東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#4 何も感じないなんて嘘だ

数日が経ち、女狂いの被害は止まることはなかった。

何件も女狂いの事件が起き、20区を中心に喰種捜査官は見回りを強化しているが一向に尻尾も掴めなかった。

人々は不安に怯えていたがそれを取り繕うように日常を過ごしていた。

それは絋輝が通う学校でも同じだった。

皆がいつも通りに過ごす学校の中でも件の喰種の話は絶えなかった。

昼休み、皆が昼食とっている中、絋輝たちはいつもの4人で昼食を食べながら女狂いのことについて話していた。

 

「最近20区物騒になったね」

 

「喰種の犯行が多くなったからだね」

 

「みんなが不安がってるしな」

 

「CCGが対処してくれるでしょ?なら安心じゃない?」

 

依子が不安そうに言うが、董香は素っ気なく答える。

 

「私が亜人なら怖くなかったのかも」

 

「亜人?何だそりゃ?」

 

依子が言った亜人という言葉に絋輝は頭を傾ける。

 

「亜人っていうのは死んでも復活する不死身の人間のことだよ。まぁ喰種みたいに実際に存在するものじゃなくて都市伝説になっているけどね」

 

「ふーん。そんな都市伝説があんのか」

 

絋輝は亜人の話にそれほど興味を惹かれなかったのか、再びタブレットに目を移した。

 

「そういえばトーカちゃん、またそれだけしか食べないの?」

 

董香は菓子パン一つだけで、昼食を済ませていた。

 

「私はこれだけで十分だよ」

 

「ダメだよそれじゃあ!しっかり食べないと育たないよ!」

 

そう言って依子は卵焼きを差し出す。

董香は顔には出さないが、喰種は人間の肉とコーヒー以外食べれないため、どうにか出来ないかと考えた。

その時1人食事を広げずに、タブレットに絵を描いている絋輝が目に入ったが、依子の卵焼きが目の前に現れた。

 

「はい!」

 

「……いただきます」

 

結局董香はなんとか卵焼きを食べたが、しばらくトイレに籠ることになってしまった。

 

 

放課後絋輝は1人、董香がアルバイトをしている『あんていく』に来て、コーヒーを飲みながらまたタブレットを開いていた。

 

「何してんの?昼休みの時もやってたよね?」

 

バイト中の董香が絋輝以外の客と店員もほぼ出払っており、2人きりしかいないため話しかけてきた。

 

「俺もバイトだよ。俺の絵が好きって言ってくれたイラストの企業があって、定期的に絵を描いてくれって頼まれたんだよ。家でやると弟たちが絵を描いてくれって頼まれるからここで描いてるんだ」

 

「ふーん」

 

董香が興味深そうにタブレットを覗き込むとそこには幻想的な絵があった。

 

「綺麗だね」

 

「タブレットで書いたらこんなもんだ。本当は手書きの方が好きなんだけどタブレットって描いてくれって頼まれたから仕方なくな」

 

董香は絋輝が絵を描いている姿を見つめる。

2人の間に静かで、暖かい空気が流れる。

 

「トーカちゃん、絋輝くんと時間を過ごすのはいいけど仕事はしっかりとしてくれないと困るよ」

 

「店長!すいません」

 

そこに朗らかな笑顔を浮かべた芳村が現れ、董香に注意し、紙を渡した。

 

「すまないけど、その紙に書かれたものを買いに行ってくれないかい?近所の雑貨店で買えるから」

 

「わかりました」

 

董香はお金と紙を持って店を出ていくと、芳村は絋輝に話しかけた。

 

「コーヒーのお味はいかがかな?」

 

「美味しいですよ。コーヒーはあんまり飲まないですけどここのは美味しいと思います」

 

「それは良かった。………君がトーカちゃんと付き合い出してからあの子は以前よりよく笑うようになった。ありがとう」

 

「そんな感謝されることじゃ……俺もトーカと一緒にいれて幸せですし」

 

絋輝が照れ臭そうに言うと、芳村はそれをどこか懐かしそうに、それでいて愛おしそうに見る。

 

「それでもだよ。人との距離を作り続けてきた彼女があそこまで人に歩み寄るのは君のおかげだ」

 

芳村の言葉に絋輝は嬉しい気持ちになる。

ふと芳村が外に目を向けるともう日が沈みかけていた。

 

「今日はもう帰ったほうがいい。今、夜は危険だからね」

 

「董香に会ってから帰ろうと思います」

 

「トーカちゃんには私から言っておこう。君が危険にさらされるほうが彼女は悲しむ」

 

そう言われ、絋輝は悩んだ末、先に帰ることにした。

芳村は絋輝を見送ると1人になった店で呟いた。

 

「あの子たちが私たちみたいに種族を超えて愛を育めるか……どうだろうな、憂那」

 

芳村は今はもうこの世にはいない愛した人間につぶやいた。

 

 

董香は芳村に頼まれたお使いに近所の店まで行ったが目当てのものが無く、少し離れたところまで買い物に出かけ、買い物を済まして急いで戻っていた。

 

(結構時間かかっちゃったな。絋輝まだいるといいけど………)

 

ふと董香の目に近道ができる路地裏が見えた。

 

(近道しちゃえ)

 

董香は芳村から注意されたことを頭に思い浮かべたが、絋輝に会いたいがために路地裏に入った。

 

「獲物みーけっ!」

 

そしてそれを雑居ビルの屋上から見ていた影も董香を追うように路地裏に入っていった。

 

 

董香を小走りで店に急いでいると、いきなり自分の背後から飛び越えていく影が目の前に降りた。

董香は突然現れた影に驚き、急停止する。

 

(こいつ……喰種!!)

