東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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新年明けましておめでとうございます。
今年も他の作品同様によろしくお願いします。


#27 面白いですねぇ

女狂いの事件から数日が経ち、絋輝は漸くいつもの日常が帰ってきたと実感していた。

そして放課後、美術室を借りて絵を描こうとしていたがその手は止まっており白い紙の前で何もせずに座っていた。

ペンを取って描こうとすると手が止まってしまう。

思い悩んだ顔で俯いていると誰かが抱きついてきた。

 

「どーしたの?そんな顔して」

 

董香は絋輝を後ろから抱きしめ、顔を横にくっつけながら聞いた。

董香のいい匂いが鼻を擽ぐり、心地いい気持ちになりながら目の前の紙を見る。

 

「バイトの絵なんだけど、女狂いとの一件ですっかり忘れていたんだ。もうすぐ締め切りなんだけど描こうとすると手が止まってな」

 

自身の手を見つめながら、そう呟く絋輝を董香は心配そうに見る。

 

「やっぱりまだ怖いの?」

 

「どうなんだろう……恐怖よりあの時水戸さんに何もできなかった自分を不甲斐なく思うよ」

 

そう言って落ち込む絋輝に董香は頬に軽くキスをして、慰めるように頬擦りをしてきた。

 

「誰だってどうしようもない時はあるよ。私だってそうだった………」

 

思い出すのは幼い頃の記憶、突然父がいなくなった時、弟が自分の元から離れた時だ。

そんな時でも隣に誰かいてくれるだけ救われる時がある。

弟のアヤトがいなくなった時は絋輝がいてくれた。

その恩返しをしてあげたかった。

 

「今日はもう帰ろう?無理してもいいものはできないでしょ?」

 

「……そうだな」

 

董香のおかげで幾らか楽になった絋輝は董香の手を取り、顔を見つめて軽いキスをした。

 

2人で手を繋いで校門に向かうとそこには吉桐と依子がいた。

 

「よぉ、どおしたんだ?」

 

「君らを待ってたんだよ。どうせなら皆んなで帰ろう」

 

吉桐の気遣いに感謝し、友達と他愛もない話をしていると不思議と嫌なことを忘れられた。

 

家に着くと玄関に見慣れない靴があった。

 

「靴……てか、スリッパ?」

 

それは靴ではなくスリッパだった。

リビングの方からは弟たちがはしゃぐ声が聞こえてくる。

何事かと覗くと複数の包丁を器用にジャグリングしている少年が目に入った。

 

「え……、誰?」

 

「あれー?誰ですか〜?」

 

 

ーーーーー

居間に座って篠原から紹介があった。

 

「コイツは新しいパートナー予定の鈴屋 什造だ」

 

「どーもですー」

 

弟たちは先のジャグリングで鈴屋に懐いたのか元気に挨拶したが絋輝は困惑していた。

年は絋輝と同じくらいで色味がかかった白髪に赤い目、そして色白な肌で中性的な顔立ち。

色々と情報が多くて、思考が止まってしまう。

 

「どうしたんだ絋輝?」

 

「いや、何をどうしたら……んんっ!鈴屋さんっておいくつなんですか?」

 

長男として得体の知れない男を弟たちには近づけるのはまずいと思い、鈴屋のことを知ろうと取り敢えず当たり障りのないことを聞くことにした絋輝は質問する。

 

「什造でいいですよ〜。たぶん17、8くらいですかねぇ」

 

「たぶん?」

 

疑問符を浮かべたが踏み込むと不味そうな気がしたので質問を変える。

 

「そんな歳で捜査官になれるものなんですか?」

 

「よくわかんないです〜」

 

まさかの解答に絋輝は顔を引攣らせる。

流石に見兼ねた篠原が苦笑いしながら助け舟を出した。

 

「什造は少し特殊な環境で育ってきたんだ。今は社会復帰のため勉強をしているところだから、家に連れてきたんだ」

 

特殊な環境と聞いて、絋輝は少し納得した。

どこか現実離れした格好をしている什造にはそう言われても納得できた。

失礼とわかっていたが鈴屋をまじまじと眺めているとふとあることに気がついた。

 

「それってボディステッチですか?」

 

「!、知っているんですかぁ?」

 

「はい。まぁ、痛そうだったんでやろうと思いませんでしたけど」

 

「そんなことないですよ〜。慣れてしまえば楽しいです♪」

 

その後2人はお互い絵を描くのが好きという共通の趣味を見つけ、話が弾んだ。

篠原はそれを見て、アカデミーで腫れ物扱いされている什造にとってここまで親しく話している同年代の子はいなかったため、楽しそうに話す什造を見て嬉しく思った。

最近は事故や事件に巻き込まれることが多かった絋輝は暗くなっていて、家庭でも会話をすることが少なくなっていた。

こうして楽しそうに話す絋輝を久しぶりに見た篠原は息子がいつもの日常で過ごす姿に微笑んだ。

 

 

