東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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東京喰種が自分の中で再燃したのでずっと考えていたのを書いちゃいました。


#1 これが最後の希望だ

日本で最も人が行き交う都市、東京。

その東京建ち並ぶ摩天楼の一つの屋上で、白衣を来た男が曇天を眺めながら1人口を開く。

 

「………………これが最後の希望だ」

 

その言葉はビルに吹く風に消えていった。

 

 

東京23区の1つ、20区にある高校、清巳高等学校の誰もいない美術室で1人の少年が何も描かれていない白い紙と向きあって、ただじっと見つめていた。

彼は名前は篠原 絋輝(しのはら こうき)。

清巳高等学校の2年生だが、こうやって1人で美術部でもないのに美術室に入り浸っているので一部から変人と言われているが、彼は知らない。

 

「…………」

 

すると彼の背後の入り口が開き、1人の女子生徒がその少年を見つけ、背後から近づき声をかけた。

 

「また紙と睨めっこしてんの?」

 

彼女は霧島 董香(きりしま とうか)、絋輝とは同じクラスメイトであり、恋人でもある。

 

「トーカ……いいアイデアが出ないんだよ」

 

「美術部でもないのによくやるね」

 

「趣味だからな」

 

絋輝の趣味はふと頭に思い浮かんだことを描くことだ。

よく授業中でもノートに色々と描いている。

そのせいでよく教師に注意され、クラスメイトからはおかしな奴だと認識されている。

まだ納得がいかないのか唸っている絋輝だが、トーカは帰るように促す。

 

「何もアイデア出ないなら帰ろうよ。どうせ1人で帰る予定だったんでしょ?」

 

トーカの小馬鹿にした言い方に絋輝は少しカチンときて言い返す。

 

「そんなことないぞ。俺にだってお前たち以外に友達の1人や2人……」

 

「本当にいんの?」

 

「………いない」

 

トーカの言葉に不貞腐れたように返す絋輝にトーカは笑いそうになったが、我慢して絋輝に声をかけた。

 

「一緒に帰ろ?」

 

「……おう」

 

絋輝は道具を片付けて、董香と一緒に美術室を出て行くと入り口には2人の友達が立って待っていた。

優しそうな小坂 依子(こさか よりこ)と二枚目な新田 吉桐(にった よしきり)だ。

 

「悪い、待たせたな」

 

「いいよ。新田くんと話をしていたし」

 

「新田、依子に変なこと言ってない?」

 

董香が少しドスをきかせて新田に聞くと吉桐は笑いながら答えた。

 

「ははは、霧島……僕がそんなに変な奴に見えるかい?軽くY談をしてただけ……」

 

「私がいない間に依子に何話してんだっ!!」

 

「太ももが痛いっ!?」

 

董香の強烈な蹴りが吉桐の太ももに炸裂し、体を仰け反らせる。

吉桐はその甘いフェイスで当初は女子から最も人気があったのだが、ただどうしようもなくエロいことが好きで、平気でそう言った話をするので、所詮『残念なイケメン』なのだ。

ただ何故か絋輝とは馬が合い、仲良くなり、それから董香と依子とも仲良くなっていった。

するとそれを見ていた依子がクスッ、と笑った。

 

「どーしたんだよ?」

 

「ううん。篠原くんは絵を描いているかもしれないから本当は私たちだけで帰ろうとしてたんだけど、トーカちゃんが一緒に帰りたいって言って迎えに言ったのを思い出してね」

 

「ちょっ!依子!それは言わない……って違う!絋輝!そんなこと言ってないから!!」

 

「本当のことじゃないか…………」

 

「お前は黙ってろ!」

 

「うぐっ!?」

 

依子の言葉に董香は顔を赤くして誤魔化すが、吉桐が余計なことを言い、誤魔化してさらに吉桐に追い打ちをかける。

 

「なんだよトーカー。一緒に帰りたいならそう言えよなぁ。しょうがないなぁ」

 

さっきは董香に言い負かされたからか、絋輝はニヤニヤしながら董香の頭を撫でる。

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

絋輝に知られたくなかったことを知られた董香は顔を赤くして、誤魔化すように拳を絋輝の腹に突き刺した。

 

「おごぉっ!?」

 

鳩尾にクリーンヒットした絋輝は吉桐と同じく、蹲ってしまう。

 

「行こう依子!」

 

「えっ!?トーカちゃん!?」

 

董香は2人を置き去りに依子とともに帰ってしまった。

 

「君の彼女……ドSだな。やっぱりあっちの方もそうなの?」

 

「お前実は余裕だろ……」

 

 

ーーーーー

結局4人で帰ることになり、談笑しながら帰っていると4人の先に人だかりができていた。

興味本位で近づくと、そこには多くの警察官と野次馬がたむろっていた。

 

「なんだろう?」

 

「事故か?」

 

すると4人の背後から声をかけてきた。

 

「すみません。少しいいですか?」

 

振り返るとそこには白のコートをきて、アタッシュケースを持った20代の女性が立っていた。

 

「君たちここら辺の学生さん?」

 

「そうですけど貴女は?」

 

「私は喰種捜査官の波島 一沙(なみしま かずさ)です。少しお話を聞いてもいいかしら?」

 

「はい、いいです……っと」

 

絋輝が一歩前に出て、波島と話そうとしたら董香が絋輝の手を不安そうに握っていた。

 

「トーカ?」

 

