東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#51 まだみんなと遊びたい

絋輝は捜査官が規制線を張っている場所まで急いでいたが肩を掴まれた時に出来た傷が痛んで足が止まってしまう。

 

「はぁ、痛っ……もうそろそろ着くはずだけど。一回リセットした方がいいかも」

 

壁にもたれ掛かり荒くなった息を整えながら、少し休憩していると上空から槍が飛んでくるのが見えた。

 

「っあ!?」

 

咄嗟に首を晒して避けることはできたが頬に切り傷ができてしまう。

立ち上がって槍を見るとどこかで見たことがある物だった。

すると今度は聞きたくもない羽音が聞こえてくる。

振り返ると喰種が来たと思ったがそれは予想を外れた。

飛んできたのは体の至る所に醜悪な肉片をつけ、目が()()()()()()赤く充血した刈谷だった。

その背中には絋輝を襲った喰種と同じ羽が生えている。

 

「……まさかっ」

 

現実では起こり得ないことが起こっていることに戦慄してしまう。

死んだと思われた喰種は刈谷に取り付き、寄生したのだ。

しかもその主導権を完全に握っていた。

 

「マジかよ。喰種ってそんなこともできるのか……」

 

刈谷(喰種寄生体)は怯えている絋輝を見ると喰種と同様に醜悪な笑みを浮かべる。

絋輝に向かって飛び降り、それをかわしながらどうやってこの状況から逃げるか考える。

 

(まだ雨が降ってるからゴーストを出すのは無理だ……見逃してくれるとかなら嬉しいけど)

 

壁に突き刺さった槍を引き抜き、絋輝に向ける。

 

「まぁ、そりゃ無理だよな」

 

安易な考えは簡単に破られ、眉間に皺を寄せながら立ち上がり喰種と対峙する。

 

(戦う手段がない今は逃げるのに徹するしかない)

 

絋輝は対峙しながらも逃げることを第一に考えて動こうとしたがそれに気づいた刈谷(喰種寄生体)が槍を振り上げて絋輝に襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

凄まじい速度の攻撃を辛うじて避けることが出来たが続けざまに横降りの攻撃は避けれず、脇腹に重い一撃を貰ってしまう。

 

「ぐぎっ!?」

 

横腹から鈍い骨が折れる音が響き、呻き声が上がる。

吹き飛ばされた絋輝は車にぶつかり、凹ませる。

 

「っ〜!!(骨が折れたっ!)」

 

骨が折れたであろう場所を手で抑えて痛みに悶える。

そこに刈谷(喰種寄生体)が槍を絋輝に向かって突き出し、肩に深く刺さる。

 

「あ"ぁっ!!?」

 

肩の痛みに絋輝の額から脂汗が溢れる。

それを見た刈谷(喰種寄生体)は笑みを更に深くして口を開く。

 

「わ、ワタ…シ、ワタシガ、コワイカ?」

 

「……は?」

 

刈谷(喰種寄生体)は翼を広げるとその翼が形を変えて先端に牙がついた赫子にすると絋輝の顔に近づける。

絶体絶命の中、刈谷(喰種寄生体)と絋輝の間に一閃が走る。

 

「フッ!」

 

刈谷(喰種寄生体)に向けられた斬撃は赫子を切り裂き、絋輝との距離を開けた。

 

「無事か?篠原 絋輝」

 

「あ、アンタは荒木さんの息子の……」

 

絋輝を助けたのは肩から血を流し、片手でクインケを握る仁志だった。

 

「あの人、あの喰種に寄生?されたんですか?」

 

「………あぁ、恐らくな」

 

仁志は怒りをこめるようにクインケを握る手に更に力を入れる。

 

「理由は分からないが奴の狙いはお前だろう。逃してあげたいところだがそれより俺と一緒にいた方が効率がいい」

 

「は?効率って?」

 

「奴をぶち殺すためのだ」

 

刈谷(喰種寄生体)が翼を羽ばたかせて絋輝に向かってくるが間に仁志が立ちはだかり、クインケを振るう。

仁志の攻撃を跳ね返そうと羽を横薙ぎをするが仁志はそれをクインケわ握る一本の腕だけで受け止めた。

 

