二人の魔王の異世界無双記   作:リョウ77

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夢の世界

目を開けると、そこは()()()()部屋だった。

ベッドとデスクに、その上に置かれたパソコン、様々な本やゲームソフトが並べられた本棚。

ここは、俺の部屋だ。

・・・そう言えば、昨夜はハジメと遅くまでゲームをしていたから、まだ眠いな。目覚まし時計を確認すればまだ少しだけ時間があるし、もうちょっとだけ寝ようか・・・

 

「ツルギー、起きてるー?」

 

布団にくるまろうとした矢先に、扉の外から声が聞こえた。

誰の声かはわかっているが、どうせだからもう少し寝ていたい。

俺は布団にくるまり、瞳を閉じて声を無視し・・・

 

「そろそろ起きないと、ティアちゃんに中に入ってもらうわよー?」

「おはよう、母さんっ」

 

俺の恋人を脅しに使われた俺は、すぐさま飛び起きた。

俺の恋人のティアは、俺とのスキンシップが好きなのだが、時折いきすぎることがある。

この前なんか、俺が寝ているベッドの中に忍び込んで思い切り抱きしめたり耳を甘噛みしたりしたし。

 

「ていうか、もうティア来てたのか?」

「ついさっき来たところよ。だからツルギを起こしに来たのだけど」

 

毎回、俺よりも早く起きて家に来るティアに、感心すらする。

正直、ちょっと重い気がしなくもないが、それだけ俺のことが好きだということだろう。それはそれでうれしい。

ということで、俺は早く恋人に会うためにも、着替えを持って洗面所に向かう。

 

「おはよう、ツルギ」

 

その途中で後ろから声をかけられた。

振り返ってみると、そこには、赤髪と耳にイヤリングをつけた美少女(俺視点)が立っていた。

彼女こそが、俺の恋人のティアだ。

 

「おはよう、ティア。ふぁああ・・・」

「ツルギ、まだ眠いの?」

「あぁ、昨夜は遅くまでハジメとゲームやってたからな・・・」

 

俺とハジメがやっていたのは、ファンタジー系のMMORPGで、ちょうどダンジョンを攻略しているところだった。いいところで終わろうと思ったのだが、もうちょっとを続けている内に遅くなってしまった。

いつもは朝の鍛錬を欠かさないのだが、たまには休んでもいいだろう。

俺は眠気を堪えながらも目をしょぼしょぼさせていると、不意にティアがほほ笑んだ。

 

「ふふっ。そう。なら・・・」

 

そう言って、ティアはさりげない動きで近づき、その唇を俺の唇に触れ合わせた。

突然の柔らかい感触に、俺は一気に目が覚める。

 

「んっ・・・ぷはっ。どう?目が覚めた?」

「お、おう・・・」

 

突然のことに、俺は咄嗟に声を出そうとしたが、上手くいかずに変な感じになってしまった。

 

「まったく、本当に仲がいいわね、2人とも」

 

背後から呆れた声が聞こえた。振り返ってみれば、そこには呆れているような、若干冷たい空気を放っている母さんが立っていた。

 

「まさか、親の前で堂々とキスするなんてね」

「いや、これは、その・・・」

 

これに関しては、流されてしまった俺にも悪いところがないわけではないと、頭ではわかっている。

その上で言わせてほしいのは、

 

「やっぱり俺の恋人は最高なんだなって」

「今日の朝ごはん抜きにするわよ?」

 

なんて横暴なんだろうか。俺は事実を言っただけだというのに。

それに、

 

「それを言ったら、母さんだっていつも父さんといちゃついてるだろ」

「私とお父さんはいいのよ」

 

横暴ここに極まれり。

息子にはダメだと言っておきながら、自分はいいとか。いったいどういうことなのだろうか。

 

「もうちょっと息子と恋人を大目に見ようとは思わないのか?」

「ツルギはティアちゃんを甘やかしすぎなのよ。この前なんて、もっと絡みつくようなキスを見せつけたり、もっと濃いイチャイチャを見せつけたりしたでしょ?」

「あれは見せつけたんじゃなくて、母さんが偶然入ってきただけだろ」

 