「大丈夫よ。別に貴方達を疑ってるわけじゃなくてここら辺で怪しい人を見たか聞きたいだけなの」

 

波島は怖がらせたと思ったのか、誤解を解くように言う。

すると人ごみの中から波島を呼ぶ声が響いた。

 

「波島ァーーッ!!ちょっと来いよ!!」

 

「はい!それじゃあごめんね」

 

呼ばれた彼女は絋輝たちに詫びを入れて人混みに向かっていった。

 

「荒木さん、どうしたんですか?」

 

波島を呼んだ男は荒木 和人。無造作に伸ばされた髪と整えていない髭から、どこか荒々しさを感じる風体だ。

その荒木が指差す先には荒く削れた壁があった。

 

「どう思う?」

 

「……赫子はおそらく鱗赫。それと女性にもの凄く執着している」

 

波島はそう言って奥の方に目をやる。

そこは路地裏だが辺り一面に血と肉片らしきものが散らばっていて、悲惨なものだった。

 

「学生証がなければ女性だってわからないくらい遺体がぐちゃぐちゃになってましたからね。それに左手だけが綺麗に取られていた。荒木さんこれは……」

 

「あぁ、『女狂い』だな」

 

荒木は立ち上がり、煙草を懐から取り出し火を付けた。

 

「ようやく尻尾を掴んだんだ。逃がさねえぞ……行くぞ波島」

 

「はい!」

 

2人は喰種対策局、通称〈CCG〉の20区支部に戻って行った。

 

 

ーーーーー

あれから絋輝たち4人は帰路についたが、董香が少し元気が無くなったのかあまり会話に参加しなくなってしまった。

心配する絋輝たちだが、董香は何ともないと言うだけだった。

すると突然依子が手を叩き、わざとらしい声を上げた。

 

「あーそういえば私買い物があったんだ!新田君付き合ってくれない?」

 

「そうかーそれじゃあ仕方ないなー。絋輝は霧島を送ってやりなよ。彼氏なんだからさー」

 

そう矢継ぎ早に言った2人はさっさとどこかに行ってしまった。

 

「ったく……あいつら」

 

呆れたようにため息をつく絋輝は振り返り、何が起きたのか分からず呆けている董香に声をかける。

 

「……どっかに座るか」

 

そうして2人はどこかの公園のブランコに並んで座った。

 

「さっきからどうしたんだ?具合が悪くなったか?」

 

「そんなんじゃないよ……」

 

絋輝の心配する声も董香は元気がない声で答える。

董香はさっきの事件現場のとき、近づいた瞬間に濃厚な血の匂いから喰種の仕業だとわかった。

何故なら自分も喰種だからだ。

董香は喰種だが、彼女がお世話になっている人のおかげで人として学校に通っている。

近づいたときは当たり障りのないことを言っておけば大丈夫だと思ったが、その時喰種を駆逐する喰種捜査官に話しかけられ、バレないように内心で警戒した。

しかし、自分以外の3人は協力しようとし、途端に不安になってしまった。

 

『やはり自分は喰種……彼ら人間とは違う』

 

そう思ってしまった董香は1人になってしまうと考えてしまい、絋輝の手を握ったのだ。

離れたくない、1人にしないでほしい。

そんな恐怖心と不安が彼女の心を埋め尽くした。

 

「絋輝はさ……」

 

「うん?」

 

「もし私が何者でも……味方でいてくれる?」

 

董香は不安そうな顔で絋輝の顔を見つめる。

絋輝には董香の言っている意味がよく分からなかったが、彼女が不安であることはわかった。

 

「ごめん。なんでもない」

 

董香は顔をそらしたが、絋輝が立ち上がり董香の前に立ち、両手で董香の頬を掴んで上を向けさせ、キスをした。

 

「んっ!?………んぅ」

 

最初は突然のキスに驚いた董香だが、徐々に落ち着き、絋輝のキスに身を任せた。

次第に不安だった気持ちも薄れていく。

数秒経ちキスをやめて、絋輝はまっすぐ董香の目を見る。

 

「俺は董香が何者でも味方だ。俺は董香のことが好きなんだからな」

 

短く、何も飾っていない言葉だが董香にとってはこれほど嬉しい言葉はない。

絋輝は流石に恥ずかしかったのか顔を晒すと、今度は董香が立ち上がり、絋輝に一瞬だがキスをして抱きしめた。

 

「ありがと………」

 

さっきとは違い、安心した声を出した董香に絋輝も安心した。

すると少し離れたところから声が聞こえてくる。

 

「いやねー最近の若い者は」

 

「まだ夕方だっていうのに……」

 

どこかの奥様方が抱きしめ合っている絋輝たちをジト目で見て、何か小声で話しているのが絋輝には見えた。

居たたまれなくなり、董香を体から離した。

 

「じゃ、じゃあ帰ろうか」

 

そう言って董香の手を取って帰ろうとするが、董香はその場から動かない。

どうしたと振り返ってみると董香は顔を赤くして、目は妖艶に輝いていた。

 

「今日はバイトも無いし……絢都も帰ってこない……だから、ね」

 

董香のその表情に絋輝の胸も高鳴ってしまう。

 

「お、おう!」

 

2人は仲良く手を繋いで董香の家に向かった。

 

 

ーーーーー

思えばこの時だったのかもしれない。

俺の決められた運命が動き出したのは……

 

 

東京喰種ーGhostー


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