東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#32 怖い生き物だよ、人間って

荒木と絋輝の共闘が始まった。

絋輝が操るゴーストが先行して女狂いもどきに攻撃を仕掛ける。

鋭い爪と怪力の打撃の連打に対抗する女狂いもどきは先程よりも動きが洗練されていた。

荒木はあらゆる方面から女狂いもどきに悟られないように攻撃を繰り返す。

しかし、女狂いもどきは鱗赫、甲赫、羽赫をうまく使い分け2つの攻撃を防ぎ、反撃を繰り返していた。

 

「喰種といえど生き物だ!あんな攻撃の仕方をしていればいつかバテる!!」

 

荒木の言葉通り2つの猛攻を凌いでいた女狂いもどきの動きはだんだんと鈍くなっていた。

それに気づいた絋輝はすかさず拳銃を構え、引き金を引く。

何十、何百回と練習してきた銃の腕前は最早熟練の域に達し、弾丸は真っ直ぐに女狂いの目に向かった。

 

「……!?」

 

目を撃ち抜かれた女狂いもどきは頭を大きく後ろに仰け反った。

そこにゴーストは手刀を突き刺して持ち上げて、荒木が持ち上げられた女狂いもどきの体を両断した。

 

「はぁ、はぁ、やったな。中々いい腕だったな」

 

「あんだけ練習すればそりゃ上手くなりますよ」

 

「将来は捜査官になるか?」

 

「ハハ……遠慮しときます」

 

一仕事終えた荒木は絋輝に労いの言葉をかけて、絋輝はそれに苦笑いで答えた。

喰種の恋人がいるのに喰種捜査官になるなんて冗談じゃないと思った。

 

荒木がふと2つに分かれた女狂いの体に目を向けると切断面が僅かに蠢いた。

 

「絋輝っ!!」

 

「えっ」

 

次の瞬間、女狂いもどきの体から全方位に向かって羽赫が発射された。

間近にいたゴーストは全身を撃ち抜かれ、荒木は急所を守ったが腕と足を撃たれた。

絋輝は頭をまず撃ち抜かれ、全身を撃たれた。

見るも無残な死体となり、リセットされるがその速度は遅い。

 

「ぐっ……!」

 

痛む腕と足、さらに脇腹も痛む。

目を向けると羽赫が掠ったのか服から血が滲み出ていた。

 

(最悪の状況だ。まず絋輝は動けない、ゴーストのサポートもあれじゃ期待できないな)

 

徐々に復元している絋輝を見て、そう考える荒木にさらに悪い状況が重なる。

何かが動く音がし、目を向けると両断された下半身が起き上がり、尾骶骨から鱗赫、甲赫、羽赫が混ざったような赫子が8本出現し、倒れている上半身を持ち上げた。

そのまま切断面にくっつけると上半身はぶるりと震え、意識を取り戻す。

 

そんな絶望的な光景を見て、荒木は絶望するわけでもなくクロガネを杖にして立ち上がり、武器を構えた。

 

「……諦めると思ったか?」

 

武器を構えたまま、女狂いもどきに話しかける。

女狂いもどきはそれに反応せず赫子をくねらせながら荒木に近づいていく。

 

「残念だったな。人間は諦めが悪いぞ?」

 

次の瞬間、荒木は獰猛な笑みを浮かべて足から血を吹き出しながらも力強い踏み込みで女狂いに迫った。

 

 

ーーーーー

工場の煙突から荒木と女狂いもどきの戦いを観戦していた2人の人物のうちパソコンの光で眼鏡が光る男は少し興奮した様子でもう1人に話しかけた。

 

「おお……!いい数値出てますよ、これ。全体的な数値はベースより1.5倍高いですよ。それにあの超回復も目が見張るものがありますよ。……ただ少しネックなのがあの燃費の悪さですかね?複数種類の赫子を連続使用すると動きが悪くなるのがねー。………どうしたんですか?さっきから黙っちゃって」

 

「いや、怖いなーって思って」

 

男の視線は荒木と女狂いもどきに固定されており、眼鏡の男はそれに気づいた。

 

「ああ、C-type 1号ですか?確かにあれは並みの捜査官じゃ恐怖以外の何にもならないですよ」

 

何がおかしいのか少し笑みを浮かべながら答える眼鏡の男の言葉をもう1人は否定する。

 

「違う。あの捜査官の方だよ」

 

「へ?」

 

男の視線は女狂いもどきの攻撃を捌き続ける荒木に固定されていた。

 

「とっくに意識がなくなっている出血量なのにまだ戦っている。素晴らしい捜査官だよ」

 

「はぁ……」

 

