東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#20 俺は亜人です

昨夜に携帯で董香に会って話したいと連絡しようとしたが、連絡が取れずにいた。

とりあえずラインでそのことを伝えたがまだ既読がつかない。

雨が打ち付けられる窓を見ながら絋輝は董香のことで少し不安になる。

少し気落ちしながら絋輝は電車でウタの店を目指した。

 

店につき、ウタはできたマスクを見せてくれた。

 

「はい、これが君のマスクだよ」

 

渡されたマスクは黒一色の近未来的な形をしたマスクで口から目まで隠れるような物だった。

 

「君の幽霊を見てこういう風なのがいいのかなって思ったんだ。黒一色にしたのもそれで。被ってみてくれないかな?見てみたいんだ」

 

ウタの要望通りに被ってみたら黒一色のせいか、暗いところで見ると顔が無いように見える。

 

「うん。似合ってるよ」

 

「なんか……不気味だな」

 

ウタは予想以上に似合っているからなのか上機嫌で、逆に絋輝はその不気味さに若干引いてしまっている。

しかし、何故だか殺伐としているマスクをつけているにも関わらず、絋輝はどこか強くなったように感じていた。

 

 

ーーーーー

マスクを受け取った絋輝は董香と話すためにあんていくに戻ろうとしていた。

雨が激しくなる中、スマホを確認しても未だに返事がないことにまた少し気落ちしながら新宿駅前の交差点に目を向けると人混みのの向こうに何かが立っているのが見えた。

 

「おい、なんだアレ?」

 

「なんかウネウネしてない?キモーい!」

 

絋輝は信号待ちの人たちの後ろに立っていたためによく見えなかったが、前の方ではざわめき立っていた。

それはいくつもの蛇が唸りながら寄り集まった何かだった。

大きさは3mほどで突然現れたのが不思議だった。

その謎のモノにバスが迫ってきていた。

激しい雨のせいでバスの運転手は気づくのが遅れ、クラクションを鳴らしながら謎のモノにぶつかろうとした瞬間、それは触手状の赫子を伸ばしバスを貫く。

 

「キャッーー!!」

 

赫子は運転手、乗客を貫きバスの窓に血をぶちまけた。

突然の惨劇に道行く人たちは悲鳴を上げる。

我先にと逃げ出す人たちの中で絋輝は驚きのあまり動けないでいた。

それは貫いたバスに赫子を絡ませ、持ち上げると地面に叩きつけた。

ひしゃげるバスにさらに悲鳴が上がる。

それはひしゃげたバスを一瞥するも絋輝の方を向く。

人が逃げ惑うなかそれと目が合ってしまった。

 

『ミィつケた』

 

それが発したその言葉に絋輝は背中が寒くなり震え上がった。

あれから逃げなきゃ、本能がそう警鐘を鳴らす。

絋輝が後退りすると、その化け物は姿勢を低くして絋輝に向かって来る。

周りの人間はぶつかり飛ばされるか踏み潰され、絋輝以外に興味がないように見える。

それでも周りの人間を殺して進んでくる化け物に絋輝は目を見開いて驚き、苦い表情になる。

赫子が届くところまで来ると化け物は腕を振るおうとするが、何かが体にタックルしてきて阻止される。

 

『ナンカ…不気味ダナ』

 

化け物の動きを止めたのゴーストだった。

 

(そいつを止めろ!)

 

絋輝が念じるとゴーストはそれに従おうとするが動きが鈍い。

まるで錆びついたブリキの玩具だ。

 

「なんで……!?」

 

今までに見たことない状態に絋輝は驚いていると化け物はゴーストを殴り飛ばし、車にぶつけた。

ゴーストは車に減り込むほどにぶつけられると徐々にその体が崩壊していく。

 

「まずっ……」

 

それを見た絋輝の目の前には化け物の赫子が迫って来ていた。

殺される、そう思った瞬間に化け物の赫子は切り落とされた。

 

「坊主!無事か!?」

 

助けに現れたのはクロガネを持った荒木だった。

彼らは絋輝の尾行していて、居合わせたのだ。

 

「荒木さん!?何でここに……?」

 

「今はそんなことはいいだろうが!立て!逃げるぞ!」

 

荒木は絋輝の腕を掴んで立ち上がらせると化け物を睨んで迫ってくる赫子をクインケで処理しながら距離を取る。

 

(こんな街中で騒ぎを起こすなんて何を考えてやがる!?どうなってもいいのか?)

 

荒木は化け物の動きに注意しながら内心では動揺していた。

喰種と言えど人間社会に生きていく身だ。

生きるために人を喰らうがそれは人目につかない場所でだ。

多くの人にその姿を見られたら、世間が目となり捜査官に追われて駆逐されるのがオチだ。

だと言うのに目の前の恐らく喰種であろう化け物はそんなことを考えずに暴れている。

 

(赫者になって理性が飛んだか?よりにもよってこんな人が多くいる場所で暴れるなんてよ!)

