオが変態になったのは、ハジメのケツパイルのせいだし。

 

『まぁ、そういうことだから。手っ取り早く焼き払ってくれ、ハジメ』

「・・・はぁ、わかったよ」

 

天之河たちの周りには、すでに数えきれないほどの樹々で溢れていた。

谷口の方は、“聖絶”で必死に防御している。

 

『谷口。ハジメが周りを焼き払うから、“聖絶”は絶対に解くなよ』

『え?』

 

谷口の素の声が返ってきた直後、ハジメは円月輪を飛ばして樹々を切り裂きながらタールを散布し、十分散布したことを確認してから、小さな火種を放り込んだ。

次の瞬間、周囲は視界すべてが紅蓮に染まった。

タールがまとわりついたトレントたちも、摂氏3000度の業火にはなすすべもなく燃やし尽くされていく。

そんな光景も、15分後には完全に鎮火した。

あやうく周りに燃え移って火事になりそうになったが、香織が水魔法で消火した。

 

『お疲れさん、ハジメ』

「これくらいはどうってことねえよ」

 

俺の注文通りにしてくれたハジメに、俺は労いの言葉をかける。

ちょっと思っていたよりも被害が大きくなりそうだったが、これくらいは誤差の範囲だ。

天之河たちからは呆れの視線を向けられるが、一番手っ取り早い方法がこれだったんだから、別にいいだろ。それに、こういうのは慣れればどうってことはない。俺だって、魔法が使えれば同じようにしたし。

ただ、天之河の瞳に暗いものが宿ったのを、俺は見逃さなかった。

すぐに頭を振って気持ちをリセットしたようだが、それでもネガティブな雰囲気はぬぐい切れていない。

だからといって、俺が何をするでもないが。結局のところ、天之河がどうにかするしかないわけだし。

すると、背後の方でメキメキと音がした。

振り返ってみると、

 

「再生している?」

 

天之河の言葉通り、巨木が形を取り戻していた。まさに、再生したような感じだ。

だが、トレントモドキが攻撃を仕掛けてくる気配はなく、しばらくすると幹が左右に割れて洞が出来上がり、中に空間ができた。

 

『なるほど。中ボスだと思っていたら、次のステージへの扉でもあったってことか』

「そうみたいだな。なら、さっさと先に進むか」

 

俺の考察にハジメも頷き、ためらいなく洞に向かって歩き始めた。ユエたちもそれに追随し、天之河たちも慌ててついてきた。

全員が中に入ると、やはり洞の入り口が閉まり、足元に魔法陣が輝き始めた。

 

「また転移だな・・・」

 

ハジメはそう呟きながら、ティオとユエを抱き寄せた。ティアも、俺を抱く腕に力を込める。

今の俺たちに、戦う力はない。些細なことでも命取りになりかねないのだから、ある意味当然だろう。

 

『ティア、大丈夫だ』

 

俺の励ましに、ティアが答えることはなかった。

ティアが口を開く前に、光は俺たちを飲み込み・・・




『つーか、八重樫はちゃんと戦闘に集中できるのか?』
「それくらいは当然よ。私だって、分別できるんだから」
「なら、私もツルギを背負いながら参加しようかしら?」
「そ、それはできれば、やめてほしいかなと・・・」
『動揺しまくりじゃねえか』
「なら、頑張ったらあとでシズクにモフモフさせてあげるわよ?」
「頑張る!」
『勝手に取引しないでくれよ!』
「いいじゃねえか。女の子に引っ張りだこで」
『結果的にはそうでも内容的にはうれしくねえよ!』

非常に人気なモフモフツルギさんの図。

~~~~~~~~~~~

今回は軽めに仕上げました。(手抜きともいう)
次回から本気出すので。
次回は、今までと比べてもかなり重要な回になりますからね。
自然と気合が入ります。
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