どういう理屈かはわからないが、俺とティアがイチャイチャしていると、なぜかよく母さんと鉢合わせる。ある時はお茶を持ってきたときに、ある時は廊下でばったり。

俺も気を付けているつもりなんだが、どれだけ注意しても同じことが起きてしまう。

本当に、不思議なことがあるものだ。

 

「まぁ、そんなことより、さっさと顔洗って着替えてきなさい。もうすぐ朝ごはんだから」

「わかったよ。ティアも先に待っててくれ」

「わかったわ」

 

さすがにティアに俺の着替えを見せるわけにはいかないから、ティアを食卓に向かわせる。

俺はティアと別れた後、顔を洗って寝癖を整え、制服に着替えて食卓に向かった。

 

「おはよう、父さん」

「あぁ、おはよう、ツルギ」

 

食卓に行くと、そこには父さんが座って新聞を読んでいた。

だが、いつもは会社に行くのにスーツを着ているのだが、今日は私服のままだった。

 

「父さん、今日は会社は?」

「有給休暇をとったんだ。今日は、俺と母さんの結婚記念日だからな」

「あぁ、そういえばそうだっけ」

 

この両親は、結婚記念日は必ず二人一緒で出掛ける。これは、2人が結婚してから欠かしていないらしい。

本当に、仲のいい夫婦だ。

 

「私たちも、結婚したらこうなるのかしらね」

「さぁ、その時にならなきゃわからないな」

 

何気に俺とティアの結婚が決まっているような言い方だが、俺としてはティア以外の相手がいるとは思っていないから、そこまで不自然でもないだろう。

 

「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」

 

こうして俺はティアと共に朝食を食べ始めた。

どうせ父さんと母さんはいちゃいちゃしながら食べているだろうから、俺たちは俺たちでさっさと食べて学校に行くとしよう。

 

 

* * *

 

 

朝食を食べ終えた俺とティアは、逃げるようにして家を出発した。

 

「ツルギのお父さんとお母さん、本当に仲がいいのね」

「むしろ、恋人とはいえ、誰かの前でやってほしくなかったんだけどな」

 

父さんと母さんは俺とティアの少し後に朝食を食べ始めたのだが、それはもう甘々だった。

例えば、食べさせ合いっこはもちろん、母さんが父さんの膝の上に座ったり、逆もやったりした。正直、俺の方がいたたまれないくらいだった。

母さんは俺とティアがいちゃついている現場を見るたびにチクチク刺すような口調で言ってくるが、完全に人のことを言えない。むしろ、ちゃんとTPOをわきまえようとしている俺たちの方がマシなんじゃないかと思える。

五十歩百歩だって言われたらそれまでだけど。

まぁ、いちゃついているカップルは俺の知り合いにもいるわけだが。

そう考えていると、ちょうどそのカップルと出くわした。

 

「おう、おはよう。ハジメ、ユエ」

「ハジメ、ユエ、おはよう」

「あ、ツルギ。おはよう」

「・・・ん。おはよう」

 

曲がり角でばったり出くわしたのは、俺の親友であるハジメと、金髪が特徴的な美人のユエだ。この2人もまた付き合っている。

この2人は、たしかユエが暴漢に襲われていたときにハジメが助け、そのまま流れで付き合うことになったらしい。

そのことを聞いた時は、まるでアニメのような出会いだなと笑ったものだが、ハジメからも俺だって同じようなものじゃないかと反論された。

たしかに、俺とティアが出会ったのは、ティアが公園のベンチで生き倒れていたのを偶然、俺が見つけたからだ。

なんとなく放っておけなかった俺はティアを家に連れて介抱し、布団やご飯を提供した。

後になって話を聞いたところ、どうやら父親と親子喧嘩をして家出したらしく、だが何の準備もなかったため空腹と眠気でそのまま倒れてしまったらしい。

その後、俺はティアと父親であるリヒトと仲直りの仲介役をし、見事に仲直りさせることができた。

それから、偶然同じ高校だったこともあってティアは俺によく構うようになり、いろいろあってティアからの告白を受け入れて無事付き合うことになったというわけだ。

ティアを紹介した時の父さんと母さんの反応は、思っていたよりもそっけなかったというか、「はいはい、わかってたから」みたいな反応だったが。そんなにフラグを建てていたか?