 

迫り来る赫子から絋輝を守りながら考える荒木はふと目の前の赫子が絋輝だけに向けられていることに気づく。

 

「まさか……女狂いなのか?」

 

「え?」

 

荒木の呟きに絋輝は戸惑いの言葉を漏らす。

女狂いは狂人だが容姿は良かった。

しかし、今はまさに化け物という様相だ。

 

『ルアああぁぁァァァッ!!!」

 

両腕の赫子を振り上げ荒木達に振り下ろして潰そうとし、荒木は女狂いの豹変に驚き行動が遅れる。

しかし、その瞬間トラックが女狂いに突っ込み、赫子が轢かれたことで千切れ、撒き散らしながら吹き飛ばされた。

 

「荒木さん……!」

 

「波島!よくやった!」

 

トラックで突っ込んだ反動かヨロヨロとトラックから出てくる波島に荒木は絋輝を連れて駆け寄る。

 

「応援はどうだ?」

 

「もうすぐ此方に来るようです」

 

「そうか、まずは市民の安全を確保するんだ」

 

周りにはまだ逃げ惑う人々、この状況を撮ろうとする野次馬など多くの人がいる。

今この場にいる捜査官は2人だけで、対応ができない。

すると、轢かれた女狂いは身じろぎしながら立ち上がった。

 

「まだ立つか……!」

 

荒木は忌々しそうに睨むが、女狂いは轢かれた所が悪かったのか血を流し、片腕は欠損していた。

それでも絋輝にゆっくりと近づこうとした時、近くでカメラで撮っていた野次馬に気づく。

 

「スゲ……」

 

「っ!オイ!逃げろ!!」

 

荒木はそれに気づき、野次馬に向かって叫ぶが女狂いは赫子をその野次馬に伸ばし、縛り上げる。

 

「えっ?ちょっ、何これ?」

 

「くそっ!」

 

縛り上げられた野次馬は戸惑い、荒木は助け出そうと走り出すが赫子はその男を貫き纏わりついていく。

それと同時に赫子が男を触媒にして増えていく。

 

「あがっがが……!?」

 

「何だ……?何が起こって……」

 

突然の事態に荒木は足を止めてしまう。

やがて赫子は男全体を飲み込み、欠損した部分と融合して巨大な腕になった。

 

『グオォォォォォッ!!!」

 

「何だこいつ……」

 

獣のように叫ぶ女狂いに困惑する荒木は後退りする。

困惑する荒木の背後からクラクションが鳴り、振り向くと波島と絋輝が車に乗っていた。

すかさず荒木も車に乗り込む。

 

「人がいないところまで逃げろ!奴の狙い坊主だ!」

 

「何で……!?」

 

「いいから出せ!」

 

波島は困惑しながらも車を発進させる。

 

「荒木さん!アレは何何ですか!?」

 

「恐らく女狂いだろう。だいぶ変わっちまったが……」

 

その瞬間、背後から爆発音が響いた。

見ると女狂いが追いかけて来ていた。

 

「波島、運転代われ。お前は援護射撃をしろ」

 

「了解です!」

 

運転を代わった波島はスサノを構えて女狂いに向かって撃つ。

 

「坊主、教えてくれ。何でお前は女狂いに狙われているんだ?」

 

荒木からの質問に絋輝は答えるべきかと悩む。

実際のところ絋輝は確信がないのだ。

女狂いは絋輝に恨みを持っていたが今の女狂いに理性あるとは思えず、何故襲ってくるかわからない。

下手に亜人であることを明かしてしまえば今後の生活が無事で済むのか、と葛藤していた。

 

 

ーーーーー

董香は本日何度目かわからないため息を吐いた。

理由は勿論絋輝のことについてだ。

絋輝からのラインは来ているが何が書かれているか怖くて見れていなかった。

落ち込んだ空気を醸し出す董香に芳村が話しかける。

 

「董香ちゃん。少し休憩に行って来なさい」

 

「あっ、店長。すいません……大丈夫ですから」

 

「君が暗くなるとどこかこの店も暗くなる。悩み事なら早く解決してきなさい」

 

朗らかな笑顔を浮かべる芳村に董香は申し訳なさそうにする。

 

「それにね。絋輝君は君のことをとても心配していたよ」

 

「え?本当ですか?」

 

「ああ、だから安心して彼と話してきなさい」

 

「……はい」

 

芳村の後押しもあり、董香は断りを入れて絋輝に連絡を入れようと休憩室に行こうとすると客の1人が声を上げた。

 

「うわっ!新宿ヤバいことになってるじゃん!」

 

「うわぁ、こりゃ酷いな……『大型喰種が新宿駅前で無差別殺人』……怖えー。今日遊びに行くのやめようぜ?」

 

「だな」

 

客の2人は自分の身に怒らなくてよかったと言い合っているが董香たちはその会話を聞いて不安そうにする。

何せ新宿は今日絋輝が向かう予定なのだ。

ただ絋輝の無事を祈るしかなく、董香は足早に休憩室に向かい絋輝に電話をかけるが繋がらない。

 

(絋輝、無事だよね……?)

 

 

ーーーーー

絋輝が荒木達に話すべきなのかと悩んでいると波島が声を張り上げた。

 

「伏せて!」

 

女狂いは赫子を槍のように投げつけ、ガラスを割り絋輝を殺そうとした。

咄嗟に身を屈める絋輝だが、ガラス片が頬を傷つけ、血が流れる。

すると突き刺さった赫子が唸りだし、絋輝に飛びついた。

 

「うわっ!」

 

絋輝は咄嗟に顔を腕で庇うが、荒木が赫子を鷲掴みにし、波島が撃ち抜いた。

分離した赫子が意思を持ったかのように絋輝を襲ったことに疑惑の目を絋輝に向ける。

絋輝は2人の視線を感じながらも赫子が襲いかかってきたことで合点がいった。

喰種は亜人の血肉を好む。

だから女狂いは執拗に自分を狙ってくる。

今回も、そしてこれからも。

そうなってしまえば董香達にも危険が及ぶ。

ならば、ここで討ち取るしかない。

だが1人では無理だ。

ゴーストも何故か動きが鈍くなっており、戦力としては心もとない。

だから、荒木達の力を借りるしかない。

決心した絋輝は荒木達に向き直す。

 

「何故女狂いが俺を狙ってくるかを教えます。まだ確証がある訳じゃないですけど……」

 

絋輝は少し躊躇いながらも真剣な眼差しをして2人を見る。

 

「俺は亜人です」

 

 

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