未来戦姫スレイブニル_変わる未来へ   作:TAKUMIN_T

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不定期更新。

すっごくマイナーなエロゲーを原作に、再構成して色々やってく。オープニング曲はぜひ聴いて。

やる気が続けばいろいろ行けるかも。
終わりなんて見えてません。


001.01-00:夢

 

 

 

 

 太陽系統一歴元年

 Solar system unified history first year

 

 

 

 

 地球の衛星軌道上をひと続きに繋がり取り囲む、リング状の宇宙ステーション(Spase stasion)

 

 名前を〈ユグドラシル〉。

 

 北欧神話に記述される、世界を体現する仮想の木。別の名を、〈世界樹(World tree)〉〈宇宙樹〉と呼ぶ。

 かつて世界がそれぞれ主義主張を唱えあい、太陽系を舞台に戦争を繰り広げていた全ての惑星国家(プラネットステーツ)が協力し合い築き上げた、希望の象徴(その全て)

 

 その中にある太陽系星間連邦議事堂のテラスに、彼は立っていた。

 

 窓から覗く眼下――視界に入る全て、見渡す限りの虚無、星の海が広がっている。

 一点を見つめると、煌く星が少しずつズレ、目を追わせることになる。広大というだけでは言葉が足らない、無限の空間に、赤い戦艦が視界の端に入る。航行中の船の眺めていると。

 

 ――歓声。

 

「そうか……、これは俺の……太陽系星間連邦〝初代大統領〟就任を祝う……」

 この日は、惑星国家(プラネットステーツ)同士が手を取り合い、その全てを統括する連邦国家の誕生を祝う式典が開催されている。

 テラスの眼下には、広場に集まった数えきれない人々、中に浮かぶホログラムモニター、到るところから、割れんばかりの拍手と喝采が空間を揺らす。

 この光景に、彼は目を瞑った。

 

 ここに至るまでの苦難の道のりが、走馬灯のように脳裏に蘇る。

 

 目を開け――って。

(ちょっと待て……)

 ()は思いとどまる。

(いや、そんな訳あるか……だって今は……)

 

 ――2013年の4月……。

 

(都内に住む単なる学生のハズ……だろ……)

 そのはずなのに、なぜ大統領?

 

 だったら、これは夢――と、決めつけられない。あまりにも現実味がありすぎるのだ。

 (げん)(まぼろし)か、果たしてどちらなのか――?

 そんな思考に軽いめまいを感じ、足元がぐらりと揺れる。それを見た周囲の男達が、彼に慌てて駆け寄ろうとする。

 だが、彼は護衛を手で制す。

「……心配ない……ちょっと立ちくらみがしただけだ……」

 そういったとき、(学生)は彼らが(大統領)の護衛だと気付く。

 

 そう、彼――太陽系星間連邦初代大統領――だ。

 

(――ちょっと疲れてるんだ……変なこと考えるのも、そのせいだろう)

 そう思いながら、制した手をさげ、彼はテラスの前方へと歩み出た。

 ――就任スピーチを待ち望んでいる。

 持っている全ての思いを、人々に伝えなくてはならない。

 

 統一は果たした。

 

 だが、問題は山積み。

 全ての(いさか)いを無くし、

 全ての人々が不自由なく、幸せに、

 

 ――暮らす。世界。

 

 そんなの無理だ。心なき人々からそう呆れ、失笑されて一蹴されるのは分かっている。

 だが、そんな夢物語でも作ってみせる。絶対に諦めない。たとえ本当に実現できなくとも……。

 

 ――笑顔が見たい。

 

 マイクの前にたどり着き、場を一瞥。言葉を発しようとした。

 

 

 〈――ずっと。守ってみせます!〉

 

 

 ――!

 「―aG―!」

 乾いた銃声が鳴り響いた。

 気付いたときには、左胸に焼けるような痛み。

 民衆の歓声は、静寂のあとに悲鳴へ一転し、視界が揺らいだ。

 

 (撃たれた……のか?)

 

 見下ろすと、噴き出す鮮血が傷口を押さえようとした手を真っ赤に染めていた。

 急激に失われていく血が、彼の意識を奪っていく。体が倒れ――。

 

 ――ることはなく。そっと、抱きとめられる。

 

 

 ――これは、遠い未来に起きる運命の出来事。そしてこれから、あなたが直面する――

 

 ――現実。

 

 

 

 

 ▷▷▷

 

 

 

 

 ピピピ!

「uruaAああ――!?」

 

 ピピピ!

 

「……」

 うめき声を上げ、起きた。息が荒く、額には汗玉が浮かんでいる。しかし、彼の様子とは無関係と目覚まし時計が口煩く鳴り響いている。

「夢……だったのか?」

 頭に手を当て、夢を整理しようとする。

 だが、夢とは信じがたい。

 あまりにも現実味帯びていた。あの臨場感が夢と思えなかった。あのときの自分の思考は。あのときのあの考えは。あのときの、あのときの、あのときの――痛みは何だった――。

 

「――んぐっ!?」

 

 胸に痛み。

 

 あの夢と、撃たれた場所と――同じ位置。

 

 直視できない。もし本当に撃たれていたら――。

 彼は目を瞑るしかなかった。今までに経験したことのない恐怖。本当に死ぬかもしれない、若者が経験し得ない死への恐怖(認識)だ。

 

「――――――――」

 

 だが、いつまで経っても意識がなくなることはない。

「ぁれ……」

 違和感を覚え、左胸を押さえる手を眼前に持っていく。なんてことはない、ほんのりと赤みがかっているだけで、いつもと変わらない自分自身の手だ。

「は……ぁ――」

 あの夢が現実でなかったことに安堵して肩を落とし、大きく息を吐いた。

「なんだったんだよ……アレ……」

 しかし、彼の脳裏に焼き付かせるには十分だった。

 

 だが。

「――――アレ……」

 彼は引っかかりを感じた。

「……まも…る…?」

 

 

 彼――如月カタナは、この記憶が未来を壊したことを、今は知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 SLAVENIL_To the changing future

 未来戦姫スレイプニル_変わる未来へ

 

 

 

 

 




)2013年4月
原作では2013年7月

)夢
原作ではヒロインの一人に膝枕され、夢に挟み込まれて見せられていた。
顔にたわわを乗っけられて。


2018.10.11
英語表記の修正

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