東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#53 何で俺を助けたんだよ

ハロウィンパーティでの一件から数日が経った。

世間ではその一件を『血のハロウィン』と騒がれていた。

連日のニュースではそのことばかり報道されていたが、ここ最近はその焦点が変化していた。

 

『亜人研究会からの資料によりますと亜人は喰種にとって最高の食糧だと記載があります。亜人から喰種にしか判別できないフェロモンが発せられておりそれにより更に凶暴化する危険性があると。これが本当であるなら由々しき事態だと思いませんか?』

 

『確かにこれが本当に事実であるなら亜人と喰種の関連性と危険性が明らかになりますね。恐らくですが政府は亜人研究会に亜人の確保をするように言うのではないでしょうか?』

 

そこで電源は消されて、甫と雄二を含めたあんていくの面々が難しい顔をしていた。

 

「まさかここまで派手にやるなんて……」

 

「俺たちへのマークがキツくなるな、こりゃ」

 

甫と雄二は今後のことで頭を抱えたくなるほどになる。

芳村は四方と古間の方を向く。

 

「董香ちゃんは?」

 

「特に怪我もなく無事に帰ってきたんですが……友達が死んでしまってだいぶ落ち込んでいましたけど絋輝くんのことが心配で家に向かいましたよ」

 

古間の言葉に雄二は疑問を持つ。

 

「絋輝の家って言うと……」

 

「そう喰種捜査官の家だ」

 

「芳村さん、大丈夫なのか?」

 

「念の為にカヤちゃんと一緒に行って貰った。万が一が起きた場合はすぐに逃げるように言ってある」

 

甫の疑問に芳村は既に対策をうってあると言い、とりあえずバレることはないと少し安心するが絋輝の精神状態がどうなってるいるか不安になるのだった。

 

 

ーーーーー

董香は絋輝の自宅前に入見と共にいた。

緊張した様子の董香に入見が声をかける。

 

「大丈夫?董香ちゃん」

 

「はい、大丈夫です……」

 

「そう……私は近くにいてるからもしもの時は助けに行くわ」

 

「ありがとうございます」

 

入見はそう言うと離れ、董香は緊張した面持ちで絋輝の自宅のインターフォンを押す。

 

『はい』

 

「あっ、あの……私、篠原絋輝くんとクラスメイトの霧島董香といいます」

 

『貴女が……どうぞ、入ってください』

 

董香は絋輝の母に案内されて家に上がる。

 

「貴女が霧島さんなのね。絋輝ったら貴女のこと滅多に話さないからどんな人なのか気になっていたのよ。でも、良かったわ。優しそうな人で」

 

絋輝の母にそう言われて少し照れてしまう董香だったが気を取り直して質問する。

 

「あの……絋輝、くんの様子は?」

 

「……あれから5日も経つけど帰って来てからずっと部屋に篭っているの。食事も取らずにね。私や夫が声をかけても何も言わなくて」

 

不安げな顔をする絋輝の母親を見て、良い人なんだということと絋輝が愛されていることが分かる。

ふと視線を感じて視線の先を見ると幼い絋輝の弟妹が董香を影から見ていた。

 

「(そういえば兄弟がいるって言ってたな……)こんにちは」

 

小さな子供相手に緊張する訳もなく、挨拶をすると1番小さな女の子が董香の近くに寄ってくる。

 

「あのね、おねーさんはおにーちゃんのこいびとなの?」

 

「うん、そうだよ」

 

「いまからおにーちゃんのおへやにいくんだよね?なら、これをわたしてほしいの!」

 

そう言って董香に差し出したのはクレヨンで書かれた絵と『げんきだして!』と拙い字で書かれていた。

 

「俺のも渡してほしい!」

 

「アタシも!」

 

すると他の弟妹たちもメッセージ付きの贈り物を董香に渡し、それらを大切に抱えて絋輝の弟妹を優しい目で見つめる。

 

「……うん、絶対に絋輝に渡すね」

 

