東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#49 ワタシガコワイカ?

CCGがハロウィンパーティの会場に着いた時には既に阿鼻叫喚の真っ只中だった。

混乱している市民を避難させ、バリケードが張られ、その前には捜査官が厳戒体勢でいた。

そしてその中でもハロウィンパーティ護衛のリーダーである特等捜査官 刈谷が眉間に皺を寄せて他の捜査官の前に立っていた。

 

「……既に死傷者は500人に達している。我々の目的はこの会場を安全に守ることだったが最早それは不可能だ……。この事態は我々の責任だ。今はこの被害を広げないように迅速に動くぞ」

 

『はい!』

 

刈谷の言葉に捜査官達は声を揃えて返事をし、それぞれの持ち場に移動する。

仁志は刈谷と同じ班であるため、何人かと刈谷に付いて行く。

刈谷を先頭に逃げていった人たちの跡が残る渋谷の道を進んでいく。

ある程度進んでいくとその光景が一変した。

あたり一面に血が飛び散っており、鉄臭い匂いが充満している。

 

「これは……!」

 

「なんて酷い……!」

 

「……」

 

同行している捜査官がその凄惨さに息を飲み、仁志は黙ってその光景を見ていた。

すると1人の捜査官がうずくまって動かない仮装をした男を見つけて駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

側にしゃがみ込んで様子を伺うとうずくまっていた人がゆっくりと顔を上げる。

その顔は口周りにべったりと血を付けて、目が白く濁っていた。

 

「なっ……!?」

 

「うぁあああっ……!」

 

驚きの声を上げる前に男が捜査官に飛びかかって首元に噛みつこうとし、捜査官は咄嗟に抵抗してもがく。

その隙に仁志が男の首を切り払った。

 

「迂闊だぞ!藍田一等!ここら一帯は喰種が蔓延っている。よく確認しろ」

 

「も、申し訳ございません!特等!……荒木くんもありがとう」

 

「いえ……」

 

仁志は切った時の感触を確かめるように手元を見る。

 

(いつもの喰種を切った時の感触じゃない)

 

いつも感じる感触より柔らかく刃が通ってしまった。

このとき仁志の勘は嫌な方向へ考えてしまう。

 

「まさかな……」

 

仁志はそれを払拭するように呟いた。

 

 

ーーーーー

その頃、絋輝は1人荒らされたカフェの奥で隠れていた。

董香たちとはぐれてしまい、人波にに流されて出口どころか逆に中心地に向かってしまっていたのだ。

 

「はぁ……もう何でこうなるんだよ。董香達無事だよな?」

 

1人で愚痴をこぼしながらスマホを見る。

メッセージを送っても返事がなく、不安が募る。

その時、店の入口からガラス片を踏む音が聞こえ、身を縮こませる。

ゆっくりと前を覗き込むと数人の人影がふらつきながら店に入ってくるのが見えた。

その顔は血で汚れており生気が全く感じられなかった。

 

「まるでゾンビだな」

 

絋輝はそう呟くと物音を立てないようにゆっくりと床を這いつくばって店を出ようとする。

しかしマントが倒れていた椅子に引っ掛かり、物音を立ててしまう。

それに気づいたゾンビもどきが一斉に絋輝に襲い掛かる。

 

「ああっ!もう!」

 

悪態を吐きながら立ち上がって逃げようとするがゾンビもどきがマントを掴んでしまう。

引っ張られて後ろに倒れそうになるがマントを脱いで、なんとか逃げ出すことができた。

しかし、目の前の光景に絶句してしまう。

更に多くのゾンビもどきが店の周りを取り囲んでいたのだ。

 

「くそ!なんだってんだよ!?」

 

流石にゴーストを使おうとしたがその時頬に水滴がつく感触を感じ取った。

それは徐々に広がり、雨が降り始める。

 

「最悪だろ……」

 

雨が降るとIBMであるゴーストは動かなくなってしまう。

唯一の武器を奪われた絋輝は絶望してしまう。

次の瞬間には絋輝はゾンビもどきに囲まれ、襲われてしまう。

 

 

ーーーーー

仁志は取り囲んでくるゾンビもどきをクインケを振るって一掃する。

周りの捜査官も次々と襲いかかってくるゾンビもどきに四苦八苦しながらも倒していくがその顔はどこか暗いものだった。

 

「刈谷特等、この喰種……」

 

「ああ、これは人間だ」

 

仁志に話しかけられた刈谷は自身のクインケで倒したグール、もとい人間を見下ろしながらそう呟く。

 

「何故こうなったか分からないがこれ以上戦うと戦線の維持に関わる」

 

刈谷は耳元のインカムに手をあて、全捜査官に通達する。

 

「こちら特等捜査官 刈谷だ。現在、我々と交戦している喰種らしきものは人間だと思われる。できる限り捕獲し、殺すな。だが命の危険がある限り処理を許可する。全ての責任は俺が持つ。君たちはより多くの命を守るために戦え」

 

インカムを切り、一息ついてから仁志の方を向く。

 

「お前は大丈夫か?」

 