 

「珍しいな。今日は結構早いんだな」

「うん、ユエに起こされてね。そういう剣も早いね」

「俺はティアに起こされた。あと、今日は父さんと母さんの結婚記念日だから、家の中の空気が甘ったるくて、とてもじゃないが中にいられなかった」

「あはは・・・」

「・・・ツルギのお父さんとお母さんは仲良し。私も見習いたい」

「私もそう思うわ」

「あれを見習っても、得られるものは何もないと思うけど」

 

敢えて言うなら、イチャイチャ夫婦の真髄とか、そのあたりか。

 

「ていうか、ハジメの場合はもっと自分の身の周りを気にした方がいいだろ。ただでさえ修羅場になっているわけだし」

「まぁ、それはそうかもしれないけどね・・・何を言ってもだめだから・・・」

「まぁ、あいつらのメンタルとバイタルはカンストしているからな」

 

そう、ハジメは何気にモテている。ユエという恋人がいながら、他にも複数人の女子からもアプローチを受けているのだ。それも、誰もが一目置くような美女ばかりから。

当然、ハジメには嫉妬の集中砲火が刺さり、俺は馬鹿な真似をした輩に制裁を加えたりした。

今はまだ落ち着いているが、それでもたまにバカな真似をしようとする奴はでてくる。

だが、その辺りから今度はハジメを好いている女子たちが迎撃に周り、俺の時より悲惨な目にあうようになってからは、めっきり減ったが。

 

「そういうツルギだって、あと2人からアプローチされてるよね?」

「俺の方は上手くいっているからいいんだよ」

 

そう、何を隠そう、俺もティアの他に2人からアプローチを受けている。

だが、俺の場合は上手く立ち回って諍いが起きないように計らっている。その辺りが不器用で盛大に炎上しているハジメとは違うのだ。

 

「あ!ハジメさ~ん!」

「ハジメ君!」

 

そこに、ハジメサイドの渦中にいる、()()()()()()がトレードマークのシアと学校の2大女神の1人である()()が走ってきた。

シアはユエと同じ留学生で、家族ともども暴漢に襲われていたところを助け、同じように付き合いが始まった。

シアはユエと比べてスキンシップが激しく、今も走ってきたまま背中からハジメに抱きついた。

 

「ハジメさん!おはようございますぅ!」

「ハジメ君!おはよう!」

「お、おはよう、シアさん、白崎さん。あと、シアさんは挨拶する度に抱きつかないでって、いつも言ってるでしょ!」

「いいじゃねぇか、役得で」

「ツルギは他人事だね!?」

「他人事だから当たり前だろ。んじゃ、俺たちは先に行ってるから」

「ちょっ、ツルギ!?」

 

俺は愛の逢瀬の邪魔をするほど野暮ではない。たとえ見捨てるような形になっても、俺は空気を読む男だ。

後ろからハジメの悲鳴が聞こえたが、聞こえないふりをして歩く足を速めた。

 

「いつものことだけど、いいの?放っておいて」

「いつものことだから放っておくんだよ。こればっかりはハジメに頑張ってもらうしかない」

 

当然だろう、ハジメの問題なのだから。

俺たちはハジメを置いて行って、先に学校に向かうことにした。

それから他愛無い会話をしながら歩いていると、正門が見えてきた。

 

「あ、ツルギ先輩!おはようございます!」

 

すると、俺たちの後ろから声をかけられた。

振り返ると、栗色の髪が特徴的な少女が駆け足で近寄ってきた。

 

「おはよう、アンナ」

「おはよう、アンナちゃん」

 

話しかけてきたのは、俺の後輩であるアンナだ。

アンナは俺にアプローチを続けている2人のうちの1人・・・などと言われているが、一方的に慕われているだけだ。

アンナとは委員会の関係で知り合い、いろいろと世話を焼いたこともあって、俺のことを先輩として慕ってくれている。

ティアもそれをわかっているから、あまり邪険に扱うことはない。

ただ、「先輩!先輩!」まるで子犬のように俺に近づいてくるアンナにジト目を向けることはあるが。

 

「先輩は、今日はハジメ先輩と一緒ではないんですか?」

「俺だって、愛の逢瀬を邪魔するほど野暮じゃないってことだ」

「愛の逢瀬・・・すごい大人な響きです」

 