「ありがとう!おねえちゃん!」

 

絋輝の家族にお礼を言われて董香は微笑む。

そして董香は絋輝の部屋の前に立ち、深呼吸をしてノックする。

 

「絋輝……私、董香だけど……元気?」

 

董香が声をかけても部屋から返事がない。

 

「絋輝?………」

 

返事どころか物音もしないことに不自然に思った董香は喰種特有の鋭い感覚で部屋の中を感じ取る。

するとある事に気付き、部屋を開けるとそこには誰もおらず、窓から冬になりかけの冷たい風が入ってきていた。

 

 

ーーーーー

とある公園の雑木林の中で生気のない顔で絋輝は木の太い枝にロープを括り付けていた。

先端を輪っかにして踏み台に立つとその輪っかを首に通し、踏み台に立つと覚悟を決めた顔つきになる。

そして踏み台を蹴り飛ばすと宙ぶらりんの状態になり首をつった。

やがて苦しそうな表情になるが足をバタつかせずそのまま死のうとする。

しかし、意識が飛びかけた瞬間に強い力で吹き飛ばされて地面に倒された。

 

「ゴホッ、ゴホッ……!?だ、誰が……ッ!?」

 

自殺しようとしたのに邪魔されたことに怒り、助けた人物を睨むがそれを見た瞬間に息を飲んだ。

絋輝を助けたのは自身のゴーストだった。

ゴーストは何も言わず、座り込む絋輝の方に顔を向けていた。

 

「な、なんでお前が……」

 

『………』

 

ゆっくりと立ち上がり、ゴーストに質問するが何も返事は返ってこない。

 

「何で俺を助けたんだよ……?何で、なんで………!何でって聞いてるんだろうがっ!!?」

 

何度きいても答えず、やがて感情が爆発してゴーストに詰め寄り殴り掛かったがゴーストは微動だにせず顔のない顔面を絋輝に向けるだけだった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……お前も生きろって言いたいのかよ?俺なんて……生きる価値なんか……」

 

ゴーストを殴っていた拳はやがて力がなくなり、もたれかかってズルズルともたれかかる。

地面に座り込むと涙が地面に落ちていった。

すると草むらをかき分ける音が聞こえてくる。

 

「いた!絋輝!」

 

現れたのは董香だ。

息を切らせながら座り込む絋輝を抱き締める。

 

「董香……なんでここが……」

 

「カヤさんに頼んで探してもらったの!そしたら首を締める音が聞こえるって言われて……」

 

そう言って木に垂らされている縄を見て、何をしようとしていたか分かり、落ち込む絋輝と向き合う。

 

「もしかして死のうとした?」

 

「……」

 

何も言わない絋輝に死のうとしていることが分かった。

 

「新田が……死んだのは絋輝のせいじゃない」

 

「いや、俺のせいだ」

 

「そんなことは……」

 

「俺のせいなんだ!」

 

絋輝の大声が響く。

 

「アイツは俺を狙っていた!前の女狂いと同じ!俺がいると周りが巻き込まれる!……俺の大切な人たちが傷つくのを見るのはもう嫌なんだよ」

 

絋輝は涙を流しながら力なく話す。

そんな絋輝の肩に手を置き、俯いている顔を見つめながら話し出す。

 

「絋輝、そんなに辛いなら私のせいにしていい。言ったよね?私は絋輝と一緒にいたいって。生きるのが辛いなら私のために行きて。生きるのに罪悪感を感じるなら私のせいにして」

 

「何でそこまで……?」

 

「絋輝のこと好きだから。愛しているから」

 

絋輝の質問に董香は間髪入れず答えると頬に手を添えて、優しく口付けする。

 

「絋輝が生きる目的を私にしてもいい、生きる罪を私にしてもいい。だから一緒にいて」

 

