東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#3 『死』とはどんなものだと思う?

あれから数日が経ち、今日は董香とのデートの日だ。

待ち合わせ場所である駅前に待ち合わせ時間30分前に着いていた絋輝は少しソワソワしながら董香を待っていた。

そこに今時の格好をしたオシャレな董香が絋輝に気づき、小走りでやって来た。

 

「ごめん。待った?」

 

「いや、今来たところ」

 

そんなカップルの常套句のようなやり取りに2人は少し笑ってしまう。

 

「今日はどうしよっか?」

 

「私はショッピングがしたいけど、絋輝は?」

 

「俺は……ちょっとここに行ってみたいんだ」

 

絋輝はそう言い、スマホを董香に見せる。

そこには現代美術の展示が近くで開催されているニュースがあった。

 

「絋輝が行きたいなら行こうよ。面白そうだし」

 

董香の了解も得て、2人は美術館に行ってからショッピングすることになった。

電車を乗り継ぎ、美術館に着いた2人は数々の作品を見て回る。

 

「絵だけかと思ったけど彫刻とか多いね。形も面白いし見てても飽きないよ」

 

「そう言ってくれると嬉しいな。董香がこういうのに興味があるか心配だったんだよ」

 

「何それ、私には美的センスがないって言いたいの?」

 

少しムッとした顔で不機嫌そうに絋輝を睨む董香に慌てて首を横に振る。

 

「別にそうは言ってないって……ただ董香ってこういうのより意外と可愛いのが好きだからさ」

 

意外と可愛い小物を集めている董香を知っているため、こんなことを言うと董香は少し恥ずかしそうにした。

 

「なっ…!ふーん、そんなこと言うんだ」

 

董香はそっぽを向いて、どこかに歩いていく。

 

「おい、どこ行くんだ?」

 

「別に、美的センスがない私が一緒にいても楽しめないと思うから」

 

素っ気ない態度で別のところに行こうとする董香を絋輝は追いかける。

別に董香は怒ったわけではなく、絋輝に少し負けた気がした董香はその仕返しとして、困らせてやろうと思っただけだ。

絋輝は困ったなと思いながら、董香を追いかけるがふと横目に入った絵が彼の興味を引いた。

その絵は一面黒で描かれているが濃淡の違いがあり、黒い部屋に黒い球体がある絵だった。

題目は『死の形』とあり、何故かそれがとても絋輝には気になった。

 

「君はこの絵をどう思う?」

 

背後から突然声をかけられ、驚き振り返ると小柄な女性が立っていた。

絋輝はいきなり知らない人に声をかけられ警戒し、何も話さず立ち去ろうとするが、女性は構わず話しかけてくる。

 

「死んでからしか感じ取れないモノを絵にしようなんて無謀だとは思わないかい?」

 

女性は絋輝の隣に立ち、絵を見上げる。

 

「………そうですかね?俺は無謀だとは思わないですけど」

 

「ほう?何故かな?」

 

女性は興味深さそうに絋輝を見上げる。

 

「わからないから感じ取りたいと思ったんじゃないんですか?これを書いた人は」

 

「なるほどね〜……」

 

この絵から死を黒で表して、恐怖を見せるというよりも一体どういった物なのかを確かめたい探究心のようなものを絋輝は感じ取った。

 

「じゃあ君は『死』とはどんなものだと思う?」

 

女性は揶揄うような目つきで絋輝を見てくる。

 

「……言葉で表すのは難しいと思いますけど、何も感じない『無』って感じですかね」

 

「『無』か……果たして君にとってはそうなのかな?」

 

「……?どういうことですか?」

 

「さーてね♪」

 

揶揄うような口調ではぐらかされた絋輝は少し眉間に皺を寄せながら、女性を問い詰めようとすると肩に手を置かれる。

 

「ちょっと!何してんの?」

 

董香が少し怒った様子で立っていた。

追いかけて来ない絋輝に不満をぶつけるために戻ってくると、当の本人は絵を見上げていた。

 

「いや、何か変な女の人がさ」

 

「女の人?どこにいんの?」

 

「いや、隣に……」

 

横を向くとさっきまで話をしていた女性の姿は無かった。

 

 

ーーーーー

絋輝と話していた女性は道行く人の中を悠然と歩きながら、鼻歌を歌いだすほど上機嫌だった。

まるで長年憧れだった人に会えた少女のように可愛らしかった。

 

「君にとって『死』は『終わりのない地獄』かもしれないね♪」

 

そう言いながら、満面の笑みを浮かべる女性はさっき売店で買ったソフトクリームを一口舐める。

 

「甘〜い♡」

 

その姿は可愛いらしいかもしれないがその笑顔はゾッとするほどの残酷なものだった。

 

 

ーーーーー

時刻は夕方になり、東京の街を夕日が照らす。

その街を絋輝と董香は無言で歩いていた。

 

「………」

 

「………」

 

董香が絋輝の先を歩き、一切会話もない。

会話がないと言うよりは董香が絋輝を無視していると言ったほうがいいかもしれない。

董香が不機嫌なのは恋人を放っておいて見知らぬ女性と話していたからだ。

自分のことを振り向いてくれない絋輝に焼きもちを焼いてしまった。

 

(はぁ……何でこんなことになっちゃったかな)

 

絋輝は話しかけても無視される恋人にどうするべきか分からず、内心ため息を吐いた。

そうこう悩んでいるうちに董香が住むマンションに着いた。

 

「あー……じゃ、じゃあ、また明日な」

 

絋輝は今日は何もできないと思って帰ろうとするが、董香が肩を力強く掴んできた。

 

「待って」

 

「え、ちょっ……何?」

 

肩を掴む力は変わらず強いが、その仕草はさっきまでの怒ったものとは打って変わって、少し切なそうな表情をしており、突然のことに絋輝は動揺してしまう。

 

「え、えーっと……」

 

「さっきの埋め合わせはしてくれないの?」

 

夕日で照らされたのか少し顔を赤くした董香がそう質問するが、顔を晒す。

 

「言わせないでよね、恥ずかしいんだから………それとも、もう帰っちゃう?」

 

絋輝はその言葉と彼女の仕草に我慢ができず手を掴む。

 

「埋め合わせは今する」

 

顔を赤くして緊張しながら、そう答える絋輝に董香は嬉しそうにはにかんだ。

 

(後で母さんに泊まるって連絡しなきゃな)

 

そう思っていると董香は絋輝の指に自分の指を絡めながら手を握り、腕に体を寄せた。

そんな董香を愛おしく思いながら2人は共に部屋に入った。

 

 

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