東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#11 私がいるから

董香との仲が戻った翌日、絋輝は制服を着て椅子に座りながら勉強机に置いてある香水の瓶を眺めていた。

それは田中が別れる際に連絡先と一緒に渡したものだった。

 

 

ーーーーー

懐から取り出した瓶を絋輝に渡す。

 

「これは?」

 

「喰種から身を守るための道具だ。どうやら俺たちの体臭はアイツらで言うところの美味しそうな匂いらしい。で、それを消すための魔法の香水。1日2回首にかけろ、それだけで十分だ。………それとくれぐれもここ(あんていく)以外の喰種に亜人だってことをバレるなよ」

 

田中は真剣な眼差しで絋輝を見る。

 

「え?」

 

「バレたらお前だけじゃなく、お前の家族や友達も狙われるかもしれないからな」

 

その一言にゾッとする。

董香や吉桐、家族が傷つくのを想像しただけで嫌だった。

 

 

ーーーーー

絋輝は田中の注意を思い出しながら、香水を首元に2回降りかける。

今日からまた学校に行くが亜人であることをバラさずに生活できるのかが不安だった。

身支度を整えて、リビングに降りると家族たちが食事を取っていた。

 

「おはよう」

 

「おはよう、早く食べなさいよ。もうみんな食べ終わってるんだから」

 

「うん。……父さんは?」

 

「もう出かける準備をしてるわよ」

 

「もう?」

 

篠原は現在現役の捜査官を辞め、後進を育てるためにアカデミーで教官をしている。

そのため朝はややゆっくりで大丈夫なのだが、今日に限っては誰よりも支度が早かった。

リビングにスーツを着た篠原が慌てた様子で入ってくる。

 

「母さん。昨日の書類はどこだったかな?」

 

「書斎の机の二番目の棚じゃないですか?」

 

「あっ、そうか」

 

忙しそうに支度をする篠原に絋輝は話しかける。

 

「おはよう、父さん。忙しそうだね」

 

「おはよう。今日から捜査官に復帰することになってね」

 

篠原のその言葉に絋輝は疑問に思った。

篠原は結婚して、子供が出来てからは家族の心配もあり現場を辞めたはずだ。

 

「復帰?なんで?」

 

「うーん、説明するとややこしいんだが……ちょっと問題児がいてね。僕が組まないといけないんだよ」

 

篠原は少し困った様子だが、そこまで嫌そうではなさそうだった。

 

「ふーん……怪我はしないようにしてよ」

 

「ハハッ、捜査官にそれは少し厳しいかもな」

 

篠原が出かけた後、絋輝も学校に向かう途中で董香が待っていた。

 

「おはよ」

 

「うん、おはよう」

 

董香は周りを見て、人がいないことを確認しながら絋輝に近づき、絋輝の首元に顔を寄せた。

 

「うおっ、なんだよ?」

 

「……うん、昨日の匂いはしない」

 

急に顔を寄せられた絋輝は間近に迫った董香の顔に胸を高鳴らせる。

董香は絋輝の首元の匂いを嗅ぎ、そう言った。

 

「に、匂いってそんな匂っていたか?」

 

絋輝は少し緊張しながら絋輝は質問する。

 

「そんな嫌な匂いじゃなくて……なんて言うか、こう……いい匂いなんだよね。懐かしい感じっていうか」

 

「ふーん……」

 

絋輝は自分の匂いを嗅ぐがわからない。

 

「さっ、早く行こう。依子とも久し振りに会いたいし。あと新田が依子に変なこと教えてたらボコらないと」

 

「優しくしてやれよ」

 

久し振りに友人達に会えるのが嬉しいのかいつもよりテンションが高めの董香に絋輝は若干苦笑いしながら注意した。

2人で学校への道を歩いていると董香は絋輝が若干緊張しているのがわかった。

 

「どうしたの?緊張してさ」

 

「緊張なんかしてないよ」

 

「嘘でしょ」

 

