東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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※グロ注意


#13 私が単純に君を気に入ったからだよ

申し訳なさそうに挨拶してくる高槻に絋輝は目が点になる。

高槻は塩野に責められながら絋輝の前に座る。

 

「ごめんね〜遅れちゃって。それと……また会ったね、少年」

 

「やっぱりそうですよね。美術館で会った」

 

高槻は絋輝が董香と美術館にデートで行った時に出会った女性だった。

 

「知り合いなんですか?」

 

「この前会ったばかりだよ。では塩野君、後は任せた。私は少年と絵の打ち合わせをしてくるよ」

 

「へ……?はぁっ!?」

 

高槻は驚く塩野を無視して、絋輝の手を取る。

 

「え?」

 

「それでは少年、お茶と洒落込もうじゃないか!」

 

「ちょ、ちょっと先生!?先生ー!!」

 

塩野の叫びは無残にも届かなかった。

届いたとしても高槻は無視するが。

 

 

ーーーーー

翔英出版社の1階にある喫茶店は社員のランチを取れるように食事のメニューがしっかりとしており、中でも店長が甘党なのかデザートの種類は豊富だった。

今、絋輝の前にデコレーションがふんだんにされたパフェが置かれており、突然の事態についていけなかった。

 

「少年はコーヒーだけでいいのかい?」

 

「え……あっ、はい」

 

「遠慮はしなくていいんだよ?これからは仕事仲間なんだから」

 

高槻はパフェを食べながらそう言うが、突然現れ、強引にお茶に誘われては遠慮どころか警戒してしまう。

 

「あの……何で俺を……」

 

「君は甘いのが苦手なのかな?じゃあ食事でも取るといいよ。ここのオムレツは中々いけるんだよ」

 

絋輝が質問しようとしても高槻が間髪入れず話を入れてくるため、聞きたいことが聞けない。

このままでは高槻に流されてしまうと思った絋輝は少し大声を上げた。

 

「あの!何で俺を選んだんですか?」

 

「ん?単純に君の絵が気に入ったからだよ?」

 

「俺より絵が上手い人は何人もいます。キャリアも長いし、そっちの方が良いに決まってる」

 

絋輝は高槻が自分の絵を選んだことがどうしても分からなかった。

絋輝がバイトとして所属しているTRAアートには某有名な美大出身の人が何人かはいる。

その人達の絵を見た時に素直に上手いなと、絋輝は思ったほどだ。

しかし、高槻は何を考えているのかわからない笑みを浮かべながら、その質問に答える。

 

「『上手い』か……それはあまり考えずに選んだのだよ。いくつかの絵が参考に置かれてね。その中で君の絵がとても『面白かった』」

 

「『面白かった』……?」

 

「そう、どこかチグハグな絵を無理矢理一つにしているようなところがね」

 

「………」

 

それを言われた絋輝は内心ドキッとした。

自分が絵を描いている時にいつも思っていることを言われたからだ。

高槻は絋輝にパフェを掬ったスプーンを向ける。

 

「それと、私が単純に君を気に入ったからだよ」

 

笑顔で隠しもせずにそう言う高槻に絋輝は少し照れてしまった。

それを可笑しそうに見る高槻は絋輝に差し出したスプーンをふらふらと揺らす。

食べろ、ということなのか?、と思った絋輝は戸惑いながら差し出されたパフェを身を乗り出して食べた。

クリームに様々なソース、チョコなどが混ぜられた複雑な味はまるで自分の心を表しているかのようだった。

高槻はスプーンを絋輝の口から引き抜き、パフェを掬ってからそのスプーンを口に含んだ。

じっくりと、2つの味を確かめながら。

 

「ふふっ」

 

その行動に絋輝は気味が悪いと思えず、少し胸が高鳴った。

 

 

ーーーーー

その後、打ち合わせは終わり、水戸の運転で共に本社に帰る所だった。

 

「それでー?高槻先生からはどんな要望を聞かれたの?」

 

「それが……『君が本を読んで、それで思い浮かんだ絵でいい』って言われました」

 

「そうなの!?は〜…天才は何考えてんだかわかんないわね」

 

まさかの要望に水戸は驚いてしまう。

 

「でも、これで仕事は完了したも同然だわ!本は貰ったんでしょう?」

 

絋輝はそう言われてまだ表紙が何も書かれていない本を手に取る。

そこには流暢な字で『黒羊の卵』と書かれてあった。

 

「でも、いいんですかね。まだ発表すらされていない本を貰っちゃって」

 

「いいのよ!絵にはそれが必要なんだから。それより頼むわよ。仕事の成功は篠原君にかかっているんだからね!」

 

「わかってますよ」

 

色々と疑問に思うことはあるが、兎も角任された仕事を頑張ろうと意気込む絋輝がふと水戸の方を向くと車窓の外から何かが迫って来ているのが見えた。

 

その何かは車窓を突き破り、車に穴を開けて架線の下に引きずり落とした。

落ちた車は派手にクラッシュ音を鳴らし、パーツを撒き散らしながらひっくり返った状態になった。

煙を上げる車から絋輝は頭から血を少し流しながら、這いずって出てくる。

 

「うぅっ……はぁ、はぁ」

 

大きく呼吸をする絋輝は痛む頭を我慢しながら、何が起こったか考える。

 

(確か、何かが車にぶつかって……)

 