そう言って董香に抱き締められると絋輝は涙を流し、震える手で抱きしめ返す。

董香が受け入れてくれる、共にいてくれることに嬉しく思うがその反面、こんな自分が董香と共にいてもいいのかという葛藤が胸の中で渦巻いていた。

 

 

ーーーーー

それから数日が経ち、渋谷の事件現場はある程度の復興の目処が経ち、渋谷のスクランブル交差点近くでは献花するための施設が設置されていた。

多くの人が悲しみにくれた顔つきで死んでいった人たちに花を贈った。

そこにはCCGの局員が警護にあたっており、真戸 呉緒も彼の部下である亜門 綱太郎と共に現場にいた。

 

「こんなことがあって良いはずがない……!」

 

亜門は悲しみに暮れながら献花している人たちを見て、静かにだが激しい怒りを露わにしていた。

 

「落ち着きたまえ亜門くん。その怒りはここでは出さずにクズどもに向けるんだ」

 

いつもと変わらない表情だがその目には怒りが宿っているのが亜門は気づいた。

すると献花していた人達を眺めていた野次馬の話し声がふと聞こえてくる。

 

「今回の事件って亜人が関わってるんでしょ?」

 

「というより亜人が原因なんだって研究会から発表があったんだって。ほら、新宿のやつも亜人出てきたじゃん」

 

「喰種だけでも怖いのに亜人もなんて嫌になっちゃうよ」

 

その話を聞いて、亜門は難しそうに眉間に皺を寄せる。

 

「今回の件、本当に亜人が関わっているんでしょうか?」

 

「どうだろうねぇ。連中は亜人が原因だと言っているが……しかし、亜人という存在が世間に公表されてからクズどもにも変化があったのは確かだね。何かを探しているような行動をしているのが多くなった」

 

「喰種どもも亜人を?」

 

「そう考えるのが妥当かもしれないね」

 

「……CCGは亜人を追うんでしょうか?」

 

「………」

 

真戸は何も答えなかった。

同期であり、CCGの上層部とも繋がりが深い丸手からはハロウィンの一件でCCGが亜人研究会と共に亜人を捕獲するのに動き出す、と教えられたが自身の勘が悪いことが起きると感じていた。

すると献花する人達の中に絋輝の姿が見えた。

 

 

ーーーーー

絋輝は董香、依子とともに吉桐に別れの挨拶をしに来た。

依子は吉桐が死んだ悲しみに耐えるように目尻に涙を蓄え、董香に支えられながら訪れ、その様子に董香、絋輝も辛そうだった。

 

「ぅぅ……新田くん」

 

「新田……」

 

「……」

 

3人は花を供え、吉桐に別れを告げたが絋輝は吉桐に対して負目しかなく、この場に来るのもいけないと思っていたが依子がどうしても言うのと董香に説得され来たが罪悪感で潰れそうだった。

その様子は真戸たちにも見えており、悲痛な顔で見ていた。

 

「……行こう」

 

耐えられなくなった絋輝が声をかけた。

3人は何も話すことができずに帰ろうと駅に向かい、スクランブル交差点の中心に差し掛かった瞬間、車のエンジン音が近づくのが聞こえた。

中型のトラックがまだ交差点内に人がいるのにも関わらず突っ込んで来たのだ。

このまま行けば自分どころか、前を歩いている董香と依子も轢かれてしまう。

 

「くっ……!」

 

「きゃっ!?」

 

「えっ!?」

 

咄嗟に絋輝は2人を強く押した。

2人が尻餅をつき、董香は絋輝の方を向いた瞬間、絋輝が目の前で轢かれた。

絋輝の血が僅かに顔に飛びつき、何が起こったか分からず呆然としてしまう。

恐る恐るトラックの方を向くとその先には轢かれて血肉と臓物が溢れた絋輝が横たわっていたが体から黒い粒子が溢れ、徐々にその体を治していく。

やがて傷が全てなくなると血に塗れて、ボロになった服の状態で立ち上がった。

すると周りの群衆の中から一言呟かれた。

 

「亜人だ」

 

 

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