董香に見破られた絋輝はバツが悪そうな顔になる。

 

「………不安なんだよ。今まで通りの生活が出来るかどうか」

 

家族には仮とはいえ受け入れられ、董香のことは受け入れたがこれからは亜人であり、そのことを隠しながら生きていかないといけない。

もしバレたら即終わりだ。

そのことを考えると絋輝は不安だったのだ。

不安そうにする絋輝の手を董香が握る。

 

「大丈夫、私がいるから」

 

優しく微笑みながら絋輝を見つめる。

絋輝はそれだけで不安と緊張が解れた。

董香の手を強く、しかし優しく握る。

その時、見つめ合う2人に声をかける者がいた。

 

「あっー!2人ともいたー!」

 

「小坂?」

 

「よ、依子!?」

 

声を挙げたのは依子だった。

依子は2人に怒った様子で詰め寄る。

 

「董香ちゃん!何で連絡してくれなかったの!?心配したんだからね!」

 

「ご、ごめんね依子」

 

「篠原くんも!どうして学校に来なかったの!?」

 

「いや、ちょっと体調が……」

 

「昨日だって新田くんとは会って私とは会わなかったし!」

 

そこに吉桐もやってきた。

 

「そう怒るなって小坂。こいつらも色々と事情があったんだろ」

 

依子を宥める吉桐のおかげか、落ち着いて悲しそうな表情をする。

 

「心配したんだからね……」

 

「ごめん」

 

「悪い」

 

申し訳なさそうに謝る2人。

気まずい空気になる3人だが、吉桐はそれを見かね話を変えた。

 

「まぁまぁ、コイツらが体調以外で休むとしたら喧嘩して仲が悪くなったからじゃない?それも解決して今は元に戻ったみたいだし?」

 

吉桐は手を離さない2人を見る。

 

「て、ことは昨夜は盛り上がったのか?」

 

「盛り上がる?」

 

「なっ!?」

 

「はぁ……」

 

爽やかな顔で下ネタを言う吉桐に依子は意味がわからなかったが、董香はすぐに顔を赤くして絋輝はため息を吐いた。

 

「いやー、今回は喧嘩が長引いたから相当熱く燃え上がっ……」

 

吉桐が言い切る前に董香は近づき、吉桐の太ももを蹴り上げ、心地いい肉を叩く音が響いた。

 

「イッターーー!!?」

 

「お前は!何!言ってんのよ!?」

 

「ねぇ、篠原くん。盛り上がるって?」

 

「え?あー…まぁ、うん」

 

険悪な空気は無くなり、いつもの感じに戻ったことに絋輝は嬉しく思い顔が綻ぶ。

 

「やっぱり、いいな」

 

この日常を壊さないためにも絶対に自分の正体を隠しきると改めて胸に誓い、今だに吉桐に暴力を振るおうとする董香を止めるために3人の中に入っていった。

 

 

ーーーーー

東京の地下に広がるのは地下街、地下鉄ともう一つある。

それは過去の喰種達が作り上げた広大な迷宮である24区だ。

その一部で肉を貪る音が響いていた。

その場所には夥しい量の死体が転がっており、男女関係なく死体があった。

 

「……ハァッ、あのガキィ……!ふざけやがって……!!」

 

音の発生源は先日絋輝に撃退された女狂いだった。

彼は自分の食事兼情事を邪魔されるのがとてつもなく嫌いだった。

過去に情事の真っ最中に邪魔してきた女捜査官を凄惨な方法で殺した。

今回も邪魔されそれだけでも我慢できないが、その上圧倒されてしまった。

反撃しようにもあの黒い幽霊に攻撃されてできた傷が深刻で逃げるしかなかった。

女狂いは絋輝に復讐を誓い、手当たり次第に人間、喰種を喰い散らかし回復に努めた。

傷を癒しながら、復讐心を募らせて。

 

「次こそ殺してあげるよ………!!」

 

口から血肉を滴らせながら、笑みを浮かべた。

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