大人は大人でも、だいぶやらしい部分もあるけど。主にユエに。

 

「ツルギ先輩とティア先輩は、今日も仲良しですね」

「えぇ、そうね。今日もツルギの家で朝食を食べてきたわ」

「うわぁ!ティア先輩って通い妻なんですね!」

「アンナ、言い方」

「通い妻なんて、そんな・・・」

 

いや、あながち間違いではないけど。家でだって、もはやもう1人の娘みたいな感じの扱いだし。母さんだって、「ティアちゃんのお部屋を用意しましょうか?」とマジな口調で提案したこともあるし。そのときは、ティアが顔を真っ赤にしながら、まだ気持ちの整理がつかないからと断ったが。

ただ、そんなキラキラした目を向けられても、どんな反応をすればいいのかわからない。ティアは顔を赤くして照れてるし。

 

「では、私は日直の仕事があるので、これで失礼します」

「あぁ、またな」

「またね、アンナちゃん」

 

ここで、アンナとはいったん別れたが、今日は委員会でまた会うだろう。

そんなことを考えながら、昇降口で上履きに履き替える。

そして、教室に向かおうとすると、知った顔に会った。

 

「イズモ先生、おはようございます」

「おはようございます、イズモ先生」

「あぁ、おはよう。峯坂君、バグアーさん」

 

黄金色の髪とスーツがよく似合う数学教師、イズモ先生だ。

イズモ先生は俺の家の比較的近くに住んでおり、昔からよく相談に乗ってもらったりしていた。そのため、学校では教師と生徒という立場を保っているが、休日はティア共々遊びに行ったり勉強を見てもらったりしている。

このことから、アンナと同じように俺をティアと奪い合っているみたいな噂が流れたりしたが、ティアはむしろイズモ先生のことを信頼している。

そのイズモ先生は、紙の束を抱えていた。

 

「そのプリントはなんですか?」

「あぁ、これは今朝の配布物なんだが、多くなってしまってな」

「なら、一緒に運びましょうか?」

「いいのか?」

「普段からお世話になっているので、これくらいはかまいません。それに、1人で運ぶより3人で運ぶ方が楽でしょう」

「えぇ、私も構いません」

「そうか。なら、お言葉に甘えるとしよう」

 

俺とティアはイズモ先生からプリントを受け取り、教室へと運んだ。

 

「助かったよ。峯坂君、バグアーさん」

「これくらいはかまいませんよ」

「イズモ先生が良ければ、私たちを頼ってもいいですから」

「あぁ、そうさせてもらおう」

 

そう言って、俺たちは自分の教室へと向かった。

 

「あ、シズク!」

「ティア、峯坂君も、おはよう」

 

その道中で、2大女神の内のもう1人である八重樫と会った。

ティアは俺の指導で体術を習っているのだが、そのことから実家が道場である八重樫とも接点があり、可愛いもの好きという共通の趣味もあって、すぐに仲良くなった。

 

「今日は南雲君は一緒にいないのね」

「俺だって、愛の逢瀬を以下略」

「以下略って言われてもわからないわよ。まぁ、だいたいの想像はついたけど」

「これ言うの、もう3回目だからな。めんどくさくなった」

 

八重樫は生真面目な人間だが、冗談も通じる。白崎のこともあって、顔を合わせれば話をする程度には俺とも仲がいい。

その結果、変な誤解が生まれて義妹共に襲われることもあったが、些細なことだ。

今日もまた、平和な1日が始まる。

楽しそうに話すティアと八重樫を後ろから眺めながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

* * *

 

 

その後も、イズモ先生の数学や愛ちゃん先生の社会、ティオ先生の英語(ハジメの睨みによるひそかな興奮付き)を受けながらも学校が終わり、下校の時間になった。

俺とティアは当然のように下校を共にし、俺の家に入った。

 

「ただいま」

「お邪魔します」

「お帰り、ツルギ。いらっしゃい、ティアちゃん」

 

玄関に入ると、母さんが出迎えてくれた。

 

「今日のお出かけにね、おいしいケーキ屋さんでケーキを買ったから、一緒に食べましょう」

「お、いいね。ちなみに、どんなケーキ?」

「ロールケーキよ。クリームがおいしいって有名なの」

 