男は尊敬の眼差しで荒木を見ており、眼鏡の男は不思議そうに返事を返すだけだった。

しかし、男の視線は途端に尊敬の眼差しから侮蔑するような目に変わる。

 

「本当に……怖い生き物だよ、人間って」

 

 

ーーーーー

荒木は全神経を女狂いもどきにだけ向けていた。

 

(怠い…熱い…前を見ろ、っ!苦しい……右、帰りたい、後ろからの攻撃、忘れ……寝たい、馬鹿言うな下からも来る)

 

頭の中では思考がグチャグチャになっていた。

もうとっくに限界を迎えているはずなのに荒木は攻撃を止めていなかった。

女狂いもどきの攻撃を持ち前の反射神経で全て反応し、四角からの攻撃は鋭すぎる勘で防いでいた。

何度赫子を切り落としたかは覚えていないが、既に全ての赫子を切り落とした感覚はあった。

しかし赫子は減るどころか増えているような気がしているが、荒木は全て対応していた。

動くたびに全身の致命傷を避けた傷から血が溢れ出る。

しかし、痛みを忘れて女狂いもどきと対峙する。

 

全ては背後で倒れている絋輝のためだ。

恐らくこの特殊な喰種は亜人研究会の差し金だ。

こんなピンポイントで襲ってくるタイミング、探りを入れていたタイミングが良すぎた。

さっきの煙突からこちらを伺っていた2人も亜人研究会の者だろう。

もしここで負ければリセットが始まっている絋輝は亜人として捕獲されてしまう。

亜人と言えど未来ある子どもをこんなところで奴らの餌食にさせてたまるか、部下を守れずに失望させてしまった息子に誇れる父親でありたいと思い、更に力を込める。

 

「オオオォォォッ!!!」

 

叫びと共に袈裟斬りを繰り出す。

斜めに斬られた体は血を吐き出すがそれもすぐに治り、傷が治っていく。

 

「クソ……」

 

眉間に皺を寄せながら、女狂いもどきを睨む。

するとあることに気づいた。

斬られた服がはだけ、そこには3つの傷があった。

それはゴーストが女狂いもどきの動きを止める時に手刀を突き刺してできた傷だ。

クロガネの攻撃は全て回復しているのにあそこだけ治っていない。

 

「どういうことだ?」

 

その時、絋輝から溢れ出る黒い粒子に気づく。

 

(アレか!)

 

どういう原理かわからないが亜人の力で回復しなくなっているのは確かだ。

一か八かの賭けだが、それしか方法がない。

 

女狂いもどきが凄まじい勢いで襲いかかってくるのをギリギリ所で避けた。

片眼が女狂いもどきの横を通り過ぎる時に赫子が当たり、抉れたがそれを気にせず、絋輝に向かって走り抜ける。

しかしそれを許す女狂いもどきではなく、尾骶骨から伸びる赫子が荒木を追い詰める。

迫り来る赫子を受け止め、切り裂いていくが、その隙に女狂いもどきは距離を詰めて荒木に攻撃する。

荒木と絋輝にはまだ距離がある。

女狂いもどきはトドメを刺そうと力強い攻撃を何度もしてくる。

荒木はクロガネで受け止めるが、受け止めるたびに骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。

何度も振り下ろしてくる攻撃に荒木は後退しながら、受け止める。

やがて荒木は防ぐこともせず、腕を下げてしまった。

好機だと言わんばかりに女狂いもどきは赫子を纏った腕を振り上げる。

 

「お前の負けだ」

 

荒木がそう呟くのと同時に女狂いもどきは荒木が絋輝のすぐ側まで下がっていることに気づいた。

何かをしようとしていることはわかった女狂いもどきは早く荒木殺そうと腕を振るう。

しかし、その腕は途中で止められた。

振り下げようとした腕にはゴーストが組み締めて動けなくしていた。

 

『遠慮シトキマス』

 

絋輝は今だに撃ち抜かれた顔が半分黒い粒子に覆われているが半分治りかけているその眼で敵を睨みつけていた。

 

「オオオォォォッ!!!!!」

 

荒木は咆哮と共に絋輝から溢れ出る黒い粒子を掬い上げるようにクロガネを振るい、女狂いもどきに向かって強烈な一閃を放った。

女狂いもどきも負けじと尾骶骨から伸びる赫子を振るった。

2つの攻撃はほぼ同時で、荒木はクロガネを握っていた腕を切断されてしまった。

女狂いもどきはそれを見て一瞬笑みを浮かべたが段々と景色が左右で歪んで行くのに気づいた。

荒木の一撃は脇腹から下から上へと斬り上げて、女狂いもどきを真ん中で両断していた。

 

「やったぞ、仁志」

 

荒木はそう呟き膝から崩れ落ち、女狂いもどきが倒れるのを見届けた。

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