あれはどこかで見覚えがあると思った瞬間、ひっくり返った車の上に何かが飛び降りてきた。

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「お前は……?っ!?」

 

考えがまとまらない頭で突然現れた男の顔を見るとすぐに思い出した。

董香を襲い、自分を殺した張本人。

 

「女狂い……!?」

 

「あっ、覚えていてくれたんだ。覚えてなかったら殺そうと思ったのに」

 

絋輝は落ちたときに足を怪我したのか片足を引きずりながら立ち上がる。

芳村たちから女狂いのことは聞いていた。

凶悪な喰種で執拗に女性を狙うサイコパス。

復讐に来る可能性があるのはわかっていた。

夜は出歩かないようにし、外出する時もあんていくのメンバーが護衛についてくれていた。

まさかこんな真昼間に襲われるとは思わなかったのだ。

 

「君のせいでさぁ……僕の楽しみが邪魔されたんだよ。どうしてくれるんだい?」

 

「お前は董香を殺そうとしたんだろうが」

 

絋輝は恐怖で震える体を我慢して女狂いに向かって言う。

どうにか逃げようと必死に考える。

 

「だから、それが楽しみなんだよぉ……何でわかってくれないかなぁ……何でわかってくれないかなぁっ!!!?」

 

「っ!?」

 

突然大声を上げる女狂いに驚く絋輝。

その時、車内から僅かに物音が聞こえた。

目を向けると水戸の手が僅かに動いた。

 

(生きてる…!?)

 

女狂いから逃げるのを考えるのをやめ、どうにかして水戸を助け出す方法を考える。

その間も女狂いは話を続けていた。

 

「楽しみを邪魔した君に復讐しようと思ってね。君をただ殺すのでは面白くない。だから……」

 

女狂いは赫子を出し、絋輝は襲ってくるかと身構えるが赫子は絋輝に向かわず下にいた水戸を引っ張り出す。

引っ張り出された水戸を自分の方に向けさせた。

 

「お前の大切なモノを壊していくことにしたよ」

 

「待て!」

 

何をするかわかってしまった絋輝は声を上げて止めようとするが女狂いはそれを無視して、水戸に口づけした。

女狂いの行動が予想と違い、戸惑う絋輝だが女狂いの口づけはより激しくなっていく。

舌を入れているのか、まるで貪るような激しく醜い口づけをする女狂いに嫌悪感を催す絋輝を見て、女狂いはわざとらしく笑みを浮かべた。

その笑みに嫌な感じ覚えた絋輝の予感は合っていた。

女狂いは一度口を離し、勢いをつけると再び深く口に食いついた。

今度は口づけ目的ではなく、噛み付くように。

そして女狂いはブチブチと肉が千切れる嫌な音をさせながら水戸の顔から離れる。

そして水戸の顔の肉を勢い良く剥がした。

 

溢れるように出る血、剥き出しになる歯茎、肉の断面。

それを見てしまった絋輝は腹からこみ上げた物を吐いてしまう。

 

「オエェェェッ……!!」

 

「ハハハッ!」

 

その姿を見た女狂いは高らかに笑い、水戸の首をちぎり取り、絋輝の足元に投げ捨てた。

足元に転がってきた死んだ水戸の目と合ってしまい、絋輝は恐怖で尻餅をつく。

 

「ヒッ!?」

 

「これから君の大切な人たちをこうして殺していくよ。友人、家族、そして喰種の彼女とかね」

 

口を血まみれながら優しく語りかける女狂いの言葉に友人、家族、そして董香の顔が思い浮かぶ。

それが全てこいつに壊される。

そう考えた瞬間、絋輝の感情は恐怖から怒りに変わった。

 

「そんなことやってみろ……!お前を許さないぞ……!」

 

「非力な人間に何ができるんだい?あぁ……人間じゃなかったっけ?」

 

絋輝は震える足に鞭を打ち、立ち上がる。

それを見た女狂いは嫌らしい笑みを浮かべ、赫子を振るう。

赫子は絋輝の足元を穿ち、衝撃波で絋輝を吹き飛ばす。

それを何度も繰り返し、まるで遊んでいるようだ。

 

「ほらほら!さっさとあの黒いのを出しなよ!!」

 

女狂いの狙いは幽霊を出した絋輝に勝つことだった。

完全に自分を上だと分からせて勝つことで自分の怒りが収まると思っていた。

 

(ンなこと……っ!言ったって!)

 

絋輝は転がりながらも女狂いの攻撃を避けながら、悪態をつく。

田中との戦いでは出せたが、あれ以来絋輝は自分から出てくる得体の知れない幽霊が怖くなり、出す練習などは一切してなかった。

一向に出す気配がない絋輝に女狂いは苛立ちを覚え始めた。

 

「もう、いいや。一回死ね」

 

女狂いは赫子を絋輝に向けた。

突き刺そうと迫ってくる赫子を見て、絋輝は死を覚悟する。

しかし、迫ってきた赫子に赤い矢のような物が突き刺さり、爆発を起こした。

 

「いぎぃっ!?」

 

「え、はっ?なにが……?」

 

爆発により赫子が吹き飛ばされ痛みに悶える女狂いに絋輝は何が起こったかわからなかった。

すると、呆然とする絋輝を守るように立つ影が現れた。

 

「漸く会えたな……!女狂い……!」

 

それは恨みの表情を浮かべた荒木が手に持つアタッシュケースを握り締め、立っていた。

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