「ア?」

 

「オラァッ!!!」

 

受け止められたことに不思議そうにする刈谷(喰種寄生体)に対して更に力をこめてクインケを振って刈谷(喰種寄生体)を吹き飛ばす。

 

「ひと1人吹き飛ばすとか、どんな力してるんだよ?」

 

「………」

 

絋輝が仁志の実力に驚くが仁志は黙って吹き飛ばした相手は見据える。

刈谷(喰種寄生体)は立ち上がると怒りの表情を浮かべて仁志を見て、羽を触手状の赫子に変形させて仁志に向かっていく。

赫子と槍の猛攻に仁志は片腕で防ごうとして赫子をクインケ一本で受け止めるが、受け止めきれずに今度は逆に吹き飛ばされてガラス張りの店に突っ込んでしまう。

 

「荒木さん!?」

 

吹き飛ばされた仁志に向かって叫ぶ絋輝だがその絋輝に向かって赫子を突き刺そうとする。

 

「くっ!……がぁっ!?」

 

転がることで寸前で赫子を避けることができたがそれを予期してたのか倒れている絋輝の腹を蹴り上げて店の中に吹き飛ばす。

吹き飛んだ絋輝を見て刈谷(喰種寄生体)は悪辣な笑みを浮かべながら、その店に槍を引き摺りながら、弱った獲物を追い詰めるためにゆっくりと歩き出す。

 

 

吹き飛ばされた絋輝は受け身を取れずに店に突っ込んだため首の骨が折れてしまい、リセットされる。

 

「……はぁっ!?ハァ、ハァ、……はぁ」

 

リセットされた絋輝は一息つくと店の入口からガラス片を踏む音が聞こえ、慌てて物陰に隠れる。

足音が近づき嫌な汗が流れるが漏れそうになる呼吸を何とか押し殺す。

足音が聞こえるたびに緊張で心臓が飛び出しそうになる。

足音が間近に迫った瞬間、絋輝の口が突然抑えられる。

 

「……っ!」

 

「(静かに……!)」

 

目を見開いて驚くと目の前に吉桐が人差し指を自分の口に添えて、静かにするようにジェスチャーで伝える。

すると吉桐は自身の後ろにある裏口を指差し、絋輝に一緒に逃げるように伝え、2人は店を出ると走ってそこから離れる。

 

「吉桐!無事だったんだな!」

 

「あのゾンビ共から必死に逃げ隠れしながらね!生きた心地がしなかったよ!」

 

再会できた喜びからか2人は少しテンションが上がりながら話し出す。

やがて店からだいぶ離れると再び隠れて、座り込んでどうするかを話し合う。

 

「早くCCGか警察の人と会わないと、さっき会ったけどまた逸れちゃってさ」

 

「……それなんだけどさ。絋輝と会う前に色んな所に死体があって。警察と捜査官のものだったと思う」

 

「まじかよ……生きてる人は?」

 

吉桐は苦い表情をしながら首を横に振った。

それを見た絋輝はため息を吐きたくなったがそれを我慢して対策を考える。

 

「ここから一番近い避難所ってどこだっけ?」

 

「渋谷駅だね。ここは松濤公園辺りだから……」

 

「ざっと1kmってところか。走れば無事に行けるか?」

 

「どうだろう……道玄坂辺りはゾンビ共で溢れていたから難しいと思うよ。遠回りするにしてもどこまで被害が広がっているか分からないし」

 

絶望的な状況に代わりがないことに絋輝は今度こそため息を吐いてしまった。

 

「はぁ……何でこんなことになるんだろうな」

 

「……嘆いていても仕方ないよ。どうするか考えよう」

 

吉桐は絋輝が何かしらの秘密を抱えていることを知っており、さらにそれが原因で危険な目にあっていることも知っている。

それなのに責めることもせずにいてくれるが絋輝は逆に申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「……これが終わったらまたどこか行きたいねぇ」