 

「なんか用?」

 

董香は影の正体である男から立ち込める濃厚な血の匂いから喰種だとわかり、警戒を最大限に上げ、身構えながら尋ねる。

すると男は口を三日月のように裂けた笑みを浮かべると董香の体をジロジロと下から上へと見ていく。

董香はその視線に背筋に気持ち悪い悪寒が走った。

 

「喰種にしては健康的な体だなぁ。20区の奴らは大体が細身なのに君は程よく肉がついていいねぇ」

 

男は舌舐めずりしながらも視線は董香から離さない。

その様子に董香の悪寒はより強くなる。

 

「俺に喰われろ」

 

男は赫眼と赫子を出し、董香に飛びかかった。

 

 

1人家路を歩いている絋輝の耳にふと何かが崩れる音が僅かに聞こえた。

 

「なんだ……?」

 

いつもなら無視して帰るところだが何故か無視できず、音がなったほうに足を進めた。

 

 

女狂いが突然董香に襲いかかるが、董香は後ろに素早く飛ぶことで女狂いの赫子をかわしていくが、徐々に逃げ道が無くなっていく。

 

(……コイツ遊んでる!)

 

女狂いは董香が逃げる方向に赫子を向けて遊んでいる。

逃げられないなら攻撃するしかないと考えた董香は嫌らしい笑みを浮かべる女狂いを睨みながら、赫眼を現し、肩から霧状の羽赫を出し、攻撃する。

しかし女狂いは鱗赫を自分にまとわりつかせることで防ぐ。

それを好機だと見た董香は地面を蹴って一気に近づく。

 

「ハッハァ!!」

 

それに合わせて女狂いは鱗赫を董香に向けて伸ばす。

 

(遅い!かわせる!)

 

董香は迫ってく赫子をかわして仕留めるイメージを立てて、身をよじるが女狂いはそれを狙っていたかのように笑みを浮かべ、赫子の先端が縄が解かれるように分かれ、複数の細い赫子となる。

 

「なっ……」

 

驚く間も無く、董香の腕と足に突き刺ささり、壁に縫い付ける。

 

「ぐぅっ!?」

 

痛みで叫びそうになるがその前に女狂いが董香の口を押さえる。

 

「なかなかよかったが、動きが所々鈍かったなぁ」

 

女狂いはゆっくりと董香の肌に触れる。

 

「白くきめ細かい肌……流れる赤い血……いいねぇ!そそるねぇ!」

 

女狂いは董香の腕から流れる血液をゆっくりと舐めとる。

董香はその行動に嫌悪感が爆発した。

 

「テメェ!!」

 

「うるさい!」

 

「ゔっ!」

 

董香は身動きして逃れようとするが女狂いの拳が腹に突き刺さる。

 

「吐かないでくれよ。ムードが台無しだ」

 

女狂いは董香の頬を掴んで自分の方に向けさせると、その頬をねっとりと舐める。

董香は目を閉じ我慢するが、震えてしまい、その姿が女狂いを興奮させる。

董香の首元に顔をうずめ、匂いを嗅ぐと顔が紅潮して赫眼がより輝く。

 

「うっ……くっ……」

 

董香は見知らない者に体を触られ、気持ち悪さが最高潮に達するが手足は壁に縫い付けられ何もできない。

 

「ハァッーーー!!!もう我慢ができない!!!」

 

女狂いの興奮が最高潮に達し、奇声を上げて董香に嚙みつこうとした瞬間、背後から地面を踏む音が聞こえた。

 

「なに……してんだ?」

 

「絋輝っ……!!」

 

現れたのは絋輝だった。

絋輝が来てくれたことに僅かに喜ぶ董香だが、絋輝目の前で董香がわけのわからない触手に手足が貫かれていることに頭が追いついていない。

 

「ぁっ、絋輝!ここから逃げ……!!」

 

「食事の邪魔だよ」

 

董香が逃げるように叫ぼうとするがそれより早く女狂いの赫子が絋輝に向かって振るわれた。

その瞬間、絋輝の腹に衝撃が伝わった。

下を向くと女狂いの赫子が自分の腹を貫いていた。

 

「え……ぁ……?」

 

目の前のことが現実で起きていることなのか混乱してしまっている絋輝は震える手で赫子に触れる。

それと同時に女狂いは赫子を引き抜き、絋輝の腹から血が溢れ出る。

形容しがたい凄まじい痛みと気持ち悪さがこみ上げてくるが足から力が抜け、膝から崩れ落ち、うつ伏せになって倒れる。

朦朧とする意識の中で口の中から鉄の味を感じた。

 

(あっ……今、血が流れてるのか……)

 

体を動かそうにも力が全く入らず、目の前で張り付けにされながら叫ぶ董香を見る。

 

(とうか……助けないと………)

 

ふと、その時先日のデートのことを思い出した。

 

(死の形か……何も感じないなんて嘘だ………)

 

目の前が暗くなりながら、死を感じ取る。

 

(冷たい……)

 

絋輝はその時完全に『死んだ』。

 

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