東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

24 / 59
#23 ツイているな……

クロガネを構えたゴーストの姿は堂に入っていた。

構えたゴーストは女狂いに向かって、クロガネを振り抜いた。

ゴーストの超人的な身体能力での振り抜きは最早大砲の弾がぶつかるのと同じ衝撃だ。

女狂いの体を斬ったのではなく、弾き飛ばした。

 

『ギャアアアァァァッ!!!』

 

肉体を抉られた女狂いは悲鳴を上げるが、即座に抉られた部分が赫子に覆われ回復する。

そこからゴーストと女狂いの攻防が始まる。

女狂いは乱雑に腕を振るって攻撃するのに対して、ゴーストはクロガネを使い熟練の戦士のように戦う。

それを見ていた荒木はゴーストの動きに見覚えがあった。

 

(あの動き……真戸さんの)

 

絋輝はゴーストと女狂いの戦いから後ろの階段口に目を向ける。

女狂いが自分を狙っているならば、今がここから離れるチャンスだ。

絋輝は足を引きずりながら階段に向かい、上の階へと向かった。

 

 

ーーーーー

途中まで上がって来たがもう足が限界だった。

血は流れ続け、最早感覚がない。

その場に倒れた絋輝は霞む目を自分の肩と足に目を向ける。

絋輝は最後の力を振り絞って、肩と足に刺さった破片を抜いた。

 

「あああっ!!!」

 

引き抜いた痛みで頭がおかしくなりそうだが、そんなことをしている場合じゃない。

引き抜いた破片の尖った方を自分の首に向ける。

手が震え、躊躇ってしまうが意を決して破片で首を斬った。

 

「ごふっ……」

 

倒れた絋輝はすぐに意識がなくなり、体から黒い粒子が溢れ出る。

傷が全てなくなった絋輝は起き上がり、自分の状態を確認してから決心した顔で屋上へと目指した。

 

 

ーーーーー

あれから空の様子は雨は依然として激しく降っており、更には雷鳴が激しく鳴り、至る所に稲光が見えていた。

絋輝たちが戦っていた場所はゴーストタウンでも最も大きなビルで屋上もそれなりに大きく、風も強く吹いている。

その屋上の扉を息を荒くしながら絋輝はたどり着いた。

 

「はぁ…はぁ……ごほっ、ごほっ」

 

息を整え、屋上の状態を見る。

ゴーストが打ち上げられた時にできた穴があり、その他に所々に瓦礫の山ができていた。

 

(あれって……)

 

その時絋輝は瓦礫の山からある物を見つけ、引っ張り出す。

 

「武器になる物ってこれくらいしかないか……」

 

武器とはいえないそれを見て、険しい表情になる絋輝の背後から地響きのような音が響く。

振り向くと屋上の床が爆発したように弾け飛び、女狂いが現れた。

 

『グオオオォォォォォ……!』

 

女狂いの姿は下にいた時とは変わり、手足がなくなりヘドロのような姿になっており、口は大きく裂けていた。

 

「来やがった……!」

 

絋輝は引き抜いたそれを瓦礫の上に置き、女狂いから距離を取る。

絋輝を見つけた女狂いはさらに巨大になった体を揺らしながら絋輝に近づいてくる。

逃げようにも瓦礫が多く、逃げれる場所は少ない。

迫ってくる女狂いの背後からクロガネを持ったゴーストが女狂いが出てきた穴から飛び出してきた。

 

『ブチ殺シテヤル』

 

飛びかかるのと同時に女狂いを深く斬った。

 

『グオオオォォォォォォ!!!』

 

切られた痛みで怯んだ女狂いは何本も赫子を伸ばし狂ったように振るう。

 

「うわっ!」

 

咄嗟に屈んで躱した絋輝はゴーストに攻撃しろと念じる。

しかし、動こうとしたゴーストはまたもや錆びついたブリキの玩具のように動かなくなった。

 

(何で…!?雨か?)