「はい、目標を駆逐するために最善を尽くします」

 

仁志の顔を見て、問題はないなと思ったが同時に危ういとも感じた。

目的のためには犠牲を厭わないとも聞こえてしまったからだ。

どうしたものかと考えていると悲鳴が聞こえた。

 

「あの悲鳴は……」

 

「藍田一等のだ!」

 

悲鳴がする方に駆け出し、曲がり角を曲がるとそこには藍田の姿はなく、大量の血痕だけが残っていた。

 

「どこに……」

 

「荒木二等、構えろ。何かいるぞ」

 

刈谷の言葉に仁志は周りに目配せをすると静かにクインケを構える。

すると徐々に大きな羽ばたきの音が聞こえてくる。

 

「上だ!」

 

刈谷の言葉と同時にその場から飛び退くのと先まで立っていた所に何かが隕石が落ちたかのような衝撃で落ちてきた。

煙が立ちこめるが雨によってその姿が顕になる。

獣ような短い体毛の黒い肌だ。

目は喰種と同様に赫眼だがその口には大きな牙が生えている。

 

「喰種……なのか?」

 

「赫者かもしれない。警戒を怠るな」

 

通常の喰種と姿が異なり仁志は疑問を持つが刈谷は赫子を暴走させた喰種である『赫者』の可能性を考え警戒する。

2人はクインケを構え、喰種を見据える。

するとその手に何かを持っている物に気づいた。

 

「……ッ!」

 

「藍田一等……」

 

先程悲鳴が聞こえた藍田の姿だった。

体中から血を流し、悲惨なものだった。

 

「……ぅ」

 

(まだ息がある!)

 

僅かなうめき声を上げる藍田に気づいた仁志達だがそれを見て喰種が僅かに笑みを浮かべる。

そして藍田を2人に見せつけるように自分の前に持ってくる。

 

「こいつ……!」

 

「っ!」

 

何をするか分かった瞬間2人は喰種に向かって走り出すが、それより早く喰種が藍田の首に牙を突き立てた。

 

「あ、あぁぁぁ?」

 

牙を突き立てられ一気に血を吸われてしまい、みるみるうちにミイラのように干からびてしまう。

その事に2人は驚くがすぐにクインケを構えなおし、喰種に向かって突撃する。

 

「フッ!」

 

「……っ!」

 

仁志は自身のクインケ『ツナギ』を刈谷も自分の槍状のクインケを振るうがそれは空振りに終わった。

2人の攻撃が当たる瞬間に喰種がその場から飛び上がった。

上を見上げると巨大な翼が生え、大きくはためかせていた。

 

「あれは羽赫なのか?」

 

刈谷が翼を注視すると、その翼は流動している物質が翼を形作っているのがわかった。

刈谷は自身のクインケ:『ウルシ 尾赫type』のギミックを可動させて、槍の持ち手部分が細かいパーツに分裂し、鞭になる。

鞭となったウルシを振るって喰種に攻撃するがそれも飛行されることでかわされてしまう。

刈谷に向かって飛んでくる喰種に対して仁志が迎撃する。

しかしそれを狙っていたかのように仁志の方を向き、翼を振るう。

 

「ぅぐっ!?」

 

車に轢かれたような衝撃を受けて仁志は吹き飛ばされてしまうがすぐに受け身をとって体勢を整え、手に持っていたクインケを見る。

 

「ちっ、クインケが壊れたか」

 

根本から折れてしまったツナギを捨て、側に置いてあった藍田二等のツナギよりレートが高いクインケを手に取る。

 

「少しお借りします」

 

『骨太刀 type尾赫』を構える。

 

(まだ少し軽いがツナギよりましだ)

 

近距離戦で戦っている刈谷は目の前の喰種が今までに戦ったことがない喰種だと思っていた。

 

(全身が赫子のように固い。赫者だと思った通常と違う。それにあの羽の羽赫だ。攻撃を当てる瞬間に硬質化するがその感触が鱗赫だ。複数持ちにしても異常すぎる)

 

ウルシを駆使して捌き、攻撃を与えていくがどれも有効的な物ではない。

 

「火力が足りないな……!」

 

そう愚痴を溢したとき、喰種の背後から仁志が近づきクインケを脳天に向けて振り下ろした。

このまま直撃すると思われたが羽赫が突然液状になり触手状の鱗赫に変貌し、クインケを受け止めた。

 

「……っ!?」

 

クインケと赫子が鍔迫り合いを起こして火花が散る。

その隙をついて刈谷はウルシを喰種の頭に目掛けて突きを放ち、首に突き刺さった。

 

「これで終わりだ」

 

ウルシを鞭状に変形させて振るうと首が千切れ飛んだ。

コマのように首が飛んでいくが、切られた部分から血が首を目掛けて伸びて行き、捕まえると引き戻して胴体と首が元に戻る。

 

「嘘だろ……」

 

傷が完全になくなった喰種に戦慄する2人を見て、喰種は心底楽しそうで悪辣な笑みを浮かべ、口を動かす。

 

「ワ……、ワタシガコワイカ?」

 

 

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