ーーーーー

2人は話が弾み、什造は絋輝の絵を見たいと言いだし、少し渋ったが自分の部屋に案内した。

 

「これが絋輝くんの絵ですかー。面白いですねぇ」

 

「……」

 

目の前で自分の絵を褒められて、絋輝ははにかみながら照れる。

すると、什造はまだ途中の絵に目が止まった。

 

「これは書きかけですかぁ?」

 

「まぁ、そうだけど……なんだか手が止まっちゃって……」

 

絋輝は複雑そうな表情で絵を見る。

什造はそんな様子の絋輝と絵を見比べて首を捻った。

 

「うーん……その時の気持ちをそのまま描けばいいと思いますけどねー」

 

「いや、だからその時のの気持ちが描こうと思えなくて……」

 

絋輝が説明しようとするが什造は御構い無しに話を続ける。

 

「絵なんてただの気分で描くものなのでー、その時の気持ちを描くのが一番なんですよー」

 

什造の言葉に絋輝は考える。

絵なんて気分で描くもの、そう言われて確かにそうだと納得できた。

今の気持ちをそのままで描けばいい、何かにぶつけることで何か見えてくるものもあるかもしれない。

 

「そっか……そういう考えもあるか。なんか絵のこと高尚に考えていたのかも。ありがとう、什造さん」

 

「いえいえ、よかったです〜♪」

 

 

ーーーーー

後日絋輝は完成した絵を持って高槻 泉のもとを訪ねた。

 

「………」

 

「へぇ、これが君の絵か……」

 

高槻は渡された絵をじっくりと見る。

やがてその顔は満足そうなものになり、絋輝は肩の荷が降りる。

 

「素晴らしい絵だね。君の心がそのまま描き出されているかのようだ」

 

「友人に助言してもらってその絵ができました」

 

「ふむ、中々良い友達だね」

 

高槻は編集者である塩野に絵を渡す。

 

「塩野君、表紙の絵はこれで行こう」

 

「はい!早速編集部に出してきますね!」

 

塩野はやっと大仕事が終わるからか二割り増しの笑顔で受け取り、会議室を出て行った。

 

「では絋輝君。絵の完成のお祝いとしてこれから一緒に出かけよう」

 

「え、いやこれから約束が……」

 

「まあまあ!そう言わずに」

 

高槻はその細腕からは想像できない力強さで絋輝を引っ張り出した。

 

 

ーーーーー

高槻は絋輝の手を引っ張りながら街中を進んでいく。

絋輝はされるがままに引っ張られるが何故か嫌な気持ちになれず、不思議に思っていた。

高槻は自分のお気に入りの喫茶店、珍しい雑貨が売っている店などを回り、まるで恋人同士のデートのようだった。

やがて高槻のお気に入りの場所である公園にたどり着いた。

そこは緑が多く、人が1人もいなかった。

 

「どうだい?人がいないから静かだろう?」

 

「えぇ、東京にこんな所があるなんて驚きです」

 

東京の喧騒から隔離されたようなその場所に絋輝は驚く。

高槻に促され、ベンチに座ると高槻も隣に座る。

 

「最近は大変だったね。喰種の事故に巻き込まれたんだって?」

 

「まぁ、そうですね。暫くはイラストのバイトも休もうかと思っています」

 

事件の真相を言うのはCCGから口止めされているため言葉を濁した。

 

「あの絵は辛い事から逃げ出したいという気持ちがありありと出ているね」

 

「………」

 

描いた絵から絋輝の心情を見抜かれ、黙ってしまう。

その様子を見て高槻は図星だと思いほくそ笑む。

ズケズケと踏み込んで欲しくないところに踏み込んでくる高槻に嫌悪感を露わにする。

 

「辛いことがあったらお姉さんに甘えていいんだよ?」

 

体を寄せ、見上げてからかってくる高槻に絋輝は横目で睨むだけだ。

 

「結構です」

 

絋輝は立ち上がり、高槻と別れようとすると高槻は絋輝の手を掴んだ。

 

「逃がさないよ♡」

 

突然蠱惑的な声で呟いたかと思うと絋輝をベンチ引き倒した。

 

「っぃて!?突然何を……!」

 

絋輝が顔を上げると高槻の顔が目の前にあり、次に感じたのが唇に広がる柔らかい感触だった。

そしてすぐに絋輝は高槻にキスされていると理解できた。

 

「ぅむ……!?」

 

「ふふっ、んっ…ちゅっ……」

 

驚く絋輝に高槻は一瞬笑みを浮かべキスを続けようとするが、絋輝が押し退けた。

高槻が離れると絋輝は戸惑いの表情を浮かべながら立ち上がり、尻餅をついた高槻を見る。

高槻はキスした唇に指を添え、絋輝の唇の感触を確かめながら絋輝を見て、妖艶な笑みを浮かべる。

それを見た絋輝は一瞬胸が高鳴ったがそれを悟られないように足早にその場を去った。

高槻は立ち去る絋輝を見て、唇を一舐めしてその笑みを濃くした。

 

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