 

「突然何だよ?」

 

「いやぁ、こんなことがあったからまた小坂を元気つけないといけないじゃん。小坂は今回のこと自分の責任だと思っているだろうし。ハロウィンが終わったら次はクリスマスかな?あっ、でもその前に期末テストがあるね。また小坂と霧島に勉強を教えないといけないな。そしたら年が開けて3年生だ」

 

今後のことを次々と話す吉桐は本当に楽しみで仕方ないようだった。

 

「受験で忙しいかもしれないけど、まだまだ4人で思い出を作りたいね」

 

「………」

 

それを見た絋輝は少し呆気に取られたが肩の力が抜けて笑みを見せる。

 

「そうだよな。まだみんなと遊びたい」

 

絋輝のその言葉に吉桐も安心した表情を浮かべる。

絋輝がさっきの表情とは打って変わってやる気が満ちた表情になる。

 

「じゃあ早くここから出よう」

 

絋輝が立ち上がって動こうとした瞬間、背後から腹に槍が突き刺さった。

 

「絋輝!?」

 

「……ごほっ」

 

腹から込み上げてくる血を吹き出し、膝から崩れ落ちそうになるが背中に突き刺さった槍を掴まれて持ち上げられる。

 

「あがっ、あああぁぁっ!?」

 

持ち上げられ内臓が腹から出そうになる激痛に悲鳴を上げながら、突き出た刃の部分を掴んで耐え、その様子を持ち上げた張本人である刈谷(喰種寄生体)は嗜虐的な笑みを浮かべて見ていた。

やがて槍を振りかぶり、松濤公園の池の端まで投げ飛ばした。

 

「絋輝!くっ……!」

 

吉桐が投げ飛ばされた絋輝を心配するが目の前に立つ刈谷(喰種寄生体)のせいで動くことができない。

しかし刈谷(喰種寄生体)は目の前で動けない吉桐ではなく、投げ飛ばした絋輝のほうを見ていた。

やがて翼を広げて、絋輝に向かって飛んでいく。

絋輝は池の端で倒れており、体から僅かに黒い粒子が溢れ出し、リセットされる。

 

「はぁ…はぁ…くそっ!」

 

体に残る痛みに悶えながら立ち上がろうとすると背後に上空から刈谷(喰種寄生体)が降り立つ。

逃げようとするが足首の骨を踏み砕かれてしまう。

 

「があああぁぁっ!!?」

 

あまりの痛さに悲鳴をあげるが刈谷(喰種寄生体)は足を上げずに笑みを浮かべながら踏み締める。

刈谷は笑みも止まると口が裂けるほどに大きく開ける。

裂けた部分からは血肉が露わになり、そこから新たな牙が生える。

 

「ぐぁ……!くそっ……!」

 

逃げようにも足を抑え付けられて動くこともできず、押さえ付けてくる足を退かそうと掴むが人間の力で退かすことが出来ずにピクリともしない。

鋭い牙が絋輝に届こうとした瞬間、刈谷の背中が鉄棒で殴られた。

 

「ハァ…!ハァ…!」

 

「よ、吉桐…!」

 

殴ったのは吉桐だ。

鬼気迫った表情で鉄棒を振り下ろし、絋輝を救おうとしていた。

刈谷がゆっくり吉桐の方を向き、吉桐はもう一度鉄棒を振るおうとするが翼を触手に変えて吉桐の横腹に向かって振るった。

声も出さずに吹き飛ばされた吉桐は地面に何度もリバウンドし、倒れ伏して動かなくなってしまう。

雨に打たれた吉桐の体から赤く染まった雨水が落ちて地面に広がる。

それを見た絋輝の目の前は怒りに染まった。

体から黒い粒子が出始め、刈谷の足を握り潰した。

 

「ガアァッ!?」

 

握り潰された足の痛みで刈谷は膝をつくが()()()()()()に足を治した絋輝が刈谷の胸倉を掴み上げる。

 

「殺してやる……!!」

 

絋輝の体からは絶えず、黒い粒子が出ていた。

 

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