 

動かなくなったゴーストを見て、原因は雨だと気づく絋輝に女狂いの赫子が迫る。

横に避けるが腕を掠めてしまい、倒れてしまう。

後退る絋輝に迫る女狂いに羽赫が突き刺さる。

絋輝がそっちの方を向くと波島のスサノを構えている荒木の姿があった。

 

「逃げろ坊主!!」

 

荒木は叫びながらスサノを撃ち続ける。

煩わしく思った女狂いは荒木に向かって複数の赫子を向けた。

荒木に当たることはなかったが周りの壁や床を破壊した。

その隙に絋輝は女狂いの傍を通り抜け、先の瓦礫からある物を取り出し、女狂いに突き刺そうと飛びかかった。

 

「おおおっ!!」

 

しかし、絋輝が突き刺すよりも早く女狂いの赫子が絋輝の背後から突き刺した。

 

「ごぼっ…!?」

 

『ハアァァァァ……!!』

 

「坊主!!」

 

女狂いは嬉しそうにしながら突き刺した絋輝を持ち上げたまま、大口を開く。

口の中には牙がびっしりと不規則に生えており、まさしく地獄の入り口に見えた。

荒木は攻撃し続けるが女狂いは絋輝に夢中で意にも返さない。

口と貫かれた腹から血を流す絋輝を食べようと口に近づける女狂いに絋輝は不意に笑ってしまった。

 

「ははっ……こうも上手く行くなんて……ツイているな……」

 

絋輝の声が聞こえていないのか、そもそも聞く理性なんて持ちあわしていないのかわからないが今の女狂いはただ絋輝を殺したい。

絋輝を飲み込もうと大口を開ける女狂いの口目掛けて手に持っていた『ソレ』を深く突き刺した。

 

『グオオオォォォォォォォォォ!!!?』

 

絶叫しながらもそれを吐き出そうとする女狂いだが、絋輝は貫かれた痛みを忘れて必死に突き刺す。

 

すると絋輝たちがいるビルの上空で雷鳴が轟いた。

その直後、特大の雷が女狂いと絋輝を貫いた。

絋輝が女狂いに突き刺したのは『避雷針』だった。

一か八かの賭けだったが自分を囮にして女狂いに雷を浴びせた。

 

悲鳴も上げずに黒焦げになった女狂いと絋輝、体から煙が上がり全身に火傷があった。

落雷の影響か女狂いの足場が崩れ始め、落ちていった。

やがて大きな落下音がし、荒木が下を見ると黒焦げた女狂いはピクリとも動かなかった。

 

荒木はすぐさま下に降り、女狂いの様子を確認しに行くと肉が焼け焦げた酷い臭いが立ち込め、顔をしかめる。

側に寄り、軽く足で小突くが動く気配がなく、今度こそ殺したと荒木は安心する。

そして一緒に落ちた絋輝のことを思い出し、周りを見るが側には絋輝の遺体どころか姿が見えなかった。

さらに周囲を見渡すと走り去って行く絋輝の姿が見えたが、追うとはせずにそのまま見送った。

 

逃げた絋輝を見送った荒木は疲労が酷い体を引きづりながら波島がいるところまで戻ってきた。

 

「波島……」

 

「ぁ、あら…き……さん、女…くるいは……?」

 

「殺した。坊主が仕留めた」

 

「ょ…よかっ…た……」

 

力なく笑う波島に荒木は悲しそうに笑いかける。

 

「この事件がひと段落したらお前が行きたかった高級店に連れて行ってやるよ。これでお前の昇格は確実だ。そのお祝いも兼ねてな。勿論俺の奢りだ。好きなだけ食べな」

 

「………」

 

荒木が話しかけるが波島は答えない。

 

「それにここ最近休みもなかったろ?暫く休みといい。どこか旅行でも行ったらどうだ?海外旅行もしてみたいって言ってたよな……………なぁ、波島」

 

波島は涙を流し、目に光がなく既に息がなかった。

荒木は項垂れながら拳を握り、悔しさを噛みしめることしかできなかった。

 

 

ーーーーー

女狂いとの戦いの場所から逃げた絋輝は落雷の影響か、生き返ったにもかかわらず体に痛みが残り、視界が霞み、頭が正常に動かなかった。

ただあの場から逃げろと本能に近い感覚で逃げていたが、足はもつれ視界が歪んで見えてしまう。

体に打ち付ける雨が体温を奪っていき、力が入らない。

やがて力がなくなり、その場に倒れてしまった。

 

「に…げなきゃ……」

 

掠れる声で呟き、立ち上がろうとするが腕を動かす力もなかった。

倒れる絋輝の前にある人物が立ち止まり、さしてあった傘を絋輝が濡れないように傾けてあげてくれた。

 

(だれ…だ……)

 

徐々に薄れていく意識の中、その人物がこちらに手を伸ばすのが最後に見えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。