母さんは、甘いものが好きだ。そんな母さんにとって、クリームがおいしいロールケーキは気になったらしい。

 

「早く手を洗って、一緒に食べましょう」

「わかった」

「はい」

 

俺とティアは洗面所に向かって手を洗い、リビングに向かった。

テーブルには、すでに皿の上に切り分けられたロールケーキが乗っており、父さんと母さんも座っている。

 

「ほら、早く座りなさい」

「はいはい」

「うわぁ、おいしそうですね」

 

ティアは早くもロールケーキに目を輝かせている。

別にご飯というわけでもないが、いただきますと手を合わせてからフォークを刺し、ロールケーキを口の中に運んだ。

 

「ん~、おいしいです!」

「たしかに、クリームがしつこくなくて、いいな、これ」

「でしょう?」

「ははは。母さんはおいしいお菓子のお店を見つけるのがうまいからなぁ」

 

まるで女子高生のような特技だな、それ。

俺が内心呆れていると、母さんが俺に声をかけてきた。

 

「ねぇ、ツルギ」

「ん?なんだ?」

「今の暮らしは、幸せ?」

 

母さんの問い掛けに、俺は口の中のロールケーキを飲み込み、

 

「あぁ、幸せだよ」

 

そう言った。

 

「そう、それはよかったわ」

 

俺の返答に、母さんは嬉しそうに微笑む。

 

「あぁ、本当に幸せだ。だから・・・

 

 

 

 

 

 

 

このくそったれな世界は、もう終わりにしよう」

 

 

 

そう言って、俺は()()()()()()()()()()()()()()()を身に纏い、物干し竿を生成してティア、母さん、父さんをまとめて薙ぎ払った。

 

「・・・どうして?幸せじゃなかったの?」

 

切り裂かれた母さんは、血を流さずに、表情の見えない顔で問いかけてくる。

 

「ぶっちゃけ、最初からわかっていたんだよ。この世界が、都合のいい夢の世界だってのは」

 

最初に違和感を覚えたのは、母さんの声が聞こえた時だった。

俺は覚えている。母さんの肉を貫く感触と、徐々に下がっていった体温を。

母さんは俺が殺した。それがまぎれもない事実だ。今さら、生きているはずがない。

そして、母さんより先に死んだ父さんやしっくりこないティアの姿を見て、これは偽物だと気づいた。

それでも、俺がこの生活を満喫しているふりを見せたのは、

 

「やっぱ、体感したかったんだよ。母さんや父さんが生きている日常ってのをな。だが、やっぱ駄目だ。お前らは母さんでも父さんでもティアでもない、ただの紛い物だ。こんなちゃちな夢の世界じゃあ、俺の胸は満たされなかったよ」

 

父さんと母さんが生きている仮定の世界がどのようなものかはわかった。だが、俺の父さんと母さんはもういない。これは事実だ。この夢の世界は、ただのないものねだりでしかない。

それに、

 

「俺には、やらなきゃいけないことが山積みになってるんだ。ここで立ち止まっていられねぇよ」

 

そう言うと、母さんは満足げに微笑み、先ほどとは違う声で語りかけてきた。

 

「・・・合格。甘く優しいだけのものに価値はない。与えられるだけじゃ意味がない。たとえ辛くとも苦しくとも、現実で積み重ね紡いだものこそが君を幸せにするんだ。忘れないでね」

 

その声は、誰のものなのかはわからなかったが、とてもやさしいものだった。

 

「そんなことは言われなくてもわかっているが・・・せっかくの忠告だ。参考にさせてもらおう」

 

その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。




『あれ?妾の出番、ほとんどなし?』
「変態に出番が必要なのか?」
『んぅ!ハァハァ・・・』

夢の世界でもやはり変態なティオの図。

『あれ?王女なのに出番なし!?アンナはでてきたのに!?』
「だって、あまり印象に残ってないし」
『ぐすっ、私、王女なのにぃ・・・』

~~~~~~~~~~~

気合を入れると言ったわりには、思ったよりさっぱりした内容になりました。
まぁ、ツルギは夢だとわかったうえで過ごしていましたからね、むしろ違和感ばっかりの状態で過ごしていたことでしょう。
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